70話 ァタウェー ー儚き邪法の足掻きー
サリは、移動の最中シーアの事を懸想し
激しい劣情を催し徴が九割ほど露出していた。
彼は初めて”巨大長蟲”の討伐以来男性として、激しく懸想していた
いくら下衆や下劣であっても神族より虐げられてこのように性格が偏向したのであり
一部例外があるが、生来の性格では無い。
そして、生き抜く知恵として異性装を選んだ
尤もこれは、彼らの少女願望もあったのだが。
かくして、彼ら服わぬ種族には相手の潜在能力を推し量る能力が後天的に身に付いた
冥魔というあまり見掛けない種族ということもあり警戒はしていたが
かの魔物を討伐の際ケルベロスを彼女が召喚した際、自分との彼我の差を
実感してしまったのである。
こうした彼我の差が有りすぎる相手には途端に保身の本能が働く
これも彼ら服わぬ種族の生き抜く知恵の一つであった。
その分、自分達より弱い者には暴虐の限りを尽くす
これもサリら服わぬ種族の、歪められた性格の一つといえよう。
それに、シーアに関しては種族的な恨みも因縁もない
何せ、降って湧いたかのように現れた様な種族だったのだ。
アレだけ容姿が綺麗であれば、既に噂に成っていて因縁や遺恨の一つも有っても
おかしくはない筈なのに
どの種族とも、因縁も無ければ遺恨もないらしい
サリとしてニース一行にいる時にも
今まで噂一つ流れて来なかったのである。
彼が今どうにかして、こちら側(闇の勢力)に引き込めないか
と模索している最中に ”男性” として激しく劣情を催して
しまったのである。
強大な脅威は敵対するより引き込んだ方が都合が良いのは自明であった
大錬金術師シアズの事故? から産まれたシーアという少女は、
闇にどっぷり浸かっている彼らにでさえ特別な存在に映っていた。
幸い、上はワンピース型のローブを着ていて”オンナノコ”のように座ってもいる
目立つはずもなく、思いっきり彼は ”羽”を伸ばしていた
彼がこの躰になって一番最初にしたのは、どれだけ徴が露出したとき躰に
変化が起きるか? そのことだった。
元から強い少女願望もあり願ったり叶ったりの躰になったのである
ふつうなら施術に大樽5000ものカネが要りそうなのを只で手に入れたのだから。
その結果、九割なら露出させてもサリからサリューシアには変化しないことが
分かったのである。
因みに今着ている特製のワンピースローブは
数百ある内のお気に入りの内の一点ではあるが、
すべて最高級の糸を使いすべて、一流の裁縫師:ソアラの手による
注文仕立て(オーダーメイド)による一級品で、
聖別も彼自身の超一流の祈祷と言祝ぎによるもので、最高の祝福が施されていた。
この世界の祈祷・言祝ぎは実に実利的で内心に邪心があろうが
祈祷術としての完成度が高ければ高いほど祝福の度合いが高まる。
極端な例だと どんな外道でも祈祷術の完成度が高ければ祝福の加護が増す
彼のように。
彼も神官見習い:サリとしての言祝ぎ術や祈祷術・福音術もまた超一流だった。
しかしサリ(サリューシア)には一つ制約がありサリの姿でなければ
祈祷術や福音や言祝ぎが行えないとうことである
これは瑣末な事であり彼自身問題にはしてなかった。
可愛いローブの意匠も可愛く仕立て上げる度
教会の懺悔室で、
「私、サリは罪深いことをしてしまいました」
「何でしょう、申してみなさい」
と修道女に言われ、
「質素倹約を旨とする者が ”誘惑に負けて” 可愛いローブを”買って”しまいました
女神様は、私・サリのたった一つの愉しみであるおしゃれをもお赦しになられないのでしょうか? 」
と告白し、”神官”としておかしくないか”確認”をしていた。
「いいえ、美しく彩りを添えた貴女が、衆目を浴びるのも
また神官としての役割です、卑俗でなければ女神様とて同じ女性ですよ
多少は、お赦しになられるでしょう
このわたくしでも、お洒落は大好きですよ ですから安心なさい」
と豊かな双丘と豊かな尻の彼好みで高級娼婦の候補に相応しい体躯の
修道女は、小動物のような可愛い少女が実は下衆な”男”で
ワンピース型のローブの下では
可愛いショーツを、劣情が押し上げているとも知らず優しく説いてくれる。
「はい、ありがとう御座います 修道女:リエア」
と意匠に関しては仕立てる度にお済み付きを貰っている。
(ハハァン これで一安心だぜこれで誰からも物言いは言わせねぇ
それにしても今回の修道女はやたらとそそるな たまらんぜ)
とローブの下の豪奢なワンピースドレスの更に下では既に劣情が
五割ほどショーツを押し上げていた。
...が、たった今 女神の代行者または御使いたる修道女が
お赦しになられた可愛いワンピース型ローブが
すべて隠してくれていた。
そしてローブを仕立てる度に確認のため、懺悔室に訪れるので
教会ではサリは敬虔な神官見習い という評判を高め
サリ自身はこうして教会を訪れ目で直接
成熟した修道女を見て次の娼婦候補を手間を賭けずに探せて
いい事ずくめだった。
狡猾なサリはこうして、仕入れる娼婦の候補を探し
気に入れば、息のかかった下っ端に襲わせて
生娘を失わせるかして、娼館へ赴がざるを得ない状況に追い込み
経営者として労せずに、娼婦を手に入れることになるのだ。
ゴロツキもまた、ただ本部のお偉いさんからの指令ということで
まさかこんなおどおどした少女が指令を出しているとは、遠く考えが及ぶ筈もなく
その日の夕刻には、早くも修道女:リエア は茫然自失のまま娼館へ
足を運ばざるを得ない状況となった。
この世界では、教会の懺悔室は、本来の目的の他に
日常の様々な公には言えない夜の相談事や魔物に辱めを受けた少女が
心に負った疵を癒やして貰うなどの心理助言を受ける場でもあった
サリの場合はそれを逆手に利用、嘘の告白をして
どの程度までなら(非道な事を)赦されるか? を推し量る場として活用していた。
男娼館も彼の経営する営業項目ではあるが、
男性にはこれっぽっちも興味は無く別の人物に任せてある。
その人物は、一匹狼の流離の冒険者:あのニールである
彼は、単なるおしゃれで女物を着ている”変わり者”でしかも
可愛い少年好きでもあった。
銀の三日月が既にその時、実質解散状態だったこともあり雇い先を喪いつつあった彼は、
男娼館の前任者を社会的に完全に”抹殺”して支配人までのし上がりつつあって
その腕を買い本来なら、人外の種族勢力に任せるところを
敢えて定命の理が短いヒム族に
腹心の部下を通じて、その後任に抜擢したのである。
これは 世界中の女衒屋と男娼館の支配人の連合組織 ”紅い娼婦と黒の蝶”
がサリ(サリューシア)の知らぬ間に決定していたことであるが
定命の理が短いヒム族でありながら、人外の種族勢力に果敢に食らい付く有り様は
見ていて気持ちが良かった
そういった経緯で彼を、
街中で、他人の振りをする事を誓約させた上で契約を締結した
その証に彼には特別製のギルドカードを持たせてある。
まだシーアが誕生する前の話であり
彼がトリンデでミーアに見せびらかした可愛い小花柄のあのギルドカードである。
定命の理が短いヒム族は、生きた証にこだわる者が多い
巷の、ヒム族・ウル族・ケット族の冒険者が”勇者”英雄””賢者”などと言う肩書に
やたらこだわるのも
生きた証を子々孫々まで遺したいからなのであろう。
現に今、潜り込んでいる一行を含め、
ヒム族・ウル族・ケット族連中は
その肩書が欲しいが為、冒険者業などという敢えて危険な途を選んでいる者も
沢山いる
人外であるサリ(サリューシア)にはいまいち実感がわかない感情ではあるが
そんな事はどうでもよく、彼にとっては
その人材がどれだけ”役”に立つか立たないかそれだけが重要だった
”女”に関しては自分がどれだけ劣情が沸き起るかが重要であった。
移動中、劣情を八割も露出させながら
(ちくしょー、 オレもシーアの様な銀髪のオッドアイに成りたかったぜ)
と
サリの時も、サリューシアの時も美しい少女の姿であるにも関わらず、
尚、不満を漏らしていた。
「どうした サリ 何黙り込んでいつものお前らしくねぇじゃねぇかよ」
と突然ニースが声を掛けてきた。
「うえぇー ニースさんひどいれすぅ サリだって考え事してるときだってあるんですよぉ」
とシーアから貰った神代級遺物の杖を抱きしめる
この杖はあちらこちらに宝玉のようなものが木の実のようについていて
振ると シャラリ と清廉な音がするのである
当然彼があの舞い装束姿を纏い、
サリの姿で宿屋の防音結界や人払いを施してから祈祷と言祝ぎを捧げたものだ
祝福や加護は完璧であった。
宿屋では舞っている内に昂ぶり、徴が半分露出してしまいショーツに似た装束から
出てしまったが月蝕祭儀と違い、堂々と人目を憚ること無く彼は全身全霊で祈祷の舞を捧げる
女神は、そんな背徳的な姿のサリでさえ、超一流の祈祷術に見事に応えてくれて
最高の祝福を賜った。
ロージィが訪れた夜の次の空いた日のことである。
「何考えていたんだよ 言ってみろ? 」
とニヤついて尋ねてきていた
ニースにはまるで女心というものが解っていない
同性であれ、異性であれ皆同じように接してくる。
「アンタ ”乙女” にそんなん聞くんじゃないよ
御免よサリ このバカはほんと気遣い知らずで」
ナリアはそんなニースを知ってか知らずか、相変わらず彼とじゃれていた。
「いえいえ いいんですぅ ニースさんですからぁ いつものことですからぁ」
と間延びた語調。
最初おっとりした顔に似合うように取り繕った口調であったが
今ではサリの姿の時は自然に出てくる
そして、周りにもおっとりした
小動物のような”サリ”として完全に認識されていた。
「シーアさんの事考えていたんですぅ またサリ達より先越さたなって」
(ホントはオレ達が一番先に乗り込む筈だったのによ
オレの足を引っ張りやがって とことん使えねぇな こいつら)
と内心ではまた毒づいていた。
「あぁ アイツ(シーア)はアイツなりに動いているんだろう
オレ達は、オレ達だ アイツにあやかって一稼ぎできればいい それだけだ」
とニースは、先のケインズの警告通り変に煽って、シーア達にソーヤの注意が向かないよう
素っ気無く答えた。
「そうですかぁ そうですよねぇ わたしもこの杖貰ってうれしいでっすぅ」
これは彼の本心だった 表の顔は治癒役でやはり得物たる杖には
こだわりたかった。
方々、神代級遺物の杖をあのデメテルの豚犬野郎に厳命を発行したにも関わらず
結局、見つからなかった
散々、恫喝したにも関わらず最後まで見つからないと先々代のデメテルは言っていた
もちろん、それなりの代償は払って貰ったが。
今代のデメテルにはもし万が一見つかったらと言い含めてある
見つからなくても彼の生命だけは繋ぐように温情を与えてあった。
(ここで見つかったと言ったら、つまんねぇし 豚犬野郎にはまだ知らせてやらねぇ
ヤツの鼻がどれだけ利くかもう少し 放っておくか ハハハ)
とどこまでも下衆だが、これは彼にとって極自然な思考であった。
神代級遺物は大抵が、統制庁の厳重な管理下に置かれて
埃塗れになって結局、陽の目を見ることが出来ないのが常である
こうしてシーアから ”タダ” で貰って、
サリの超一流の祈祷術によって役にたてるのだからサリにとっても
この杖にとっても僥倖であろう。
(それに、”また” 彼処に行くとなると女衒屋は期待できねぇな
変成種共じゃ 欲情も劣情も満たせねぇな
あぁクソっ イライラするぜ 全くよぉ 拙いなこれ以上露出しちまったら
本来のサリューシアになってしまう そうしたら此処の連中ブチ殺さなけばならなくなる
それは ”今” は避けてぇしな ここはちくと我慢だな)
と踏ん張って五割程の露出に留めて置く。
可愛い少女の姿で、彼の思考はシーアの事より 早くも女衒屋の事で占められつつあった
内心が下衆な程、外見のサリ(サリューシア)はおっとりして小動物っぽく
愛くるしさを増していく。
この世界は外観と中身が一致しないのは多々あるが
彼は、その典型だった。
少し外気に触れたせいかシーアのことを考えて興奮したせいか
舞を奉納したあと、酒精が強く価格も最高級の
蜂蜜を薄めた水で割った琥珀酒を
古巣の女衒屋で引っ掛けたのがまだ残っていたのか、催して来てしまった。
彼も小水は女の様には用を足さない
人払いをした上でスカートを捲り上げ立って用を足す
”男”はこれに限る
少しオンナノコっぽくモジモジすると、ナリアが小声で
「サリ すこしは我慢できる? 」
と気を利かして注意をそらしてくれた
「えぇ 大丈夫ですぅ あっちついたら お花を摘ませてくれます? 」
「ええもちろん、痴態野郎の目の届かないトコでやんな」
「はい そうします ありがとナリアさん」
とコクリと首肯しナリアの耳に小声でささやく
(クソお節介ナリアめ!! オレが”男”で良かったぜ
”女” だったらとっくにションベン漏らしてたトコだな
だってサリってオトコノコだもん これぐらい我慢できるもんね♡ しっかりガマンしないとね♡ )
と気を引き締めた。
ナリアからはケット族とは違う、不快な獣臭さが鼻をつき彼を苛立たせた
メイドにケット族を希望したのはウル族よりはヒム族に匂いが近く
ふわふわの耳や尻尾と備え、自分の傍に置くに相応しい可愛い容姿。
それに、何と言ってもあのケット族特有のザラザラした”舌”である
一番お目当てはあの種族特有の”舌”であった
今からそれを考えると今の一時のウル族の獣臭さは瑣末な事であった。
この世界ではシーア位で成人とみなされギルド登録が
可能になると飲酒も出来、煙草も吸える。
酒気は今は完全に抜けたが、あの衣装を着て躰を解す
意味合いも兼ねてずっと夕刻遅くまで小休止をはさみつつ舞っていて疲れた上に
更にまた古巣の女衒屋に舞い戻り大好きな酒精の強い琥珀酒を嗜んだ。
流石に、少し後酒の影響が残ってしまったようだった。
サリ(サリューシア)の場合は、後酒が残ると小水が近くなってしまうのだ
幾星霜も齢を重ねているサリ(サリューシア)にはなんら後ろめたいことはない
ただ、見た目がおっとり顔のサリの状態で高級酒を嗜む姿が不釣り合いな姿として
映るだけではあるが。
そして、あの月蝕祭儀以来、サリ(サリューシア)はすっかりあのような際どい衣装が気に入り
早速違う意匠で作らせているがどうやら彼の注文が最後だったらしく
今は、あの裁縫師の行方が知れないという。
...が娼婦や男娼達の噂を聞くと、どうやら死んではいないようだ
何でも会合の途中赤熊に襲われ見知らぬ”少女”と一緒にバルケモスの
イデア大森林帯に向かったという。
(あんなオッカネェ 遺構の少女 がうろついているいる場所なんざ
願い下げだぜ まぁ死んでは居ねだろうしえしもう二、三着くらいはあれほしいな
髪飾りも神官を意識した流麗な意匠で作らせてあって
それをサリの姿で一心不乱に舞うとあのときの火照りがまた蘇り昂ぶってくる。
奇しくも、奉納の舞自体もますます磨きに拍車がかかり
彼の祈祷術も併せてますます洗練されていくこととなる
これがニースの一行誰も知らないサリ(サリューシア)の私生活の一端だった。
街を変わる度サリ(サリューシア)が真っ先にすることは女衒屋に赴いて、
