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地獄に堕ちし者達  作者: 柴野まい
第3地獄
2/20

セインセイズの場合2

胸糞、残酷な展開あります。

苦手な方はご注意下さい。

 

 セインセイズは忘れない。

 いや、忘れる事が出来ない。


 あの日を。


 ☆


 その日、セインセイズが家へ帰って来ると、珍しく母親が先に帰って来ていた。

 いつも淋しい食卓が、この日は少しだけうるさかった。


 セインセイズにはその事がとても嬉しかった。

 だからだろうか、セインセイズは気づけなかった。


 あの侵入者に。


 その日はすぐに眠りについた。

 目が覚めたのは、母親の叫び声で。

 何事かと思い、母親の元に行った。


 そこで見たのは、見るも無惨な姿になった母親の姿だった。


 床は血が水たまりのように広がっていて、長く細かった手足は切断されていて、手入れされていた髪は、ズタズタに切られ、美しかった顔は、原型が分からないほど切りつけられていた。


 セインセイズは、人間本当に恐ろしい事を目の当たりにすると、何も出来ないという知りたくなかった事を知った。


 母親は、そんな状態になっていながらも生きていた。


 母親を無惨な姿にした犯人と思われる男は、母親の前で狂ったように嗤っていた。

 いや、狂ったようにではなく、狂っているのだろう。


 男はセインセイズには気づかず、母親に話しかけていた。


「あは、あははははははははははははは!!どうだい?自分の理解者だと思っていた男に殺される気持ちは?あの言葉、僕は本気だったのに。軽く受け流されて!分かるかい?僕の気持ちが!」

「 」

 

 母親は声にならない言葉を発する。


「おい、答えろよ。それとも、裕福な高級娼婦サマはこんな平民とは無理だったのかなぁ?昔はあんなに純真無垢だったのに。人は変わるね、セレスティーヌ」

「」


 母親はまたしても声にならない言葉を発する。

 そして、男は母親を無惨に破壊し始める。

 セインセイズは永遠のようにも、一瞬のようにも感じられた一方的な蹂躙を、ただ黙って、息を殺して、男に気づかれず、ただ、自分の母親が殺されるのを見ていた。


 最期まで。何もせず。ただ。


 気づけば男は居なくなり、残っていたのは、原型がわからないほどに完膚なきままに破壊された、母親と思われた肉の塊が在るだけだった。


 セインセイズは泣いた。そして、後悔した。

 なぜ、あの時動かなかったのかと。

 こんな人でも、家族だったから。



 セインセイズはある決意をする。



 セインセイズは念動力で、母親の()を動かす。


 そして、自分の魂と癒着させた。

 やり方は知らなかったが、初めて魂を視認した時から、直感で魂は癒着出来ると思っていた。


 そして、癒着は終了した。

 母親の後悔、未練、そういった物が流れ込んで来た。

 癒着で手に入れたのは、さらなる知識、母親の後悔、未練だ。


 セインセイズは母親の最期の感情を知った。

 そして、喜悦の涙を流す。


 セインセイズは母親の亡骸の前で、母親の魂に誓った。

 あの男に復讐すると。



 そのために、何を犠牲にしようとも。


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