73話 試練と義務 ー旧き厄災が遺せしモノー
シーアが、蝕に引き込まれたと同刻。
{んっ! }
「どうしました ドラン? 」
旅慣れた二人、天幕でニラウスとその相棒ドランは
聖骸遺構:エトルに潜る僅かの間、聞き込みをして得られた情報について
語り合っていた最中であったのだが
突然ドランがふと会話を中断したのである。
{いや、シーアって娘の気配が急に細くやりやがったな
このオレサマでも辿れねぇくれぇだぜ}
「 ...で、彼女は? 」
{あぁ心配ないぜ 微かだがあの紫髪のちびっ子妖精を通じてな
確実にパスはあるぜ}
「うむ、なら一安心だ 我輩は”魔族”に成り立てで
まだパスとやらの追跡等は お前任せでな
なにかあったのではとも思ったのだ すまないな」
{謝るこたぁねぇよ 先(定命の理)は無いに等しいからな
ゆっくり感覚を掴め}
ドランはいつもそうするように、ニラウスの頭の上に乗って首を自身の背中に乗せる
さながら、暖炉の前で暖を取る猫の様であった。
「うむ、 そうしよう
それはさておき、聞いた話だと外の白い ”灰” は超巨大な魔物の遺骸である”ユクントス”の
骨灰なんだってな 風化という現象で表面から剥がれて細かい灰になるんだと
劣化して崩れてもいいもんだが何故か幾星霜に渡りあの巨大な遺骸を維持しているようだ
住人たちの話だとァタウェーとやらが統治支配する以前から
幾星霜も前から骨灰が降っているらしい」
{ふっ 流石、相棒だぜ もう吟遊のネタ聞きつけたか? 耳聡いのは昔からかわらんな}
「我輩はな、こうした事象や由来を辿るのが好きなのだよ
なぜ、それがそこにそう在るのか? を見極めるのが我輩の生きがいでも在るのだよ」
{酔狂なこったな ”魔族” に成っても ”ヒト” の癖は抜けんか
生来の魔物のオレサマには理解出来ん感覚だな}
とドランは目を瞑ったままボソリと喋る。
{でよ 骨灰がどうしたって? }
「このユクントスも何れは、形が無くなるなんて事があるのかなと思うてさ」
{おっ 哲学者みてぇなことを言うなよ オレサマには何も足しになりゃしねぇがなぁ
無駄な事には頭ぁ使わない主義なんでな
それよりよ 干し肉くれよ ハラぁ減ったぜ}
と眼はニラウスの話に興味津々だが持って生れた何処か厭世的な性格が
そんなセリフを彼に吐かせる。
「しょうがないやつめ、 では我輩も少し齧るとするかね」
ニラウスは雑嚢から 取って置きの秘伝で製造えた
半生の乾燥肉を切り分け口に放り込む。
この干し肉は、高級品のアガテ山麓産のを更に琥珀酒や、薄めた葡萄酒、蜂蜜酒に漬け込み
柔らかく且つ、保存が利くようにしてある
漬け込んだ酒にも干し肉の香辛料が溶け込み、更に美味しく食べられるという寸法だ
これを山羊の胃袋を滑した皮袋に入れ常に持ち歩いている。
山羊の胃袋を滑した皮袋は液体を長期保存するシーアの世界では
極ありふれた物で広く浸透している
ニラウスはこのように干し肉の酒漬けを酒の種類毎に分けて
携行していた。
ニラウスもまた、とある遺構内で手に入れた多少は物資がはいる小鞄があり
携帯食糧もかなり贅沢に出来ていたのである
そして、それをヒョイと頭上に切り端を放ると器用に口で捕らえるドラン
{うめーぜ オレサマはこん時が一番だぜ
でよぉ 礼によ、さっきのオメェのエセ哲学に少しだけ付き合ってやる
どんな巨大な遺骸にしろ生きたモンにしろ”魂”や”血”が通ってても通って無くても
いずれ”完全”に土に還る 生物、無生物含めてなそれが理ってもんだ
オレサマはオレサマ達の同胞がそうなるのを数多く見送って来たからな
よーく解ってるつもりさぁ
この馬鹿でかい”ユクントス”も俺達がいるこの聖骸遺構:エトルだってそうさ
ヒトが創った物もヒトそのものもな、 ただなぁ ...永いか短けぇかどっちかってだけさ
俺らは遇々定命がうーんと永いってだけよ、今言えるのは
まぁユクントスにしろこのエトルにしろまだまだ土に還るにゃ当分先って事だけだ
...... 。
それはそうと魔聖ユトレイアってきれーなねーちゃんが居るってな}
「そうだったな あの娘もそれが目的であるかな? 」
{あぁ 十中八九そうだろうとも ァタウェーの手前の”難物”だぜ
どう説得するか見物だぜ}
「そうであるな、ユクントスの巫女でありギアトレスの統治者とも聞いている
彼女は別名 ”祈りの巫女” とも言われているが我輩にも全く見当がつかんな」
{あたりめぇだろうとも ”巫女” と言われているが、異性装の”野郎”だったら
ぞっとしねぇよ オレサマは}
「気にする事でもあるまい」
とニラウスがやや溜息混じりに言うと、
