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オルティア・レコード  作者: 南 泉
二章 〜 魔女と小さな銀の鍵 〜 ベルゼ浮遊大陸編 第一部
69/75

69話 そして ”神の座” アプレントへ

 辺り一面灰の世界、植物の緑は燻み 

周りの景色も本来の鮮やかさを失っているように思える

陽の光りでさえも。


 わたしは、喉の乾きを覚え大きな泉のほとりで屈み

水を掬う


 透明で冷たい水は喉の乾きを一層刺激するが

未知に対する恐怖が、それ以上の行動を躊躇わせていた。


「おや?

誰かと思えば、銀の美しい少女さんではないか 我等”夜ビト”には

ちくと眩しいのぅ あぁ何も言葉通りでなくてだね ”このような”外縁層にまで

わざわざ出向くなんざ とんだ物好き ......ってッ あんた外界の者かえ!? 」

と黒いローブの腰の曲がった人物はしゃがれ声で問うてきた

男か女かは分からない。


 かなり、流暢な共通人語で出立前の情報通り翻訳の魔器の世話はなさそうでは

有ったが耳飾り自体は可愛い意匠デザインでお気に入りにしようかと

思っている

ただ、男性の時は耳飾りを付ける習慣がなくやたら重く感じられて

やたら窮屈だった。


 この世界オルティアでは、男性でも耳に装身具を付ける者が

いて男性らしく無骨な意匠デザインであるが魔術師達が触媒を仕込んでいるのを

良く見掛けていた。


「えぇ わたしは シーア・オブライエン こちらがミーア・ビヨン・ヤンス・ロムルス」

と先に名を名乗る

「その水は毒など入っとらん 遠慮せず飽く迄飲むがよかろ」

またもや特徴的な嗄れ声。


『そして儂 クローティアじゃ 儂等はベルゼのネグリールからのぅ、 転送されて来たんじゃ

どうしてもこの地に用向きでな』

「フォフォ 儂のような ”夜ビト” にまで丁寧な挨拶だね 気に入ったよ

それに 第一の聖柱オベリスまで活性化しとる

あの”噂”はやはりホントじゃったか」

と一度に聞きなれない言葉と情報の洪水 わたしは頭の整理が追い付つけないでいた。


「第一の聖柱オベリス? 」

辛うじて、聞き慣れぬ言葉の洪水の中から選択して問うた言葉がそれであった。


「ほれ 御前さん達が現れた所じゃよ 周りを良く見て見るんじゃ」

 言われて辺りを見ると泉の畔に大きな斜めに立ったというよりは

”突き刺さった” という表現が正しいのかも知れない

やや斜めに”突き刺さった”巨大な六角柱の記念碑オベリスクがあり先端は欠けていて

元の形状は想像が出来なかった。

そしてその廻りに 明らかに人為的に配置したであろう四角錐の

石? があった


 先ずは喉の乾きを癒やす

今、欲しいのは”血”ではなく水だった

わたしは、水を喉に流し込んで、冷たい感触が胃の腑へ移っていく感触を確かめ

「冷たくて美味しいわ」

と所感をいうと

それを見たミーア・ヤンスも動作を真似て一気にあお

水は生けとし生けるもの、すべての生命いのちを支えるに相応しい。


「まぁ たんとお飲みよ この地は我等 ”夜ビト” の支配域じゃが

第一の聖柱オベリスは 我等の支配域ではない。

ここには我等 ”夜ビト” を嫌って滅多に来ぬが 幾星霜振りに活性化したと有れば

あ奴らが出張って来るのは必至 儂は諍いは好まぬし絡まれても面倒じゃ

先ずは我らの支配域に案内してやろうて これも何かの縁じゃてな

詳しい説明はそこでじゃな」

とわたし達を先導するような身振りをする。


『時にお主よ ここは 封印地域”ギアトレス” で 彼処に見えるは ”冥骸都市ユクントス”で

間違いないかの』

突然、髪に引っ付いていたクローティアがこう切り出した。


「あぁ 紛うこと無く ここは封印地域”ギアトレス” で 

彼処に見えるは ”冥骸都市ユクントスじゃよ」

遥か彼方の巨大な生物らしき冥骸石かせきを指し、

私を先導しながら いきなりのクローティアの問いにも臆することなく自然に答えた


 よくよく見ると

辺りには鬱蒼とした杜であり、第一の聖柱オベリスの付近だけ灰の地面が剥き出していて

近くには大きな泉があった

わたし達一行パーティーはその泉のほとりに降り立っていたのであった。


 更に杜の奥に脚を進め

第一の聖柱オベリスよりかなり離れた灰に半ば埋もれた大きな木の洞を目指し

案内される。


ガサッ、ガサッ

 

 と早速、数匹の肉色の何かがわたしの脚に纏わり付いて

また素早くくさむらに隠れてしまった

多数居たらしくそこかしこで ガサガサ 音がする。


「この中は 我等 ”夜ビト” の支配域じゃ ......って シッシッシーッ あっちへ行け」

と案内している人物に 未だ、纏わり付いていた肉色の生き物を足で乱暴に追い払う


「えぇッーーッ!!  あれ何なの? 」

ミーアは及び腰でわたしの後ろへ隠れてしまう

「うへぇ あっしも初めて見たでやんすが ありゃ蜥蜴ですかね? 」

とヤンスもやや及び腰。

『あんなん 初めて見たぜ 獲って喰おうかと思ったが腹ァ壊しそうだぜ 

何だぁあの”生き物”は? 』

とロムルスも直ぐ獲って喰おうとは思わなかったらしい。

[ あれは、未知の生物ですね どの文献にも有りませんよ、シーア ]

とビヨン。


 それは全体は蜥蜴に似ているが、頭は赤子の顔で首は無く前足も後ろ脚もすべて”手”であった

その上、尾は 肉色の触手の様にグニグニ蠢く

躰全体はヒト肌のようにツルリとして細かい産毛が

あり更に疎らに鱗があり頭部に毛髪らしき物も疎らに生えていた瞳は細く横長である

そいつはニヤリと嗤う


{ ゲゲッ ゲゲッ }


とカエルを轢き潰した時のような声を上げ その人物に蹴られて


ガサガサ と音を立てて慌てて灰が被った叢に隠れてしまい

そして更に、その灰の中に潜ってしまった


 近くの黒い花々達も

花の中心から 多数の小さい腕が生えている それらはまるで”手招き”をするように

多数、群生している ここはそんな杜だった。    

  

「まったく あの ”肉蜥蜴にくとかげ” どもめ 忌々しいったらありゃしないね

 先日もな 我等の家畜がアレに

生きたまま たかられて食われてのぅ 折角の馳走ちそうが台無しになって

朝餉、昼餉、夕餉と菜っ葉ばかりじゃった事がある」

あんな醜悪な魔物は外界でも見たことがない

豚犬ですら可愛く見えたほどである

あの”花”も初めてみた ”魔物” であった


「さぁ、おはいり この洞が入り口じゃ アレについても、ここはどういう場所なのかについても

お主達は知る権利が有るじゃろからな」

と中は存外に広く 巨大な空間が広がっていた

張り巡らせた木の根を刳り貫いてそこを家代わりにしていて

此処にも灰が薄らと積もっている

 人々も沢山居たが

殆どはローブで顔や腕を隠していて窺い知れない

この人物も同様で腰が曲がっているせいか顔は一切見えなかった。


 突然の闖入者に 

ピリピリと刺さるような視線を向けているが敵意も悪意も無い

それが一行パーティーの共通した見解だろう

わたし達を遠巻きにしていて この人物以外は近寄ろうとはしなかった。


「先に言っておくが我等は決して外界の住人には

(お主等が)敵対しなければ何もせんし、取って喰おうとも思わん

説明をすれば我等がどういう存在かもつまびらかになるが

それで判断するとええがの

再度言うが、儂等には敵意も害意も無い そこは、心に留めておいて欲しい」

と一端言葉を区切る。


「長話になるでの 皆そこに掛けるが善いぞ」

と椅子を勧められて一同腰掛けた。


「まぁ 昔々の事じゃ タフタル大陸の辺境の地ベルゼが魔女戦争で遥か下のタフタル大陸より

別たれて幾星霜  ベルゼ浮遊島群に優秀な魔術師の夫婦がいた

やがて、魔道を極めた夫婦は”刻印者”の対価を得て

定命のことわりから外れ、魔道・魔術の発展に大いに貢献した

やがて年頃の男女は、一人の愛し仔を設ける 

刻印の対価で一度切りでこののちは、子が成せぬ躰になってもな」

「まさか その夫婦って!? 」

優秀な魔道士・魔女夫婦で刻印者、わたしには仲の好いあの二人の顔が真っ先に

浮かび上がる。


「まぁ 先を聞け」

わたしの開きかけた口を遮るように、ただ一言

それに従いコクリと首肯。


「その息子は、更に優秀じゃった 血脈の成せるごう

その子は、魔道を求道し、両親から、一つ浮遊島を与えられた程じゃった

......が、何事も過ぎた求道は心にも歪みをもたらすもの

遂に、魔道実験を自分に対して施術したのじゃよ。


......


ちょっとの間が空き

やや調子が強い言葉で続く。


「その実験とは、ヒトと魔物の完全融合 外道な禁術じゃよ

”契り”無しの融合はヒトとも魔物ともちがう化生けしょうを産み出してしまった

男女の”契り”で産まれたお前さんと違うてのぅ」

とヤンスを見つめる


 半人半魔は、男女何方かが魔物の場合の仔であり

大抵は、男性型の魔物がヒトの女性を蹂躙した結果産まれ落ち

その後は男性型の魔物がその女性を食い殺すか、討伐されたあと

女性が臨月のまま冒険者達に救済されるかして生まれ落ちる

家族を築け上げる例は皆無に等しく、 

親なしの不義の子として孤児院行きが定番であった。


 特殊な気質に恵まれなければ、社会で名を上げるのも困難を極め

闇社会の住人に成り果てるか、ヤンスの今までの境遇をみれば

社会的地位は言わずもがなである。



 更に言葉は続き、ネグリールを発つ前ケレスより示唆された事が伝えられる。

「怪物の躰には怪物の心が棲み付く。

更に、その怪物は仲間を欲し住人をも道連れに実験を増長させる

その両親は、賛同するすべての魔道士、魔女、賢者・ランドルフの能力ちからを結集。

島毎、魔霧で封印したのじゃよ、その魔道実験の犠牲者と共にな

此処に今代、棲まうはその哀れな犠牲者の子孫!! つまり我等じゃ」


 と初めて覆いを取るとわたしと同じような少女の顔の、

左半分と右手は魔物そのものであった

可愛い唇の左の一部は魔物の裂けた口と融合し嗄れた声はそこから発せられていた

左の瞳も明らかにヒトではなくケット族・ウル族のそれでも無い

爬虫類様の瞳であり左半分の肌は細かい鱗で覆われてた。


「それは元には? ......戻らないの」


 わたしは初めてみる異形に少し驚くも ヒトの部分の瞳には敵意を感じ取る

事は出来なかった


 彼女は、また覆いを被る

「実験の直接の犠牲者は元には戻るやも知れぬが

今代はすべてその子孫

元には戻らぬし、これは既に形質の一部なのじゃよ

儂の血脈を継げば更に魔物の形質の血が薄まり

何れは御前さんの様な子が産まれるやも知れぬ

それとて完全に魔物の形質が失われては居ない

また隔世で儂のような子が産まれる可能性がある、血脈とは儘ならぬものよ」

と茶らしき物をすする。


『すると此処ギアトレスには魔物の形質を残した者が殆どかの? 』

とクローティア。


「多からず、少なからず ......な。 より多く(魔物の)形質を残した我等は ”夜ビト” と呼ばれ

こうして、冥骸都市ユクントスの外縁部や外縁層に住まい

魔物の血が薄く、発現した形質が少ない者は ”昼ビト” と呼ばれ

都市部に近い 内縁層の上層と下層に住まう

外界のエル族やケット族・ウル族のように一部にしか発現しないものもまた同様。


 御前さんのように形質が無い者はさらに上層の聖域

聖廊層と聖骸区の一部に、魔物の持つ”能力ちからだけ”を引き継ぎ住んでおって

外界から結界の綻びによって迷い込んだ迷いヒトと契りを交わしたその末裔共じゃ

異形の形質は消え、”能力ちからだけ”を連綿と継ぐ

そやつらは”貴人きじん” と呼ばれておりこの世界ギアトレスの支配階級層

そんな階層社会ヒエラルキーになっておるのじゃ」

と最後は語調がきつくなっていった。


「杜に巣食うヒトの形をして居ない輩は

魔物の形質が強すぎてよもや、心など持ち合わせてはおらん

羨やみ、妬み、嫉みそれの感情しかあらぬ、我等にでさえも敵意が剥き出しじゃ 

そんな奴に出くわしても交渉の余地もない、ここでの変成種(魔物)とはそんな奴らよ

人語すら理解できぬし話もせん、躊躇なく介錯してやるのが情けというものじゃ

御前さん達も出会ったら確と心に刻むんじゃ」

彼女の言葉は憎々しい色を滲ませるも何処か寂しげだった。

 

