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出逢い

「お姉ちゃん、助けて…」

見た目は13歳。中1と思える相沢翔太は泥だらけでとぼとぼ歩いて来て、ふるえる手を伸ばす。まだ夕暮れだというのに、満身創痍のその体は、一晩中殴られたようだ。流れる血が夕緋(ゆうひ)に焼ける。

みごと迷惑を被った女性は18歳、高校3年。

二ノ宮綾は恐る恐る手を取る。

すると、翔太は倒れた。

綾はあわてて救急車を呼ぼうとするが、携帯を手にした綾の腕を、驚くほど強い力で掴む翔太の細い手が、それを拒んでいるようだ。病院まで徒歩五分。

「背負ってくか…」綾はひとりごちて、自慢の足腰を使った。

それが、彼女の長い旅の始まりだと知らずに…


綾は、翔太が安心から倒れたと病院で知る。

いじめっ子達から逃げて来たらしい。両親はそれを知って、黙ってるようだ。

翔太は昔からいじめられっ子。両親は諦めている。理由を聞いても、「必要なら翔太が話します。」その一言で片付けられてしまう。

綾はその態度で、深い心の傷がえぐられた。


綾は翔太の寝てるベットに座り、起きるのを待とうとすると、座ってスプリングが沈んだからか、翔太が目を覚ます。

「お姉ちゃん?」

綾は髪を()き揚げ、脚を組む。

「あ、起きた?起きた早々、色っぽいお姉様のご登場♪」

翔太は目をパチクリしてる。

「…悪い気分じゃないね…」

今度は綾が目をパチクリする

「あんた、マセてるわね〜…そんな気分じゃなかった?」

「いや…ホント、お姉ちゃんに助けてもらって良かった。…救急車…呼んだ?」

綾は肩の力を抜く。むしろキャラじゃないのは綾の方だった。

「呼んでないわよ…地元の子じゃないの?私が運ぶより、自分から病院着く方が早かったんじゃない?」

翔太は小さくため息をついて答える。

「お姉ちゃんが、良かった。引っ越しは1回、小学生の頃。中学入って、知らない道多くて。お姉ちゃん、何かお話して」


綾は身の上話をする。

理由は恐らく、翔太の両親の態度から、センチメンタルになったからだ。

親を覚えておらず、親戚をたらいまわしにされて、叔父さん夫婦に世話になってること。

ただ、小学生からの親友の文通と、携帯復仇(ふっきゅう)後メールしてること。だから淋しくない。幸せだって。

「お姉ちゃん、それは違うよ…不幸だよ…」

「なぜ?不幸って、淋しくないってことでしょ?」

綾はベットから立ち上がる。

「私は昔は不幸だったった。親を知らないから。でも親友できた。私が不幸なら、いっぱい不幸な人できる。そんな世界ってない!私は幸せよ!」

「淋しくない人は世の中にごまんといるよ…けど、お姉ちゃんの中の人はどうかな?悲鳴、聞こえるよ?助けて…つらいよ…悲しいよぅ…って」

「…っ!この恩知らず!あんたに私の何がわかるっていうの!?」

「わかる。わかるんだよ…助けを請うたのも、同じ心の匂いがしたから」

「心の匂い?」

月夜にキラリと光る翔太の瞳

「そう…心匂(しんきゅう)。僕はそう呼んでいる。いじめられた理由さ…人は不穏分子を、異なる者を切る…動物の、血…醜い、血…」

立ち上がった綾を座らせ、ゆっくり語る


「人の不幸がなんなのか、僕はあまりに小さすぎてわかんない。けど、心匂は本心のそのまた本心。本人すら知らない匂い。」

綾、絶望やら疑心暗鬼やらで顔がこわばる。心あたりが無いわけではなかった。

「でも!…で…も…」

少年は首をかしげる。「でも?」

「でも…!私は!わたし…は…悲しくなんてないのに…ない…のに。なぜ?涙が、止まらないの…」

綾はポロポロと涙を流す。ありえない。そんなはずないのに…

「それが心の叫びなんだ。本で読んだことある。”成る”っていう短編小説。主役の女性は言った。”不幸とは自分が不幸だってことに、気がつかないこと”なんだって。

「不幸を、不幸と知らないことが不幸…」

綾は肩をガクリとうなだれる。

「私は、現実から目を背けた。それは認めるわ。けど、本当に大した不幸は無いのよ…」

翔太は鼻をヒクヒク動かす。

「心匂は、親を想ってる。…ねぇ、これから、二人で動かない?きっと良いコンビになるよ!」

綾は顔を上げる。

「それも心匂?」

「これは本心」

翔太は白い、小さな手を差し出す。

綾は手を伸ばす

二人の世界は、今始まる


続編は次の新作のあとになるかも。一週間は動きません…短編でも良いのですが、たまには連載したかったw

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