地獄にて
すみません。
あまり書けなかったです。
セインセイズの人生は裏切りと絶望に溢れた人生だった。
後悔、執着心、そんな感情がセインセイズを地獄へと至らせた。
セインセイズの生前は此れ以上でも以下でもない。
セインセイズの回想は終わりを迎える。
***
「ふぅ、やっと目標数整理出来た。……でもまだまだ書類はある。絶対見つけてみせる。あの人の書類を」
山のように積み重なっている書類を見ながら、セインセイズは一人呟く。
そんな時、扉がノックされ、セインセイズ一人のはずの執務室に人が入って来る。
黒い髪、紅い目をした男だった。
男はセインセイズを見ると、紅い目を細める。
そして問うて来た。
「イーンフェルヌス様。ご職務ありがとうございます。誰かから、息抜きとして甘味が用意されておりました。お食べになりますか?」
セインセイズは一瞬だけ躊躇った後、頷く。
生前ならば、絶対に知らない相手からの差し入れは受け取らなかったであろう。
だが、セインセイズ達はもう死んでいる身である。
故にもう毒の心配などない……のだが、セインセイズは少しだけ躊躇った。
生前の感覚がまだあるのだろう。
地獄へと至った者が生前の感覚を覚えている事など稀だ。
大抵はもう死なないと思い、何でも口にするものなのだが。
セインセイズは地獄へと至った男。
そして、地獄の試練を乗り越え、地獄の長となった男。
この地獄の誰よりも今の地獄を知っている。
それが***の権限だから。
なのに躊躇った。
男は驚いていた。
地獄の長に。
男は地獄の長に長く仕えているが、この様な姿を見せる事はなかったから。
生前を思い出していたから、などとは知る由もない。
甘味を食べたセインセイズは、また書類の整理に戻る。
あの人の書類を求めて。
今の地獄を知っていても、過去の地獄は知らないから。
それを知るために。