 争いを避けたいのは、本音であるしかしながら

相手が害意と悪意も持って来るならばこれを排除しなければならない

もはや、わたし一人の問題では無く付き従ってくれる者達をも守らねばならない

その覚悟はとっくに出来ていた。


 もしわたしが害意の道理に屈し傷つき、地に伏せる事があれば、

遺産の少女達が黙っていまい おそらく、彼女らは見境なく暴れ害意無き人々をも

躊躇することなく蹂躙するだろう

特定の武器でしか完全にわたしを滅する事が出来ないとしても。

そんな自負を確信していた。



「あの肉蜥蜴にくとかげや手招きテマネキソウも元は只の草や蜥蜴じゃった

彼奴きゃつのせいでああなったがな

因みにあの肉蜥蜴の肉はぶよぶよして不味かった、脂身ばっかりで喰うもんでは無ったわ

今、思い出しただけで吐き気がするわ」

「食べ物はどうやって? 」

こんな隔絶された世界には外界のような家畜が居るとも思えない。


「なぁに ”結界の綻び” で偶に迷い込む家畜共を肥育して我等の食肉としている

はらわたの中には”まとも”な植物の種もぎっしり詰まっとるじゃからのぅ

それを畑で栽培しておるから香辛料にも困らぬし果物もある

綻びは迷い込む家畜共を選好みはせんから

あんたらのような外界のヒトが言うには外界すべての大陸産の家畜や植物が

揃っているんだと

だから安心して食するが好い ハハハっ! 」

と目の前の乾燥肉を齧っていた。


『して まだ話しの続きがあるじゃろ? 』

とクローティアが促すと

「あぁ 有るともこっからがお主達には興味深い話しじゃろうて

先の通り息子はこのような階層社会ヒエラルキーを産み 我等のような異形を生み出した

其奴は此処を己れの支配域とせんがため

ヒトの名を捨て 自ら ”邪法名:魔人 ァタウェー” を名乗った!! 」


「 魔人 ァタウェー ッ!! 」

大きな声に辺りの人々もビクリとする。


「そうじゃ 今奴は、神の御座:アプレントにいる」

『ほぅ にしてはその ァタウェーとやらの脅威はないと見える

それだけのマギの持ち主なら儂に分らないはずがないからの』

クローティアは自信有り気に言う。


「奴は奴で 魔聖:ユトレイア の御業で

その御座:アプレントに縛られておって冥骸都市にすら出張ってこれぬ

だから脅威はむしろその傀儡かいらい共じゃよ 彼奴きゃつをユクントスに再び

解放せんがためあらゆる索を講じておるようじゃ」

「 魔聖:ユトレイア? 」

また聞きなれない人物名が彼女から紡ぎ出された

しかし その話しはまた後でな とはぐらかされてしまった。


「儂等は永いこと御前さんのように正規の途で来る迷いビトを待っとった

たとえ 仲間内からも ”世迷いのリベランナ” などと言われてもな」


「あぁッ!! では 貴女が ”世迷いのリベランナ” さん? 」

「名乗りが遅れて悪かったね 儂は”世迷いのリベランナ”こと ”リベランナ” さ」

「わたし 貴女に言伝を預かっているわ (((”ケレス” は息災である))) と

貴女のような嗄れた声のバーバ・ヤガよ」


 ネグリールのバーバ・ヤガの血縁が偶然にも出逢ったこの人物だったとは

何かを感じぜざるを得なかった

「おぉぉ......   おぉぉッ ケレス ケレス......愛しのケレスちゃん」

途端に顔を伏せ大粒の涙が床を濡らす

長き嗚咽も収まり

「 ......して彼女は何処に? 」

と改めて問われる


「彼女はベルゼ浮遊大陸のネグリールで賢者:ランドルフのバーバ・ヤガとして

わたしを導いてくれたわ」

「そうか 結界の綻びに巻き込まれ どこぞに飛ばされて魔物に出会い頭に喰われたか

大海の水底みなそこに放り出されて水塊すいあつに押し潰されたかと諦めておった

おぉ 我が愛しのケレス 早うこのあねさまに元気な姿を見せてくれ」

とまた再び嗚咽を漏らしていた


「これは、女神リーンの導きやもしれぬ

此処久しく女神リーンには感謝の言葉も捧げとらんかった

しかし、聞き届けて下っさったのは何のおつもりなのか

女神:リーンよ お導きに感謝致します」

と簡易な作法で祈りを捧げていた


 此処にいる間はここを拠点とするがええ

何れ他の区劃に行くにしても足掛りがないとな どうにもならんだろうからな」

「あと お願いが有ります」

「ん 儂等に叶う事なら」

「実は、目的のために後から 冒険者の討伐隊が来る予定です

ついては、その方々も此処に」

と言うと

「先の通り我等を見ても敵意を見せなければ歓待しよう

この異形の形質と引換えに我等には下界の術よりは遥かに強力な能力ちからも備わっている

此処にはギルドなどという相互扶助の寄り合い組織も存在せんからな

我等が結束して害意を排除しておる


 まぁ此処は広いうえ、強力な結界も張ってある

厄介な魔物も此処にはそうそう出張っては来れぬしそこは安心せい 

だが敵対するなら我等も相応の対応となる、それだけは覚えておくがいい」

「はい、討伐隊指揮者にはよく言い聞かせておきます」

「そうしてくれ 聖柱オベリスは定期的に見回らせるでの」

「よろしくお願いします リベランナ様」

「任せとけ 空き部屋はたんとあるでの好きに使うたらええ

沐浴場は地下じゃ 我等の同胞が居るやもしれんが普通にしとればええし

難癖付けられたら儂の名を出せ」

と言ってくれた。


「おぉ あの ”世迷いのリベランナ” がかしてた事がまことに成りおった」

「アヤツは 外界の”迷いビト”には甘い 

今までも迷いビトは散々、我等の安寧を脅かしておる」

「そうだ そうだ 災厄をもたらさなければそれで好し もし安寧を崩そうものなら 

......決して赦さんぞ なぁ」


等と会話をわざとらしく聞こえる様に言う 

「フン 莫迦共が 何れ此処も、外界との交易も視野に入れねばならん刻が来たと言うに

頭の堅い莫迦めらが たとえ、今までの安寧が多少脅おびやかされてもな」

と愚痴を溢す。


 わたし達、外界の存在が出入り出来ようになると交易ばかりではない

悪しき存在が害意を持ってこの地に入って来ることも意味する

これについてリベランナは直接言わなかったが、言葉に出さずにはいられなかったらしい

最後の言葉を言う時、体面を取り繕うような口調だった。


「まぁ 何はともあれ今日はゆっくり休め 魔聖:ユトレイアについては後ほどな

後、聞きたいことがあるか 後一点ぐらいなら付き合ってやるわい」

とリベランナは言う、陽の光りは絶えず降る灰で常に曇天の如く翳っていて

夕刻近いということまでしか分からなかった。


「あのぅ この地には ”遺産の少女” は居るんでしょうか? 」

此処に来てからは、コトン・レメテュア・ラヴィア・フェーリアの四人は

姿を見せて居ない。

好奇心の塊の様な彼女達が此処にきて反応が無いのだ 

同族の気配を感じなくて出てこないのか、

あるいは、出てこれない理由わけがあるのか

わたしには彼女等の気配を察する能力ちからは無く、噂だけでもと思ったのである。


「ほう その言葉を知っているか 覚えが有りそうじゃな? 」

わたしは首肯。


「嘗てはたくさん居た ......がな ある二人の少女にとってそれらは

単なる”糧”に過ぎなかったらしい 今代、儂が知っている限りだと

その二人しかおらんな 彼女等は常に身を潜め下界から時折迷い混んでくる

遺産の連中らを ”喰って” おるようじゃが

儂もねぐらまでは知らぬ」

と首を横に振るも言葉にはまだ、続きがあった。


「しかし此処ギアトレスにも都市はある 今はァタウェーの傀儡かいらい

の巣窟になっておるがな

そこは、聖骸区 聖骸遺構:エトルという 都市丸ごと遺跡と化した遺構群がある

何しろ廃虚の都市がまるごと遺跡になっておって迷い込んだら最後、我等でさえも

戻って来たものは居なんでな 禁忌のエトルとなっておる

止めはせんが彼処ならあるいは、 ......ってう所かのぅ

後、この広大な”杜”の何処かかも知れぬ」

と淡々と話す。。


「そうでしたか、出来れば遭ってみたいと思っていてそれで ......」

「ハハハっ 彼女等を手懐けるのは至難の事、あまり無闇な詮索はせんことだな」

わたしは彼女の発言で遺産の少女は二人居る事と

冥骸遺構エトルという遺構をねぐらにしているらしいことを掴んだ

あとは四人に聞いて見るしか無い

遺産の少女は互いに惹かれ合うらしいことはラヴィアやフェーリアの件で

実証済みであり後で彼女等に聞いてみるしかあるまい。


「儂は、これから集落巡まわりをしてくるでの 

後はこの そうだな コルスナ が面倒を見てくれる

これ コルスナ こっち来な 客人に挨拶をせんか」

「は〜ぃ リベランナ様ただ今そちらに」

と可愛い少女がわたしの目の前に現れた


 背はわたしと同じくらい、肌は淡い碧色、瞳は無く淡いピンク色唇も淡いピンク

淡い紫の長くうねった髪、そして何より彼女を特徴付けていたのは

カエルのような肌の質感の太い尻尾である尻尾には

魚の背鰭のような鰭があり波打つ様に揺らめいていた


「コルスナ は儂等 夜ビトの中でも美しい形質を備えておってな

皆にも慕われておる器量好しじゃよ」

「えと、 シーア様・ミーア様・ビヨン様、ヤンス様 私はコルスナ

此処の住人で今は、リベランナ様のお手伝いしてるの

以後お見知りおきを」

とストンとしたワンピースのスカート部分を摘み挨拶をする

一行パーティーも挨拶を交わし、夕食が振る舞れる


「さぁ 今日は滅多に食べれない外界産の家畜のお肉とこれは常食している

ロネベのスープ」

「ロネベ? 」

初めて聞く名であった。


「ロネベとはこれじゃ」

とリベランナが見せてくれたのは、カエルのようなヌメヌメした黒に茶色の筋が入った肌の蜥蜴状の

生き物で大きくレヴィアの背くらいはあり皮膚は襞がたくさん有る。

口は大きく歯が無いように見え、前足や後ろ脚にはちっちゃな水掻きまであった。

そいつはまだ生きていてもぞもぞ動いていた


「此奴は地下水脈にたくさんおってな儂等はそいつを常食にしていて

肥育もしている

偶にあの肉蜥蜴共に食い荒らされるがな

あと麦は外界と同じじゃ 大麦が主流じゃがの 

これでも高級品でな普段は燕麦パンじゃがの

あとは玉蜀黍や蜂蜜もあるこれらはすべて外界から結界の綻びを通してやって来る

それを儂等が肥育したりはらわたから種を採るのは先の説明した通り

まぁ見てくれは悪いが味や味や食感は悪くない

 それにこのロネベは滋養もあるからたんと食うがええ」

「あのお代は? 」

「カネか ここではあまり出番がないな 物々交換でなんとかやっとるよ ではな」

とリベランナは出掛けていった


「ほんとはね、外界の生き物は昼ビトと貴人達が殆ど独占してるの

蜂蜜も大麦も滅多に食べれないんだ でもでも何時かきっと

誰かがこの世界を変えてくれるって、リベランナ様は言ってるの

でも、そんな事は”世迷い言”だって言って誰にも相手にされなくなっちゃった」

とニコニコ顔のコルスナ