有り余る劣情を満たすついでに自分が扱う”商品”を”直接確認すること
売上の確認、先のヤサグレ者のように”礼儀”を弁えない者の直接の粛清である
粛清云々は、彼の残虐嗜好を満たすのに丁度お誂え向きで
難癖ならいくらでも付けることが出来た
彼はそんな立場にいたのである。
文字列の繭はニース一行・ケインズ一行・
ニラウス達が含まれているその他一行・
そして愛くるしい少女姿の男性:ネルリンゼがいる
視察団の一行にそれぞれ分かれていたのである
賢者:ランドルフ曰く、一度に大人数ではなく細かい分割単位での転送が却って効率が
いいそうだ。
尤も、視察団の殆どは、艶しい少女姿の男性でギルドに優秀な”女性秘書官”として
もぐりこんでいる ”エメラーナ” による手配であり
結局ネルリンゼとメイド・あと二人の女性達で
彼:ネルリンゼが服わぬ種族ということも ”男性” だということも知っている
腹心の部下達であった。
女性三人に ”男” が一人ともなればやることはきまっている
髪を梳かしワンピースドレスを整え、代わる代わる脚のお手入れである。
ネルリンゼは、誰憚ること無く男の声で脚を斜めに組み
「とうとう サリ(サリューシア)のヤツが動いたか」
「えぇそのようですわね ”お嬢様”」
少女姿の男性は自分が男でありながら”お嬢様”と言われるのを
何より好むらしいネルリンゼも例外なくそう言われて
うっとりとしていた。
「オレらの中でもヤツはエゲツねぇ程外道野郎だぜ
オレやケレシアやリゼシアの野郎とは違ってな
アイツはオレ等以外、多分物としか見てねぇんじゃねぇかな
しかも、表も裏もエグいほど可愛いときてやがる
特技で女しか入れねぇ場所まで自在だしな羨ましいやつだよ全く
だが、オレはアイツが心底怖えし、アイツは
オレ達よりもこの世界をよーく知っている」
と喋っているうちに、ふるふる怯えだした。
「リンゼちゃんもサリちゃんが怖いの? 」
「うんっ とーっても怖いの だってぇ今回ねギアトレスに向かったのだって
あの方を起こす目的があるに違いないもん
でなきゃぜーったい動かないんだからっあの娘って」
とやや大人びた顔をしたネルリンゼは実はとても子供っぽかったのである
今度は外観相応の可愛い声で半べそでメイドの胸に顔を埋め涙声で訴っていた。
「あのお方って? 」
メイドのケイトは優しく聞き返す。
「ん、 リンゼ達と同類のおねーさま方よ
ちょとでもね リンゼ達が粗相をすると消されちゃうの だから怖いの」
ケイトは同類と聞いて服わぬ種族の少女姿の男性だとは理解できたが
それ以上は分からなかった。
「そんな怖い方だっだら何故サリ様が起こそうとするのかしら? 」
と独り言を言うと
ネルリンゼは
「ううん サリちゃんだけは別 あの娘だけおねーさま方にどんな口を利いても
粗相をしても怒られないの だからおねーさま方が目覚ましたら
サリちゃんを絶対怒らせないで サリちゃんってすんごく頭が良いしおカネもたくさん持ってるしぃ
絶対、彼女なりに何か考えているのよ だからリンゼが
今までいろいろ粗相したことは内緒にしておいてッ!! 」
本人であるネルリンゼしか知らない瑣末な失策りさえ、及び腰になるほどの相手が
ギアトレスに ”眠って” いるという
そんな相手に特に目を掛けられているサリの姿を思い浮かべ
そして見たこのとないそのおねーさま方を想像し、メイドのケイトは ブルリ と震えた。
やがて、長い転送も終わりに近づく
一面まばゆい光りに覆われたと思ったらそこはもう、灰の舞い降る世界。
”ギアトレス”であった。
「おぉー すげー」
「まぁ 綺麗」
「こんなん 始めてたぜ」
「これ、灰か」
等と感想は様々だが皆一様に、尿意を我慢していたらしく
早速すぐ用を足そうとする男達。
降り立った第一の聖柱の近くの泉にはノアがいて
「此処で用を足そうとしちゃダメよ、これ皆の飲み水にもなるんだからね」
と注意すると
「分かってらぁ オレだって自分のションベン飲みたかねぇよ」
と一人の男性がいうと
「おうとも 杜ん中でしようぜ」
と言うとそれを合図に、一斉に男女とも杜の中へ
「あんまり 奥へいっちゃダメよ 何がいるか分からないわ」
と今回の大規模討伐隊の旗振り役のノアが大声を上げる
「うぉーい」
と男達は手を上げ股間を押さえて消えていく
男は考える事は皆同じらしく一本の樹めがけて一斉に放尿。
「誰が一番飛ばせるか競争だぜ」
「オレだな」
「いんやオレ様だな」
「ボクだね」
「我輩だな」
「おらおら 飛ばせーっ!! 」
と子供の様にはしゃぐ
「全く男共ときたら さぁわたしらも済ませるもの済ませちゃお」
とナリアが言うと
「はーい」
と女性達が(サリやネルリンゼも”当然”のように)声を上げる
「女の子達は、簡易結界貼れる娘に付き添ってやって
アタシはリーリャに張って貰うけど サリ、あんたは? 」
「あの わたし結界張れますから一人で... 」
「そうかい では はやくやってきな 我慢していたんだろ」
「はうぅぅ〜 そうでしたぁ〜 では失礼しまふぅ」
と別の我慢を堪えてサリは、視察団のピンクの髪の少女と連れ立って
杜の中へ
そして簡易と呼ぶには厳重すぎる結界を二人纏めて張った。
この簡易結界は冒険中のこのような局面によく使われる
用途は様々だが、このような冒険の旅中の野宿での女性の用足しにも
重宝しているのである。
その中で
「くーっ やっとションベンぶちまけられるぜ なぁリンゼ」
とサリがワンピースローブのスカート部分をめくると八割程露出した徴が
ショーツを押し退けていた。
「男はやっぱり ”立ってしなきゃ” 意味ネェもんなぁ サリ」
と二人の下衆な男の声
ネルリンゼもスカートをめくると一般男性より立派な徴が
サリ同様ショーツを押し退けていた。
今度は、外観相応の可愛い少女の声で、 サリは
「ねぇ? サリ達ってオトコノコじゃない 立ってションベンって
男冥利に尽きるよねこれーッ」
...。
「ねー♡ 」
「ねー♡ 」
とネルリンゼも同調し、ふたりは首を傾げ頷き合う
「ねぇ リンゼちゃん 何処まで飛ばせるか競争しよっか? 」
とサリは 辺りの”男”のように勝負を持ちかけた
連れ立っての用足しは彼らにとっても一種の
共有意識を生み 姿は少女であっても男心をくすぐるのだ。
「うん リンゼだってオトコノコだもん 負けないんだからッ!!
...で 一つ賭けない?
負けたらお互いの手の内を一つだけ明かすこと いい? 」
と二人共かわいい少女の声でこんなやり取りをする
「サリも負けないよ〜 負けたらオトコの恥だもんねッ 」
「「そーっれっ」」
とスカートをそれぞれ咥えて
最後は声を合わせ小水は ”男”のように高い位置から遠く弧を描いた。
...が、結果僅差でサリが負ける。
「えーっ ずるいーっ リンゼちゃんおっきんだもの ズルイー♡ 」と地団太を踏む
と言うも
「えへへっ やっぱおっきいといいよね でもでも個人差はしょうがないも〜ん」
とネルリンゼはしたり顔。
やはり、 ”男” が連れ立って小水をする時は、いつだってどこだってこうだった。
二人共、ごく自然に男性の様に雫を切りショーツを上げ
スカートを元の様に降ろして腰を軽く左右に振り整えた
幾星霜もの習慣による彼らの所作はどこまでも自然だった。
「ぶーっ サリの負けね いいわ約束は約束ッ
今回は、この杖の威力や調子もみたいしね まぁこんなの演習にもならないわね
それと これは お・ま・け」
とリンゼの甘いサボンの香りのするうなじに近づき
「あとね、おねーさま方を起こすの もう目星はついてるから
暇の時、一人でいくつもり リンゼちゃんも来る? 」
「イヤッ リンゼあのおねーさま方こわいの だから行かないったら行かないもん」
いやいやと躰を揺する。
此処でサリが言うおねーさまとは
服わぬ種族でも特別な存在:フレアネア・テリエラのことを指していたが残り三人は
運が良ければいるかも知れない。
”彼”らは服わぬ種族でも絶対の存在でサリ(サリューシア)・ネルリンゼ達同様
何れも劣らぬ美しい少女の姿をした”男”で
中には服わぬ種族の”王系もいて時代が時代なら
サリとて、気安くは話掛けることすら出来ない高貴な一族が含まれていた。
今代では、事情が事情である”彼”らも世界に通じていて事情も良く知っている
サリに頼らざるを得ないであろう
例外なく残りその三人もサリ同様美しい少女の姿をしていて
徴を体内に隠すこと出来る”男”達で魔女戦争のずっと以前、義”姉妹”の儀を執り行った
他の、服わぬ種族達よりサリが階位が上なのはこうした理由もあった。
そして、サリ(サリューシア)が心から親愛を込めて
”おねーさま”または”おねーちゃん”とよぶ
唯一の存在達でもある。
ここからは男の声でサリは
「ちっ しょーがねぇオレ一人で行ってくらぁ テメェは温和しくしてろよ
ここで騒ぎおこしたら おねーさま方に あぁん? このサリ(サリューシア)様が
一挙一動すべて漏らさずぶちまけてやる 覚えとけよ」
と恫喝する
流石のネルリンゼも、闇社会の一大勢力の業界を堂々仕切っているサリ(サリューシア)には
敵わない、半べそで
「うん 分かった リンゼ温和しくするもん それと、サリちゃん怒らないで聞いてね
おねーさま方を何処に住まわせるつもりなの? 」
「あぁ それなら既に算段はついてる
テメェがつい先刻乗っ取った屋敷があったろ
あれが売りに出されてたんで即金でオレが買い取り
この指輪:レヴェランスの淵の空間に再構築した
おねーさま方には今後このサリ(サリューシア)様と一緒に行動していただく
どうだ、ちゃんと考えてあるだろ? 」
と黒い石が嵌まった指輪を指した。
それは女衒屋で証としてみせた、サリが何時いかなる時も指から外したことのない
あの黒い石が嵌まった指輪である
この指輪は、今代のデメテルが襲名して間もない頃
難癖を付け恫喝して、只同然で買い上げた神代級遺物:レヴェランスの淵の一部の欠片である。
クローティアのレフィキア世界と同様にそこそこ快適な空間があり
ネルリンゼが乗っ取って一家を惨殺した空き家を即金で買い取って
空間内に移築したものである。
「何もしなけれはオレだってなにもしやしねぇから
今回は、オレ達を温和しく視察してろや」
とあのおっとり顔のサリ(サリューシア)が男の声で警告していた
「うん」 と一言。
既にあの屋敷は更地になっていたとは露とも知れず
サリ(サリューシア)の手際の良さにネルリンゼはただ、呆けるしか無かった。
「ところで、サリちゃん 貴女の一行ってどんななの
リンゼ気になるの リンゼは冒険者ってあまり知らないもん
だから お・し・え・て♡ 」
ネルリンゼは、ご機嫌取りのつもりか、おねだりするようにサリに質問を投げた。
「まぁ オメェは冒険者共には縁が無いだろうから
このサリ様が懇切丁寧に教えてやる
ネルリンゼは、表では服わぬ種族が仕切っている五大商家の内の二家の
顔役として大陸を漫遊していて”冒険者”とは全く縁が無かった。
......。
先ずは、頭のニース
アイツは盾役としては、まぁまぁだ今売り出し中の若手だな
大雑把で粗野だが、一番警戒しなければならんヤツだ
盾役ってのは常に付近の状況を刻一刻と判断しなきゃなんねぇからな
少しの機微の変化に聡いしよ オレも”本性”を出さねぇよう仕事(冒険)以外は
関わらんようにしている
伊達に盾役をやっている訳じゃねぇな アイツは。
次は、その恋人ナリアは一番獣臭ぇ女だ、面倒見がいいが
やや他人に踏み込みすぎるきらいがあってな そこがオレが嫌う一番の理由だな
カカァ天下でニースもコイツ(ナリア)には頭があがらん
武闘家で拳骨はしこたま痛ぇらしいな ハハハ そして女には甘い
この可愛いサリ(サリューシア)様を男とも知らんで、オレはその甘さをたんまり享受しているがな
一行の中でも一番御しやすい女だな。
あとは、オルトはオレと同じ術師で妖術が得意だな
まぁ術師としては普通だが頭が多少切れるヤツで参謀役って感じだな
そこそこ”いい動き”をするヤツだぜオレに取っちゃ可もなく不可もない凡百だな。
それと、形のいい尻を持っているリーリャはエル族の女で、弓使いの
斥候役でよ、罠なんかを解除したり軽業師のようにピョンピョン杜を跳ね廻る
オレ様があの尻を狙っているともしらず、いつも遺跡じゃ先導きって地面に這いつくばって
形のいい尻を突き出している
罠を調べる時とか特にな、尻を強調するもんだら先頭に立つと
オレのスカートの中では徴がいつも元気にしてるいい女だぜ。 」
と指先で自分のスカートの股間を指し示す。
「いつか、”サリ”と”サリューシア”両方でブチこみてぇ女だしな
オレが扱っている娼婦にもエル族はたんまりいるし、あの女にどうにか難癖をつけて
娼婦に堕とす事出来ねぇかとアイツを見る度にそう思っているが
まぁそれは、用が済んでからのお楽しみっていったトコだ 」
下品に顔を歪め、舌舐めずる。
サリ(サリューシア)は徹底した女好きで、男は最初から眼中には入っていない
寝ても覚めても考えるのは、おしゃれの服の事や可愛い雑貨の事
次に、少女や女の事でどう近づきどう堕とすかそれだった。
この世界では娼婦や男娼は別に蔑まれている職業ではなく
男女いてカネが動くそれが商機に繋がり、互いに劣情も満たせる
そういった仕組みが世界で自然に成立するのは至極当たり前だった。
”娼婦に堕とす” という言い方はサリ(サリューシア)が人を人とも思っていない
彼らしい物の言い方であった
「そして最後にものの見事にオレを裏切ってくれたのが
あの渡り人のソーヤだな」
と一端此処で彼は間を置いた。
「なんで? サリちゃん 渡り人っていろんな異世界の知識をもっていて
この世界でも重宝される存在じゃないの? 」
この世界では渡り人は異世界の知識や技術で
錬金や魔導工学などが裏で発展を促す切っ掛けを造って来たとされる。
渡り人達は自分では、何も出来なくても斬新な案が豊富で
これをこの世界の錬金術師や魔導工学者達が形にすればいいだけの話である
かの大錬金術師”シアズ”も一時、裏で渡り人の存在が有ったのではと噂されていたくらいである
尤も、後で彼の遺業は彼自身の手により生み出されたものと判明し
噂はすぐ払拭されたが。
「ところが ......アイツは渡りビトの中でもとくに莫迦だぜ ありゃ
このオレがちょいと難しい質問しただけで答えに詰りやがる
剣と振るのと、ションベンしたあと徴を振る事以外役にはたたん
折角、このサリ様が渡り人ッつうことで
目ェ付けてたのによぉ 異世界の知識を手に入れる機を奪いやがって
ほんと ムカつく野郎だぜ」
と嘲るように、皆をこう評価した。
「あまり長げぇこと居座ると痛くもねぇ腹ァ探られっから これでお開きにするぜ なぁリンゼ」
ネルリンゼは軽く首肯。
「最後にテメェにオレ様の福音を授けてやる
ありがたく思えよ」
とすうっと 表情が穏やかになり
... あまねく、天の星、銀の月、金の陽、おのこ、めのこ、
たゆたう朧が、汝の頬を撫で誘う
神々なる汝に女神リーンの息吹の導きと光明を与え給うなり
我が身・サリの言霊にて御身に捧げ奉らん ...
