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オルティア・レコード  作者: 南 泉
二章 〜 魔女と小さな銀の鍵 〜 ベルゼ浮遊大陸編 第一部
63/75

63話 棲まうモノ・付き従うモノ

 先の大氷狼フェンリルの遠吠えに

名無しの村ではシリーが、ただならぬ雰囲気に危機感を滲ませていた

「何だろうねぇ、あのら何かしでかしたのかねぇ 

やれやれ厄介事を持込よってからに だから よそ者は嫌なんだよ」

とごちてはいたが、

一向にそれ以上の”危機”は訪れてこなかった。


... ... 。


「ふん、 何も起きないねぇ”説得”とやらは上手くいったのかどうかはその内分かるさね」

とシーアから貰った”高級品”の乾燥腸詰めを齧る。


「おぉ、こんな”贅沢”久方振りだね アンタがいたらアンタにも食わしてやりたかったよ」

と夫の遺した得物を見ていた


 この後、永久とこしえの懐より使いの者が来て持ち込んだ

香水の瓶に入った黒い液体 ”大火蜥蜴サラマンドラの涎”と

大氷狼フェンリルが後に”聖域”に隠居することも相まって

気候がゆるやかになり、この村が大発展を遂げるのはこの時の

シリーはまだ知らない。


 わたしは、しばしレオフィールと夢で遊覧を楽しむ

夢の中の彼は脚に氷の結晶陣を踏み台に空をける

大氷狼フェンリルと隣で軽口を叩き合っていた

晴れた蒼穹を飛翔するその顔は、終始穏やかな表情であった。



『...ーア、 シーアよ目が覚めたか 随分と楽しそうだったのぅ

ニヤニヤしとったぞ』

「えっと...... あのね」

と夢の中を語る

『アイツも嬉しかろうて、お主の夢の中とはいえそのような形で望みが叶たことだしな』

「えぇ、そうだといいわ」

とわたしは輪廻の向こうでの彼の幸せを祈らずにはいられなかった。


『所で、蒼の宝珠も手に入れたし、これからどうするんじゃ? あの ”遺産の娘” の処遇が

決定するまで滞在するか? あのトリスティとかいう只人の娘は此処にもっといても良いような

事を言いよっておったからのぅ』

「えぇ、そうするつもり あの達も”仲間”に入れたくて気もそぞろだもの」

『そうか、それもよかろ どうせ儂らには急ぐ必要などないからの

あの只人の娘の言葉に甘えるとするかの』

「ミーアお姉様は? 」

わたしは、ミーアも気になっていた

アレだけの”大技”を連発したのである まして相手はわたしもそうであったが

手負いとはいえ初の”竜”との戦いである疲弊は免れていないであろう。


『あぁ、あ奴はもう修練じゃ 裏で励んでおるぞ元気げんきんな奴よの』


そういえば サオリの宿で邂逅した彼の者は何処に居るだろうか?