わたしは、思わずこの少女を抱きしめる。



 かすかに震えていたその少女は言う

「どうしたの? シーア様」

「いえ 何でもないの だたこうしたかっただけ

いいモノあげる さぁ お口を開けて」

「うん なぁに? 」

とミーアに視線を交わし、ミーアは誰の目にも付かないようにロムルスから

蜂蜜たっぷりの堅焼き菓子を取り出し

口に含ませた。

「わぁぁぁ これ甘くてほっこりする シーア様はいつもこんなの食べてるの? 」

「えぇそうよ外界はこういう物がいっぱいあるわ わたし達からのお礼。 でもこれ絶対内緒ね」

と言うと

「ありがと だれにも言わない シーア様・ミーア様・ビヨン様・ヤンス様」

と コルスナは頬を膨らましながら食事を並べ

そして、夕食となった。


 件の肉はお世辞にも美味しいとはいえなかったが

彼らの常食でもあるし

 初めての場所でこうして世話にもなっている、出されたもてなしに

あれこれ言うほど常識は外れてはいない

皆、そこは大人であった。


 ロネベの肉は味はいまいちだが滋養があるのはホントらしく

躰が火照って来るのが分かった。


 沐浴もミーアとビヨンとで済ませ、案内された部屋に入る

大きな寝台が二つある部屋、ヤンスは指輪の中の空間である

ビヨンはいつも通り椅子に腰掛け、後それぞれ寝台に就いた

今だ眠気は襲ってこない。


 夜の散歩の気分ではあったがここは隔絶された世界

敢えて寝台で、外界よりぼんやりした月を眺め思いを巡らしていた。


『なぁ シーア・ミーア起きとるか 言う機会は今しかなかろうと思ってな』

とクローティアはこう言って突然話しを切り出しヤンスを呼び出し

驚愕の真実を打ち明けた。


 何時かは言ってくれるであろうクローティアの、

本当の名と出自、世界の成り立ちのほんの一部、

ウロレシアなる少女の胎動、そして御伽噺とばかり思っていた神族の存在と

実在の女神:リーン

彼女クローティアは言う


『ホントはまだまだ喋れんとこともある これ以上は己れの旅で掴み取るしかない

三神さんしんで決めた事でな 大凡,、真実は知らんほうが却って好い結果を招く事が多い

お主が求めるなら真実を追い求めるめるのもまた、己の自由じゃ

儂の様な無為な生き方を繰り返させたくないでの

全部すべて、明け透けに喋る事の出来ない儂を赦してくれ』

とクローティアは何処か寂しそうだった。


 遠い目を更に遠くへ、この時のクローティアの心は何処か遠い先に有るようで

わたし達に語りかけていうような、それとも何か別の存在に語りかけているような

曖昧な空気を纏っていた。


 彼女クローティアの口から飛び出す”真実”はすぐには実感出来ないばかりか

頭は更に冴えて、火照った躰を更にたきつけるには十分であり

わたしは、また物思いに耽る。


...... 


 しばらく、ミーア・ビヨン・ヤンス・ロムルスの間にも沈黙が覆いかぶさっていた

皆、誰しもクローティアに話しかける者は今はいない

原初の神が姿を変えてこうして身近にいて更に一行パーティーの仲間として

加わっているのだから。


『なぁそれでも儂を好いてくれるか? シーアよ』

長い独白の後、ぽつりと漏らす言葉にはいつもの尊大な調子はなく

それはまるで、悪戯を母親に弁解する少女のようだった。


「莫迦ね、貴女が真実を話したとしても今までとは変わらない

わたしはこうして錬金術師の男性から少女になった 

貴女は 旧き贄の蛇 から少女になった それだけじゃない? 」

と先の少女コルスナにしたように彼女クローティアを抱きしめ

優しく唇を重ねた。



『お主の元の躰を壊し少女の躰に定着をさせたこの儂をか? 』

クローティアのこの懺悔ともとれる独白は

聴覚の優れたミーアにも、只人よりも聴覚が優れているこのわたしにも

聞こえなかった。


 思えば、クローティアはいろいろ不思議というか破格な事が多かった

普通の術士なら大規模な術式を構築しなければ出来無いことを

簡単にやってのけていたのだから。


 出自を聞いた今ならば、それも道理であったと合点がいく

だた何かしらの制限があるのは間違いなくどこかで

それ相応の対価もまた支払って居るに違いない。


 術や奇蹟の行使には、

相応の対価からは逃れることが出来ない、この世界のことわりだからである。

彼女クローティアは今まで通りで好いと、念を押すように繰り返したが

本当にそうだろうか?


 わたしは、件の肉で火照った躰を多少持て余していてますます

寝付けなくなっていた。

 

<< ねぇ貴女達、 突然だけど起きてる? >>

と四人のライブ・アーティファクト達に念話を送ると

<< あたくしは起きてる 後はお菓子を食べたりラヴィアは例の植物ののお世話

レメは、ゲルギルをこき使って遊んでるし、フェーリアは暑くて嫌といって一歩もお外に出てない

部屋の扉は霜で凍りついていて真っ白になるくらいなのにまだ暑いんですって

わたしは、いまお人形さん達と遊んでいたトコよ おねーさまぁん>>

と答えたのはコトン一人である。


 そう言えばコトンとはこの頃相手をしてないから、すっかりむくれているとばかり思っていたが

声の調子はいつも通りであった。


<<ねぇ 訊きたいんだけど 今、貴女達の他に気配感じるかしら? >>

 そこまで言うと

<<絶対、そっちへは行かない 絶対イヤっ!! >>

と何やら激しく狼狽している。

<<別に出てこなくてもいいけど どうしたの? >>

彼女が狼狽したのはミーアの宿り木を見て以来であるし今は安全なレフィキア内である

そなのにこの狼狽っぷりである

ライブ・アーティファクトをこんなに狼狽させる何かがここギアトレスには存在するのだろうか。


<<えっとね 此処にいるヤツっ! が怖いの! すっごく怖いのッ! >>

とかなり怯えている。


<<お屋敷は安全だから言ってごらんなさいな>>

と優しく促すと、ようやくかすかに震える声で 

<<ライブ・アーティファクトを喰らう(抹殺する)ライブ・アーティファクト達がいるのよ 此処に! >>

と聞き捨てならない不穏な事をいう。


<<ライブ・アーティファクトを喰う(抹殺する)ライブ・アーティファクト? >>

今までに聞いたことのない話である。

あのライブ・アーティファクト達を形無きまでに抹殺なんて出来るのだろうか?


<<(ライブ・アーティファクトの)おかーさまが勝手に増やしたライブ・アーティファクトを

処理するため ”蒼き深き者共” が開発した特殊なオーパーツが

私達と同様オンナノコの姿になった者と噂で聞いてるのッ!!

胸に大きな裂け口があってバリバリ喰らいもう二度と復活も出来なくなり

そのの糧になってしまうという奴らがいるの

 ライブ・アーティファクトの仲間内でも有名よ、その話

外界で噂を聞かない聞かないと思っていたら、こんな隔絶された世界ギアトレスに居たなんて

どーりで気配を感じなかったはずよ

だからね おねーさまが盟約を結ぶまで あたくし絶対お外には出ないもんっ!! >>

と語調は強くも、声は震えていた。


<<でも、そんなでも仲間にしたいの? >>

と彼女は討滅ではなく、”盟約”という言葉を使っていた


 その真意をさらに尋ねると

<<そーよだってすごい戦力になるんだから

それにすごく気難しいって言われているけど

シーアおねーさまならすぐ懐くと思うわ だってラヴィアだってすぐ懐いたもん

可愛いくせにあれでも彼女ってすごく怖いのよ だーからー

絶対仲間にして頂戴 でないと安心出来ないの!

危険なヤツはさっさと仲間にしてしまった方がいいでしょ ねっね お願い>>

と本気で懇願される。


 怖いと思う反面、わたしは可愛いという事とライブ・アーティファクトを

喰う(抹殺処分する)ライブ・アーティファクトに俄然興味がそそられた。

<<いいわ、なんとか説得してみるけど此処ギアトレスには居るのね? >>

<<えぇ 居る、確実に気配は二つ有るわ 常に一緒に行動しているみたい

方角まではわからないけどね それと皆も怖がって今回はその達と盟約するまで

表には”絶対”出てこないと思うわ>>

これは、今回はライブ・アーティファクトの戦力は期待出来ない事を同時に意味していた。


 更にコトンは憤る子供のようにおねだりをする。

<<ねぇねぇ あたくしも早くお外に出たいの 折角の新しい場所なのに”遊べ”無いなんて

ぜーったい イヤッ!!

だからね おねーさまのイゲンを見せつけてやって仲間にしちゃおーよ ねぇったらねぇ>>

と今度はコトンがレメテュアのように駄々をこねる。


<<いいわ わたしも興味があるから出会ったら交渉してみるわ>>

と念話を返すと

<<きゃん やったッ!! またオトモダチが増えるわぁ たくさんに囲まれてこそ

お人形冥利に尽きるというもんね ウフフフ

一番最初におねーさまと、めーやくしたわたくしとしても早くおねえさん振りたいの

危険なを妹に持つなんて最高だわぁ♡ >>

と怖がっているわりにコトンは嬉しそうだった。


『また遺産の少女か お主は呆れたやつじゃのぅ

しかもそれを支える財も度量もある、遺産の少女共にとっても安寧が得られれば

それでよいのかもな』

とクローティアはまるで、自分に重ねて言っているようであった。


「わたしはわたしで可愛い”オンナオコ”は好きよ また愉しみが増えたわ」

『ならば儂はそれに応えねばな 協力は惜しむまいよ』

「やったー だからクローティアって大好きよ」

『いつぞやのように髪を絡ませるのは無しじゃ 儂には”血”なぞ無いからな』

「寝ている間のことは知らないもん」

とライブ・アーティファクトのような口調でいうと

『やれやれしょうがないやつじゃ』

と言いつつもクローティアを抱きそのまま

ゆっくりと睡魔にいざなわれる。


 ...のように思われたが 奇妙な感覚がわたしを襲う

これは前にも感じたことが有った

意識が入れ替わって、あのクレア(シーア)が出てきたのである。


「ふん ようやく話したか これから、大事の前じゃ

心が乱れては戦いにならぬ ......が心配は杞憂で済みそうじゃな

しかし、この男の魂はどういう構造をしておるのか

寄り添うわらわも流石に全体が掴みきれんな」

『クレア(シーア)様』

クローティアは内心非常にこのクレア(シーア)を

恐れていた。

 

 荒ぶる獣の少女 ヒト・魔物・神族その何れにも分類されずに

この世界オルティアに存在する それが目の前にしかも自分と添い寝をしているのだ。

恐れ・畏れ以外の感情は出てこない。

しかも、この獣の少女は一人の天才錬金術師が創造した言わば人造の瞑魔である

今だに、クローティアはこの獣の少女の潜在的な能力ちからを計りかねていた。


「 ”様”はよせ そちは蛇、わらわは獣 似た者同士ではないか? 」

『では クレア(シーア)よ 儂にもこればかりは分からぬ だた”惹かれる”それだけじゃよ』

「それはわらわとて同様、この者の魂に惹かれるそれだけじゃよ してこれからどうする?

