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秘密

前話までのあらすじ――


大学2年生の俺(浦野淳平)の自宅に突然現れた見知らぬ女。

彼女は自分のことを俺の元カノの二瓶純子だと言い張る。

俺と純子とは既に3ヶ月前に別れている。

同じサークル仲間のイケメン野郎・池田と付き合うからと一方的にフラれたのだ。

純子と池田は、それに乗ると恋が成就するとウワサの『24番の観覧車』に乗ったという。


黒水美登里の仕草に純子と共通したクセを見つけていくにつれ、俺は少しずつ黒川の話を信じていくようになっていくのだが……


今回は3ヶ月前、純子と池田が『24番目の観覧車』に乗った時の回想シーンから始まります。

 池田哲広はテニスサークルでは好色家で有名なイケメン野郎だ。おまけにテニスもうまく、頼まれもしないのによく女子部員のコーチ役を買って出ていた。そんな彼の周りにはいつも女がいて、二股三股は当たり前という感じだった。


 そしてとうとう、池田はその触手を純子に伸ばしてきたのだ――


 純子には恋人の俺には絶対に知られたくない、高校生時代の秘密があるらしい。その秘密を池田は入手した。卑怯なことにそれをネタに純子に迫ってきたのだ。

 純子は秘密を暴露される恐怖と戦いながら、執拗に迫る池田の誘いを断ったそうだ。


 すると、池田は最後にこう提案をしてきた――


『次の週末、一緒に遊園地に行ってくれないか? もちろん僕は一切キミに手を出さないと約束するよ。ただ一緒に行ってくれるだけで良いんだ。それを大切な思い出にして僕はキッパリとキミを諦めるよ! キミの秘密についても絶対に口外しないから』


 と――




「そんなのウソに決まっているじゃないか! 遊園地に2人きりで行って、あいつが女に手を出さないなんてあるわけがない!!」

「う、うん……そうだよね……ごめんね淳君。本当に私、バカだったと思う」


 俺は目の前の女が純子と混同してしまい、黒水美登里を問い詰めてしまった。それに彼女の話が真実だと仮定しても既に過去の話。今更どうのこうのと責めても仕方がない。


「ごめん、話の腰を折ってしまって。それで純子と池田は裏野ドリームランドへ行ったのか? ……ああ、思い出したぞ! 俺が純子を映画に誘ったときに、その日は友達と遊園地に行く約束があるからと断ってきた、あの日のことか!?」

「うん……ごめん……なさい」


 確かに純子はウソはついていない。まいったな……俺は呑気に『じゃあ映画はその次の週にしよう』なんて言った覚えがある。純子が言った『友達』が池田のことで、彼女はその池田に脅されていたなんて夢にも思わなかった……




 4月1日土曜日――


 裏野ドリームランドの正面入り口にて待ち合わせ。10時の開園と同時に純子と池田は入場する。

 池田は言葉巧みに純子を観覧車まで誘導していく。


 観覧車の入り口は二手に分かれており、一方の入り口のみ行列ができていた。

 池田は空いている方ではなく、その行列の後ろに並びたいという。

 『24番目の観覧車』のうわさを知らない純子は不思議に思ったが、それで池田が自分から身を引いてくれるのならと承諾した。


 観覧車の行列に並んでいる時間は苦痛だったという。池田に脅されて仕方なしにきている純子はともかく、列に並んでいる他のカップルたちもほとんど会話らしい会話もなく、ひたすら順番がくるのを待っているという感じだったからだ。


 1時間半ほど待って、観覧車の入り口にさしかかる。

 そのとき、ようやく純子は気づく。この行列は24番と書かれたゴンドラに乗るためのものであるということを。


 さらに純子は違和感も感じていた。


 先ほどまではそれほど仲が良さそうには見えないカップルが、1周約10分で降りてくる時には同一人物とは思えないほどの変貌を遂げていた。カップルによって多少の違いは見られるものの、手をしっかりと握って降りてくるカップル、女が男の腕にしがみつくように密着して降りてくるカップルなど、およそ目のやり場に困るような状況になっていたのだ。


「ねえ、なんだか私……この観覧車に乗りたくないんだけれど……他のアトラクションに行ってみない? ほら、ここのジェットコースターとか結構スリルがあるらしいよ?」

 純子はおそるおそる池田にそう提案した。

「いいねー、じゃあ観覧車の後はジェットコースターに行こうよ。よーし、楽しみだねー」

 池田はイケメンスマイル全開でそう答えた。

 純子の逃げ道は塞がれてしまった。


 そして、純子たちの順番が回ってきた――


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