と最後はサリの声と姿で福音を捧げる
「これで此処にいる間はてテメェは、
オレ様直々の加護を受けることが出来るって寸法よ
どうだ 即興の祈祷術だが効果はホンモノだぜ
最高の福音に感謝しろよな
これで魔物共はオメェに疵一本付けることが出来ねぇから安心しな」
と最高の笑顔と下衆な男の声でこう〆た。
彼のこの福音もはったりや単なる慣例句でなく
女神:リーンが彼の福音と祝詞にきちんと応えた実利的なものであり
加護を賜った証にネルリンゼの周りには金色の文字列が顕れ吸い付くように
彼の躰に張り付き定着して見えなくなった。
......。
ネルリンゼはその手腕に無言でその様子を伺い見ることしか出来なかった。
結界から
先にネルリンゼが飛び出し次にサリ(サリューシア)が結界から出てきて
解除する。
「ナリアさん 待ちましたぁ?
いつも長いってニースさんに叱られるからビクビクしてましたぁ」
「いんや、そんなことはないよ まだ用足ししている娘もいるよどうせ
駄弁っているんだろうけどね それにしてもニースったら
アンタに、いつもそんな事言ってたのかいあの莫迦」
「あっ うん、いえいえちがいますぅ あわわッ」
と言葉が揺れる とその時、
「ナリア、サリッ 動くなッ!! 」
とリーリャのするどい声
やおら、弓を構えたその先には肉色で頭が赤子の何かが飛び出してきていた
それは、蜥蜴の変成種”肉蜥蜴”である 矢はビシリと眉間に一本命中し
グギャ
と地面に斃れる
「これがベルセで聞いた変成種の魔物か 気味悪ぃね」
とソイツを掴みリーリャは遠くへ放り投げた。
その時、サリが思わず顔を背けたのをナリアが抱きしめてくれたのだが
怖くて顔を背けたのではなく 実は
”思わず”涎を垂らしたのを誤魔化す為であった。
サリ(サリューシア)はこの肉蜥蜴 が大好物でこの脂身のような
食感のまだぴくぴく動いている生き身が大好物だった。
それを誤魔化したのだが誰も気づかなかった
嘗て、此処にいた時は本来のサリューシアの姿で魔蒼樹の根で簡単に捕まえ
活け締めて ぐちゃぐちゃ よく食べていた。
ぬっとりとした脂が可愛い唇を濡らしそれを舌舐めずりながら酒を嗜む
最高の一時であるが
外界に降りたら、こんな珍味には一回も出会わった事は無くて
不満だったのである。
紅茶や菓子やパンや乾燥腸詰めより何よりこれが、サリにとって最大の好物だったのだ
それを目の前であっさり放られていい気分な訳はない
...が、 今は皆の目がある
垂れる涎を手巾で隠して
「うえぇ あんなのいるですぅ? 」
(くそっ このクソ女オレの大好物を気安く捨ててよぉ
オレの酒のつまみどうしてくれる
外界じゃ食う機会ないのによ あーぁもったいないな
ぜってぇ、この落とし前を付けてやるからな覚えろよ)
と顔は”こんなの”とは縁も縁もないないようなおどおどした少女を装った。
「ふぇー サリ怖かったですぅ」
「あぁ 大丈夫た サリ 後衛のあんたを守るのも、斥候のあたしの役目さ」
とリーリャ
サリはコクリと無言で首肯。
(あぁ 是非そうしてくれ しっかりとこのサリ様を守るんだぜ
まぁせいぜい気張りなよ だがオレの大好物を粗末にしたぜってぃ借りは返すからな
覚えてろッ!! )
と内心とは裏腹のそのおどおどした目をじっとリーリャに向けていた。
「みんな揃ったね この辺に居ても何も出来ないから
夜ビト 達の住む集落まで一息に歩くよ
”肉蜥蜴”共が襲ってきても矢とかの消耗武器は控えるようにして消耗は避けて
出来れば回収するようにして頂戴。
アイツラって足で蹴り飛ばせばすぐ逃げるからそうして」
ノアが説明すると皆一同頷く。
これらはすべて出立前に皆に心得を
説明していたのであるが咄嗟には出来ないリーリャは
「ちッ しょーがないね 矢取って来るわ」
と放た先から”矢”だけを持ち帰って来て
生臭いような甘ったるいようなサリにとっては
食欲をそそる”美味そうな”匂いが ふん と可愛い鼻をくすぐった。。
(あーぁ 貴重な一匹食い逃したぜ
どうしてくれるんだよ この落とし前はよ えぇリーリャよぉ)
サリはこの落とし前をどうつけようかと画策していて
少し皆より遅れて、やはりオドオドした目でリーリャの形の良い尻を
昂ぶった劣情を半分露出させながら眺めていたが、
彼の、ワンピース型ローブのふんわりしたスカートは
相変わらずそれを巧みに覆い隠していた。
ここは、同刻のタフタル大陸。
「待たせたわ、ノージェ」
こう言ったのは統制庁:リームレスの執務室に先に待たせておいて
後からやってきた聖主ルルスそのヒトである。
「いいえルルス様、このノージェ 待つ時間も女神:リーンの課した
試練と、考えております
こうして憧れの場にお招きいただき恐悦で御座います」
と深く膝を折れ、清廉な薄衣の法衣がふんわりと床に広がり、
成熟した女の体型を殊更強調していた。
「先の”月蝕儀礼” 大義でしたね
妹君も、初めてながら見事な舞いでした 出向きの神官が若いながらたいした者だと
賞賛しておりました このわたくしも公務さえ無ければ 是非にと思っていたのですが
残念でした。
彼女の言祝ぎはこのタフタルにまで伝わってくる勢いでした との報告を
受けておりますよ」
「はい、直の御言葉をいただきサリも誉れでしょう
今は、まだ修練の身、冒険を通じて治癒役のお役目を果たし
何れは とも思っている次第ですが人心はたゆたうものなれば、
サリの心次第では神官ではなく冒険者の途を歩むのではないかと
親心でしょうが、憂いております」
とノージェは、深く膝を折れたまま、冒険者等に入れ込んでいる妹の事を
報告した。
「ふふっ 最近はサリのあの舞いを見た
神官見習いの少女達が多くこのタフタルのグレモリ修道院に入って来るようになりました
かような途を歩むとも神官も冒険者の治癒役も御人の病、
怪我、心の救い手になることは同じで有りましょう
慈悲の御心はどんな形であってもちゃんと女神:リーンが
見届けていていらっしゃいますよ」
「わたくし・ノージェは、不肖な妹の良からぬ噂で持ち切りでは無いかと、心配しておりました」
ノージェは、妹の名を出す度躰の奥底が僅かに疼くのを感じながらも
女の仮面に隠しこう答えた。
ノージェはサリと同居していた頃から ”同性” の彼女の名や姿を
思い浮かべる度、女の本能が僅かに疼くのを感じていて
同性恋愛に嵌まったのではと心配していたが
”男性”のラクティカスをみても ”同じく” 女の本能が疼く
それで、安心して
サリの方は母性本能だとノージェの心中では結論づけていた。
「今回の件は、そのサリに神官見習いから 先の月蝕儀礼の舞いの
実績を鑑み、神官に昇格させたいと思っているの
オルティア大陸二位の貴女の承諾を得なければいくら私でも
独断では決められないのよ
どうかしら? 神官の肩書は有っても冒険者の活動をしている子は沢山居るし
”偶に”顔を覗かせて貰うしか義務は無いわ」
ノージェも神官見習い時代は、偶に顔を出すくらいでやはり冒険者の治癒役として
活動をしていた。
ならば、可愛い”妹”のためである 彼女に迷いは無かった
「はい喜んでお受けいたしますが 昇格の儀は何時程に致しましょうか ルルス様」
「そうね今彼女は何処に? 」
と同じ執務室の長椅子で寛くギルド総長のドリエルに声を掛ける。
「あぁ今は、ニース一行とつい最近封印が解かれた
”ギアトレス”にいる。
バルケモス大陸の優秀な女性秘書官:エメラーナ君からそう報告が上がっている
「へぇ ドリエルったらそんな ”重大” な事 このわたくしに隠していたのかしら? 」
「あぁ いや うん まいったな 聖主様の前じゃ嘘はつけないね」
「茶化さないでくださるかしら、お客様の前ですよ」
「あぁ ノージェ君すまんね、彼女とは馴染でね」
と子供のように弁解する。
「いえ ドリエル様、お気になさらず」
とノージェは親しく会話する二人から彼らは馴染ということを踏んで
こう言って彼らの会話を促した。
「先の話は本当さ、ランドルフのヤツからも連絡が入って
エメラーナ君の報告の裏付けも取れた
だから間違いなくサリ君はギアトレスに居る」
「そう ギアトレスの件は後ほど、聞きたい事が有りますが今は
神官:サリの事でしたね ドリエル? 」
「あぁ、彼女は素行は可もなく不可もなく
治癒役としてはどちらかと言えば優秀な部類だね」
報告もそうだし各ギルドの評価もそうだね」
ドリエルは例え優秀な部下の報告言えど鵜呑みにはせず
きちんと、現場での評価と併せて判断している
”サリ”の評価は関わったどのギルドでも評価は優秀との
判断が下されていた。
「いいでしょう やはり神官としても申し分ないようです
ノージェ、貴女の妹:サリを正式に神官見習いから神官への昇格を
聖主:ルルスの名において許可致します」
と高らかに宣言し、まだ男性が
大半を占めていた神官職で新たに”女性”でしかも”少女”の正式な神官が誕生した
「それで 昇格の儀は何時がいいかしらね ノージェ」
ルルスは彼女に問うた。
「ふふ サリちゃんに驚かせたいから この地を践むまで内緒にしておきたいの
どうかしら って失礼しました ルルス様 つい、いつもの調子で ......」
と普段の口調を慌てて取り繕った。
「ふふ いいわそれまでは此処に滞在なさいな
彼女が姉妹水入らずで貴女と過ごしたいでしょうから
この地を踏んだら一緒の時を与えます その後ではいかが? 」
とルルスは気を遣ってくれる
「はい喜んで」
(久方振りねサリ また一緒に滞在出来るなんてッ ...ッ)
とまた彼女は”逞しい”男性に対するのと同じ疼きを感じ戸惑った。
ノージェが辞した後、ドリエルはこってりルルスの説教を聞きまたバルケモスへ戻る
戻る道すがら
エメラーナの報告書と現地の報告と食い違うだた一点の齟齬を考えていた
それは彼女が歓楽街の危険な場所へ度々、赴く姿を見たというのである
ただ単に赴くのは問題ないが、彼が気ににしているのはその赴く場所が
例外なく闇の手勢や傀儡が屯している噂が絶えない場所だというのである
しかもいつもそこで厄介事等、ただの一度も起きた事も記録もないとも
聞いていた。
容姿を聞けば、小動物のようにおどおどした顔付きでおおよそ
そんな場には縁がなく、真っ先に闇の手勢の哀れな犠牲者になりそうな
そんな少女がである。
神官推挙ともなれば、ただ単に成果評価だけではなく身辺行動も同時に評価されるのが
普通ででありこれは極秘に行われる、
狡猾なサリ(サリューシア)でもそこまでは考えが及ばなかった。
「今は、エメラーナ君の方か、現場かどちらが本当かは分りませんね
現場だと妬みや嫉みがあるしわざと嫌がらせで報告したとも思える
う〜ん まいったな でも、折角の彼女の昇格の機を
殺いでもルルスに恨まれますしね しょうがないここは、目を冥りますかね」
とひとりごち、この疑問をだれにも言うわけにはいかず胸の底に押し込んだ。
彼のこの判断が、サリ(サリューシア)の計画を加速させたのは間違い無い事で
後に、この判断は彼の消し難い汚点の一つとなった。
同刻のギアトレスでは
幸い、変成種については事前のバーバ・ヤーガ ケレスの素顔の公開もあり
然程、混乱は起きなかった。
そこは、皆冒険者である
世界にはもっとおぞましい姿かたちの魔物が居る
編成種や夜ビトぐらいで及び腰でいたら食い扶持が稼げないからだ
空き部屋は、沢山あり数人の男達以外は皆個室を希望し
狭いながら、希望者に割当が終わる
サリも当然部屋を割り当ててもらい
普段着代わりの半裸に近い舞い装束を着て
劣情を六割ほど露出させた背徳的な姿で思案していた。
(さて、三昼夜は猶予があるな ようやくオレが自由に動けるな
おねーさま方は、聖骸遺構:エトルだな クソっ 神族共め
サリの大好きなおねーちゃん達を封櫃しやがって
協定があるから我慢をしてやっているが テメェらのした事の重みは何時か返してやるぜ)
と怒りを露にしながらも、自分と同じ特質をもった
あと五人の見た目少女の姉妹分を想い、激しい憧憬の念を向ける。
サリの他に後五名、彼と同様に体内に徴を隠せる見た目少女が存在する
彼らもまた、ァタウェーの魔導実験の影響で変成して
彼のような躰を手に入れた そのうち一人は遺産の少女と同様な能力を備えていて
”変化” はしないものの見ため相応の”少女”として
暴虐の限りを尽し、神族に聖骸遺構:エトルに封櫃されているのである
冥骸都市”ユクントス”は
超巨大な冥骸獣”ユクントス”の骸がそのまま都市に成っている
頭部が完全に浮遊島に埋まり伏せたまま遺骸になり、そのまま冥骸都市となった
今代では遺骸は既に冥骸石(化石)化しており
その巨大な肋骨の一本一本の中の空洞に街が形成され
内部は多層の回廊状の都市になっている。
肋骨は六対ありその肋骨の表面にもへばり付くように居住区があり
細い板や階段が通路代わりになっており ”昼ビト” と呼ばれる住人達が住んで生活している。
そして嘗て心の臓が有った場所に高層の尖塔群が密集している場所がある、
ここは聖骸遺構:エトルがありこのユクントスの中心部と成っていた
が、殆どが廃墟でここからでしかユクントスの背骨に当たる聖廊層に到達出来ないうえ
”埒外”の魔物が多数棲息していると噂されている
強大な能力を持つ彼らはあまりに強大で在るため
却ってその強大さが仇となり封印が解けたユクントスからは出て行くことが出来ない
小さな魚は自由に網の目を掻い潜れるが大きな魚は
それが出来無い、それと同じなのである。
シーア(クレア)はその網の目を僅差で掻い潜る事が出来たが。
それ故、シーアですら討滅が不可能な強大すぎる魔物は
少し”孔”が開いた位では外界に出て行くことも、
逆に外界の魔物が安住の地を求めてユクントスに逃げ込むことも叶わないのである。
彼らはその聖骸遺構:エトルの地下遺構最深部の水晶の棺に封櫃されていて
静かに開匱の時を待っていた。
彼のもう一つの目的は彼らの開放と保護
ネルリンゼが怯える程の相手、彼と義姉妹の儀を盟約した
おねーちゃんもしくはおねーさまと全身全霊で
親愛するフレアネア・テリエラその両名と後三名である。
(あぁん 待ってってサリのだいすきなおねーさま方 言祝ぎも舞いも準備
も整っております 今、しばらくお待ちに成っていて下さいませ)
と敬虔な信徒のように片膝をつき手を組み合わせて
劣情を露にした背徳的な姿でまるで”少女”のようにお祈りをした。
サリは本来の姿に成ってになって嬉しさと、ノージェとリーリャに対する
イライラで変成種の夜ビト共を赴くまま鏖殺したかった でも此処で騒ぎを
起こせば、大規模討伐隊をも全員ブチ殺さなければならなくなる
それをきちんと弁えてる位は彼は聡かった
「あぁ くそ本来の姿で連中ブチ殺してすっきりしてぇな
行き掛けに一匹殺してからいくか
...