{オメェは客商売だかんな 異性装であろうが魔物相手だろうが
詩を売ってるんだ気にはならないだろうさ ...がオレサマは
口には出さねぇが男はいかつい格好、女はやんわい格好と相場が決まってラァ
どうも納得いかんね。
なにが好くって敢えて異性の格好するんだかオレサマにはさっぱり理解出来んよ。
それよりさ
薄めた酒もついでにくれよ
ちょいと長話しすぎてよ、喉乾いちまってなぁ
上手くブレス吐けんとイザという時困るかんな ...... 。 }
ドランはやや疲れ気味の顔で顎をくいっとしゃくり上げ、飲み物を相棒に要求した。
それでも彼は、よほど興に乗ったか薄めた葡萄酒が効いたのか更に
続けた。
{ ...... にしてもよ、シーアの気配の変化はちょいと気になるな
あれほどの娘っ子を ”異空間” に掻っ攫うなんてどんなタマだっての
...ってっ! これは黙っていろよなあくまで ”憶測” だからよ
此処の大規模討伐隊の頭目には黙ってろよ
騒ぎにはしたくねぇ}
と最後に爆弾発言を投下してドランは渡された皮袋の薄めた葡萄酒を
また、器用に呷った。
「うっ、ホントかよ! 我輩は気付きもしなかったな
危うく大声出すトコだったかもしれん おっお前の言うことに従うとするかね... 」
と狼狽しながらもニラウスはドランに同意した。
初心者魔物が判断に迷ったら
ふるつわもの(ベテラン)の魔物に従うのが一番いい
彼:ニラウスは魔族としてはまだまだ幼子同様である。
{そうしろ}
とただ一言。
とニラウスの懐に潜り込んで来たドランの寝息が聞こえて来た
発言した言葉の重大さとは裏腹に寝顔はいつも通りだった
尤もドラコ族は鱗に顔も覆われていて、表情はいつも窺い知る事は出来なかったが
長年の相棒であるニラウスには僅かな鱗の動きや柔らかい皮膚が剥き出しの
眼の周りの動きで完全に理解
出来ていて、それを鑑みるに彼:ドランにとってあまり重大事ではない
ということが窺い知る事が出来る。
ニラウスは頃合いを計り灯を小さくしてそのまま横になる
そこには一人用の天幕で休む旅慣れたいつもの”二人”の寝姿があった。
......
{ァタウェー様、どうなされましたか? }
こう呼びかけたのは、女性型の魔物:アラクネである
今まで、玉座に肩肘を頬に付きじっと黙想していた
有翼魔人がピクリと眉根を動かしたのだ。
彼が表情を動かすのは、滅多に無く
余程の好敵手が現れた時ぐらいしかないのである
ここ幾星霜も武勲を上げようと挑んでくる”愚かな”冒険者も無く
黙想と女型の魔物と享楽を貪るだけを繰り返す無為な日々と繰り返す季節。
それに此処、アプレントは元は神族と下界を旋つ交流の場で
ほぼ下界と季節の巡りと一致していた
彼が、魔嵐を起こさない限りにおいては。
{あぁ、たった今 かの者がエトルに入りおったわ
他の冒険者共もな 果たして彼処を攻略出来るか
愉しみだわ
ガハハァー 良い余興が出来た 此処に”魔眼:ゼロシア”を持て! }
{はっ 直ちに}
とアラクネは一旦その場を退き、ややあって戻って来ると
シーアの手の平で丁度持てる位の珠を恭しく
ァタウェーに差し出す。
彼は巨体を少し揺すり親指と人差し指の尖った爪で器用に
それを挟むと 呪言を唱えた。
{(( 遠き千里の礫、いと近き袂に 我れこれを欲す
千里の眼よ! いま此処に在れ ))}
不思議な事に爬虫類の眼のような縦長の瞳孔より光が漏れ出て
球体の空間が浮かびその中にシーア達 大規模討伐隊の今の様子が
投影された
”魔眼:ゼロシア”はかつてシーアがサラより奪った”冥眼:イルゼリア”と対なす
邪眼であり
効能は、自分の傀儡さえ近くにいればどんなに
遠くをも見通し球体の空間に投影することであり、
シーアの近くにァタウェーの息のかかった者が居るという証左でもある。
{ほぅ? あの娘っ子 どこへ消えおったぁ 我れに...も見えなんだ}
......
やや沈黙の後、
{ハハッ そうかそうか ”戦術魔導殻:ライブ・ソラスの少女共” の為業かぁ
ますます持って面白い よもやあやつらまで出張って来よったとはな
それ相応の”歓迎”をしてやらねばな
配下の者共に伝えよ 我れ以外に彼の者には指一本触れてはならぬとな
後の冒険者は好きにしていいが 絶対に彼の者には疵一つ負わせては
ならんッ これを破った者は我れの肉体の一部となり糧に成って貰う}
この一言で辺りの魔物達は皆一斉に頷いた
この時、ァタウェーの胸にあるもう一つの獣の貌の口が薄く開き
犬科の舌ようなものが隙間から覗かせていた。
{そうか そうかそんなに我れの一部になるのが嫌かぁ?