索はあるのか? 」

『さぁな シーアはいつも成行きじゃよ 計画なんて言葉は ”冒険者” には

似つかわしくない』


 あれこれ計画を立てての ”冒険” 程つまらぬモノはない

土地を航り、厄介事トラブルにぶつかりそれを解決していく

その課程こそ冒険の醍醐味である。 そのために膨大なマギをつぎ込み

屋敷レフィキアを持ち歩けるようにしたのだ、後悔は無い。

目の前の獣の少女も同様な考えだろう。


「ハハ それもそうか わらわも同様じゃて

同じ場に停まれば、わらわの存在が世に知れるのも容易い

そうなれば、このクレアを巡り いくさが何れまた起きる

只人共の思考は手に取るようだわ

こうしてマギをつぎ込み拠点を持ち歩くのは善い施策よな

今は屋敷世界レフィキア維持にはマギは要らぬのだろ? 」

『そうじゃ アレは一度切りの術じゃ 屋敷世界レフィキアの維持にはマギは要らぬ

じゃがアレは禁術に近く儂の大半のマギを喪ってしまった再びあれほどの術を

おこせるようになるには幾星霜も刻が必要じゃて』

「そうか それは難儀な思いをさせたな でも、こうして善い結果を生んでおるのだから

お主としても不本意ではなかろ? 」

クローティアは抱かれたまま首肯。


「しかし、滋養はあるようじゃが ロネベの肉は不味いのぅ

ミーア? 首を出して クレア(シーア)のね 口と吸血樹の根に頂戴♡ 」

尊大な口調から、幼い少女の様におねだりする様は

意識体となり傍から見ていてもドキリとする。


「はい クレア(シーア)様」

とまだ起きていたミーアは仄暗い月明かりのもとで白い首筋を露にする


プツリーーッ 


 と可愛い牙を突き立てミーアの全身に吸血樹の根を絡ませる

お互い寝間着ネグリジェであり障害は少ない、クレア(シーア)の髪は怪しく蠢き

ミーアの肌を這う


 淡い嬌声、徐々に赤く染まっていく吸血樹の根

クレア(シーア)は首元からミーアの唇へ、クレア(シーア)にとっては苺味、ミーアにとっては

鉄錆の味がする唾液を絡ませる。


「ねぇ? ミーお姉様 ホントはわらわにシアズを重ねておるじゃろ? 

正直に申してみよ」


 はすから眺めているわたし(シーア)は、

「ねぇクレア早く(躰)返して」

と呼びかけるも、

「今宵は、火照って仕様がない 暫しこの娘と戯れるでな 今は眺めておれ

女を愛する女の指南もしてやるでな」

とミーアには時に幼子のようにおねだりをして

時に髪を駆使して積極的に戯れる わたしはクレア(シーア)の姿になると

途端に、少女の中の女の部分が強くなっていくのを感じていた


「え ちっ違うわクレア(シーア)ちゃん そっそんなこと無いけど

......でも今だけ、そんな気持ちにさせてくれると嬉しいな」

ミーアは、嘗て男性であり今でもその男性の魂がある艶美な姿の少女に

似ても似つかない大錬金術師”シアズ”の姿を重ねる。


 それを感じたわたしの意識体は初めてミーアに

オンナノコとして激しく嫉妬する、なぜなら彼女だけが瞭然はっきり

姿や声を覚えていて、わたし自身なのに姿や声を思い出せない”お兄様”を誰にもわたしたくない 

そう思ったから。


 そんな意識体シーアとは無関係に

甘美な悦びとともに寝間着ネグリジェ同士が乱れ

甘い嬌声と衣擦れの音が混じり合う


「ふふミーアよ お主はもっと遺産の少女共を躾てやらねはならんぞ」

「だって あの達って怖くて、未だに慣れないの」

ミーアはシーアの様に遺産の少女には接する事が出来ない

お菓子やおカネをねだるときは可愛い仕草で言い寄るが

彼女らの本質は、残酷で凶悪でパスを通わして居なければ

危険な存在には変わりなかった。

特に、ミーアには何をするにも、ねだるにも恫喝気味な態度で言い寄るので

それが特に怖かったのだ。


「お主らしいわ ......でビヨンよもうすぐお主にも

同じ魔導の少女と邂逅するやもな」

と何やら預言めいたことを言う

[ クレア(シーア)、それは本当ですか まだ未知の出来事ですが? 

確定の欠片ピースが揃っていませんが? ]

「ふふ このわらわは嘘は言わん 羽化の刻は近い

その時はその者と協力して皆を支えてやってくれ」

[ クレア(シーア)の御言葉のままに ]

「時にビヨン、魔聖ユトレイアの情報はアルカーナに有るか? 」

とクレア(シーア)は愉しみながらも聞くべき点を押えていた


[ アルカーナを検索 ..... 検索...... 該当項目無し

直接交渉のみでしか知り得ない情報と判断しました ]

「ふふ 優秀なヤツよ この地からでもパスを繋げられるとはな」

[ かなり応答は遅いですが 一度正規の途を通って来てますので ]

「そうか、そうか それなら好い 愉しみも尽きた 今度の血の覚醒が来るまでは

温和しくしておくかの ではな」

とまたわたしに主導権が戻り、わたしは慌ててミーアから離れた


 ミーアは既に蕩ける様に眠っていてビヨンが乱れた寝間着ネグリジェを整え

抱きかかえて同室の別の寝台へ運ぶ


 わたしもクレア(シーア)のせいで乱れた寝間着ネグリジェを整え

今度こそ躰を完全に睡魔に預けたのである。



シーア達が、彼の地で睡魔に身を委ねていた頃、


 ベルゼ ネグリールでは

「やはり、シーアのヤツ大規模討伐隊レイド依頼出しやがったな

ノアさん 俺達も行くぜいいだろ? 」

「勿論いいわ ちゃんと、ギ大規模討伐隊レイドルド経由で申し込めば問題ないわよ

但し、あちら(ギアトレス)には”独自”の住人が居るのよ

こちらとは多少なりとも、容姿も異なる人達よ

あちらから敵対するまでは、絶対手を出しちゃダメだからね

分かった? 」

とノアは仔細ありげな顔でケインズ・ニース両名に説明する

「それはいいがどうしてだ まるでアンタ 向うの住人を知っている口振りじゃねえかよ」

「そうね 此処には、結界の綻びで向うからやって来てここネグリールの重要な

席に就いているヒトがいるのよ」

とノアが言うと


「へぇ、そいつぁ知らなんだ俺は、術士じゃねぇしな そういう事情には疎くてね

どうよ お前らの中で知っているやついるか? 」

とケインズは自分の一行パーティーのみならず此処にいま集まった

20名の冒険者に問いかけた


......。


だれも、名乗りをあげるものも挙手をするものもいない。

「そうか でもよノアさんよ オレはどんな恰好なりをしてようが容姿だろうが

平気だし差別する気もねぇ ......が大所帯ともなれば

個々人の思想までは把握しきれねぇし

まして、とっつきにくい容姿だどなぁ 及び腰になるやつもいるだろう

交渉毎だって、重要なことはオレがやるがすべては面倒はみきれんしな

お互い子供じゃねぇしよ もし良かったらその住人とやらに合わせてくんな

今から慣れておきてぇんだよな 

混乱パニックする莫迦もいるかも知れねぇし

いきなり武器を構えて敵対してみろ、新たな火種ともなりかねん

オレは大きないくさはまっぴら御免だね」

と彼らしく正論を述べる。

「そうね貴男の意見も至極当たり前ね では此処ギルドではなく

賢者ランドルフの尖塔:ネグリールまで来てちょうだい

件の人物に合わせてあげる」

やや、間を置き

「彼女は、彼処の住人の中でも形質が少ない方よ

彼女基準では美人の方だと言っていたわ」

「へぇそいつは愉しみだ」

とケインズが言うとニースは

「ケインズの旦那は怖くないんで? 」

と恐る恐る尋ねると

「怖いもんか 

相手は言葉が通じるんだぞ いきなりとって喰われるって訳じゃないだろうよ」

と動じた様子はない。


 盾役タンクは、どんな化生バケモノでも怪物でも正面に立ち

息吹ブレスや術から一行パーティーを一時にでも守らねばならない

その時相手の容姿に及び腰になるようでは、役を果たせないばかりか

一行パーティーを危険に晒すのである

ケインズは根っからの盾役タンク気質でウル族でこの世界オルティアに生をうけてから

ただ一度も職を変えたことは無かった。


「でもソーヤ、テメェは言葉には気をつけなニースからこの世界オルティア

ルールを教えて貰っちゃ居ると思うが 渡りビトってのは

テメェにその気が無くても相手にとって禁句だったりするもんだ

ニースから聞いたぜ 当初、オメェはウル族の尻尾や耳を気安く触ったり

尻尾踏んづけても知らん振りして、あわや種族戦争がおっ始まるまでいったってよ」

「すんません、オレあん時はまだ遊戯ゲームの中だと思っていて

しこたま、ニースのアニキには拳骨食らったッス 

この世界オルティアは”ホンモノ”で色んな種族や容姿の連中がいるってことですよね」

ソーヤは確かめるようにケインズに答えた。


「あぁ、そん通りよ 

ここは紛れもなくテメェにとってもオレにとっても”現実リアル”でまやかしじゃねぇ

殴られれば痛ぇし、相手も怪我すりゃ血も出る。 術如きで死人が忽ち蘇ることもねぇってことよ」

「オッス」

「分かっていればいいさ テメェの監督役はニースの野郎だ

オレじゃねぇ」

それっきり、ケインズはソーヤにはそのことについては

口を出さなく成った


 自身の言動にすべてを責任を持ち行動し

言った言葉にも同様の責任が被さる

ソーヤはこうして段々この世界オルティアのヒム族男性としての

居場所に根を降ろそうとしていた。


 彼自身もある可愛いオンナノコに淡い懸想を胸に掻きいだ

左右の目の色の異なる銀の髪の女の子に。


 そのと向うの世界(地球世界)の事を話してみたい。

それが、ソーヤのこの世界オルティアでの当面の目標だった



「意見は纏まった? 