...... 。
うんサリってやっぱり頭いいっ♡ 」
とサリの可愛い声でこんな事を息抜きに、沐浴で一汗流す感覚で
ひとりごちてさらに
「まてよ あのクソ女をブチ殺したとしても今度は、オレの自由が利かなくなるな
もっと遊べねぇし 裏の事もある」
サリはノージェをブチ殺したいとそればかりだったが冷静に判断した結果
今度は、自分が、表の立場に雁字搦めに絡め取らることに気が付いた
これでは、下劣で厚顔無恥とは対極の事を強いられそれは”絶対”に願い下げだった。
しかし、魔族共がよく子飼いを傀儡にして自分は
裏で好きな事をしているのを思い出し
「そうかぁ あの女の心を徹底的に壊して傀儡にしたほうがいいな
オレ様のこれで今度は”幻惑”無しに”虜”にして
これなしでは生きて行けない躰にしてやるぜ あぁやっぱりサリちゃんって頭いいわぁ」
と鏡台の前でうっとりしながら唇に淡いピンクの口紅を指で軽く引き
半分露になった劣情をニヤニヤ眺めて舌舐めずった。
こうすれば、自分は”妹”として心置き無くノージェを操れるという算段である
あとは、定命の理の制限を取り払い
特殊な死の条件と引換えに魔族と同様に
する”再誕の儀”だか これは高位の魔族の協力が必要だった。
闇の手勢で口が固いヤツを選ばねばならない
「まぁこれはタフタル入りしてからだな今は、先ずオレはやることがあるからな」
サリの声で、独りごちた。
部屋を割当てられ早々と、サリは”普段”のように身支度を整え
怪しまれないよう物音と代弁を器用にこなす魔器を仕掛て部屋を抜け出ていく
皆も此処の食事が合わず、各々がたんまり持ち込んだ糧秣で各自、部屋で食事を摂る者が
殆どだったし、集落内を散策する物好きは男連中や
男勝りな女性が一人二人くらいであり
サリが行動を起こしたのも到着した当日の朝方であった。
サリは行き掛けに一人の夜ビトの”少女”で散々いたぶって軽くうさを晴らし
晴れやかな笑顔で勝手知った抜け道を聖骸遺構:エトルに向けて
ローブスカートを揺らし、歩いていった。
幸か不幸か犠牲になったのは コルスナ ではなかった
でも ”住人” に声を掛けられ立ち止まり、寄り道をしていなければ
サリのウサ晴らしの犠牲になり無惨な骸を晒すハメになっていた。
そんな彼らにも心底怖れる者がいる
それは世界を構成する物や現象・場所が具現化した
強大な能力を持つ遺産・獣・魔獣・魔蒼樹・遺構の少女達である
美しい容姿を持つ彼女等にあこがれて姿を真似た者も多く
どんな難癖や因縁を付けて来るか分からいのである
それくらい気難しく激しい気性を持っている少女達だった。
街中で自分と同じ髪型や服などを真似た他人を快く感じないと同じように
それらの強大な能力を持つ少女達もまた同様であった
しかも、髪型や服は彼女達の能力一部であり変更が出来ない
真似られた時の憤りは言わずもがなである。
やはりそういうところは、彼ら服わぬ種族は何処迄も”男”だった。
「何 みんな閉じこもってやがるんだなぁ ニースよ
オメェんトコの女連中皆居ねぇぞ」
「あら、アタイは女だよケインズ 何処に目ぇ付けてんのさ」
と自分の形のいい双丘を指さすナリア。
「おっとそうだったな つい、忘れちまってよ 他にもう二人いたろ
彼女らはどうした? 」
「あぁ リーリャはあぁ見えて繊細なところがあってね
環境に馴れるまで部屋に篭るんだと
アイツは新しい遺跡に潜るときだって
環境に慣れておきたいと言って独り近くに数昼夜も前から天幕を張ってるんだ
でもそれが実に”斥候役”に性が有っててね別に特別なことじゃあない
サリに至ってはもっと大変だ あんな小動物みたいな感じだろ
神官見習いだし、お祈りも欠かせないらしくいつも暇には
教会へ赴いて常には居ないよ
今回も、多くの”敵”が死ぬことになるだろうしその度に”お祈り”をしていられない
だから今の内 部屋に篭りって女神:リーンへ祈祷するんだと
サリらしいっちゃらしいね」
「でもよ、偶には部屋覗いた方がよくねぇかそれ」
とケインズ。
「アンタの言うことは御尤もだが、皆子供じゃないし外から声も掛けている
二人とも、ちゃんと返事はするし物音も聞こえるし 問題ないよ」
しかし、この時既にサリの部屋はもぬけの殻で、代弁の魔器が代わりに
受け答えをしていたのである。
「でもよ」
「まだ、納得いかない? 」
とナリアはやたら食いつくケインズを睨む。
「俺達の一行では頻繁に会合やらで顔突き合わせるけどな」
「ケインズ、他人の私事にまで踏み込むのは
アンタの勝手だが、アタイ達はアタイ達だよ勝手にさせて貰うさ」
「あぁ スマンな」
とケインズ。
「そん代わりな、今回の依頼が済んだら、シーア達も含めて
全員で騒ごうぜ これはリーリャもサリも皆強制参加させる
このことも伝えてあるし双方、承諾を得ているぜ旦那」
「おう そりゃいいな俺達も混ぜてくれ」
「もちろんさ、だからこうして話てんじゃねぇか旦那」
ケインズは、リーリャでは無くサリを気にしていた
小動物のようなおどおどしたようなおっとり顔の娘が
よく”何事”なく無事に今まで生き延びてきたのか
不思議でしょうが無かったのである。
それこそ、神官見習いということであれば
教会で信仰に生きていた方が相応しいのにと、思っていたからである
でも案外芯がしっかりした娘なのかも知れないし
ヒトは見掛け拠らないことは重々承知していると自身に言い聞かせた上で
瑣末な齟齬と疑問を納得させた。
実のところケインズは、”優秀”な治癒役が欲しかったのであり
サリが外に出てたら、自分の一行に引き入れ(スカウト)ようかと
画策していたのある。
彼らが神代級遺物を手に入れもゴロツキに極端に絡まれなかったのは
サリが裏で手を回していたからだが、
ケインズは ゴロツキに絡まれて”大怪我”をしても
怪我や後遺症が残っていないのは”治癒役のサリが適切且つ、高度な
治癒術を用いて怪我も後遺症も残っていない と誤解してからであった。
ニースに直接、聞けば良かったが誰しもゴロツキ程度に絡まれて
大怪我をした等という”不名誉”な事は口にしたがらないものである。
彼を忖度して敢えて聞かなかったケインズの浅慮な引き抜き(スカウト)だった
幸か不幸か当人がいなくてそれは、宙に浮いた格好にはなったが。
こうした、駆け引きもまた冒険者間で、厄介事の種となる反面
自然と交渉術を磨く手段にもなっている
多くの一行が、一堂に会した今回の大規模討伐隊は
絶好の機であった。
それは、頭目の特権でも盾役の特権でもなく
一行の面子全員に等しく割り当てられた”権利”であり裁量でもある
こうして磨いた交渉術で、今度は自分を逆に売り込んだりも出来るからだ。
「しかし、アイツ何処いんだろ? 」
ニースは、シーアの事をケインズに聞いていた
まだ降り立ったばかりで部屋に篭っている二人はさておき
まだこの辺にいると思ったからだ
因みに此処はだだっ広い集落でギルドさえ組織されていないまずはリベランナとう
夜ビトを捜すことから初め無ければならないが三昼夜後でも
取り急ぎ差し迫った危機もない現状で、問題は無いとケインズ・ニースの両名は判断した
その頃、シーア達はリベランナ達と大規模討伐隊が滞在している
場より歩いて10昼夜先の内縁層の近くでまだ、睡魔に身を任せていた。
シーア達と大規模討伐隊は入る入り口を一つ間違えたのである
入り口は樹洞であり杜に沢山存在するが
一種の集落の近道に成っていて
一つ違うとかなり遠くの場所に出てしまう。
ノアは事前にどの樹洞からシーア達が入ったかは知る由もなく
間違って当たり前だった
それが遇々歩いて10昼夜離れた場所にそれぞれ
出てしまったのであった
「あぁ シーアか全然見掛けんな 此処だだっ広いしな
なぁ 先ずリベランナから捜すか ノアさんどうするよ」
とケインズ。
「そうね先ずは、疲れを癒やしてからよ到着してまだ昼よ後ニ昼夜半くらいは
余裕があるしね」
「おう そうスっかっ ......て なんか騒がしいな ちょっと覗くか ニース? 」
なにやら住人達が何かを取り囲んで大騒ぎしていた。
「いいね 実はちょっくら退屈してたんで 刺激が欲しかったとこでな 旦那」
「へへっ 考えることは同じか」
とサリの哀れな犠牲者を見ることと成った。
「うわっ ひでぇなこりゃ躰の鱗剥がされてやがるし
穢された後もある 相手は男か 同じ男として 赦せんな ニース」
「あぁ 全くだぜ」
とそれを目にした途端顔に憤りの表情を激しく浮かべて
吐き捨てるように言い放つ。
その、皆に取り囲まれて居たのは
躰に疎に生えていたと思われる鱗をすべて毟り取り取られ
髪も無惨に無理矢理引き千切られ
両目も刳り貫かれ内臓を撒き散らしていた
夜ビトのいたいけな少女であった。
さらに、惨殺の前後かは不明だが穢れた後まで瞭然と分る
「貴男方では無いことは、分かっております しかし、 ......」
と住人は言い淀む。
何がいいたのかは、瞭然としていた。
「えぇそうね あたし達は余所者だしねあの界隈からは男性も
女性も一歩も出さないわ
部屋に篭っている娘達はいいとして出歩いている娘は
今日は一日部屋にいなさい 分かった? 」
「私:ノア あと ケインズさん、ニースさん以外は謹慎とします分かった? 」
とやや不満が漏れたが皆素直に従う。
そして明日朝まで半日謹慎の命が下り、部屋に篭っている娘にも
外から
「 ...てこんな事があったのそのままじっと部屋にいなさい」
と告げ廻るノアが居た
「サリさん 済まないけど死んだ娘の為に部屋の中でいいからお祈りしててくれる? 」
「はいですぅ 今、表へ訳有りで出ていけなくて ごめんなさいですぅ」
と代弁の魔器が応える
「あいいいのよ出て来なくて もし顔を知れたら貴女も危ないからじっとしててね
それじゃ三昼夜後にまたね」
「はいですぅ 女神様にはお祈りしておきますぅ
... 儚き、御霊に女神リーンの慈愛の息吹とたおやかなる揺籃を
賜りますよう、申し奉らん ...