そうだろうともなぁ お前らだって自我が有るもんなぁ ガハハァーッ }
有翼魔人は下卑た嗤い共に派手に胸の貌から涎を撒き散らす
その涎は床を派手に溶かし抉るも、直ぐ元通りになる
この床も神族の智慧の賜であり秘儀で生成された鉱物から出来ていた。
アラクネは美しい女に姿を変え、ァタウェーに寄り添い
{ ねぇ しばらくは退屈しないで済みそうよ そうよねフフ}
{そうだな、レニス 我様の”下”の脚の手入れをしてくれんか
享楽と悦楽と殺戮 どちらも善いものだが今は悦楽を我れに与えてくれぬか}
とその美しい女体を引き寄せ自分の上へ重ねて座らせる
何時の世、どの世界であっても男女の睦言は常に女性側
に主導権があるのである たとえ、強大な能力を持つ有翼魔人で
あっても。
彼女はその瞬間淡い嬌声を上げ眼を細める
そしてさらにレニスはその手の一方を彼の下半身に向かって這わせていった。
{あんな小娘より ワタシの方がオトナなの だから ...... ッ }
彼女が急に言い澱んだのも無理はない
有翼魔人がその鋭い眼光で彼女を居竦めさせたのである
{うぅん ごめんなさいね 後は何も言わない それで良いでしょ? }
レニスは整った顔を泣きじゃくった子供の様に歪ませた。
{あーぁ よーく解っているじゃないか、例えお前でも、かの者にちょっかいは一切無用だぞ
いいな? それにしても良く離れなかったな いい子だ}
と野太い声が更にレニスに降り掛かる。
{ふふ 生れい出て季節の巡り数千も女一筋やってきていますとも、
そこら辺の女共と一緒にしないで頂戴}
とレニスは、大のオトコ好きであること女としても格上であることを
周囲の幼い風貌のサキュバス達に当てつけた。
それでも、腰は浮かさなかった
レニスの女性としての矜持でもあり、辺りにいる女性型魔物の頂点に
君臨する種族としての矜持であった。
{はい わが君の御意のままにワタシを召し上がって♡
シッシッ あっちへ行きなさいな乳臭い小娘共めッ }
本当はかの小娘に当て付けて言いたかった彼女だが今は
オトコを”愉しんで”いる最中であり
機嫌をそこねて、快楽を味わえなくのも嫌なのである珍しく自重し
周りの幼く乳臭いサキュバス達に半ば八つ当たりで唾を吐いた。
今こうして有翼魔人に身を任せている
サラリとしたストレートの黒髪の美女は
下界の養殖されたアラクネでもなく、野良にいる多少はマシなアラクネでもない
”本物”のアラクネそれが”レニス”である。
本来の彼女の姿は上半身は女性で、下半身は巨大な蜘蛛の魔物である
大のオトコ好きでこうしてヒトの女の姿になっては、男性から精を絞れるだけ絞り
あとはその得物を糸で搦めて更に血液もろとも吸い尽くすオトコ喰いの筆頭で
溜め込んだ男の精を使い次々を同族のアラクネを増やしていき
ここアプレントでも一大勢力を誇っていた。
生れた仔は不思議な事に全て女性型のアラクネであり男性型のアラクネは
今まで生れたことはない、なんとも不思議な生態の魔物だった。
不思議な生態といえばもう一大勢力を誇るサキュバス族もそうである
彼女達は、オトコと仔を成すと必ず女児が生まれる ...がかなり低い確率で
”オトコ”のサキュバスも生まれる、 但し例外なく
完全な男性の躰では無く徴を除き見た目も顔付きも少女としての生を授かる
施術や再誕の儀無しでこのような特異な躰に生まれるのはサキュバスから
生れた”男性”だけだった。
当然彼らは同族であるサキュバス達からは差別や侮蔑の対象になり
多くは内棄てられて、魔族でもあるにも拘わらず短い定命を迎えてしまう
しかしそんな境遇でも可愛らしい見た目を利用し、
”少女”や”妙齢の女性”として、深く社会に溶け込み、蔑まれて荒んだ性格を内包しつつ
社会の暗部に堕ちていった者達もいた。
ベルゼは嘗て、魔女戦争以前はタフタル大陸と一体だったが
そんな彼らが集まり、相互扶助会:原理と神智の会を結成し今代に至るが
これらの顛末のお話はまた後の物語である。
アプレントではこうした、二大婬魔族が”女”の矜持を賭けて密かに
火花を散らしていた。
...... と物欲しそうな顔をしたサキュバス達を追い払い
更に妖艶で淫靡な動きをする。
{ハハハァ これでは、どちらが ”喰って” いるか分からんな 良きかな良きかな}
と終始有翼魔人はご機嫌だった。
その様子を見ていた辺りのヒト型の魔物も
釣られるように各々男女の卑俗な行ないを始め
とても嘗ての聖域または神の座:アプレントとは思えない狂乱の場と化していた
たんまりとオトコを味わうレニスだが
その胸中は今の悦楽とは別の思いも去来する
{ フフフ この有翼魔人は完全に御君の
手の上ですわね この尽きる事のない”精”だけが取り得の絶倫オトコが
唯一無二の使い途なんですもの 蓄えた”精”はいずれ御君の
復活の礎に成りましょう
今は叶わないませぬが何れ(結界)アプレントを破る事も出来ましょう
さすれば御君に、永劫の享楽を与えて差し上げますわ
しばしおまちくださいませね ワタシの愛しのベル様ぁ〜ん♡ }
と心で甘い声を出して御君に懸想を抱きつつ
躰は目の前の逞しい徴を執拗に求める
オトコに身と快楽を任せ内心では真の主にさらに懸想を募らせる
レニスはそういう女であり
ここアプレントで最も打算的で、狡猾で利己的な女魔族だった。
......