良ければ今度の大規模討伐隊レイド全員に立ち会って貰いたいけど

都合がついたら、明日朝一番に尖塔:ネグリールに集合してね

私もその時いるから」

「今すぐってのはダメかね」

とニース。


「ごめんなさい、 私の友人の教え子がね講習が終わってさぁこれからって時に

何者かに惨殺されて落ち込んでいて、一昼夜時間を貰えるといいんだけどな」

と寂しそうな顔をする。

「そんならしょうがねえな、講習を終えてすぐのヒヨッ子が

殺られたとあっては寝覚めが悪いだろうしな」

「そうゆうこと 察しがよくて助かるわ ケインズさん」

「いいってことよ なぁお前ら」

「応ぅッ! 」

と皆一同はケインズの呼掛けに賛同する


「そんじゃ、俺達は宿でのんびりすっかニース ...っていいたいところだが

そうはいかねぇな 御前さんには聞きたいこともある

ちょっくらニースを貸してくんな ナリアさん」

とケインズは何時になく険しい目付きでナリアに声をかける


 当のナリアも、空気を読んだのかわざと茶化した風に

「いいよ、ケインズ このぐうたらを鍛えてやってよ」

とニヤケ顔。


「ちぇっ オメェはいつも一言五月蝿いんだよ」

と脇腹を小突かれつつもニース本人は、ナリアと同様だらしなくニヤケ顔である。


「独り身のオレに当てつけんなよ さぁこっちだ」

と密談室へ入っていった。


「さて、頭目リーダーも居なく成ったことだし、明日に備えてきっちり準備して鋭気を養いな」

とナリアのこの一言で一同は一先ず一時解散したのである。


「ニースよ あの娘の取り巻く環境には気ぃつけな 

生命いのちいくらあっても足らんぞ」

ケインズの密談室での第一声はこうだった


「うん、 なんとなく感じてたアイツは、俺達と違い食い扶持ぶち稼ぎの為に

動いているんで無いってな」

「ほう 察しがいいな でなきゃお前みたいな若造に一級遺物を

ホイホイ対価無しに渡すもんか、アレは俺様にこそ相応しいもんだ」

と目を眇めてニースの顔を覗き込んだ

これは恫喝とも取れる口調だったが、旧知の仲でないとこれが

ケインズの軽口とは受け止めないだろう。


 そんやりとりの後、

「結局旦那も欲しいんで? 」

「まぁな 有り体に言えばそうだ

たまたま、お前があの娘に気に入れられたってことだろが

いくらギルドの許可があったとはいえ

正規の流通にも乗らねぇで、只でくれてやるなど愚も此処に極まれリってか

でも、問題はそこじゃねぇ

そこで 先の話しよ 

”アイツは、俺達と違い食い扶持稼ぎの為に、動いているんで無いって” に繋がるわけだ」

「どう繋がるんで? 」

「そうさな、これは俺の推論だが、俺達とは違う目的で”冒険者”の振りをして

隠された”真の目的”を定めているに違いねぇ

現に、幾星霜も封印されていた”ギアトレス”をあの娘が現れてから

あっさり解きやがったしな


 あの娘にとっては、在り来りの一級遺物なんざどうでも良いってことよ

アイツが欲しがっているのは神代級遺物かそれ以上のモンだろう

俺達には到底身に余る代物だな

その目的とやらはこの世界オルティアも揺るがすかもしんねぇってことよ

俺達は、既にちくと後戻り出来ねぇ所までアシを踏み込んでいるのかもな」

「ハハハ 旦那ぁ勘繰りすぎじゃねぇの? 」

と大袈裟に肩を竦めておどけるニース

ケインズとは、旧知の仲だがどうも物事を大袈裟に考えすぎる傾向があった

大事おおごとでも割と楽観視するニースとは対極の盾役タンクだった。


「そうだといいんだが、もしかして俺達はとんでもねぇ少女とえにしを持っちまったのかもな

だから、お前んトコの渡りビトのソーヤが心配になってな」

彼は、いきなり自分の一行パーティーの若手の面子のソーヤの

話題を持ち出してきた


 ニースは、今この場でアイツ(ソーヤ)がどう絡むのか彼の真意を図りかねて

やや、語調がきつくなるのも厭わず

「おれんトコのアイツ? 」

と聞き返した。


 このときニースはひどく緊張し、普段はあまり飲まない出された紅茶を頻繁に啜る。

「あぁ アイツはまだ若いそれにまだこの世界オルティアの闇を知らねぇ

お節介とは思うがな」

ケインズのソーヤに関しての第一声はこうだった

この台詞でニースには、ケインズの言わんとしていることが瞭然と理解出来た


 今までは、上手くやれたが、次は失策しくじって生命いのちを落とすかも知れない

いつも、ギルドから依頼を受ける度にこんな不安をニースは抱えていたのである。

種族は違えど、えにしあって自分の納屋に航ってきた異世界人の少年。


 季節が一つ半しか居ないその彼に、ニースは自分のまだ見ぬ息子を重ねていた

のである。 

ナリアは女の子を欲しがっているが、ニース自身は男の子が欲しいと思う気持ちがある 

それにまだ、ナリアと所帯をもって隠居するには若いニースには早かったのである。

だから、産まれてくるかも知れない息子にソーヤを重ねて面倒を見ていたのだった。


「旦那の言う事も御尤もですがね

オレは、アイツには死んでほしくない反面、

冒険に連れ出したいという気持ちも有るんで、

だから今は、オレの好きにさせてもらえませんかね

とにかく今回は、アイツを死なせないようにするそれだけでさぁ」

ニースは、瞭然と断言した。


「そうか、そこまでいうなら連れて行く ......があまりあの娘には関わらせないようにしろ

オレの一行パーティーではないし、兎や角言える立場でもないのは承知のうえだが

敢えて言わせてもらうぜ


 俺様は独り身だからよ、あんな子供ガキがいたらいいなって思ってよ

御前さんのように息子ってヤツを重ねているかもな」

ニースがまだ生まれてくるかもしれない息子を、ソーヤに重ねていた事はあっさりと看破した上で

ケインズは寂しそうに独白する。


「今回は、前衛はやらせんようにはするが、どんな埒外の魔物が出張って来るか

ワカンネ それが一番不安だぜ なぁ旦那よ」

いままでは大抵はギルドが魔物の目録を整備していて

(これは、ほとんどが妖術士のオルトがやっていたが)

有料だが備えの魔器から何時でも参照できる


...が今度はそうはいかないのである

 ニース自身にもかなり不安がよぎるのは致し方あるまい

その空気を察したかケインズは、わざと大仰おおぎょうにニースの肩を叩き

「まぁなるようにかならねぇか 此処を出たら酒場で一杯引っ掛けようぜ

ギアトレスには酒場なんてものがありゃいんだがな

 でも久々にガキの頃思い出したぜ 

地上の四大陸でさえ全貌は分からずリブス王の支配域でさえ

オルティア大陸の全土じゃねぇし、まして、今回は未知の地域とくらあ。

どんな化生バケモノや魔物がいるかと思うとワクワクしてくる自分がいるんだ」

と本音とも取れる言葉を吐露した。


「実は、オレもさ旦那 だからこそアイツにも経験させてやりてぇんだよ

聞けば、アイツの世界は平和で、魔物はおろか多様な知的種族もいねぇ

しかも何から何まで規則にがんじがらめに守られてきたんだと

そんなのつまんねぇじゃんよ」

と勢いでニースはソーヤから聞いた異世界の事を

墓まで持っていくつもりだったが

いつの間にか明け透けに喋っていた。


「気持ちは分かった 連れていくことは俺様が許可する 

......が、何度でも言うが あの娘には深入りさせるなよ

後は言わんし、これが俺様からソーヤに関しては最後の警告だぜ」

「あぁ、分かっているとも」

と二人はがっちり握手を交わし密談室を辞した。



 一方、ネグリールのメギスト遺跡では多少熱い接吻を貰ったものの

無事魔獣:リンディールから彼女の魂を転生の環に

還す事ができたニラウス、ドランは、フォルネウスから再誕の儀を受ける。


 そして彼の両耳には、女性らしい耳飾りが付けられ

魔獣:リンディールの多少の熱い接吻こうげきの結果、彼の躰に魔獣の影を飼うこととなった。

 

 あの時、首尾よく彼女の魂を切り離したものの

魔物より瀕死の接吻こうげきを受けた彼は、フォルネウスが再誕の儀を瀕死の状態で行ったのである

再度死ぬような苦しみを味わうならば、今が契機とばかりに切り離された

魔獣としてのリンディールで肉体の再構築を行ったのだ。


 新生した魔族:ニラウスは外見は以前の端正なエル族そのものである

ただ一点、違うのは蛇と狼の複合体の魔物:リンディールの影が小さいながらも体に

動く生きた入れ墨として同居することと相成った。

この入れ墨は自由に我が物顔で体を這い回る

顔・手足・腹・背中と体中を這い回るが

ただ一点、男性のしるしには近づこうとはしない

幸いながらもこれはドランとフォルネウス、あとは能力ちからある賢者や魔女・魔道士にしか

見えないということである。


{ふん、相棒が増えたな ニラウスよ まぁ、すべては上手くいった

これでいいじゃねぇか? }

躰に生きた入れ墨を住まわされて、落ち込んでいた彼にドランは

相棒らしく軽口風に話しかける。


「その通りだな 我輩としてもこうして彼女の元一部と永劫に暮らせるのだからね

でも、エル族としては落ち着かないな

整容上あまり好きではないのだよ ”入れ墨” はね」


 彼がこう愚痴るのも訳があった

端麗な容姿のエル族は自ら勧んで入れ墨で体を飾らない

こうした入れ墨は邪法に手を染めたか、闇の手勢の連中らが結束の証として

良く用いるからであった。

ウル族やケット族の男性はおしゃれで入れる場合もあるが

エル族連中は、こうした入れ墨はあまり見掛けないのである

まして、彼は客商売でもあり顔にでも居座られたら迷惑この上ない。


「我輩としては、顔はご遠慮願いたい所だがね 

まぁあまりは顔には来ないようだし、致し方あるまいか」

と愚痴ると

「なぁに、心配しなさんな ヤツ(リンディール)も顔にはあまり来んだろうよ

アンタの食い扶持がかかっているからな

それに ”リンディール” は御前さんの忠実な眷族よ

そのドラコ族とだけでも多少なり危険な場所にだって行けるさ

いざとなればソイツが助けてくれるからな

でもよ これは覚えとけよ、いくら定命理ことわりから外れたとはいえ

それは”死なない”訳じゃねぇ

そのリンディールはお前さん自身の魂の一部だぜ

そいつが命運尽きたその時は ......あとは分るな? 」


 魔族は、通常の怪我や疵程度では ”死なない” がある特殊な条件が揃うと

いとも簡単にその身を滅ぼしてしまう

従って魔族は特殊な死の条件は秘中の秘であり盟約を結んだ相手にしか

教えないのが普通であった。


 強大な能力ちからを持つ対価として、こうした特殊な死の条件を課せられるのは

この世界オルティアことわりでもあった


 あのシーアでさえ、十字聖剣と十字聖槍で同時に心の臓を貫かられれば、

命運はそこで尽きるのだから。


「あの娘は既に封印が解かれたギアトレスに航った

俺様は、お嬢様に報告があるし本格的に動くのは交易が始まってから

遺物発掘はそれからのお楽しみってぇトコだな

今は、座して待つしかあるまい 

ことろで、オレとの契約は忘れちゃおるまいな? 」

とフォルネウスは、”同族”しての顔と態度に戻る。


「もちろんだとも、 我輩も大規模討伐隊レイドに潜り込むつもりさ

またとない稼ぎ時でもあるからな」

「それは、結構 まぁ当てにはしとらんが ”先輩” のオレには一番を頼むぜ、ニラウス」

とバンバン背中を叩く。


「ではな、吉報待ってるぜ」

石翼魔ガーゴイルに乗って遥か眼下の大陸タフタルを目指しフォルネウスは去って行く。


(ァタウェーを討滅出来たならあるいは、あの老竜:ネーヴェンタールでさえ鎮めれるやもしれぬ

アギオス盆地は、世界オルティアの臍、あそこならあるいは...... )