シャラリ、シャラリと錫杖の音と祈りの聖句。
すべては代弁の魔器ではあったが受け答えも完璧だった。
「ハハッ サリのヤツ早速一発やりやがって
クソ羨ましいぜ なぁ? 」
と下衆な男の声で心底羨ましがる。
あの時の会合の時に集まった中でも、特に荒事好きな
ケレシア・リゼシア・そしてネルリンゼである
早くも、遊び終えたサリ(サリューシア)が羨ましくてしょうが無かった
「でもリンゼちゃんは我慢するのよ 分かった? 」
とメイドのケイト言われ
「うんっ リンゼいい子だから 我慢出来るもんっ♡ 」
とかわいい少女の声で髪をくるくる指に絡めてその髪先を舐め
我慢をする
(アーァ イイナァ オレも早く誰かの苦しむ様を見て大笑いしてぇな クソッ!! )
と ガチり と舐めていた髪を強く噛んだ。
ここは、一人のメイド:ケイトと二人の腹心の部下に囲まれて
鏡台の前に髪を梳いて貰って座って、下品に舌舐めずるネルリンゼ率いる
視察団の部屋であった。
とりあえず大規模討伐隊の”男性”達の不在証明は
証明出来た ...が、皆ピリピリしていた
もし此処ですぐ、男女とも点呼を取りすべて部屋を検めていたならば
不在証明が出来ないサリが疑われて
現に、ケインズ一行にも一組の
異性装の男女がいるように
世界に珍しくもない異性装の”男性”と結びつけ
犯行と関連付ける切れ者も現れたかも知れない。
あの、おっとり顔の小動物のような雰囲気をたたえた”少女”が女性だと
信じて疑わなかったノア、ニース、ケインズの決定的な過失だった。
此処で彼らを責めるのは無理かも知れない
なぜならサリは一度半裸に近い装束を衆目月蝕儀礼で晒している
少女らしい双丘も、なだらかな股間も確かに”少女”そのものであったから。
「アンタ方はまだ此処を良く知らない そんな御前さん達が人目に付きにくい
袋小路を知っているとは思えんし」
ここは巨大な樹の根をくり貫きその中を居住区としている
複雑に絡みあった根は至る所に死角を生みこれが自分達の容姿や整容を気にしている
此処の住人達の秘密の逢瀬の場にも成っている事を思えば
こういう死角も一概に悪いとも言えず、あって然る可きというものだった。
サリは、コルスナがそうしたように転移を利用して
歩いて10昼夜も掛かる距離を瞬く間に移動していた。
この順番も慣れた者以外だと延々と堂々巡りを繰り返すことであろう
聖骸遺構:エトルまではもう少し 此処にも秘密の抜け穴があり
厄介で強大な能力がある魔物を迂廻して、目的の場所近くまで
到達出来る。
サリは、ネルリンゼに明かさなかった手の内の事を考えていた
封櫃されているのはフレアネア・テリエラだけでなく
もう三人同じ特質をもった見た目少女の”男”がいる
容姿が変わるのは彼だけで他の五人は容姿は変わらない
その
変わらぬ可愛い容姿で、神族を欺き世界の均衡を乱した
”男達”だった
サリも封櫃の直前でサリューシアからサリに変化し封櫃を免れ、
遇々、結界の綻びで外界に放り出されたのである。
神族も五人を封櫃出来たら僥倖と判断したらしく
追手や刺客の類いは差し向けて来なかったかあるいは
何らかの理由で差し向けて来られなかったであろう
身に迫る危機は今代まで感じたことは無かった
そうして今代の彼がいるのである
(イグレイア・メルカトリア・リゼスティシア様方
特に危険な王系のおねーさま方はいらっしゃるのかしら?
あぁん サリがこうしてお慕いしてますのに応えてくださらないの?
神族の野郎共め!! 別の場所に封櫃したとなると今回は、悔しいが諦めるしかねぇな)
と顰め面でおねーさまを慕う”少女”のような心と
男性丸出しの心を混ぜこぜにしながら
シーア達が滞在してる宿のすぐ近くの食事処でちょっと遅めの食事を摂っていた。
腕や顔には行き掛けに嬲り殺してきた住人の少女から”生きたまま”
疎らに生えていた鱗を剥がし、不本意ながら自分の顔や腕にそれを貼り付け
此処の住人になりすまし、
その泣き叫ぶ様子を思い出しそれを肴に”楽しく”滋養のあるロネベを食べていた
(コイツはコイツでウメェな ちくと ”元気”に成りすぎるのが玉に瑕だが
これから、舞いを奉納するんだし ちょうどいいか)
とスープを平らげる
この世界には、肉ゴーレムなる化生が存在する
時折、闇競り(ブラックオークション)でも出品があり高値で取引される
”おぞましい”姿の人造物である。
幾人もの男女を無理やり融合させられたヒト型のや
全身目だらけの巨人型、腕が幾重にも枝分かれしている、四足の赤子型や
ぶよぶよした全身の獣とヒトが出鱈目に融合したのが
一部の者によって生み出されている
これらは、肉人形とこの世界では総称していた。
それらを傀儡にして敵対者に嗾けたり、
魔導実験の核にするのである
多からず、需要と供給の市場が成り立つくらいには取引の実績があった。
需要側はそれだが、当然それを供給する側もある。
数々の人体魔導実験を行いおぞましい肉ゴーレムを製作して
魔導工学や魔導生物学に造詣が深く
自身も最高傑作と称する美しい ”人造人魚” をメイドに従え
数々の、受注生産の特注の肉ゴーレムを生み出し続け
世界の均衡を崩しかけた
イグレシアは、そんな供給側に立っていた人物そのヒトである
神族は、多すぎる人造生物や種族は 我らの意思に反すると言い
その存在を認めようとしない。
種族数が少なければシーアのホムンクルスのように”希少”だといい
その存在を赦し多すぎると肉ゴーレムのように
意思に背くと言い、それを生み出したものに鉄槌を下す
彼ら神族の、裁量次第でどうとでもなる
そんな、ある意味理不尽とも言える事がこの世界では理の
一部として機能していた。
そんな、神族に表向きはこびへつらう職である神官をしているサリは
神族の実態を知り尽していた。
(だから、オレは弱きを助け慈愛の手を差し伸べろ等とほざきやがっている
神族連中はぁ 特にノージェ テメェがクソ嫌ぇなんだよ
オレみたいに技量もネェのがちやほやされ腐っててよぉ)
と毒付く。
なにしろ、彼女が沐浴した後の ”残り湯” がありがたいお守りとして
ホンモノか偽物かはさておき、露店に売られていて教会にまで常備され
寄進金に応じて頒布され信者はそれを自宅の沐浴時に入れて恩恵に預かろうとしている
くらいである。
実態は、実に実利的である神族は
慈愛だの博愛だの等と世間から持て囃されているのとは対極の行いをしている
いくら毒突いていたとしても彼に、技量に応じた祝福をきちんと賜らせてくれる
ありがたい存在でもあった。
サリは、異性装の下衆な”男”の沐浴の”残り湯”をありがたいお守りとして
後生大事にしている信徒達を夢想して劣情がまた沸き起り可愛いショーツを押し上げた。
(いずれにせよ 今代は、その神族と不本意ながら
相互不可侵の協定を結んでいるしな
サリのおねーさま方、納得してくれるかなぁ サリ一人で大丈夫かしら? )
とそんな今代の現状を知らずに封櫃されている五人を心配していた。
食事も済み対価に此処の食事処の主人に形ばかりの安寧を祈り
昼ビトから手に入れたと嘘をついて外界から持ち込んだお菓子を渡す。
「ありがとうございます 神官様」
「いえ いいんですぅ ”同じ夜ビト” 同士なのですからぁ」
と体面を取り繕いサリは聖骸遺構:エトルへの抜け道へ急いだ。
外界の封印地域ギアトレスの一報も神界ユクラシアを駆け巡る
「ほぅ? あのシーアがやはり彼処を開けましたか」
とハグスール。
「ねぇ ハグ兄ぃ シーアって娘あのホムンクルスの娘? 」
とクロノーラ。
「えぇ あのヒトの手よりし生まれし 我々の ”不確定性要素” の一つ
今代最も注視している娘ですよ」
「へぇ そーなんだ でなんでその娘の話題なの?
ハグ兄が ”特定” の子の名を出すなんてめずらしー 」
「茶化してはいけませんよ あの ”服わぬ種族” も既に活動が活発に
成っているというのに」
「えっ あの種族って クロノ達が根絶やしにしたんじゃないの ねぇ? 」
と幼い容姿の少女からはとても出たとは思えない
物騒な物言いだった。
「おうとも 今は、”男”しか存在しないはずだぜ
なんせ 母上がこれ以上繁殖出来んよう また、彼らの見せしめのために
”女”を完全に根絶やしにしたんだからな。
でもそのお蔭か男共は、軟弱な異性装に偏執しやがってよ
もーちっとは、種族の根性をみせろってんだよ」
といつの間にやら話の輪に加わっていたアグスト。
「えーっ いいじゃない セリシアちゃんみたいで 可愛いんだしぃ〜
でも悪さは出来ないんでしょ? あいつら
しかもほとんどがもう遺産・獣・魔獣・魔蒼樹・遺構の少女達の姿を真似ちゃって
やはり”男”は”男”よね そーいくふう って言葉 知らないのかな ふふっ」
とクロノーラ 容姿は幼くても神族は神族で
少女は生まれ落ちた時から既に ”女” であるという
クロノーラのこの言葉はまさにそれを体言しているといえよう。
「ふふ、そういう所は幼くても貴女はやはり ”女” ですね
えぇ そうですとも 女性がいない以上これ以上の繁栄は望めない
もう遺産・獣・魔獣・魔蒼樹・遺構の少女達同様
温和しくしているしかないでしょう
彼女らは
絶対数が少ないが故、我々神族にその存在を認められているのです
あの”ホムンクルス”のようにね
数多くの種族繁栄を赦されるのは凡百な只人達だけですよ。
黙っていても我等の”糧”は際限なく
実態を知らない彼ら只人達が供給してくれていますからね有り難いことです。
我々を ”概念上の存在” と思い込み刻を重ねるごとに
さらに神格化して、我等の糧である”信仰心”を際限なく提供してくれるのですから
願ったり叶ったりとはこの事」
とハグスールは事務的に答える。
「おうともな 只人共は俺らの秘蹟は”信仰心”に応じて賜っていると思い込んでやがるし
刻を重ねる事、華美な装飾になっていく人界の信仰の場だという建物群を見ていると
滑稽だよなぁ ハグスールよ」
とアグスト。
「えぇ凡百な只人達は、”信仰心”に応じて我等の秘蹟を賜っていると
思い込んでいますからね。
”信仰心”などは関係なくただ、単に術の練度のみで秘蹟を
与えているとは思いもしないでしょう
でも兄上のおっしゃるその滑稽な只人のお蔭で
関連する学術やら建築術の発展、
そしてそれらを巡る戦事が起き兄上にも
きちんと恩恵が巡ってくる
そして、定命の理が短いがために、我等の”真実”を知らず次の世代へ
”概念”だけが継がれていく
”信仰心”に応じて我等の秘蹟を賜る”
とね
全く、母上が構築されたこの循環にはたまげたものですよ
遇々強大な能力を持って産まれたとしても
定命の理が有る限り我々には大した脅威にすらなり得ません」
とハグスールは、理路整然と持論を展開した。
彼の持論は、強大な能力を持つ種族の繁栄は
簡単に認めない事を暗に指していた。
アグストもクロノーラも彼の理知的な持論に異論は挟む余地は無いと思ったのか
二人共、首肯。
ハグスールの持論では有ったが、彼の過去の何回かの同様な発言でも
女神:リーンが一度たりとも聖牢送りにしていない事から
ハグスールのこの発言は、公言はしていなくとも女神:リーンの言葉でもあった。
「でもよ ”また”服わぬ種族が活発になってきたら、世界を引っ掻き回されないか? 」
とアグストはどしりと胡坐を組む
彼がこうして胡坐を組み座る時は、
この話題がもう少し長引く事を示していた。
「やれやれ 兄上、今の彼らは既に居場所が定まり、清濁の”濁”の甘い蜜を
たんまり享受していますから後はその”蜜”を好なだけ享受すればいいだけの事ですからね。
ですから、 ”神族” にいまさら半旗を翻す暴挙には出ないと見てますよ
我々にさえ半旗を翻さなければ、問題はありませんし
今の彼らには、もうこの世界の一部でも壊せる程の能力も
種族の数も足りていないのですから」
とハグスールは怜悧な目を細め
「ガハハハァ そうだな、そうだろうとも
精々可愛い少女の恰好で暴れてみるがいいさ 出来るもんならなァ」
とアグストは豪快に笑う。
彼ら神族にとって世界の理が
大きく歪められなければ闇の手勢に与しようが、それで甘い蜜を享受してようが
そんな”瑣末”なことはどうでもいいのである。
どんな非道で下劣なあのサリにも術の修練度に応じた祝福を与える
神族が実利的であるのは、この会話からも嫌というほど伺い知れた。
「兄上はそうやってすぐ、自分に都合のいい戦に誘導しますね」
「相変ず聡いな それと気付いたか? 」
とアグストは急に話題の矛先を変えた。
彼がこうして、話題を変えるのはハグスールを言葉で一本取りたいと何か目論みがあるか
いつも事務方をしていて執務室に篭っている弟分に、自慢したいことが
あるかどちらかである。
「何が? 」
とハグスール。
ハグスールはアグストに気付いて、自分に気付いていない事が有るとは思えなかったが
こういう物言いをされると衒学気質な自分にとって
興味を唆られる話題をそのまま看過することは矜持が赦さない、
さり気なく兄の言葉をこう煽り誘導した。
「ふふ わたしも母上の外界の漫遊には、ただ単にあの娘が気になる以上の事はある
と踏んでいますが、言い出したのは兄上ですから
推論でもいいですからおっしゃってみて下さい」
とアグストの自慢したがりな気質を刺激した。
「ふん、そうきたか しょうがないなお前の矜持を今は立ててやる
これはあくまでオレの推論だがな
オレ達神族は一切外界の事には”干渉”しちゃなんねぇ
この協定は知っているな」
「えぇ 知っていますとも」
これは支配域を定める際女神:リーンが神界と人界双方を支配域と定める対価として
直接の人界・魔界・冥界への干渉を自ら禁じ、神族にも徹底させていたのである
「でもよ”間接的”にならどーよ? あの異性装までさせて可愛がっていた
俺らの ”末弟” に何らかの ”囁き” をしたらってな
アイツは今は神族でない ...が最も神族に立場が近いヤツだ
聡いテメェのこった 後は、解るな? 」
「ふふっ 流石兄上 戦には奸計が付き物、わたしが一本取られましたね」
とハグスールは両手をあげた。
女神:リーンが直接囁いても、囁かれた方が勝手に行動を起こせば”直接”干渉はしていない
あくまで、行動を起こしたのは言わずもがなである。
「まぁあくまで推察だ 忘れちまっていいぜ ただタフタルに降り立ったのは
単に信仰を深めるっていうのには裏が有りすぎるかなってな
そう思っただけだ」
大雑把で粗野な彼は奸計や謀り事等となると打って変わって
ハグスール以上の洞察力を見せるのである。
「おっと駄弁っている場合じゃなかったな 天使共を
みっちりシゴきゃないかんしな 邪魔したな」
「兄上、過度のシゴきは勘弁して下さいね
折角死神から収集した魂を転生の輪にも乗せられなくなるくらい霧散させて
敢えて魔物の種にすることもありますまい」
「あぁ 分かっているさ ではな」
と持ち場へ歩いていった。
すべて魔物を含む魂は死神の回収に邂わないと生き死人や幽体系の魔物になるのが
常だが、千々になってしまった細かい魂の残滓は
行き場を完全にうしない魔界に流れ、また新たな魔物の種として
揺籃されていた。
これが、いくら魔物を狩っても一向に減らない仕組みであり
何処からとも無く湧いてくる世界の理であった。
魔物が本能的に只人を襲うのは、嘗てはヒトであった魂の残滓が
妬んでいるのが大きく影響している場合も中にはあったのである。
戦神アグストの推論は、はからずも当たり
女神:リーンは追放したセリシアを通じて ”間接的” に人界・魔界に干渉しようとしていたのである
「ふふっ だって見ているだけじゃつまんないわ
銀の娘は、この世界にとってもいい刺激になるわぁ」
とタフタルを漫遊していた少女の姿に変じた女神:リーンは
追放したセリシアの元へ足先を向ける。
「それにしても、世界魔樹の循環を弄るなんて感心しませんね
”贄の蛇たる クロウ・クル” お蔭で調整には苦労しました
これは母上に報告せねば成りません
でも厳重注意ぐらいで済ませそうですけどね
身内には甘いお人ですからね母上は」
この事案は、シーアがゲルギルと対峙した時に、ミーアが
クローティアからミーアが教わった禁呪に近い高等呪文を行使した際
世界魔樹の機能にほんの少し齟齬が生まれ
機能の乱れとして神界に観測されていたのである
とまた、ハグスールは神界の事務室に篭り
処理済みの書類を指で弾く。
その書類には
”” バルケモス大陸で混沌の覚醒の兆はし有り
現在、経過観察中ながらも留意されたし ””
と書付けられハグスールは目を細めた
従者からの報告が有り
「やれやれ、兄上が”また調子に乗って只人を煽らなきゃいいのですがね
悪意の”処理”担当が欠けると こうも混沌:ベルビュールの覚醒が早いとは
難儀なことですね
それにしても、銀の娘の誕生に居合わせたかのような見計いぶり(タイミング)ですね
彼の者が彼の地へ航るまでは温和しくしててくれるといいのですがね」
とニヤリと口角を上げる。
「あっ ハグ兄ぃまたなんか企んでるぅ、おかーちゃまに言いつけてやる」
「これ、 クロノーラ貴女は、勘繰りすぎますよ刻の女神らしく温和しくなさい」
「でもね ハグ兄ぃ刻の女神って一方的に只人を見守るだけじゃない
でもでも、クロノにはねぇ只人に”うっかり”とちょびっと刺激を加える
”玩具”を与える事が赦されてるんだよ
混沌に”玩具”を与えても ......っ」
とクロノーラの言葉は詰まったのはハグスールが、ジロリとクロノーラを睨めつけた
からである。
「いいですか 貴女に口喧嘩ではわたしでも勝てませんがね
”アイツ”に玩具を与えたら間違いなく”聖牢”送りになりますよ」
と言うと
「そんなことしたら、刻の流れがめちゃくちゃになっても知らないも〜ん」
と言い返す。
「はいはい、でもいくら”退屈”でもアイツに”玩具”はダメですよ
全く、最近刺激が少ないせいかとんでもないことを言い出しますね」
「だって、セリシアちゃんいなくて退屈なんだもん」
「貴女はその退屈さもまた”仕事”ではないですか
刻の流れとうものは 云々......これっ! 話をちゃんと最期まで聞きなさい」
とハグスールの長い説教が始まりそうになり
クロノーラはそそくさと人界から取り寄せた
俗物に濫れた自室に逃げ込んだ。
「あ〜ぁ いくら”お仕事”とはいえ退屈ってつまんないの」
とクロノーラはいつものように冥刻の玩具箱弄りを始める
ここには、刻から葬られて静かに”余生”を送っている
数々の神代級遺物・魔物等凡そ人知を超えるモノ達がごちゃまぜになって放りこまれている
そんなモノを”おもちゃ”代わりにして遊んでいる幼い刻の女神:クロノーラ
そんな静かな神界の日常に戻った。
わたしが目を覚ましたのは昼近くだった
『よう寝とったな 疲れたかシーア』
「えぇ クレアったらあんなことまでしなくていいのに」
とミーアにした女同士の仲睦まじい行為を思い出し顔が火照る
『あぁ、全く獣の様じゃったのぅ』
とニタニタ嗤う。
「茶化さないでっ!! 」
とわたしはクローティアに猛抗議する。
『はっはッ 別に儂は気にせんよ まぁそれはさておいてこれからどうするんじゃ?