修練と言うクローティアの言葉で気になっていた

それと今回の戦闘を経て

改めてわたしは盾役タンク・剣士役の不在のこの一行パーティー

その必要性を考えていた。


 ケールは出来れれば盾役タンクでなく、戦闘の補佐に回ってもらいたいのである

後備え(あとぞなえ)としての役割が彼の役割としてふさわしいのではないかとも

考えであった

やはり牙と爪ではどうしてもヒトの剣士の様にはいかないのである。


 ビヨンも剣士役ではあるがあの武器は臨機応変な形状を取れる代わり その対価で

専門の武器程威力が出ない様に思える

怪力が有るばかりでは

専門の職者とはやはり一撃一撃の攻撃の与え方が見劣りするのだ。


ベルゼの湿地帯 ”ロコス” で他の冒険者の戦いを見ていたが

専門職はやはり違うのである ビヨンより遥かに見劣る得物でビヨンよりは

ダメージを負わせる度合いが違うようにも見えた。

この一行パーティーはライブ・アーティファクトも含め術師が殆どである

ニースやケインズの一行パーティーように上手く、役割が分散するといいのだが

わたしの一行パーティーは攻守がどうも偏っていた

それが、今のわたしの直近の課題でもあった。


「ケール出てきて頂戴」

{うぉん 只今}

と現れたのは先の戦闘で足止め役を見事にこなした

ケールである

私のアレで言の葉を紡げるようになったらしい

若い男の声で返事をする

「お疲れ様 お口は大丈夫? 」

といまだ彼の口にはうっすらと霜がついていた

{なに、心配は無用些か言の葉を紡ぐのには難儀でありますが

直に霜も融けるであろう あるじの為に生きあるじの為に死す

これぞケルベロス冥利に尽きるというのもの

まぁ、尤もわれの本体は冥界で寝ておりますがな この躰が霧散したとしても

また我が君主クローティアが拵えてくださるでの ハハハっ}

と三ツ首を動かす 

「貴男にはいつも盾役タンクでごめんね」

{お気になさらず、我はあるじのお言葉のままに動くのが

性分なれば、これもまた好し ですが ぬしのお考えも十分に分かりまするぞ

我らの牙や爪は限定された獲物を捉え滅する事は出来ましょうが

今回の相手は些か相性が悪く難儀ではありました}

とやはり直接は言わないがケールも同様の思考を巡らせていたらしい。


<<レヴィア ラヴィアちゃんの様子はどぉ? >>

と一番の大技を放った彼女の様子が気になった。

<<んとね まだ種の中でオネンネしてる ムニャムニャお声が聞こえるから

”生きて”はいると思うの>>

と念話が返ってきた

<<そう、ひとまず安心ね 後で、大好物をあげるっ言っておいて>>

<<はぁ〜ぃ>>

とやり取りを終える

ベルゼに戻ったら医術院で”生骨”も調達せねばならない

わたしはいろいろ思考を巡らせていた。


 とその時である

コンコン

と扉をノックする音


「あのぅ シーア様 お寛ぎの所失礼します

ルベラ様という妙齢の女性が是非お目通しをとの事で御座います

いかがでしょうか? 」

とトリスティの声

「なんでも、ベルゼの宿で一度お逢いした事があるとか 申しておりました。 」

「あぁ そういえば 暫くチャンスを喪って居たけど ギタリさんから 蛇腹剣

買ったんだったわ」

『まぁ、修練どころじゃ無かったからの

今なら始めるいいチャンスにもなろう 儂は構わんぞ

ただ お主が千々になる所は見たくないでの

それで滅することは無いとはいえ

儂が”本気”を出すやも知れぬ だから儂の目の届かぬところでな』

「ふふっ 分かったわ わたしもむざむざ千々になるなるような無様な真似はしないわ」

と少し及び腰ながらも


「はい、トリスティさん お通しして」

というが早いか

剣呑な気配が扉から漏れる わたしは


すぐさまウィップを構えようと牙を手首に突き立てようとした。


「ふふっ よくも我が同胞レオフィールを素材にしてくれたわねッ 」

とすいっと わたしに詰めより長い爪の切っ先を喉元に突き立てた

僅かながら赤い点が滲みでる


『貴様!! 』

とクローティアが濃厚な気配と共に怒気を露わにした

しかしわたしは ”彼女”の”意”を悟り手でクローティアを制止する

『なんと シーアよ呆けたか?  』

とクローティアは場の雰囲気がまだ理解出来ないようだ。


 それくらいわたしをおもんばかっていてくれている事の証左でもあるのだが。


「このヒトに”殺意”は無いわ 殺るチャンスならいくらでもあるもの

大氷狼フェンリル様のところからから此処へ来る途中でもチャンス

あったしね それなのに私達の疲労が回復しきったであろう

今だったり わざわざ トリスティさんに取次を頼んだり

今だってそう このまま、寸止め無しでひと思いにだって出来たのにね

そうでしょルベラ様? 」

 