フォルネウスはだれとも無しにつぶやいてた。

それは既にシーアの勝利を確信していたかのように自然と口から出ていたのである。


 こうして、幾星霜もの魔獣:リンディールとの因縁はこうしてやっとカタがついた

だが、彼:ニラウスの物語は終わった訳ではない

世界オルティアに忽然と現れた銀の髪の娘によって

激動するこの世界オルティアをこれからも目の当たりにすることになるのである。


 そんな事とは露知らずニラウスは、ギルドで大規模討伐隊レイドの依頼を待ちながら

吟を詩う


〽 恋い焦がれ、こがれのいとしき我が半身

〽 女神の手の御上おんうえに、長き惑いの闇から目覚めん

〽 愛し魂、荒ぶる魂、優しき魂すべては女神の膝元で

〽 寄り添う、赤子の如くなり

〽 このうたいとけき、いとし者に捧げ奉らん


 鎮魂の祈りにも似たこの吟は傷心のラトアの心をも優しく癒やしていく

それぞれにそれぞれの想いを乗せ吟は広場に流れ渡る。


 今この時ばかりは誰もが手を休め祈りを捧げる仕草をしていた

それは、シーアが賢者:ランドルフの所で大規模討伐隊レイドを発行するほんの前の

出来事であった。


 彼は、女物の耳飾りを揺らし宿に向かって歩いていく

どうせ宿代は只である、帽子に入った路銀はいつもより重く

当面の食事にも困らない

しかし、今夜は自分と小さなドラコ族の腹を満たせればそれで良かった。


{ちぇっ 稼いだ時ぐらい パーっとやろうぜ}

「お前はいつもそうだな カネは大事にしなきゃな」

{お前らヒトって 貰ったカネに意味を見出そうとするよな

俺様にとっちゃどれも同じだぜ}

「まぁそう言うな、魔族になりたてとはいえ我輩はヒトで有り続けたいとも

思っている だから、こうして貰ったカネに意味を見出し続けるのさ」

{はいはい、 今に始まったことじゃねぇし 

今回は俺様も少し、そのカネに意味とやらを見出してみるか}

と二人は宿に入っていった。


「ハハッ とうとうギアトレスの封印解かれやがったぜ

早速、視察団の”令嬢”として乗り込むとするかぁ 

クソぅ どうもワクワクしてきたぜ

俺様が一番乗りして理想郷ヴァルハラの野郎どもに自慢してやる」

と淡いピンクと紅の二色の長い髪、淡いオーキッドの瞳

可愛いピンクの唇、豪奢なワンピースドレスを着て

ピンクの花柄のタイツに紅いリボンパンプスの少女の口からは

似つかわしくない下衆な男性の声が漏れる。


 先の集会で前髪の一部をリボンで束ね毛先がゆるく巻いた見た目少女は

今は、両の髪を高い位置で括ってリボンで結びツーサイドアップにして

更に可愛く装っていた

 バルケモス大陸五大商家シラー家から、特別に家名を名乗ることを許されていて

表向きは、シラー家の分家筋で世間では品位品行申し分ない令嬢ということになっているが

実は男性で非常にゲスな性格な暗殺狂 ”ネルリンゼ” そのヒトである。


「それは、嬉しゅう御座いました ネルリンゼ様

苦痛に喘ぎ苦悶に苛まされる住人の顔が また沢山見られるのでは? 」

メイドが彼のスカートの中で脚のお手入れをしながらこう囁く。


「いんや、今回はあくまで視察だしよ

俺様の ”表” を全面に出さなきゃなんねぇ、全くイライラしやがるがしょうがねぇ

温和しく ”令嬢” の振りしてるさ」

とケット族のメイド:ケイトに話し掛ける見た目少女の男:ネルリンゼ。


「ねぇ? それより髪を梳いて頂戴♡ 

貴女から髪を梳いて貰わないと リンゼねぇ 落ち着かないの♡ 」

と今度は外観相応の可愛い声音でおねだりをする

「ふふ リンゼちゃんは甘えんぼさんね」

「うんとね リンゼは甘えんぼさんなの♡ 

早く御髪おぐしを梳いて♡ 」

と”少女”らしく甘え声でメイドに甘えるその仕草といい声音といい

彼は少女以外の何者でも無かった。


「ふふっ 先ずは足掛りをしっかり整えてからな 

オレ様、お得意の甘言で住人共の苦痛に歪む様を堪能させてもらうぜ

後の二人の様子はどうだ? 」

と男声に変え

「いまは新人ラーゼスの通過儀礼の真っ最中ですよ リンゼ様は行かれないのですか? 」

とメイドが男声も気にせず自然に対応する。


「いんや、今回は視察こっちを優先する、大規模討伐隊レイドとは別に

視察団の枠をアイツに手配させておけよ」

「はい、既にあの秘書官様には連絡してあります

視察団の枠は10名は既に確保してあるそうですよ」

「流石は、アイツだなギルドの高位階連中に

”女性秘書官”として潜り込んでいるだけのことはある 

それにお前もな オレ様に愛される権利があるだけのことはあるな」

このネルリンゼという”男”外観は愛くるしい少女ではあるが

メイドと二人きりの時は”男”をかなり全面に出していた

「有り難き御言葉、恐悦至極にて御座います」

とメイドは胸に手を添え軽く一礼。


 彼:ネルリンゼがこうしてニヤニヤしているのも

足元には裸に剥かれ、凄まじい擦過痕を付けられ

さらに顔も含めた全身を賽の目に切り傷を負わされた

少女が転がっていてそれをパンプスでグリグリ嬲っていたからである

嬲る度、賽の目の切り傷からは血が滲むが決して致命傷には

ならない


 こうして獲物を弄ぶネルリンゼはこの上ない多幸感を味わっていた

こうやって無垢で美しい少女に切り傷を付けるのも彼の愉しみのひとつだからである。  

そして、彼のスカートは不自然に盛り上がりそれを愛おしそうに眺めるメイド

「あらら、おっきくなっちゃた? 」

「うん リンゼね これが死体モノに変わったら ねっねっ♡ お・ね・が・い」

とおねだりする彼の口調は少女らしく変わり可愛かった。


「はいはい、分かってますとも少女これ死体モノになるまでお預けですよ」

「ぶーっ ケイトのイジワルぅ でもでもイジメて苦悶のお顔を見るのも楽しいから

リンゼねぇ 迷っちゃう♡ 」

とまるで”少女”のようしなをつくりスカートを揺らす


「ふふ リンゼちゃん贅沢ですよ、

先ずは少女これ死体モノになるまで、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ」

ケイトもざらつく舌をぺろりと出し舌舐めずる。

「うんっ リンゼそうするねッ!! 」

と少女の声でメイドとやり取りをしている最中も

彼は、更に疵口に小水をスカートを捲り”立ったまま”かけたりパンプスで嬲る。


ーーッ


 と声にならない声をあげ苦悶の表情を浮かべ大粒の涙を流す哀れな少女を

嬲る狂宴は続き

「どうした? んーー? 声、出ないか そうだろうとも テメェの声はこのオレ様が潰してあるからよ

叫びたかったら叫んでんもいいんだぜ このクソメスガキが」

と下衆い男の声で罵る。


 この狂宴は、剣の耳飾りを付けている

今は新人の通過儀礼真っ最中の見た目少女の連絡役:ケレシアから

タフタル大陸でギアトレス解放の一報をうけ、急遽ベルゼ入りをして屋敷をまるごと

彼お得意の甘言で半日と経たずに乗っ取りその娘を嬲っていたのである

他の屋敷の住人はケイトが一人一人解体してそれぞれに互いの肉を食わせ

そうして狂った様をはたから眺めて散々愉しんだ後での最後のお楽しみだった


 そうして、すべての狂宴が済み、

痛ましい ”召喚儀式事故” の目撃者を装い官吏に訴えたのであった

ネルリンゼはメイドのスカートを掴み嘘泣きをしながら

「えぐっ えぐっ リンゼとても怖かったの

お屋敷から大きな物音が聞こえてきて興味本意で覗いたらね

このが怖い化生おばけを呼び出していたの そうしてそうして

うわ〜〜ん リンゼ怖かったよぉ ケイトぉ〜 」

と嘘を吐く

「お可哀想に、リンゼお嬢様はこのの召喚実験を見ていて

遇々、実験が事故に繋がったを見てしまわれたのでございます」

官吏も

「そうでしたか ここは隠秘学オカルトの本場でございますから

まぁ”よく”あることです

後始末は、検屍官に検めさせますので問題ないでしょう

ネルリンゼ様、貴女は事件の目撃の功労者としてますます名を高められますでしょう」

とカネを渡される。


「えぐっ えぐっ 早く忘れたいわ ねぇケイト? 」

目に手を当て泣きじゃくるネルリンゼ ...だが口元はうっすら嗤いが見え隠れしている

でもだれもそんな些末な表情の変化には気付いた者はこの場にはメイドしか居なかった

「そうですねぇ 早く馬車の中でおやすみになられてはいかがです? 」

「うん リンゼ早く馬車の中でお休みしたいの」

「お嬢様もこういっておられますし いいかしら? 」

とメイドが切り上げようとすると

官吏の男は

「これは、大変な思いをされましたな えぇ いいですともこれからは、我等の領分ですので

ネルリンゼ様どうかこんなことは早くお忘れになって下さい」

「うん」

としおらしく頷き

二人は馬車に乗り込み、中で大笑いをする。


「ガハハッ 木端役人の狗めオレ様に騙されてよぉ

どうよ オレ様の哀れな”令嬢”っぷりは? 」

「相変わらす、素晴らしいお手並みでした ネルリンゼ様の”令嬢”っぷりには

毎度毎度感服致します

ホンモノの令嬢なぞ足元にも及びませぬ」

とメイドは彼の鮮やかな手並みに心からの感嘆を述べる

 

そうだろうとも オレはこんな可愛いオンナノコに成りたくて

どれだけのカネを掛けたと思っている それはさておき

 それと、あの一家には大いに楽しませてもらったぜたのしーぜまったくよ

これだから”令嬢オンナノコ”はいつまで経とうが止められねぇんだよな♡ 」

と心底嬉しそうな顔で言う。


「ねぇお楽しみは まだぁ〜 ねぇねぇ」

と不自然なスカートの股間部を押さえメイドにおねだりをする

「はいはい いいですとも ではどうぞ 今度はワタクシをお召し上がりくださいませ」

と彼が座っている上に抱かれるように座る


んんっ、 ...あぁん... んん ...ぁぁあんあっ... ...あっ やっ...


 と唇を重ね上からも下からも湿った音が聞こえ

ケット族の少女と見た目少女の痴態が馬車の中で繰り広げられる。


 一方、死体を検めていた検屍官が官吏に

「ちょっと不審な点があるんだがもう一度あのに、詳しく聞いたほうが良くないかね? 」

と問うも

「あの娘は、シラー家の分家筋のご令嬢だぞ、 確たる証も無しには下手な勘繰りはせん事だ

あれは、単なる”召喚”の事故だろ 此処ベルゼじゃ良くあることだし気にするな」

「御前さんがそう判断したならあとは言わん 忘れてくれ」

と検屍官は後片付けをする

(でも、召喚事故なら”呼び出された魔物”はどうした? 

術者が死んで還る事なぞ出来ん筈だがな そこらで暴れて騒ぎになっても可笑しくはないんだが

それにあの賽の目の切り疵は間違いなくヒトの手によるものだ 絶対魔物の仕業じゃない

もしかしてあのネルリンゼとかいう娘が ......いや 考え過ぎかね 

どうも経験としを重ねると 真実が見えすぎて困るな ハハ 

オレもこの仕事、そろそろ潮時かね 生命いのちは一つだし、まだ生きていたいしな)