ァタウェーが享楽と悦楽を貪って居た頃、
わたし、シーアは何やら気配のする空間を恐る恐る彷徨っていた。
皆がいる場所には違いないが周りの天幕や寝袋で雑魚寝している
冒険者達が陽炎のように揺らいでいて思わず近くの見ず知らずの
男性を踏んでしまうが、不思議な事に接触した間隔が無い
まるで”幻”か蜃気楼のようなのである
「えっ えっ!? どういうこと? 」
思わず大声を上げるが誰一人わたしの声に気付いた者はなく
皆そのままだった。
{ ふふ 驚いたでしょ? ここはオネーサマの世界とは表裏一体の
鏡面世界、構造物以外は今は虚像よ}
と姿を見せない少女の声
次第に感覚が慣れて来たのかわたしは数体の、巨大な気当たりを感じて来ていた
{流石、おねーさま 早くも私達の気配を掴んだようね}
とやや揶揄うような親しみを込めたような、そんな声音の声が降り掛かる。
{ふふ 一番乗りは”クー”ちゃんか いつも手癖がはやいものね 貴女}
{ナーォーーンン}
と猫の甘える声
先程、頬を舐め上げた主に違いなかった。
{今はね皆、まだ警戒してるの でもホントはクーちゃんもキュルリちゃんもニーナちゃんもね
貴女に可愛がって貰いたくてウズウズしてるわ あとレフィーアちゃんも居たわね}
と姿無き声の持ち主はわたしに話しかける
「姿を見せてっ 敵意が無いということは分かったけど
わたしは貴女が見えないの、見えない相手に返事を返すつもりは無いわ」
世の中にはこうして甘言を囁きあわよくば躰を乗っ取る魔物も居る。
研究に明け暮れる錬金術師さえでもこの世界に棲まう者としての
心得はあった
{ふ〜ん よーじん深いんだぁ あぁんますます素敵
我ら”生きている戦術魔導殻:ライブ・ソラス”の長になる御方は
こーでなくちゃね
誰も彼も、のべつ幕無しに気を赦すようじゃ いっけないもんねー}
とまた揶揄うような声
{でも今すぐに姿を見せるわけには いかないもん キリルはねー
とーっても我儘なんだから だからごめんねー}
と本当に申し訳無さそうな情けない声音がまた降り掛かる
「何故、わたしを此処に? 」
{ここ”蝕”に引き込んだのは、早くァタウェーをねー やっつけてもらいたいの
でないと ギアトレスから出られないの}
と自分の事をキリルと名乗った声の主はわたしを”蝕”に引き込んだ理由を
語った。
「ではどうすればいいの? 私達も先へ進めなくて困っているの」
とエトルに来た経緯をいうと
{あぁ なんだそんな事かぁ 他の”生き物”共はどーでもいいけど
貴女と”贄の蛇”様が困って居るなら とーぜん、このキリルがなんとかしなくちゃね
貴女に恨まれでもしたら此処にいる娘たち皆悲しむもん それはぜーったいにイヤッ}
となにやら不穏な発言が含まれていたが
どうやら話はわたしを助けたいということらしい
目下の難問は例の光だった、石畳の床のその石の隙間から無作為に
漏れ出る光の壁に阻まれる
石ころを粉砕し、人体を防具ごと剪断する光の壁
それがわたしの他大規模討伐隊の冒険者を
足止めしていたのである。
渡りに船なのか予め彼女が、状況を見越して居たのかは不明だが
それの解決策が在るならば、ここは彼女の話に乗る事が
わたしに今出来る最善策に思われた。
「えぇ あの光をどうにかしてくれたら、貴女方を仲間にしていいわ」
と暗闇に向かって言うと
{単なる”仲間”じゃイヤ 私達を貴女だけの武器にして!