「ふふ 流石ですね シーア様

突然のわたくしのこの狼藉にびくともしない 場を読み適切な判断を下す

その上しっかりと得物は構える お見事でした。 」

と手は突きつけたまま声音は柔らかく言った。


「実は、タネ明かしをすると あの達出てこないし

それにミーアお姉様もビヨンも反応していない わたしはその状況から判断したまでよ」

「ご謙遜を、 それも貴女様の采配で御座いましょう身近にある”手駒”は多ければ多いほど

宜しいかと存じますわ」

「そんな 彼女らを”手駒”とは思っておりません 皆わたしの家族であり

仲間ですよ」

「これは、失礼致しました 我ら”ドラコ族”は皆そのような思考故、我らの言葉で

申し上げましました。お赦しを」

とさっと手を退き 唇を疵口に寄せ軽く接吻をし

胸に手を添え軽く一礼


「んっ......んっ」


軽く彼女から嬌声が漏れる

「姫殿下の紅き雫をこのわたくしめ如きが拝受出来ようとは、

子々孫々に至るまで誉ですわね」

「姫殿下? 」

なにやら大袈裟な言葉が飛び出してきた

「そうですとも レーリア様・リーメア様がいらっしゃる ギアトレスの封印が

姫殿下のご功績により解かれようとしてるのです

御二方は姫殿下のご到着を首を長くしてお待ち申し上げており

リーメア様より 姫殿下に蛇腹剣の拝受を仰せつかっておりますが

まずは修練せよともご母堂君ごぼどうきみより拝命されております」

「そうだったの でもなんかあの時は殿方っぽい言い方だったけど

貴女も男性? 」


 この世界には 人外の者に多いが男性が自分の容姿や長い生涯に飽きて

女性や少女に変性する者も居るとあのケット族の異性装の少年達に出会ってから

気になりビヨンにアルカーナで調べて貰ったのだ。


 実際、

異性装の男性には服飾店や雑貨店でも会ったことはあった

女性や少女の衣服や装飾品は女性のみならず

異性である男性も引きつけてやまない魅力があるようだ

かくいうわたしも少女になってすぐその魅力に魅了された一人だが


「ふふ、我らドラコ族は、本来彼のレオフィールのような竜体でしてな

性も本来はありませぬ環境や好み特質などが男らしさ・女らしさを決定し

段々それに近づくものでしてな 我もまた”男性”寄りを選択した者で御座います

ヒト型を取るのも大きな躰ではこうしてヒトに紛れる事もままなりませぬからな

殿方嫌いのシーア様にお逢いするというのでわざわざ かような姿を取りまして御座います

またこうして慣れぬ”女性体”でご相手をすることで

我の方に些か不利な条件ハンディを課してもおるのです

髪を長くするものもふんわりしたとスカートを穿かないのも踵が高い

靴を履くものもまた然り


わたくしめもこれらのほつれなく、また踵を折らぬ様に修練する所存ですぞ

でも この女性体も男性体と違ってなかなか良いものですな

トリスティ殿には裏庭の許可は取ってあります

故、存分に修練が出来ますぞ

まずは姫殿下も簡素なお召し物にお着替え下され

わたくしめは裏庭でお待ちしております」

と彼女(?)ルベラは丁寧な所作で退いた。


簡素なローブに着替え暫く触っていなかった”蛇腹剣”を佩く

蛇腹剣は鞘などは無く抜き身のままで佩くのである


早速ローブに幾筋も線が入りほつれてしまった

下着も今回はドロワーズを穿く

男性だった時のズボンの感覚を思い出しちょっと懐かしかった。

 庭に出ると

ミーアと大あくびをするラヴィアあとはじっとある一点を見つめる

コトンとレメテュアの姿があった。


「ふふ、大変良いお召し物ですよ 修練に高価な衣服はいりませぬ

まぁ、わたくしめに一筋でも赤い線を走らせる事が叶いましたら

高価なワンピースドレスを着ても十分に戦うことが出来るというもの

まずは、お試しの一戦ご賞味あれ」


 わたしは、とルベラと対峙する。

