セインセイズの場合3
セインセイズは思いだす。
あの愚かだった日々を。
☆
あの惨劇から数年。
ルイーズとも連絡を取っておらず、ただ一人であの男を捜す日々。
そのために、何でもした。
情報のために人を犠牲にしても、心は全く痛まなかった。
情報を握っていそうな人物の話を聞くと、その人物の元に行って、情報を聞き出す。
最初は、正攻法で見つけようとした。
情報屋を訪ね回った。
だが、何処の情報屋にも情報が「ない」と言われた。
情報屋がないということは、情報を売れない、つまり情報を提供した客だということだ。
あの男は客、だから売れない。
その事を知った時、絶望したものだ。
だが、分かったこともあった。
この辺り一帯の情報屋を訪ねて回る程の金の余裕があるということだ。
諦めずいろいろな事に手を出した。
闇金、殺人、人身売買、スパイ活動などの汚れ仕事にも手を出した。
あの男は、母親の事を前から知っていた素ぶりを見せていたので、母親の故郷にも出向いた。
そこには、セインセイズの祖父母と思われる人達がいた。
セインセイズは此処へ来た目的を話す。
母親の事を伏せたまま。
セインセイズは母親の子だということを隠して。
セレスティーヌについて知っているか、と。
すると、祖父母は嫌悪感を隠そうともしない表情で、自分達の娘である筈の母親を罵った。
あんな恩知らずの子私達の子じゃない、あの売女め!と。
誇れる人生を歩んでは来なかっただろうが、此処まで実の親に嫌悪されていた母親に深い憐憫の念を抱いた。
母親に執着していた男を知っているかと尋ねたが、結果は芳しくなかった。
だが、少しだけ収穫があった。
セインセイズは、血の繋がりがある他人に別れを告げ、またあの男を捜す。
さがして、さがして、捜して、探して、サガシテ、捜し続けた。
突き止め、そして、知った。
あの男のいる場所を。
そこは、あのルイーズがいるレイルティー家の館だった。
セインセイズは、絶望という感情以上のものを感じた。
ルイーズが命令して母親を殺させたのか、という想像が頭に浮かんだ。
その想像を頭の中で否定し、あの男の元に行こうとする。
だが、不法に侵入した事がバレてしまい、捕らえられた。
そして、ルイーズと再会した。
ルイーズはより美しくなっていた。
あの頃にはなかった色香が漂っていた。
そして、セインセイズの姿を見ると、こう言った。
「うふ、うふふふふふふ!久しぶりですね。セインセイズ。何故今更此処に来たのですか?あ、あの母親の仇をとりに来たのですか?あんな屑の仇を!?貴方は優しいですね!」
これが、ルイーズ・レイルティーという女の本性。
人を見下し、馬鹿にする。
そして、ルイーズは言った。
「では、お望みどおり、あの男を連れてきてあげましょう!さあ、ヴァンソン!いらっしゃい!」
「はい、お嬢様」
現れたのは、あの男だった。
母親を殺めておきながら、のうのうと生きている男がどうしても許せない。
すぐに殺してやると思ったが、拘束されていて動けない。
母親の仇を前にして、セインセイズは何も出来なかった。