ほかの皆も貴女の”愛玩動物”に成りたいっていってるわ ねー? }
キリル? がいうと
色々な鳴き声が一斉に聞こえて来たがどれも剣呑な空気では無く
どちらかといえば賛同する雰囲気が濃厚だった。
今は頼れるクローティアも居ない
判断は全てわたしの一任に託されいて、これが原因の
厄介も全て背負うことになる
わたしにはある強い ”覚悟” が求められていた。
... 。
短い逡巡の後、
「えぇ 良いわ貴女達の”全て”を受け止めてあげる
だから お願い能力を貸して」
というが早いか
一人の少女が急に暗闇から現れ抱きついて来た
「あぁ キリル達のおねーさま この時をどれほど待っていた事か
貴女様の様なお人の武器に成りたくて成りたくて、幾々星霜も焦れておりました」
というが早いか直ぐ唇を奪われる。
んんっ んーぁ
長い接吻の後
「お初です おねーさま わたくし、生きている戦術魔導殻:ライブ・ソラス”の
筆頭:キリルア・メザレイラでございます」
「同じく戦術魔導殻:ライブ・ソラス”のソルリア・メザレイラでございます」
と二人の少女が傅いた。
「「我らは、少女型生体戦術魔導殻 は創造主:蒼き深き者により
自我を与えれし”生きた武器”で御座います
おねーさまの武器となり 仇なす者全てに我らの能力を持ってそれらを
排除致します故、どうか我らをご寵愛下さいませ」」
と畏まった物言いでわたしのパンプスに二度接吻をする。
この時わたしはまだ彼女等がわたし達の倫理観とは遠くかけ離れた
”存在”だとはまだ知らないのは当然として
この二人と更に
クーちゃんこと”クレプスクルム”
キュルリこと キュルリーティア
ニーナこと”メルニーティア”
レフィーアことレフィテア
が過去に何度も”名無し厄災”を招き神族から逃れるように
ギアトレスに独自の異空間:蝕を構築していて身を潜めていた
そのような存在と盟約を結んでいようとはまだ知らなかった。
挨拶は済ませたが肝心の少女の姿の大半は、黒く濃い霧に覆われ
可愛い唇と辛うじて緩やかに波打ち、右側に一部を結わえた髪型しか視認出来なかった
「今は、貴女様でもキリル達の一部しか視えないはず、しかしながら
このような不本意な醜態を晒すのも全てはあの有翼魔人のせいで
多くの軛が課せられております故、どうかご容赦を」
と再度傅きそうになるも
「待って 傅くのはよして わたしはそんな大層な存在ではないわ」
とやや語気強めに言うと
「いーえ、貴女はまだご自身の凄さを自覚なさっていないだけ
我らのような強大な人外の能力を持つモノにとって
とれだけ魅力ある いえ、礎になる存在なのか解ってらっしゃらないだけ
影の少女達、そして我ら少女型生体戦術魔導殻は
おねーさまの影、 さらには場の空間でさえも安寧な棲みかと成りうるのでございます
そんな存在であるという事をお忘れ無きよう」
と畏まった物言いで堂々と言い放った。
わたしの影や周りの空間でさえ彼女らにしてみれば、
禁断の聖地または、安寧をもたらす空間という事かと無理やり納得付けた
なぜわたしにそんな気当たり(オーラ)があるのか、こうも遥かに格上と思われる
存在を惹きつけ止まないのか、思い当たる所は無かった
しかしシーア(シアズ)の両親の血脈を辿れば、その意味が理解出来るであろう
なぜなら彼の母親はあの謎多き種族または
原初の種族、高名な学者の弁によれば外宇宙の種族とも言われる”蒼き深き者”の末裔だったのである
冒険者だった彼の父親がある遺構奥深く、黒水晶の棺で眠る
リーナを見初め種族の違いを乗り越え夫婦の契りを交わし
一子を設ける それが大錬金術師:シアズだった。
ちなみに彼の父親の名はルース・母親の名はリーナという
この両親とシーアはまた別の形で邂逅する事になるがこれも後のお話
強大な能力を持つ人外の少女達が、狂おしい程にシーアに懐いて来るのは
こうした母親由来の血脈を肉体は変わってもその”魂”に深く刻み込んでいるからであった。
こんな事を知る由ないシーアは、影の少女/ライブ・キリル/ライブ・アーティファクトから
”意味なく”慕われ懐かれ今は只々唖然としていた。
「今は困って居ることが在るのでしょう?
