何も望めない身で、何を求むか
すみません!
時間が欲しい……。
セインセイズの付き人の男の名は、アインスといった。
アインスはこの地獄で、代々の地獄の長の付き人を務めている。
アインスはホムンクルスである。
人間ではなく、作られた存在だ。
故に、いつかは朽ちる身だ。
アインスを生み出したのは、地獄に来たとある男であった。
男は生前、錬金術でたった一体のホムンクルスを作った。
そのホムンクルスには、確かに心があった。
だから、地獄でも作ろうと思った。
心のあるホムンクルスを。
男はアインスを生み出した。
かつて作ったホムンクルスと同じように。
アインスには心はあった。
心はあったが、関心はなかった。
誰かが落ち込んでいても、何もしなかった。
とにかく、何もしなかった。
だから、男によって改造された。
心を薄くする代わりに、関心を強くした。
そして、今のアインスが完成した。
出来に満足した男は、アインスに命令した。
「イーンフェルヌス様を支えろ。お前の身が朽ちるその日まで」
この言葉を胸に抱き、アインスは動いていた。
アインスは動いて、動いて、動いて、動いた。
身が朽ちるその日まで。
地獄の長の為に。
男はもう地獄には居ない。
だから誰もアインスを止められない。
アインスが何かを切望しても、男の命令がそれを許さない。
それは、アインスが誰よりも求めている事。
「」
声は出ず、何もできない。
地獄の長を支えること以外。
何も。