セインセイズの場合2
胸糞、残酷な展開あります。
苦手な方はご注意下さい。
セインセイズは忘れない。
いや、忘れる事が出来ない。
あの日を。
☆
その日、セインセイズが家へ帰って来ると、珍しく母親が先に帰って来ていた。
いつも淋しい食卓が、この日は少しだけうるさかった。
セインセイズにはその事がとても嬉しかった。
だからだろうか、セインセイズは気づけなかった。
あの侵入者に。
その日はすぐに眠りについた。
目が覚めたのは、母親の叫び声で。
何事かと思い、母親の元に行った。
そこで見たのは、見るも無惨な姿になった母親の姿だった。
床は血が水たまりのように広がっていて、長く細かった手足は切断されていて、手入れされていた髪は、ズタズタに切られ、美しかった顔は、原型が分からないほど切りつけられていた。
セインセイズは、人間本当に恐ろしい事を目の当たりにすると、何も出来ないという知りたくなかった事を知った。
母親は、そんな状態になっていながらも生きていた。
母親を無惨な姿にした犯人と思われる男は、母親の前で狂ったように嗤っていた。
いや、狂ったようにではなく、狂っているのだろう。
男はセインセイズには気づかず、母親に話しかけていた。
「あは、あははははははははははははは!!どうだい?自分の理解者だと思っていた男に殺される気持ちは?あの言葉、僕は本気だったのに。軽く受け流されて!分かるかい?僕の気持ちが!」
「 」
母親は声にならない言葉を発する。
「おい、答えろよ。それとも、裕福な高級娼婦サマはこんな平民とは無理だったのかなぁ?昔はあんなに純真無垢だったのに。人は変わるね、セレスティーヌ」
「」
母親はまたしても声にならない言葉を発する。
そして、男は母親を無惨に破壊し始める。
セインセイズは永遠のようにも、一瞬のようにも感じられた一方的な蹂躙を、ただ黙って、息を殺して、男に気づかれず、ただ、自分の母親が殺されるのを見ていた。
最期まで。何もせず。ただ。
気づけば男は居なくなり、残っていたのは、原型がわからないほどに完膚なきままに破壊された、母親と思われた肉の塊が在るだけだった。
セインセイズは泣いた。そして、後悔した。
なぜ、あの時動かなかったのかと。
こんな人でも、家族だったから。
セインセイズはある決意をする。
セインセイズは念動力で、母親の魂を動かす。
そして、自分の魂と癒着させた。
やり方は知らなかったが、初めて魂を視認した時から、直感で魂は癒着出来ると思っていた。
そして、癒着は終了した。
母親の後悔、未練、そういった物が流れ込んで来た。
癒着で手に入れたのは、さらなる知識、母親の後悔、未練だ。
セインセイズは母親の最期の感情を知った。
そして、喜悦の涙を流す。
セインセイズは母親の亡骸の前で、母親の魂に誓った。
あの男に復讐すると。
そのために、何を犠牲にしようとも。