その他の有象無象共々、あの古代の仕掛けよりおねーさまを開放して差し上げます
どうぞ我らについて来て下さいまし」
とソルリアとなのった少女は霧に包まれたまま可愛い唇だけを動かし
光の壁へと歩んでいく
「あっ まだ名乗っていなかったわ」
とわたしが口を挟むと
「ふふ 名乗らなくても貴女様は、シーア様あり冥闇の獣:クレアーティア様
その魂がそう名乗っていらっしゃいますから 言葉なんて無粋なモノはいらないわ
でも他の有象無象だったら、そうはいかないでしょうねぇ
なにせ他の”生き物”は言葉という野暮ったい手段でしか名乗れないんですもの
魂が”直接”名乗る事ができるのは貴女と”蒼き深き者””贄の蛇””身喰らいの蛇”ぐらいね
後は出来るのもいるだろうけどソルリアが知ったことではないわ
それはさておき
古代の罠はこの蝕では児戯同然なんの意味も持たないもん
ささ、ついて来てくださいな」
とソルリアと名乗った少女は自分称に自身の名を混ぜて子供っぽく言葉
を弾ませた。
ここで彼女らが言う”身喰らいの蛇”とは彼女らの表現で今代での
”円環の蛇”のことだと後にクローティアが説明してくれた
と今も尚盛んに稼働してる光の壁をすり抜けスタスタ歩いていく
わたしも えいままよ とばかり後をついていく。
するとなんの抵抗なくすり抜けたではないか
石ころでさえ粉々に粉砕する程の能力があったというのに
まるで蜃気楼か陽炎の如く揺らりと揺らめいただけ
躰には疵一つ負ってはいなかった。
「ここは鏡像空間今は実像空間(シーア達がいた空間)が虚像空間
構造物以外は全て蜃気楼のようなもの
此処に在って無い存在、おねーさまが向うに還ると空間は逆転し
この空間が蜃気楼になるの 難しい話はここまでね 疲れちゃった」
と光の壁をすりぬけ今は蜃気楼の如く存在が曖昧になった
冒険者や天幕をすり抜けて仕掛けの終端と思しき所まで歩み出る。
この仕掛け? は入り組んでいて実像空間で上手くすり抜け
掻い潜られたとしても
発光間隔が無作為なのと迷路のごとく、入り組んだ状態では右往左往している内に
直ぐ様光の壁の餌食になっていただろう。
「さ ニーナあとはお願いね」
というと
「はーい ソルリアねーぇ、キリルねーぇ それにシーアねーぇ」
と二人の少女同様霧に包まれた小柄な少女が唐突に現れ
青白く淡く燐光を放つ髪に留まっていた
夜光蜷数匹が仕掛を解除すると思われる、穴五ヶ所に入っていく
すると今まで光の壁が無作為に立ちはだかっていたのが、一斉に光ったと同時に
徐々に収束しそして完全に沈黙した
「御苦労様 ニーナの可愛い蜷たち」
と少女が言うと穴から夜光蜷が這い出できてまた少女腕を伝わりの髪に留まった
「それじゃいくね シーアねーぇ はやく貴女に甘えたいの
だからね、悪者はやくやっつけてね」
と軽く頬に接吻されると闇に溶け込んだ
「へぇ 珍しいわぁ あの娘が自らすすんで接吻だなんで
余程おねーさまが気に入ったのねぇ うふふ」
と何やら含んだ物言いではあったが 今は皆の所に戻り
先に進んでエトルを攻略しなくてはならない
「これで 此処の障害は排除されたわ
あとは厄介な仕掛けは無くてよ これでここ(エトル)はあの有象無象共でも攻略出来るでしょ
ほんとはおねーさまが居なかったら 鏖ごっこ出来たのに
ちょっとつまんないわ ねぇキリル? 」
「んっ そうね でも今回はおねーさまがいるから特別
鏖ごっこはまたの機会のオタノシミにしておくわ」
とキリルと呼ばれた方はおとなしめながら物騒な物言いを当たり前のように言う
「ごめんなさい おねーさまこの蝕に無理やり引き込んだのも
わたしキリルなの 実像世界に還ったらぜーったい アイツやっつけて」
と懇願される
「貴女達は? 」
「ふふ いつもおねーさまの周りの虚像空間に居るわ
おねーさまにはうっすらと蜃気楼の様に視えるでしょうね
それと安心して私達が実像空間に出ない限り
有象無象には手出しは出来無いし、殺れることもほぼないわ
実像空間に出るのはおねーさまがアイツをやっつけて
正式な眷族の盟約を結んだ後、そうすれば
おねーさまの御心一つで実像空間に出て来れるし
おねーさまも蝕に何時でも入る事が出来る様になるわ
その時はこの空間はもとより”闇溜り”も此処に棲んでいる
他の娘達も全て貴女様のモノになるの どぉ悪いハナシではなくて? 」
と片利共生とも共利共生とも取れる発言をする
「えぇ わたしも目的は一緒だから」
と言うと
「ねっ? ねっ? いまの聞いた? ぜーったいそれ肯定って捉えていいよね いーよね」
とソルリアははしゃいだ。
「絶対、それ約束」
とキリル。
どうやら上手い具合に彼女らにしてやられたらしい
思わぬ形で仮の盟約と相成った。
人外の間では例え仮であっても、普通の盟約や契約と変わりない
ただ単に相手を見極める猶予があるだけなのである
「シーアおねーさま それではちょっとの間お別れね」
とキリルはシーアを引き込んだ時同様、空間に裂け目を作り
再度接吻を頬にしたあとわたしは元の自分の天幕の中に戻ってきていた
『おわっ!? 』