ニース達を待つか、それとも、辺りを見て回るか? 』
「う〜ん まず、辺りを見て回るわ ニースさん達まだ来てないみたいだし」
とその時わたしは、彼らが見当違いの場所に転送されていたとは露知らず
まだ到着していないと思っていた。
リベランナの帰宅を待つこと暫し。
「おぉ 起きたか コルスナを使いに出したがまだ帰っては来ておらぬ
それにここでの移動の方法を指南しようと思ってな」
「移動? 」
徒歩は、基本として此処は馬車も使役獣に乗っているのも誰一人見掛けていない。
「ここは使役獣はダメじゃ 強い瘴気が障って言うことをきかぬ
”召喚”による使役は可能だが皆暴走を恐れておってな
外縁層では喚ばん事だ。
お主は”召喚士”のようじゃから予め忠告しておくぞ
あとそのリボンは”蛇竜”じゃろ
其方程になれば大丈夫だろうが、衆目に晒されるぞ
それで、善いならば好きにせえ」
とリベランナは、暗にこの外縁層では召喚もユラによる騎乗もやめておけと
言っていた。
「分かったわ でも皆はどうしているのかしら? 」
と尋ねると
「後のお連れさんが起きてきたらな」
と言っていたが
頃合いにミーア・ビヨン・ヤンスが割り当てられた部屋から身支度を整え起きてきた
「シーちゃん 昨夜のこと覚えてる? 」
とこれが、彼女の顔を真っ赤にしての朝の開口一番だった。
わたしは、火照りを感じながらも首肯。
男性の時とは違い徴は無く、既に女の徴であり子宮も備えている。
劣情ではなく、女性としての淡い疼きを下半身に感じていた
(これが、女性の疼き? )
わたしは、”初めて”男性とは違う疼きに軽い悦楽を感じ取った。
それを、少女の顔に隠し、
「えぇ おねーさま でも、おねーさまとはわたしがこう(シーアに)なる前から
偶に、有ったじゃない? だから、平気よ」
と答える。
わたしがわたし(シーア)である前は、年頃の充実した男女が屋敷に二人のみ
あとは、言わずもがな。
「でもでも ごめん顔洗ってくるっ!! 」
と言ってメイド服を翻し再度沐浴場へ
やや有って戻ってきた彼女は、タオルで乾いた顔を指先を丸めた手で
くるくる
顔を再度まるで”猫”がそうするようにしていた
ケット族の中には、種族本能かは知らないが無意識にそうした仕草が出る者もいて
彼女もそうした一人だった。
耳も
くるくる
手で触る仕草はとても可愛らしかった。
ヤンスは、出逢った頃とあまり変わらないフード付きのローブを目深にかぶり
愛嬌のある赤い瞳を彷徨わせていた。
今回は、ロムルスの広大な空間”一杯”に外部から糧秣を持ち込んでいる
閉ざされた世界ということあり、
ロムルスの空間一杯になるまで食料を買い込んでいたのである
リベランナには滞在の費用の代わりとして
ニラウスから教わった携帯食糧を渡す
今回は、”天然の”蜂蜜を加えた玉蜀黍の粉末に砕いた胡桃の実を混ぜ、練った小麦粉で覆い
軽く焼いた物で手の平大位の大きさがある
後は、杏、葡萄、林檎の乾燥果物である。
砂糖黍の甘味は流通量が少なくバルケモス産のものは
高価で一般的な甘味は、冒険者の稼ぎの一つでもある
蜂蜜である。
蜂は大きな社会性昆虫型魔物でアラクネ同様、肥育魔物として
養殖もされていている 透明でとろみがある”蜜”を保持し
独特の風味が無い。
肥育するとどうしてかあの独特の色や風味がなく、滋養効果が無い物が
産出されるのである。
却ってこれが多用途性がありこの世界では身近な甘味として
重宝していた。
野性のは、逆に淡い黄金色で独特の風味がある
菓子等の甘味としては、前者の風味が無いのが重宝されるが
価格としても滋養効果が高いのは後者の天然の魔物産であった。
「おぉ これは美味い コルスナのヤツから 聞いたと思うが
儂等は、肉と言えばロネベや遇々、外縁に外界から
迷い込んだ外界の家畜を刻をかけて肥育した物、燕麦や雑穀しか口にできぬ
こういう”超高級”なモンは昼ビトの一部か貴人しか口にできんのだ
ほんとにお主達に巡り合って良かったわい
外界では誰隔てなくこのような食べ物が手に入るのか? 」
とリベランナは問う
「いいえ 誰でもという訳ではないけれど 対価さえ払えば手に入れる事自体は可能よ」
わたしは、正直に話す。
ここ(ギアトレス)のように産まれた境遇によって ”全く手に入らない” 事は無い
おカネという対価を支払いさえすれば”誰でも対価に応じた
食料や物品を手に出来る。
このことを話すと
「ここも嘗てはそうじゃった ...が、魔人:ァタウェーが出没し魔聖:ユトレイアが
その、魔人の封櫃維持の役割を担ったその刻から
すべてが変わってしもうたのじゃよ」
と目に光る物を浮かび上がらせ軽く嗚咽した。
「魔聖:ユトレイア? 」
またその人物? の名が飛び出した
「ここでは、話せぬ 彼女の取り巻き達が聞き耳を立てているやもせんからな
言うなれば彼女も魔聖として産まれ落ち無ければ、縛られる事もなかったろうに
忌ま忌ましい取り巻き共め」
とまるで魔聖:ユトレイア自身は悪くないというリベランナの言い方であった
「すまん ここの移動方法じゃったな この広大な集落には
抜け道があってな」
「抜け道? 」
「そうじゃ抜け道と言ってもお主達が想像しているようなのでなく
一種の転送陣じゃ なんせここは一番端から端だと徒歩で百昼夜もかかるでの
我等はそこかしこにある転送陣を使って移動しておる。 」
到着した時から広いとは思っていたがまさかこんなに広いとは思っていなかった
「まずは一番の近場の転送陣を案内しよう ついてまいれ」
と案内されたのは歩いて程ない袋小路のような場所である
この地面を見てみ 文言が描いてある
共通語で書かれてあるから読めるじゃろ」
と地面を見ると
”先踏まずの石切場” とある
「えぇ ”先踏まずの石切場” かな」
「ほぅ 読めたか 皆はどうじゃ? 」と
ミーア・ビヨン・ヤンスに問うも皆首肯
{俺様も読めるぜ これでも魔樹製だからな}
とロムルス。
「ふむ、よかろう この集落にはそれぞれ違う文言が書かれてあって
行きたい転送陣の”文言”を唱えるだけで善い
だが 隣を見てみ 蒼い結晶があるじゃろ? 」
と促されると隣にはゲルギルが棲んでいたわたしの背の半分くらいの
六角柱の結晶があり
青白い光が結晶の一割近くまで光っていてあとは透明であった。
「この青白い光が一杯になればなるほど遠くへ”転送”出来る
一息に遠くまで転移出来る代わりに光が貯まるまでは遠くは飛べん
何回も都度、結晶を渡り歩くことになり
それだけ結晶の文言も覚えなけれなならん
できるだけ、後の利用者の為に消耗させず
転移の回数を多くするのが暗黙の決りじゃがの。
怪しからんやつめ これは入る陣と出る陣双方で光を消費するから
誰かが遠くから一息かもしくは、面倒臭がってあまり陣を継がないで来たと見える
しばらくは、ここから徒歩で半日くらいの場所しか転移出来んな。
いうもでもなく 此処の文言 ”先踏まずの石切場” は忘れるでないぞ
此処に戻って来れなくなるか
衆目に晒されるのを覚悟で”蛇竜”を使うかどちらかを迫られる事になるぞ
我れらは木の根の様相で説明出来るからいいが外界のお主達には
難儀だろうしな」
「えぇ 気をつけます」
とわたしとミーアとヤンスは書き付けて、ビヨンは
[ 番地を記憶しました ”先踏まずの石切場” を基点に設定 ]
と聞きなれない言葉を使い ”記憶” したらしい
「 貯まるまでは出来ることはないからな あと二昼夜ぐらいは掛かるから
それまではのんびりせぇ」と言われ
「そうしますねミーアおねーさま」
とミーアを促す。
「そうね 私まだマギの質が外界と異なってて(環境)に慣れなくて
上手く馴染んでいないのよ」
「そうねわたしは平気だけど まぁゆっくりしましょ」
「そうでやすね」
とヤンス
[ ビヨンも、マギの変換効率の最適化に
多少時間を要し、演算負荷が多く戦闘力に
現在七割しか割くことしか出来ません ]
と聞き慣れない言葉ではあったが、どうやらミーア・ヤンスと同様らしい。
「そうね、もう少し宿でのんびりしましょうか
でも内縁層までの抜け道は教えてくれますよね
リベランナ様? 」
「あぁ勿論、じゃがちくと遠いでな十程経由すれば大丈夫じゃろ
皆は余所者ということでピリピリしておるし
宿に篭った方がいいじゃろ、篭ることに関しては問題ないかの? 」
「えぇ問題ないわこれでも錬金術師なの
篭ることには慣れているし、レフィキアという異空間もあるから平気よ」
「神代級遺物か? 」
彼女に ”旧き贄の蛇” の事を明け透けに話すわけにもいかず
「えぇ お祖父様が昔に」
と何時もの方便を使うが
「ふッ まぁ”そういうこと”にしておくかのぅ」
とニヤリと意味深な含み嗤いを見せた。
転移の陣の稼動に必要なマギが一割程しか無かったのは、
サリが向う(ニース達の場所)から此処に来るために
一足飛びで来からには違いないが、次の転送が可能になるまでニ昼夜程間を置かねば
ならなく成ったのは、シーアが動く事も出来ず、且つ、彼らがシーアの所へは少なくとも
ニ昼夜程間を置かねばなら無い事を意味していて、
図らずも双方の足止めとなり、彼の思惑通りとなった。
一方で、リベランナのお使いを済ませたコルスナは
大規模討伐隊がいる場所近くのある袋小路のような
樹洞で、
「我が、主にてギアトレスの統治者に最も相応しき御方
魔人:ァタウェー 先般、銀の娘がァタウェー様のお膝元入りを
確認致しまして御座います」
と可愛い容姿からは出たとは思えない
野太い”男”の声、さらにワンピースドレスにははっきりとわかる
違和感があった。
{そうか ようやくかコルスナ いや我が腹心のフェゴールよ
銀の風がようよう我れにも棚引くようになった 我れとの融合の刻は近いな
上乗である。
しかしフェゴールよ
そんなにそのような少女の姿が好きか?