と検屍官は考えていた。


 彼は、かなり真実まで詰ていたがさしもの彼もネルリンゼという

品位品行共申し分ないシラー家分家筋のご令嬢が

下衆な男とまでは見抜けなかった

だがこうして、検屍官という一人の生命いのちが助かったのだからそれでいいのである


しなしながら、”優秀”な検屍官が、こうして一人職を辞してしまったのもまた歴然とした事実であった。




 ニース一行パーティーは、散会しそれぞれ思い思いの場へ散っていく

ソーヤは修練場、オルトは術具店、リーリャは買い物、ナリアは武具店や

ニースとソーヤのために食材店をめぐる。


 そんな中で、サリだけ皆とは違う雰囲気が漂う場へ足を運んでいた

ベルゼにもいかがわしい連中が出入りする歓楽街は存在する

そんな、地味で目立たず仮にも聖職者たる治癒役ヒールであるサリは

堂々と”慣れた”足取りで歓楽街に消えていく

歓楽街に聖職者がいても可笑しくは無いのだが

彼女は歓楽街でも色街方面へ向かっていたのである


サリの口元は、歓楽街の暗部に近づくにつれて下卑た嗤いの色が濃くなっていく。


 そして、とある女衒屋の裏口を叩く

「おう 誰だ? てめぇオメェのような女が来るトコじゃねぇよ帰んな

教会に寄進するほどの悪さはしてねぇよ」

と意気込むヤサグレ男で青年くらいのヒム族であった。

おっとり顔でいかにもスレてなさそうなサリを見て彼は

教会の活動のの一環で寄進活動があるがそれだと思ったのである


 普段の

おどおどした、小動物のような喋り方とは思えない下卑た口調で

「おう なんだいきなりその口の利き方はよ

オレを誰だと思っている? サリ様だぜ 此処の支配人を呼べ

今日は、久方振りに第二の古巣へ帰ってきたんだ はよ中入れろや」

とまるで”男”のような語調。


 あまりの剣幕に驚いたヤサグレ男は慌てて支配人:ムドルスを呼ぶ

サリを見た途端大男のウル族の男性は

「うへっ これはこれはサリ様、例の物をお見せ下さいませ

証の指輪を此処に」

と見知った対応。

そんなやり取りを案内したヤサグレ男は呆けて見ていた。


「そうだったな、こんな地味な女の恰好なりじゃ流石に分かんねだろうし

今日は、気分がいいからそのヤサグレの処遇はテメェに任せる 

きっちり”処分”しとけよ」

「お任せを それでは、お手を拝借」


 サリがいつも肌身離さず身につけている黒い石が嵌まった指輪を魔器に通す

「こっ これは失礼しました ささお早く中へ

今、貴女が紛れ込んでいる冒険者共にここで”表”の顔を見られると厄介です

御召替えも中でどうぞ」

「あぁ そんじゃ、この聖衣のローブと錫杖だけ預かってくれや

ワンピースドレスはいつも、この下に着ていてるしよ」

「左様でしたか ではローブと錫杖をお預り致します」

とサリが普段着に着ている聖衣のローブを脱ぐと下は豪奢な花柄ワンピースドレス

大きく膨らんだスカートそれに既に可愛いフリルソックスに紅いパンプスと

普段の質素倹約のサリからは到底窺い知れない恰好なりをしていた

しかも、シャンパンゴールドストレートロングの髪には紅い小さなリボンが

散りばめられている。


 ”普通”の可愛い顔や雰囲気の彼女とはあまりにかけ離れた格好にヤサグレ男がきょとんとしていると

「やっと ”本来”の姿に戻れるぜ こんなクソ普通な顔じゃメスガキ一匹モノに出来ねぇからな

やはりこっちがしっくりくるぜ 地味な恰好なりは気が滅入るって、なぁそうだろ? 」


 サリは、普段は質素な聖衣のローブをがっちり着込んでいる

しかもそれをたとえニース達の前でも脱いだことはない

((( 聖職者はいついかなる時も聖衣を取らないんですぅ )))と

彼らに言い含めていたから怪しまれずに済んでいただけで

聖衣のローブの下は、いつも豪奢なワンピースドレスだった

流石にパンプスは携帯の小鞄ポシェットに入れていたが。


 それにこの小鞄ポシェットは、神代級遺物を仕込んでいて

それなりの空間がある

数千のワンピースドレスや靴や小物で空間は溢れかえっていた




 と今度は”声”が男の声に変わり ぐちゅり と股間付近から音がした途端

普段でも可愛い顔付きが更に変化し見目麗しい少女へ変わっていく

今度はシャンパンゴールドの髪がウェーブロングに変わり、同時に

シャンパンゴールドからヒヤシンスブルーとゼニスブルーの二色のウェーブロングに

髪色も変化する

 髪はザワザワとうねり髪先も意思があるが如く くるくる巻いて

本来の姿に戻った時はあのおどおどした顔はすでに無く

おっとりした目付きからやや小生意気な目付きに変わった

可愛くも美しい少女がそこに居たのである。


「我が、歓楽街女衒屋界の総元締め サリューシアお嬢様よくお越し下さいました」

と此処の支配人ムドルスが頭を深々と下げ畏まった。


 案内人のヤサグレ男は更に驚きの事実を知ることとなる

「アンタ 男? 」

彼は可愛いオンナノコが自分と同じ男の声を出すのを聞いてそう真っ先に

質問してさらに総元締めと言われたのに気づかず つい、普段の不遜な調子で質問をしてしまう。


「えへへっ バレちゃったぁ♡ ふふっそうよ サリちゃんってぇ オトコノコなの

どお、これ可愛いでしょ?  表の顔は地味な聖衣のローブの治癒役ヒールの”サリ”

可愛いお胸もちゃんとあるし素敵でしょ?

でもでも これは半分しか当たってないわ♡ 」

スカートを片手で可愛く摘みくるくる廻る様はどう見ても

男には見えない。

と此処までは見た目相応の可愛い少女の声音。


 しかし、

「だが、オレ:サリューシアが本当の名でしかも

しるしを体内に隠すことの出来る正真正銘の”男”だぜ

テメェみてぇな下等な種族とは違ぇんだよ」

とここからは下卑た男の声であり決して声音を真似ているわけではなく

どちらもホンモノの男声・女声だった。


先のワンピースドレスや小物類服飾品は、奪った物もあれば、

”彼”の有り余る財をつぎ込んで買い揃えたワンピースドレスや小物もある 

普段地味な恰好なりに縛られている彼のはけ口であり

これを誰も居ない空きの時間に着て楽しむのは彼にとって至福の一時だった


「そっ それではいつぞやの月蝕祭儀で舞ったあの舞い装束姿の あのサリ様? 」

 彼は月蝕祭儀でノージェと一緒に舞った小柄な少女”サリ”を

思い浮かべていた

布の面積が少ない舞い装束で少女であることは、誰の目から見ても明々白々であったからだ

「あぁそうだが あん時は、オレの美しく可愛い肢体を衆目に晒して

下衆な野郎の視線やメスガキ共の羨望の視線を浴びて、気持ち良かったぜ

まさにオレの”ハレの”舞台に相応しい大舞台だった

そんで昂ぶって、思わずしるしが出ちまいそうになってたぜ それがどうした? 」

とうっとりあの奉納の舞いを回想する。


 布の面積が少ない舞い装束で肢体を衆目に晒し皆の羨望・劣情・妬みや嫉みの視線を

一身に浴びる、彼に今までとは違った悦びをあの奉納の舞いは与えてくれたのである。

あれ以来、舞い装束は彼のお気に入りとなり偶に一人で着て部屋着代わりにしていた。


「でっ でも確かにあん時はしるしは無かった 

ホンモノの女だった どうして? 」


「うっせなー こんオスガキぃ 

説明したろオレ様はしるしを体内に隠せるってな

そんすりゃ 見た目は女と変わんねぇしその上、オレの場合は少々特殊でな

髪も雰囲気も変わるんだ 今目の前にしておいてそれ、分からんかこの莫迦めが

声はどちら(サリ・サリューシア)の時でも、男女自由自在だからな

莫迦なテメェには、どっちみちわからんだろうがよ」

とスカートの股間をはっきり膨らませ動く髪でヤサグレ男の首を締め上げる。

「 ......でだ テメェはこのオレの裸のような舞い装束に、劣情したって訳か

”男”の裸にかよ? 

ガハハハァッ!! この痴態野郎が...... テメェはやっぱり莫迦に加えて腐れ外道だな」

と自分の外道さを棚にあげサリューシアは散々罵りと蔑みの言葉を彼にぶつけて

最後に唾をその彼の股間に吐きかけた。


 ニース一行パーティー治癒役ヒール:サリは

実は男でしるしを自由に体内に隠せる特質をもった

見た目少女の男だった


 彼もまた、ギアトレスでァタウェーの魔道実験に巻き込まれ

躰が変成し、結界の綻びにより、幾星霜前にこの外界に出てきた

服わぬ種族である。


 しかも、隠している間は普通の普通のシャンパンゴールドのストレートロングに

”普通”に可愛い顔付きの少女という在り来りな姿に変化するのである

これでは、だれも男とは判らない筈である。


 さらに幾星霜に渡って歓楽街の女衒屋や男娼館を牛耳ってきた男でもあった

幾星霜にも渡るこの世界オルティアの暗部・闇社会を牛耳り

その経営者は長らく謎とされてきたのである

まさか、経営者の”娘”と噂されてきた人物サリューシアが経営者本人であり

しかも異性装の男だとだれが結び付けることが出来ようか。

 

 女神に捧げる舞いを奉納した可愛い少女サリ

いかがわしい商売の総元締めでしかも、男なのだから何とも皮肉な話しである。


 彼は嘗て女性としてタフタル大陸のグレモリ修道院で”女性”神官見習いとして

同級の少女を手に掛けつつ優秀な成果をあげ

そこでノージェと出会い”妹”として居場所と女性聖職者としての

地位を確保したのである。


 治癒役ヒールとしても彼は至極優秀でなめらかな祈りの詠唱は

月蝕祭儀の言祝ぎを聞けば誰でも納得するであろう

そして、ノージェに長年に渡る幻惑術を施し、”妹”と思わせている

そのうえで修練と称してニース一行パーティー治癒役ヒールとして紛れ込み

今、共に旅をしているのである 

何れ、今度は彼が聖職者界を完全に牛耳るその日まで。


「オメェは用済みだ このクソオスガキのオツムの悪さにはホトホト呆れるぜ

目の前の事実すら認識出来ない莫迦はもうオレの業界には要らねぇな」

とサリューシアは左側に束ねた ”魔蒼樹の根” をしゅるりと彼の首に伸ばし

巻き付け ”魔蒼樹の根” から血を吸いつつ皮膚下に髪を這わせ

躰中の繊維を捩じ切る様に断ち切った。

この ”魔蒼樹の根” はシーアの ”吸血樹の根” に比肩するくらいの

能力ちからを持っている それをほんの少し能力ちからを出しただけで

千々の肉片と臓物の塊と化した彼はまだ死にきれないのか、

サリューシアの能力ちからによるものかまだ蠢いていた。

 

 外道な殺戮者同様、彼のワンピースドレスやパンプスには一滴も血がついていない

「ムドルスこの残飯は番犬の餌にしておけ こんガキもすこしは役立つ事してもらわんと

給金払っていた意味がねぇ 良かったな最期に犬の餌になることが出来てよ」

と彼は表情一つ変えずに肉片にこう言い放った。


「サリューシアお嬢様、 突然のご来訪はどうされたので? 」

とやっと本題の質問を恐る恐る訊ねたムドルスに


「いよいよ ギアトレスの封印が解かれてなオレも今、潜り込んでいる一行パーティー

そこに大規模討伐隊レイドとして出張るんだと

オレは ”サリ” としてついて行かねばならんし

あいつらにはオレの目的が果たせるまではついていく

それまではどうしても生きておいておかねばならん

オレが”男”だと今でも看破出来ない、おひと好しの莫迦共だから

潜り込んで活動するには都合がいいからな

だから、あいつらが神代級遺物を手に入れても、他のゴロツキ共が手を出さなかったのも

オレが裏で手を回して居たからよ

この点で、オレはあいつらにはでっけぇ貸しがある 

いずれあいつらにはきっちり箔を付けて返してもらう」


 ニース一行パーティーが神代級遺物を手に入れた後、

ゴロツキの絡みが極端に少なかったのは

女衒屋や男娼館を通じてサリことサリューシアが裏で

手を回して居たからであった

「ふふ、サリューシアお嬢様の貸しは怖いですな」

「そらそうさ、道楽であの一行パーティーにいるわけじゃねぇ

まぁちくとオレの道楽は入っちゃいるがな ハハハッ!! 」


「それに、サリューシアお嬢様はお綺麗ですから

たとえ”表”でも殿方とは分かりますまい」

「あぁん、 それは当たり前だろ 好し、オメェに”罰”をくれてやる」

「えッ」

ムドルスは途端に狼狽する ...が

「まぁ そんくらいで肉片にはしねぇよ

メイドを一匹調達しておいてくれ 種族はケット族で少女だぞ

オレ好みなのを一匹用意しとけ」

と此処で一旦間を置いていたが


 次第に大粒の涙を浮かべ

「ねぇ サリって甘えっ子だから ねぇねぇ、どうしてもメイドが欲しいッたら!! 欲しいのッ」 

と最後はスカートを両手で掴み両脚でばたばた地団駄を踏み

半べそで駄々をこねる可愛いサリューシアがそこにいた。


「ふふ分かっていますとも再誕の儀を施しサリューシアお嬢様がうんと甘えられるように

躾ておきましょう」

「うんッ サリ うれしいっ♡ 」

と満面の笑顔。 


「ようやく幾星霜も温めてきた計画がようやくオレのモンになろうとしてるからな

このチャンスを逃す訳にはいかねぇ」

と彼はスカートをつまんだり、リボンを直したり少女らしい仕草を見せる

「それに、あの銀の娘はぜってぇにオレの女にしてやる

オレと同様にすっげぇ可愛い娘だからな あの娘はオレ様のモンだ」

と綺麗なオンナノコには特に嫉妬の情念を燃やして

幾数百と二目と見られない顔にしてきた、彼にしては非常に”珍しい”事に

手元に置きたいと言う。


「珍しいですね サリューシアお嬢様がそんな事をおっしゃられるのは」

「あれは手元に置いてオレ様のしるしで虜にして、手に届く所に置いておきたいのッ!!

美しい”お人形”は何時でも手に届く所におかなきゃ 意味ないもん

サリねぇ あの”お人形”欲しくて欲しくてたまんないのッ!!