素頓狂な声を上げるクローティア
『 吃驚させるでない いきなり消えたかと思ったらいきなり現れおって』
とややふくれ顔だったが眼は笑っていた
そして事の顛末のあらましを報告すると
『試練と義務 ...か お主はそれを背負う覚悟であやつらと盟約を結んだのだな』
という言葉から始まった彼女の弁によれば
わたしが邂逅した少女達は
嘗て幾度も”名無しの厄災”をこの世界にもたらしたいう
わたし達の倫理観から遠く外れた独自の価値観を持っていて
多くの都市を喰い潰して来て後世に伝える者すら殆ど居ないというより
”出来なかった”
そんな能力を当たり前のように備えているという
クローティアによればライブ・アーティファクト等はまだまだ可愛いほうだとも言う
それら厄災が非道い光景で後世にすらその詳細が伝わることが出来ず
ただ ”名無しの厄災” とだけ伝わっているそうだ
高名な魔導考古学者でやっとその名称が知れてるくらいで
大方のヒトはそれすら知らない事だという。
そんな少女達がわたしを慕い懐いてきたのだ
改めて、実感共に身震いが来る。
『それでもお主なら大丈夫じゃろ』
と呑気でどこまで本気なのか、今のその表情からは窺い知る事は出来なかった。
『これ以上の詳細は儂より”円環の蛇”が知っておるが
三神協定により詳しくは聞けんじゃろなぁ』
クローティアの正体を知った時”三神協定”についても
わたしは聞き及んでいた
世界の理に関係する事は
例えわたしであっても他言無用と固く取り決めたらしい
ただわたしがその”秘密”を自身で解き明かす事については
制約がないという。
得ずして知ってしまっても(クローティアが)肯定も否定もしなければ”三神協定”を
破ったことにはならないという
でも今はそんな”世界の秘密”には
あまり関心が無かった
今は今で目先の事が重大であった
有翼魔人を討滅し、ウニサーレ夫妻の依頼を果たすという大事が。
「とうとう、かの者が邂逅しましたか こうなることは解っていましたよ
シーア さてどうやってあの少女達を御して見せるのか
楽しみになってきました
それにちょっとだけ貴女に恩恵を与えてやらねば成りません
これは母上との約束ですからね」
神界ユクラシアで微笑み顎を捻るハグスールは
従者に
「下界の”官吏”共に通達しなさい シーアとその眷族全てが
ちょっと”お痛”をしても眼を瞑りなさいってね
特にあのケット族の娘はこれから何かやらかしそうですからねぇ
ケット族の娘がやらかす度に”官吏”の世話になっては
”銀の風”の役割を十分に果たせなくなりますから、それでは困るのでね
それとシーア本人には絶対知らせないように
これだけは厳守しなさい
そうしないと本人の為になりませんからね」
特定の人物に対して制約を緩めた事が知れ渡るのはもちろんの事
本人が助長し際限が無くなり
理まで乱すとなると恩恵を与えた女神自身の
威厳すら危うくなる
本人にそれ(ギフト)を告げないのは至極当たり前だった
「はっ 直ちに”全ての官吏”に通達致します」
「たのんだよ それと通達漏れも無いようにね
もし漏れがあってシーアほか眷族が”些細”なことで連行する者が”絶対”に出ないように
もし万が一があれば”聖牢”送りだけでは済みませんから フフ」
とそれを言われて従者は 顔がサーと白くなる。
「なにまだ罰は下してませんよ さぁお行きなさい」
とその従者は慌てて下界へ向かった。
「母上も、思いっ切った事するぜ なぁハグスールよ」
と気配なく、足音無く近寄ったアグスト。
「いささか、贔屓すぎる点はありますがあれほどの
少女を抱えるのですから多少はね
我々の役目を半ばシーアに押し付ける形になってしまいましたしね
後々(のちのち)の能力ある少女達もどうせシーアに懐くことでしょうから
官吏の判断を”多少”甘くするくらいの恩恵は、
彼女にとって妥当な代価でしょう」
とドヤ顔でいう
彼に取ってドヤ顔は非常に珍しい事だった。
「へぇ 御前さんも考えが甘くなったな以前はもっと
堅物で母上にも逆らった口なのにな 母上の文一つだけで文句も言わずに素直に従うなんてな」
「”アグ兄さん”」
とハグスールがまだ人々の信仰が足らず幼かったころのアグストに対する呼び名で
つい叫んでしまい いつも、冷静なハグスールとはまた違った一面を見せる
「 ”アグ兄さん” はよせ オレも照れるじゃねぇかそれに
クロノーラがいたら笑われんぞ それ ガハハハァ」
と相変わらず豪快に楽しげに笑う。
そして、程なく世界中の全官吏に通達は伝えられ
シーアが知らぬところで彼女に対する恩恵が履行されたのである。
「おぃ 皆起きろ 大変な事に成ってんぞ天幕から出てみろ」
とケインズ
「うぉっ」
「なんじゃこりゃー? 」
「すげー どーなってんの? 」
と男女とも一様に驚きの声を上げる
今まで、行く手を阻んでいた光の壁が跡形もなく消えていて
石の隙間からは周りの壁同様うっすらと燐光が洩れるのみ
おっかな吃驚誰かが石を投げても粉砕もしないそれでも
冒険者らしく慎重に指先を触れても普通の空間だった。