異性装者とは全く珍妙な者共達だな}
「はい、我が主 このフェゴールめはかような少女の姿に焦がれていておりまして御座います
何れは、”完全”な貴人の少女になることがこのフェゴールの願いでもありますが
男の証はそのままに、この背徳的な躰こそわが誇りでも有ります故」
とコルスナいや、ァタウェーの腹心の部下 ”フェゴール” はワンピースドレスの下半身を
膨らませながら黒い結晶体に向かって報告していた
このフェゴールは ”服わぬ種族” ではない
元々魔族でありァタウェーに早くから与していた異性装者で
”服わぬ種族” とはァタウェーの実験の余波で徴を格納出来て、声音も
変えられる強い少女願望がある 純魔族の ”男” だった。
しかし彼は余波で夜ビトのように変成してしまっていた
熱烈なァタウェーの信奉者ということで女は蹂躙し、男は”少女”の振りをして
ァタウェーの傀儡に仕立てる そのような活動をしていて
ようやく夜ビトの中でも昼ビトに近い姿になった
そして、周りからも ”誰からも好かれる器量好しの美少女” と称されるに至る。
そして夜ビトの指導者的立場のリベランナのお使いとして深くその居場所に
根差していた。
いつか、ァタウェーの完全復活とギアトレスの統治を渇望し、内なる野望を隠し
尻尾と徴と可愛い鱗以外は完全な少女となる事を夢見て。
サリの軽い憂さ晴らし事件の時、コルスナが声を掛けたのは ”住人” ではなく正しくは ”サリ”だった
「おっ ”コルスナ” じゃねぇか オレは今すんげぇ イライラしている
例えお前でも 邪魔すんなよ いくらァタウェーの部下でも ただじゃ済まさんぞ」
と恫喝してきたときでも
「サリ様、 封印が解かれたのは本当なのですね ぁぁあ ァタウェー様
いよいよァタウェー様の統治の夢がすぐそこに
改めてサリ様、
わたし、コルスナは今 お使いの途中にて御座います まずお耳を」
と可愛い少女の声で囁き、
「今、オレの後から、オメェの憂さ晴らしに丁度いい メスガキが一匹やってくる
ソイツでたんまり 徴を満足させてやりな
オレも我慢してるんだからな オレの分も愉しんでくれや」
と下衆い男の声で囁き
そして、コルスナもワンピースドレスのスカートを捲り
「どお コルスナの見て見て♡ すんごいでしょ ねっ」
ショーツを押し上げた徴を少女声で自慢気に見せる
「ほぅ、ずいぶんヒトらしくなったじゃねぇかよ
前は徴だって化生みてぇだったのによ」
「もーイヤイヤっ それをコルスナに言わないでっ!!
オンナノコにそういうこと言うヒトってキライっ!! 」
と今度は、いやいやとぶすくれると、
「ちっ 一丁前に少女のようにカマトトぶりやがってよ
よく抜けしゃあしゃあと ”同族” を売れるモンだぜ
まぁせいぜい死なないように気張りな」
とサリはコルスナの顎を人差し指でくいっと持ち上げる。
「ベーっ コルスナを莫迦にちないで!! コルスナはオンナノコなんだから!! 」
と”少女”のように自分のスカートを掴み地団駄を踏み猛抗議する
「分かった分かった じゃな
”同じ徴を隠せるモン同士”仲良くしようぜコルスナちゃん」
と実際はこんなやり取りがなされた後、サリが凶行に至ったのである
彼:コルスナは実は菓子などの甘味はあまり食べたことはなかった
シーアに貰って食べた時も
今まで感じたことのない味に呆然としていた。
そして彼の集落内にある各拠点に戻ると質素なワンピースを乱暴に
脱ぎ捨て豪奢なワンピースドレスで普段の生活をしていた
そして、
(やっと、オレ様の願いが叶うぜ ”ァタウェー”さえ 討滅されたらこんな場所には
用はねぇ 早くこの薄気味悪いヌメヌメしたくすんだ碧の肌をあの”シーア”のような
白い肌にしてぇな でも尻尾と可愛い鱗と徴は、お気に入りだからな
このままでいいや
もう ァタウェーにも ”フェゴール” なんて呼ばれたくねぇし
オレ様は ”コルスナ” として魔族社会に”また”取り入ってやるぜ)
と大好物のロネベを生きたまま可愛い手で ”毟って” 小さなピンクの唇に運びつつ
下品な笑みを浮かべて
シーアとの一瞬の接吻を思い出して男の劣情がまた沸き起こっていた。
彼はリベランナの使いでもあるが 彼女には”通い”で使われている
此処の住人は
誰しも自分の容姿を気にして家族以外は、同居したがらない
このことが図らずもコルスナが”男”で”今まで”ァタウェーの傀儡ということも
看破されずにいたのである
しかも、一部の服わぬ種族同様徴を体内に隠せる
尤もこれは後天的で彼にとって思わぬ”幸運”だったが。
彼は野心家であり、純粋な魔族だったのがァタウェーのせいで
此処の住人と同じになってしまい幾星霜もこの機を望んでいて
内心はシーアに一刻もはやくァタウェーの討滅を願っていた。
コルスナという名は、ァタウェーによって死んだ彼の”娘”であり
今の姿はその彼の”娘”の姿であった。
有翼魔人:ァタウェーの魔導実験の余波は、”フェゴール”の隠された願望をも具現化し
実際に躰の変化をもたらしてしまう程でもあったのである。
だが、まさか彼も”愛娘”と融合するとは想定外だった
彼は、娘とは違う”少女”の姿でお揃いのワンピースドレスや小物で
”母娘”のように過ごしたかったのであり
娘の姿等は、望んではいなかった。
しかも、娘の自我は完全に消滅、その上醜い”夜ビト”のような肌に変わり
挙げ句、鱗や尻尾まで生えてきてしまった。
顔や手足には無いが躰には疎らな鱗があり
可愛い淡いピンク色の貝殻のように透き通っていて
彼の機嫌で赤く色が変わり綺麗な文様のように配置されて実はこの鱗に関しては
大のお気に入りだった。
しかし、これと融合した事実は別である 彼はこの瞬間から
ァタウェーに愛娘:コルスナとして復讐を誓う。
そして、自分の代わりに手を下してくれる強い存在を幾星霜も待ち続けて来たのだ。
彼の腹心になるため同族を蹴落とし、
徴を体内に隠して少女として世間を欺き
ようやく、腹心にまで上り詰めた。
...が、ギアトレスは魔女戦争で完全に封櫃の憂き目に遭い、計画は頓挫したかに思われた
なんの先触れか忘れた頃にいきなり封印が解かれ、ァタウェーさえ討滅出来そうな
”強い存在”が現れる
あの時、菓子を貰って彼女に抱きついた時自分と彼我の差を完全に理解した
この少女なら きっと と。
今、此度この機を逃すことは、何が何でも彼には出来なかった
彼は他の服わぬ種族とは違い性格はそんなに偏向していない
あまりに残忍なことや非道なことは彼の好むところではなかったが
美しく可愛く成りたいのは事実で、それとァタウェーへの復讐
そのニ点ではその限りではなかった
そそ二点が叶うなら平気で、仲間を売り世間を欺くそれが、
彼:フェゴールもといコルスナと言う”男”だった。
盟約を誓った相手には、盟約の理がある
盟約は枷であり、同時に強大な能力の担保でもある
裏切り行為は必ず、自身に授かったと同等な能力の応酬として返ってくる
そこで、寝返る際には敵対者に
その容姿を活かし取り入っていて自らは直接手を下さず、
間接的に亡き者にする
これしか彼:コルスナには理を掻い潜る方法は無い。
今回の、ァタウェーの復讐・抹殺もまさに彼の立ち回りの見せ所であり
可愛い容姿をうまく活かしシーア達にうまく取り入れられなければ、なかったのである。
シーアに彼の弱点を教えても良ったが
”自分”しか知らないァタウェーの弱点を教える訳にはいかなかった。
彼の他にも”熱心な”傀儡はゴマンといる
自分の裏切り行為が他の傀儡共に、知れ渡る訳にはいかないのである
なぜなら、彼の後釜を狙おうと虎視眈々と監視の目を光らせているのが
そこかしこにいるからだ。
(まぁ、あの娘ならオレ様が見るに、危険を冒して弱点を教えなくてもヤツを殺れるかもな
あんな甘味とやらは、初めての経験だった あんな高級そうなモン簡単にくれるなんざ
シーアって娘は、 案外すんげぇお人好しなのかも知れん)
ァタウェーはもとより潜在的に優れた能力のある者は
例外なく、能力に溺れ、親しく愛しい者を平気で有象無象に巻き込み巻き込まれる
彼の今は亡き”愛娘”のように。
そんな驕りが彼女からは微塵も感じられない
シーアという存在はそんな不思議な魅力を闇の手勢にも
遍く、振りまいていて、
闇にどっぷり浸かって、スレた生き方をしている。
彼にとっても、服わぬ種族にとってもそんな、彼女は
眩しく感じていた。
今まで盟約を誓って気に入らない主を尽く亡き者にしてきた”彼”は
自分が”男”であることを明かして彼女の永劫の従者に成ってもいいかな等と
珍しく感傷に耽っていた。
「あぁ、可愛いわたしのコルスナ ようやく ”とうさま” の願いが叶うわ
これが叶えば ”とうさま”は ”貴女” として生きていけるのよ うれしい♡ 」
んっ...... んんっ あぁんっ......んんぁ ぁんっ♡ 最近また可愛いくなったわね コルスナ。
と髪を蠢かせ姿見に映る”愛娘”の、今は自分の姿に
ワンピースドレスの下の劣情を露にして長い接吻をする。
彼の人前では決して見せない、
激しい復讐心と行き過ぎた愛娘への愛情で壊れてしまった部分を明け透けにして
何時迄も姿見の中の ”愛娘” の姿を慈しんでいた。
彼はもし、復讐が叶うなら何処かで少女:コルスナとして
静かに暮らしたいとシーア達を見てからそう思えるようになっていた。
サリのせいで、ニ昼夜は ”先踏まずの石切場” へは戻れず
此処、大規模討伐隊が滞在している ”星相の窪地” に留まざるを得なかった
リベランナの使いを済ませ、彼女には魔器ですぐ戻れないことを伝えて
此処での拠点に篭り
彼の愉しみでもある服の着替えを愉しむ、
なんといっても”愛娘”には
最高の服を着せてあげなければならないから。
しばらく、自己愛を愉しんだ彼は表へ出て散策を始める
彼の下っ端から ”妙な” 連中が近くに滞在しているという
連絡を受けたからである。
「おや、コルスナちゃんお出かけかい? 服も可愛いね」
「えぇ ありがと えへへっ これ、ようやく物々交換でやっと
手に入れたの 可愛いでしょ?
コルスナは今日はもう ”先踏まずの石切場” には戻れないから、今夜此処にお泊りなの」と
器量好しをいつものように装う。
「あら、大丈夫かい つい先刻この辺で夜ビトが殺られたっていう話だよ
何でも 相手は”男”らしいし
外界の冒険者連中では無いことは分かっているけどね気を付けなよ」
「うん小母ちゃん ありがとね 気を付けま〜す♡
ところで 外界の冒険者ってこの近く? 」
「あぁそうだよ でもほんと気を付けな アンタ可愛いからね
目ぇつけられんじゃないよ」
と気を遣ってくれたが
(チッ るせー ババァだぜ こちとら ”男”だし、そんな 柔じゃねぇよ 莫迦が)
と内心で毒づきながら
ニコニコ顔で可愛くしなを作り尻尾を揺らし頭をペコリと下げる。
「ほんと可愛い娘だよねぇ コルスナちゃん
われら夜ビトでも一番の美少女だよね」
と彼が立ち去りかけても尚、ほめてくれる。
(けッ ッたりめーだろうがよ 揺るぎない事実を今更のように言うんじゃねーよ)
と更に毒づいた。
もし彼女が悪し様に言おうものなら、劣情の犠牲にするか
彼の ”エティアの根” で躊躇い無く制裁を加える
自身の美醜に対する評価には、凄まじく敏感に反応するそんなコルスナだった。
”エティアの根” は魔族:フェゴールとしての最大の武器である
大規模儀式魔術の魔法陣を操作・改竄するものであり
陣が例え稼働中でも強引に操作・改竄出来る能力がある。
彼の武器は蠢く淡い銀光沢の紫の髪全部ではあるが
特に普段は視ることさえ不可能な紅い ”エティアの根” は
それ単体でも凄まじい膂力があり大の大男ぐらいなら簡単に縊り殺せる。
そんな彼でさえ魔族仲間では戦闘は最弱な部類であり、
術式専門に特化することで、魔族での地位を磐石な物にしていた
(さては、早速サリのヤツめ さっそく愉しみやがったな
オレ様も と言いたいが アイツほどは、ガッついていねぇしな)
彼は、当然のように女好きではあったが
自身は、当たり前のように愛娘の”コルスナ”のつもりでいたし
”妹”のように容姿を恐れずに
可愛がってくれるシーアのような、優しそうなお姉さんが大好きだった。
彼にとって女性とは、服わぬ種族のようにだた劣情を満たす相手ではなく
”姉”のように甘えても優しく接してくれる女性が
非常に好みで その時、気に食わなかったら、男の劣情を露にして
好き放題嬲るのが彼の欲望の表現だった。
(まずは冒険者とやらを見学にいくかな どんな連中か愉しみだぜ
”大好きな” シーア(ねーさま)とは比べ物にはならんだろうが
リベランナへの報告もあるし まずは女と冒険者とやらの品定めといくか)
とニヤニヤ顔を隠そうともせず
大規模討伐隊が滞在している場所まで
居もしない、危険人物を気にする”振り”をしつつ
拠点近くまで近づいた。
彼ももまた、徴を体内に隠せるが、
彼の場合は、完全に露出させない限りは可愛い少女の声のままである
服わぬ種族同様、ァタウェーがもたらした彼らと彼にとって最も嬉しい変化は
徴を”完全”に露出させても
実物を見せない限り気配からでは”男”とは看破されないそんな”特質”があった。
ただ彼の場合は、野太い男の声になるので
気を遣う必要はあったが。
サリは、聖骸遺構:エトルの最深部とされる祭儀の祭殿まで到達していた。
途中、何度か魔物に絡まれたがもとより彼の相手ではなかった。
脱出時の時同様、乱雑に荒れてはいたが、蒼い水晶の棺がニ、
紅い水晶の棺が三、瓦礫の端から覗いていて、
可愛らしい”少女”がそれぞれ眠っていた
「あぁぁぁ、 おねーさま方暫しお待ち下さいませ」
とサリは”本来”のサリューシアの姿に戻る
魔蒼樹の根はウル族の大男が四、五人程束になっても叶わない
膂力と怪力を誇る。
それを股間の違和感も気にせず可愛い薔薇柄のワンピースドレス、足にはフリルソックスと
紅いパンプスとそんな可愛い”少女”が難無く瓦礫を退けていき
数刻後には、綺麗に片付いていた。
一番、背の高いフレアネア・小生意気そうなテリエラ
何れも見た目は美しい少女ではあるが、サリ同様”男性”である。
後の、紅い水晶の棺は服わぬ種族でも”王系”と呼ばれメイドを複数抱え、
何れもそ中の一人、イグレイアが作製した人造魔族であるが
今は、小さな石像に変じて傍らに一緒に封櫃されていた。
その内の淡いパウダーピンクのメルカトリア・アリスティシアは
サリが見ても本当に”男性”であろうかと疑う位
美しく可愛かった。 ...が、眠っていてもスカート部の違和感は
彼らが間違いなく”男性”であることを示していた
(相変わらず、寝ていても”女”のことばかり考えてやがるな
アリスティシア様には”ノージェ”を堕としてもらう大事なお役目があるし
メルカトリア様にも、オレが血眼になって探している
天球天空都市:キエラシアに住んでいただかねばならないしまだまだやることがあるな)
とひとりごちる。
サリは建前上、理想郷には属していない
この五人の見た目少女達も理想郷には神族との
確執が有る故、神族とは距離を置くと見ている
今代で突然目を覚まして、神族と
体面上は連んでいるいるとは、
王系の彼らには到底受け容れ難いあろう事だからである。
そこで、王系の方々にはサリが今代で必死に追い求めている
天球天空都市:キエラシアの所在を掴む必要があったのだ。
嘗て服わぬ種族が栄華を誇っていた頃の 空中浮遊都市群ともいわれ
大陸から分離したベルゼやギアトレスと違い完全な人工浮遊都市である
建造したのは、蒼き深き者達とも言われているが
サリにとってそんなことはどうでもよく広大な一角に王系の
服わぬ種族達の安寧の場をただ提供したかったのである。
服わぬ種族にとって天球天空都市は支配欲の対象ではなく
安寧の場という感覚でしかなかった
彼ら服わぬ種族が統治者になれば、それをよく思わない
神族が必ず絡んできて種族存亡の危機に立たさせるのは自明であったからであり
自分達はすでに、闇の社会に組み込まれている
美味しい蜜を、敢えて種族存亡の危機を招き手放すつもりなぞ毛頭無かった。
”所有権”は永きをさまよっているうちに完全に喪われていて、
サリにとって誰が”所有者”になっても良ったが、
出来ることなら銀の髪の娘に所有権を、と頭をよぎるが
今は、儀式が優先である。
早速、徴を引っ込めてサリの舞い装束に着替える
棺や祭儀の道具などを作法に則って配置して儀式の準備を進めていた。
今回は特別な儀式を並行するため祭具の 精錬炉:ベルマテリアの炉 を
設置、火を起こす
この火はサリの術式の昂りに伴って火勢が増す。
神代級遺物を溶かし入れ、
それに素手を差入れて己の被術者に対する信奉をはかるという
聖職者最高の 儀式:ベルマテリアの儀 を執り行う物であった。
この鋳溶けた、神代級遺物はいかなる封櫃をも解くという秘蹟・秘儀である。
すうーっと 息を整え錫杖を鳴らす
しゃららら〜ん しゃららら〜ん
そして可愛い”サリ”声で
一の節 「一声 天の御柱、地の御柱
星卓の眞、彼の棺に降りし」
(あぁ サリのおねーさまサリは一生懸命に謡います
この四節にサリのおねーさま方のすべてを捧げます
あぁん 股間に風が来て気持ちいいわぁ)
ニの節 「ニ声 神祝ぎの、言霊以て
甕の灰、甕の杯、灰を杯に、御義祀る」
(ふふ、少ぉし オッキクなっちゃった でも完全に出て居ないからいいモン
だって オトコノコって どうしてもこうなっちゃうよね
はやく、ノージェをサリのこれの虜にしてやるんだからね
待っててね ノージェおねーちゃん
もうすぐサリとアリスねーさまとで、ブチ込んでやりますからッ!! )
と言祝ぎとは、対極な邪な内心で心が満たされていく。
しゃららら〜ん ......しゃらしゃらしゃらん
内心の下衆さとは裏腹に言祝ぎは清廉さを増し澄み渡る声は
五体の棺に染み渡る。
三の節 「三声 天の者、地の者遍くは神座の御元へ
頭を下げし御使いの、請を奉り給う」
(アリスおねーさまとメルねーさまって オッキイもんね いいなぁ
あんなオッキいのぶち込んだらさぁ
ノージェおねーさまってどんなお顔で哭くのかしら?