もうノージェおねーちゃんじゃ満足出来ない 出来ないのッ!! 」

と可愛い姿と声でまた駄々をこねる


 脅いたことに彼はノージェと一緒に住んでいた頃

”本来”の姿に戻り既に彼女を手にかけていた

彼の涎には強力な幻惑作用がある上

服わぬ種族は同種族同士でしかもう仔を残せない

それ幸いに、散々男の劣情をノージェで満たしていたのである。


「オレはどうしても、あのお人形シーアを手に入れなければならん

そこでだ、ムドルスよ 

一時的にお前に元締めを任せようと思っていてこうして古巣を訪れたって訳よ

オレが今後、ルベリトやタフタル・バルケモスと移動する度に女衒屋に立ち寄らせて貰う

その度に売上とメスガキやオスガキの確保の状況を確認するからな

しっかりと成果を出しておけ 分かったな」

とここは、元締めの顔である

「このムドルスめ、すべてはサリューシアお嬢様の御言葉のままに」

と深く一礼。


「あとあれだ、 オレが表の顔 ”サリ” の時は絶対声掛けンなよ

掛けたらたとえテメェでもこの肉片の仲間になると思え

これは世界オルティア中の従業員すべてにすぐ通告しておけよ」

「は、直ちに」

と何やら魔器で連絡を取る。


「あらっ ムドルスったらお髭にゴミがついてますぅ

小綺麗にしておかなきゃですぅ」

と表のサリの声と口調でムドルスの髭のゴミを取る。


「失礼しました」

とムドルスは緊張を隠せない

「いつも、サリっていつもお節介って言われるですぅ」

とくるくるスカートを広げ廻る


「所で、メスガキ一匹用意してあるか? 」

と一転男口調の男声でムドルスに問うた。


「はい極上のを一匹、サリューシアお嬢様のお気に召されるかと」

「それは愉しみだぜ 体内に隠しっぱなしだと流石にイライラするからな」

サリ(サリューシア)は一人の時は殆どこうして”女衒街”に脚を運び

その店で一番の上玉を本来の姿サリューシアで、愉しむこともあれば

普段のサリとしてオンナノコ同士で愉しんでいたが

ベルゼ入りしてからは ソーヤの修練だの遺跡攻略の訓練だので

すっかりご無沙汰で今は、丁度良い息抜きであったのである

この世界オルティアでは女衒屋や男娼館に行くことは

忌むべき行動ではない

男女がいれば自ずと形成される仕組みであった。


 他の見た目少女の男同様、サリューシアも大の少女好きで

少女の恰好なりをしていながら男は大嫌いで

オンナノコ(サリューシア)として近づき、男として嬲る

そして最後に、徹底的に壊す

生きたお人形遊びは、これだからやめられない

サリューシアが多幸感を味わえる数少ない愉しみだった。


......。


 数刻後、此処を訪れた時同様

地味な聖衣のローブを纏い錫杖を両手に握ったサリューシアこと、”サリ”は

裏口で、ペコリと頭を下げ

「では行ってまいりますぅ ムドルス お土産待ってて下さいですぅ 

ノージェおねーちゃん早く死んでくれるとうれしいな♡

サリ(サリューシア) ノージェおねーちゃん早く死んでくれるように

もっともっとがんばらなきゃ♡ ですね」

と普段のサリの声音と調子で下衆い事をさらりと言い放つ

「では、お気を付けていってらっしゃいませ サリ様」


... 乙女おとめたる処女おとめ、死出の王ハデスのさかずきを汝に贈り給う

御霊、常闇に迷い、幽世かくりよに迷い深淵を迷い、永劫の惑いをかの者に与え給うなり ...


 口元を醜く歪め

サリの恰好なりで下卑た男の声で放つ呪詛は女神に捧げた聖句より遥かに

言霊が込められていた


 普段は絶対に人前では脱がない地味な聖衣のローブの下は女衒屋に

訪れた時同様、豪奢な花柄のワンピースドレスである

何時でも本来のサリューシアに”戻って”メスガキを騙し嬲るためのドレスであり

”彼”のお気に入りの正装でもあるのだから。


 一人女性専用宿屋に戻ってきた”普段姿の”サリはニヤニヤ顔を隠せない

久方振りに本来のサリューシアの姿に戻り男の劣情を吐き出してきたのだ

一人でシャンパンゴールドのストレートロングの髪を梳くい

姿見で彼が好きな贅を凝らした豪奢な寝間着ネグリジェに着替える

今は体内に隠してあるのでもしこの場を見られても

男とは看破されまい


「あぁん サリのノージェおねーちゃん 優しくブチ殺してあげるから待っててね



 そして、魔器がサリにある報せを持ってきた

「んっ? 黒い羽? あぁ? セリシアがイアゼーラに渡しただどぉ

ッざんけんなよ コラァ ノージェをブチ殺すのはオレ様の役目だろが」

突然の報せはセリシアのメイドからだった


......。


「 んんっ? ......まだ実行してねぇ んならすぐオレのトコ持ってこい

明日か明後日にはギアトレスに行かなきゃなんねぇし

 ここちとら動ける訳ねぇだろ

クソが!! いまこっちに向かっているなら夜中前にしろよ」


......。


「もう出たって? んならいい此処で待ってるぜ」

何回かの沈黙と激しいやり取りはセリシアがイアゼーラに

ノージェの抹殺をサリ(サリューシア)に断り無く渡したことによるものだった。

だから、サリは普段の可愛い声でなく下衆い男の声である


 とその日の夕刻遅くフレジア経由で”ロージィ”がやって来た

「おぉ ロージィじゃねぇか 久方振りだな」

「そういうオメェこそいよいよ動くか? サリ」

ロージィは相変わらずふるもの(アンティーク)のような恰好なりをして

野太い男声である。


 ここは女性専用宿であるが彼らは見た目が完全に少女なので問題はなく

例え躰を調べられても体内に隠している時は股間は女性と寸分違わず

堂々としてれば良かった。


 しかも、部屋には密談室並みの防音結界もある最高級宿であった

「あぁ、そん通りだぜ オレ様は本来の姿で先刻さっき古巣で遊んできたとこよ」

「それは、良かったな理想郷ヴァルハラでももう アンタの

噂でもちきりだぞ あのサリューシアが動いたってな

あの冒険者共の中にいて いつアンタが動くか皆の関心事だったぜ」

「ほう 流石早いな」

「なにじゃの道はへびってね」

ロージィは机に腰掛けショーツを見せつけるあざといいつものしぐさ

片やサリも寝台に腰掛け美しいシャンパンゴールドの髪をさらりと流し

ショーツを見せつけるあざとい仕草をするが今体内に隠しているので

女性となんら変わりなかった。


「便利な躰しているな」

「そうだろうとも オレはこの躰に大いに満足してる ァタウェー様々ってな」

「それはそうと 羽はどうした? 」

とサリは一番気に成っている事を持ち出した

「あぁ イアゼーラもアンタは怖いらしい素直に渡したぜ」

と書簡に入った黒い羽を渡される

「なぁ サリ 情報くれよオメェが一番最前線にいることは分かっている」

「当たり前だろ この黒い羽の対価としては悪くねぇ取引だ」

そこで、サリはベルゼに渡ってからのシーアの動向と

ニース達が此処に至るすべての細かいいきさつを話す

彼はヒトをヒトとも思って居ない外道である

すべて詳らかに情報を喋るのに躊躇いなかった。


「すげぇな おいこれ売ってもいいだろ」

「ぁあ 好きにしなよ オレはオレ様の願いが叶えば情報なんざ端金だからな」

「元締めのオメェにとっちゃそうだろうな」

「またオレはタフタルに戻る じゃな、((( 今回は独断で悪かった))) とセリシアから言伝だ」

「いいぜ、((( まだ実行されずにいた事に感謝するんだな ))) と言伝頼むぜ」

と言う

「ではな オレは御暇するぜこっちも忙しんでな」

とロージィはスカートを摘み御辞儀をして部屋を辞した


「うふっふふっ、 これでこれでようやく ノージェおねーちゃんを

”じんわり”とブチ殺せるわ サリ(サリューシア) 嬉しくて嬉して 

あぁん やだぁ〜もぅ 我慢できないーっ

さぁて どーやってブチ殺すかな あぁん迷ちゃうわ」

とサリは寝台に伏せシャンパンゴールドの髪を散らし枕に抱きつき

両脚を交互にバタバタさせ 黒い羽でショーツをなぞった


「このサリ様が おねーちゃんを優しくブチ殺してあげるんだから

ぜーったい 他のヤツには殺させないんだもん

そうしないとダメなんだよね でないとサリが一番になれないもん

あぁん サリの大嫌いなノージェお姉さま♡ 」

彼をここまで過き立てるのはひとえに彼が”少女”の神官の最高位として

支配を確実なものにするためでありこれが彼の当たり前の思考である。


 そのまま寝入ったサリは、まるで天使のような寝顔でこれが

下衆な男の寝顔だとは朝、起こしに来た宿の従業員は思いもしなかった



こうして、思惑はシーアをさらに絡め取っていく


 大規模討伐隊レイドが出発したのはその次の朝方で、飛び入りと

視察団含め計40人の大所帯となった

もちろん、この中には見た目少女のネルリンゼ、それとニース一行パーティー

治癒役ヒール役:サリが含まれていたのは間違いない


「ニースさん わたし愉しみですぅ だってまだ見たこともない世界ギアトレスなんでしょ? 」


 サリはいつもの聖衣のローブである、その下も”彼”の大好きな豪奢なワンピースドレスである

これもいつもと変わらない、

この聖衣のローブも有り余るカネで買った神代級遺物を仕込んでいて

どんな豪奢なワンピースドレスを下に着ていても傍から見ても違和感無いような工夫がしてある

ワンピースも彼が大好きな小鞄ポシェットや服飾品で飾られ非常に満足していたが

靴だけは女物であるが忌々しい ”普通” の黒の編み上げブーツである。


 彼は靴を誤魔化す神代級遺物を幾星霜も探しているが、こればかりは

見つけたことはなく、闇競り主催者ブラックオークショナーのデメテルにも探させているが

5代目デメテルでも発見出来ていなかった。

彼はこの点で少し苛ついていたが今はそれよりノージェをどうやって”じんわり”ブチ殺すかが

一番の関心事であり彼の苛つきを抑えるにはもって余りあった。


「おうとも サリ テメェには治癒役ヒールとして今回気張って貰わんといかんかも知れねぇ

よろしくたのまぁ」

「はいっ サリ かんばります」

と錫杖をギュウと握る


「はは サリ、アンタ気張りすぎだって いまから気張ってどうすんの?」

とナリア


「サリさん、オレも頑張って前衛するからよろしく」

とソーヤ


「サリ アンタお節介あまり焼いちゃだめよ」

とリーリャ


「お互い術士同士、気合いが入りますね」

とオルト


「えへへっ 皆を癒やして女神様に少しでも近づくようがんばりますぅ」

「全く、オメェはいつもこんなんだな ガハハハッ!! 」

とニース


「ハハハハ」


 ニース一同に笑いが溢れる ......が

サリの口元は、皆の嗤いとは違い醜く歪んでいる

しかし、出発前の記念柱オベリスクでも転送中の隧道のような空間でも

誰も気付く者は居なかった

彼らは間抜けで御人好しの一行パーティーなのだから。


(まぁ 黒い羽も手に入ったし、方々に手を回したし

のんびり(ノージェを)殺らせて貰うさ 

今は、休暇だと思えば後はこいつらを死なせないようにするだけだしな

簡単なことさ)


 サリの黒い内心も

皆のワクワクした内心もすべて

繭状に織り込まれた文字列の帯は、封印が解かれた世界ギアトレス

分け隔てなく運んでいった。


次回 70話 ァタウェー ー儚き邪法の足掻きー

お楽しみに


二章最終話は3部に分けて投稿の予定です

活動報告に

服わぬ種族と理想郷ヴァルハラとフレジアを投稿しました

みてみんへ飛びます

未登場キャラクターも掲載しているため予めご了承願います。

ニュアンス等の変更はあるかも知れませんがストーリーには変化ありません


本日 2018/08/28

サリ(サリューシア)について を活動報告に投稿しました

彼の設定です

リンクからみてみんに飛びます

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