「しばらく様子見ようや 今一時なのかも知れん」
あと振り子は止めていいぜ どうせもういらんだろ」
とケインズはてきぱきと指示を投げる。
「さーてこれをどう見るかだが イマイチ確証が掴めんしどうしたものかね」
とさしものケインズも判断に迷って居るようだ。
皆、石を投げたりがらくたを投げたりしているが誰一生身で試そうとする
酔狂な者もいない
当然である、生身が横切った途端光の壁が現れる可能性も在るからだ
誰だって自分の命は惜しい。
「わたしがいくわ わたしが行って確かめるそれでいいかしら? 」
「おっ シーアか御前さん何か確証があるのか? 」
「今は言えないけど 絶対大丈夫 ......だと思う」
とやや尻窄みながら今はあの娘達の事を信用するしかない
わたしとクローティア以外光の壁が拒んだら
全て責任はわたしにかかってくる 場合によっては
禍根を残す事態にも成りかねない
さすがに逡巡していると
キルリが陽炎の状態で
{ふふ 安心して おねーさま以外の有象無象共もちゃんと通れるし
ちゃんとニーナが仕掛けを根本から潰してくれたわ}
あの仕掛けは本来は 向うからでしか解除出来ず暫くするとまた元に
戻るらしい あの夜光蜷を操った少女が根本から潰したということらしい
「大丈夫よ わたしが先頭 オートマトのビヨンがつぎその後は
ミーアねーさまそれでいいでしょ」
これで”二種族”全て通過出来れば問題ないでしょ? 」
「うーむ 尤もだが言い出しっぺは御前さんだ
宜しく頼むぞ」
とケインズ
そして難無く わたし、ビヨン、ミーアの順に石畳の隙間を跨ぐ
三人共無事通過したのを見て取って
「どうやら心配はなさそうだな あとは俺様に任せな」
とケインズ
当然ケインズも難なく跨いできて変化は無かった
これで皆もようやく動き出す
「やはり相当入り組んでいるが此処には魔物は居ねぇようだ
やはりあの光の壁が魔物も拒んでいたんだろう」
と一人状況を解説しながら進んでいくが
誰もが真剣に聞き入っていた
ケインズは酔狂等で独り言は言う性格ではない
こうした分析や推論を含んだ独り言を聞き逃さない
こういう場ではこうして皆が自然と会話から情報を共有するのである
注意を怠り、言葉を聞き逃した者が一番はやく命を落とす
皆が皆真剣だった。
虚像空間と同じ迷路を進んで行く
そして終点にはニーナ? が潰した仕掛け解除の
穴が空いていて夜光蜷の粘液で薄く濡れていた。
一難去りまた一難
「こんどは飛行型の魔物か まったくやれやれだぜ
さて こっからが本番だぜ先ずあの半ばまで目指す いいな」
「「応っ」」
と皆が指差したその先には
円形の吹き抜けに
巨大な円柱が建っておりその周りを螺旋の回廊がある時折崩れた場所あり円柱の
内部に入らければならない場所ありこれも難物だった。
良く眼を凝らすと円柱の最終端から更に上部の構造に繋る通路が見て取れる
そしてその通路はユクントスの巨大な連なる椎骨に繋がっていた
その連なる椎骨の空洞部:聖廊に棲まう住人こそ貴人と呼ばれ
ユクントスの階層社会の頂点に君臨する支配層である
円柱の所々にはお誂え向きに広い場所がある
十中八九そこには守護獣が待ち構えて居るだろう
既にわたしたちの気配で唸り声咆哮などが気当たり(オーラ)の様に降り注いでいた。
先にケインズが半ばまでといったのは先ず守護獣を始末して
安全な場所と広い場所を確保するということである
此処も明るいが足元はジメジメして分厚い苔が潜む蛭型魔物を巧みに隠していた
幸い守護獣は場所に縛られる魔物であり進んで縄張りからは出ない
そして”何か”を守っている
宝物とは限らず更に上位の魔物を守っている場合もあり油断は出来無い
だから守護獣と呼ばれるのである
彼ら全般に言えることだが
一旦、攻撃を仕掛けて敵対とみなされ戦闘が開始されるとこの限りではない
しつこく何処迄も追いかけてくるのだ
そして他の守護獣の縄張りに入りまた戦闘が重なり
一行は壊滅するのである。
だから一匹一匹確実に息の根を止めなければならない
ケインズは当然これを知っている
だからこそ この発言に異を唱える者はこの場には居ない
そしてそれを理解した上で、皆、鬨の声を上げたのである。
守護獣も牽制する様に唸る・吠えるを繰り返す
少なくとも三体の守護獣を掻い潜らねばならないようだ
それに加え厄介なのは取り巻きのザコである
特に中層辺りに、飛行型の肉食魚、礫のような昆虫、血の匂いに敏感な猛禽型の魔物
はては蝙蝠型のまで散見される
これらは外界の魔物とは似て非なる物であるということも忘れてはならない
つまり定石が通じるかも分からない
そんな”難物”を相手にわたしを含む大規模討伐隊一行は
今、正にその魔窟へと挑まんとしていた。
次回 74話 課せれた責務 ー禁忌の詠唱と囁きそして・・・ ー
お楽しみに
大変お待たせしました
キャラクタ挿し絵は後ほど本文に入れる予定です
作中の後のお話は今後のストーリーで語られますのでお楽しみに
語句修正やニュアンス調整があるかも知れませんがストーリー変更は有りません