それとも、それともー おねだりするのかしら? はぁん 愉しみぃ〜♡ )
とサリは言祝ぎを謡いながら恍惚の表情を浮かべ、嬉しさのあまり涙が頬を伝い
可愛い唇は涎で艶やかにねっとりと絖っていた
それを可愛い舌で舐め回す。
そして邪な内心を内に秘め、精錬で美しく誰よりも純粋な言祝ぎが最後の節を紡ぐ。
四の節 「四声 慈悲深き地母神の、亦是此処に御義祀らん
常謐の睦の杯、睦の剣、
睦の杖、捧げ給うなり
女の姿を装いたる、服わぬ子らに目醒めを与えん」
デメテルより強引にタダ同然で買い取った”神代級遺物”の杯、剣(短剣)
杖を惜しげなく精錬炉に焼べ入れる。
高温のこの鋳溶けた、神代級遺物は青白く色が変わっていき
サリの言祝ぎが十分な事を示していた。
青白く”燃える”液体に素手を差入れサリは封櫃の棺に振りかける
この青白く”燃える液体は、超高温の溶けた金属である
祭儀においてこの行為は、術者の被術者に対する信仰が試されるもので
揺らいだ信仰は忽ち、いかなる者も灰燼と化す
聖職者最高の術式であった。
これを小さな火疵一つ負わず身も焦がさず成し遂げたのは
偏にサリのフレアネア・テリエラ・メルカトリア・アリスティシア・イグレイア
に対する親愛の深さを結果をもって、証明したことになった
この祭儀もまた実利的で優秀なサリの儀礼術と信仰心を女神:リーンが
正当に評価し恩恵を与えたのである。
ビシリ
と青と赤の水晶の棺両方に罅が入り”青”の棺だけ千々に砕け散る。
...が、赤の水晶の棺は罅は入ったもののそこまでであった。
これはサリの術儀が拙というわけではなくそれだけ
神族による封櫃が厳重であることに他ならない。
豪奢なワンピースドレスを纏った一見、優しそうで清楚な目付きの少女がムクリと
起き上がる。
髪色は銀光沢のラベンダーモーブと紫の二色で瞳色はベビーブルー
唇の色がローズレッドのその少女は開口一番
「ねぇ サリちゃん? あれからフレアはまだ女と遊んでいないの
此処に連れてきてよっ!! ねぇ」
と可愛い少女声でおねだりしてきた。
「フレアネア様、お目覚めをお待ちしておりました
このサリめが必ず 女を調達します故、暫しお待ちを」
と言うと
「っふふふ サーリ? こっちへいらっしゃいな お耳をこのフレアに貸して」
と手招くと サリの耳元で
「んだとぉ オレがのんびりと ”昼寝” をしていて起きても女一匹用意出来ねぇとは
どういう了見だぁ テメェにはこのフレアネア様が特に目を掛けているんだぜ
なぁ 女は何処だよ!! 」
と野太い男の声でサリの耳元で囁くように恫喝した。
「そうよ フレア”ねーさま” テリエラもメス一匹ほしいわぁ
ねーさまと違って テリエラは、妙齢の熟した女がいいわね」
と背はサリくらい、両の髪を結わえてふんわり広げてフニフニ蠕かせていたのは
同時に目覚めた、髪色は銀光沢のアプリコットとくすんだ黄赤の二色の髪
瞳色は、淡いピンクの小生意気な、お嬢様風の”男”である
ピンクの唇からは可愛い相応の声だが言っていることは
男性が女性をねだる行為そのものだった。
優しいお姉さん風のフレアネア、小生意気なお嬢様風のテリエラ
両者は共に男である。
二人共世の男性同様好みは全くちがう
フレアネアは、童顔の見た目が年下に見える少女が、テリエラは自分より
背が高くお姉さんっぽい妙齢の女性が好みであった
しかしながら、此処は遺跡の最奥で女性がいるはずもない。
サリは
「御二方、今暫く女は堪えて下さいまし
もう三人の御方も皴は入ったものの、いまだ砕け散りませぬ」
「では どうするの? サリちゃん? いい手があるんでしょうねぇ」
とフレアネアは細い手でサリの頬を鷲掴みにしてきた。
「わわっ おまへくらはいまふぇ(お待ちくださいませ)
指輪:レヴェランスの淵に快適な空間をご用意いたしまして御座います
今一度、此処でお目覚めの後のご静養をなさって下さいまし」
と地面に舞い装束で劣情を半分出したまま跪いた。
「まぁ いいわ メルカトリア・アリスティシア・イグレイア様もこんな
クソ黴臭い所に何時迄もおられては、気が滅入ることでしょう
このフレアとテリエラと王系の方々と一緒にその空間で しばらく”静養” します
この皴はァタウェーがまだ健在な証でしょう 貴女の言祝ぎが届かなかった訳ではなくてよ
この王系の方々は特に危険な御方ですから うふふ」
と最初は見た目通りの少女の声だったが
「このフレアもションベンちびりそうになるくれぇ おっかねからな」
最後は野太い男の声で髪を少女らしく掻き上げこう吐き捨て
やさしく、頬を鷲掴んでいる手に力を込めこうサリに言い放った
このフレアネアとテリエラは、未だ砕け散らぬ王系の三人から
王権のみを譲り受け服わぬ種族の頂点に君臨してきていた
見た目が背が高くお姉さんのような ”彼”は誰しも王だと思っているが
実は見た目がもっと可愛く少女そのものなメルカトリア・アリスティシア・イグレイアが
純系の王系の一族であり能力も権力も遥か高みにいたのである。
見た目から威厳を感じられないのでいつも格下に見られがちで
封櫃前に王権のみを彼らフレアネア・テリエラに譲ったのである
それを知っているのは、当人とサリだけであり他の生き残りの
服わぬ種族は知らない。
そんなことも有りフレアネア・テリエラは ”王” として種族間に知れ渡っていた
サリは指輪の陣を開く
「わたくし:サリ自身は空間に入る事が出来ませぬ
この御三方をよろしくお願い致します お菓子や紅茶等
お好みのままにどうぞ フレアネア・テリエラ様」
と表の、間延びしたサリとは思えない丁寧でしっかりとした口調でお願いをする
屋敷を備品と備蓄食糧ごと買い取って更に食糧はたんまり買い足しておいたのである
「まぁ フレアも起き抜けでサリちゃんに迷惑掛けたわ ごめんね
中でゆっくりしましょ いこテリエラ」
「うん そうしよっか フレアねーさま でもでもちゃんと女は用意しとくのよ サリッ! 」
とテリエラはビシリと指を指す。
そして二人は、サリの頭を撫で、やさしく額に接吻をして
陣に掻き消えた
そしてきれいに片付いた瓦礫の空間に、サリ一人が取り残される。
(まぁ、神族の話は後だな もうこんな辛気臭ェトコには用はねぇな)
サリは、言祝ぎを行う前に空間に仕掛けた触媒に
崩落の呪文を唱えた
((灰燼たる土塊、土は土に、埃は埃に、
灰は灰に原初の袂へ
帰すべきは精霊の御身へ、
還し永久の静謐を与え給うなり))
これは、
ヒトの手で築き上げた構築物を自然に返す呪文でもある
瓦礫に戻ったのは、
今のサリの術の練度では此処までが限界であったからである。
「おっと、こうしいちゃいられねぇな はえぇトコ戻らんと」
と下衆な男声で後片付けをする 神官ローブを羽織り
「うん サリってやっぱり可愛いですぅ」
等と一部壁面の鏡面部で身支度を整え指輪を嵌める
指輪は中に滞在者がいることを示すかのように淡く黒く輝いていた。
そして、ニース達の ”星相の窪地” へ今度は別の経路で戻るそして頃合いを見計らい
自室に滑り込んだ。
サリがここを出立してから二昼夜目の夜であった
集合までは、あと一昼夜を残しての余裕の帰還である。
散策していて、目星をつけたコルスナはノアに声をかける
「あのぅ」
「あら、可愛い娘ね どうしたの? 」
「えーとね、コルスナねぇ 貴女のような”冒険者”のような銀のおねーさまを知ってるわ
詳しく聞きたい? 」
と彼は、可愛 くねくね しなを作り尻尾を揺らめかせた。
「えっ それホント? 詳しく聞かせて 先に航った娘達かも」
ノアはコルスナという少女が”男”とも知らずに銀の娘といえば一人しか思い当たらず
気負なく答えた。
「うんっ いいよ おれぃーはねぇ どうしよかな」
と指を咥え辺りを見回すが彼好みの”女”はいない。
(くそっ オレは”きっちり”対価を頂く性分だがまぁ今回は
オレに優しくしてくれたシーアねーさまに免じて”只”で情報くれてやるか)
と上機嫌な彼は、
「お礼はいいわ えーっと ......」
お互い名乗りをしておらずまずはノアから口火を切った
「あっ ごめんね 私 ”ノア” よ 今回の大規模討伐隊の旗振り役といった
ところね えーっと ......貴女は? 」
「ふふ 私は ”コルスナ” 此処の住人よ」
と脚を交差させスカートをつまみ丁寧な挨拶をする。
「そんなに畏まらなくていいわ そう コルスナちゃんね 教えてくれるかな? 」
と近寄ったノアは、成熟した女の躰と爽やかな柑橘系の香いを纏っていて
思わず彼の”劣情”が飛び出しそうになった
(おっこの女オレを見ても驚きも毛嫌いもしねえ してきたらオレの
エティアの根で〆てやるとこだが何も反応しねぇないい心掛けだ メス! )
と内心では啖呵を切ったが、表情は可愛い少女のものであった。
そして、シーアの場所はここからでも徒歩で十昼夜かかる事、
転送陣をいくつも経由しなければならないことを教え
明日一杯までは使えないこと等を説明する。
サリが、聖骸遺構:エトルで用事を済ませた日のちょうど昼中
のことであった。
「やはり、明日一杯まではだめね 出立は四昼夜目の朝にしましょう」
「それがいいと思うわ ノア様 行き違いにならないように
わたしは魔器でリベランナ様にお教えしますわ」
と小さい鳥型の魔器を放った。
このことは、大規模討伐隊のケインズとニースにも伝えられ
部屋にいる子達にも外から伝えられ、その日の夜戻ったサリにも
ネルリンゼが伝える事となった。
わたしにも、コルスナの報告をリベランナから聞くこととなり
集落に入る洞ひとつ違えるだけで、こんなにも離れた場所に出てしまう
此処ギアトレスという場所の特殊性を改めて知る事となった。
数々の思惑・陰謀・奸計を孕み
シーア達は確実にァタウェーの足元に近づいていく。
人物紹介 コルスナ上
次回 71話 彼方から此方へ ー邪法の果て先にあるものー
お楽しみに
※ 本話より主な登場人物紹介を挿し絵の形式で紹介していきたいと思います
場所や小物なども場合によっては、挿し絵で紹介していきたいと思いますので
煩わしいと感じましたら挿し絵オフの機能をご利用くださいませ
詳しいプロフィールにつきましてはこれまで通り活動報告をご活用願います。
今までどおりみてみんへのリンクもあります。