そして、見慣れない二つの硝子の珠がくっついたような道具を

テーブルに置く

「これは砂時計と言いましてな”時間”の経過を目に見える用に工夫された

道具です 詳しい説明は又後ほどで

こんな遠目でも

貴女様のまなこならこの砂一つ一つがはっきりと分かるはず

この砂が”全て”落ちきるまでが修練の時間でございます

私めはこのリーレア様からお預かりした蛇腹剣で

シーア様は、その練習用の蛇腹剣で修練を致します」

わたしは思わず、

「それって、ずる......」

といいかけて先の偽ディーボ戦の時、サラに言い放った言葉を

思い出し、語尾を斬って捨てる。


「ふふ、シーア様よく堪えましたな 戦いの場では如何に不利な条件にあろうとも

如何に粗末な得物であろうともそれを有利に導く采配こそが肝要ですぞ

さしあたって本日は初日、わたくしめのこの衣服にそのやいばが届くか

砂の最後のひと粒が

落ちきるまでシーア様のお召物がただの布切れと成れ果てるのが先か? 楽しみですな」

ミーアが風陣ふうじんの指輪を構えると


「おっと、ミーア様癒やしは不要ですぞ 

初日は、手加減はいたしますがシーア様にも”多少の”疵にも慣れていただきますので


なぁ〜に心配はご無用 シーア様は例え千々になったとしてもすぐに再生出来る御身体からだです

痛々しいお姿を見たくないと言うのであれば自室にて”お祈り”でも捧げていてくださいな

あと、彼処のライブ・アーテファクトの少女達にも

 ”本気” を出さぬように言って聞かせてやって下さいませ

すでに消せない ”殺気” でいささかわたくしも腰が退けます故。 」

と言うとミーアは3人の少女に何やら話をつける。


三人の少女はコクリと頷くとまた庭で目覚めたばかりのラヴィアを椅子に座らせ

自分達ものんびりとお菓子やお茶を愉しみだした。


「どうやら彼女らの殺気も失せました ではその最初の”ひと粒”が硝子の底に着いた瞬間


 初めますぞ

先ずは自由に構えて掛かって来なされ 手ほどきは修練の中でご教授致します」

そしてミーアとルベラは視線を交わしテーブルで ”砂時計” をひっくり返す

そして、最初の”ひと粒”が硝子の底に着いた瞬間、柔和なルベラの目が鋭くなる


 「ではこのルベラ、リーレア様の御勅命によりたった今より、この身を

シーア様の御身の修練に捧げまする 

 いざッ 推して参るッ!! 」


と裂帛の勢いで彼女が迫って来て 

空気が押し寄せるが如くわたしを、圧倒する


彼女がすれ違った刹那、私の練習着のローブには幾筋もの線が入り更に

白い肌にも幾条の赤い線が引かれる


痛み慣れしていないわたしにとってこれはきつかった


ツッーーッ


「まずは素早く飛び退くのです 得物の

間合いを見極めなされ」

私は、精一杯飛び退き更に転がり込む様にして距離を稼ぐ

「宜しい 転がる方向にも気を付けなされ 思わぬ罠があるやも知れぬですぞ」

わたしは、転がる勢いで体勢を立て直し立ち上がり、蛇腹剣を構え

例の凸部を押し込む

シャランと刀身が鞭の様になり

ルベラめがけて振るも届かない

「次は、自分の得物の間合いを知るのですわたくしめは動きませぬから思っき

”振って”みなされ」

とまた距離を徐々に詰め間合いを測るそしてわたしの剣の切っ先がようやく届いた瞬間

すかさず彼女から切っ先が飛んで来た

「ふふ ”動かない”とはいいましたが”攻撃”はしないとはいっておりませんぞ

わたくしめもせっかくの女体を疵付けたくありませんのでな

わたしもすかさず避けて転がり込むが先を読まれ脇腹を多少抉られた


「きゃう〜」


鋭い痛みが脇腹に発生し赤い滲みを造り大きく口が開く

しかしすぐさまジュクジュクを血泡が疵口を覆い泡が躰に吸収されたと同時に

ダメージは掻き消えていた。

これがわたしの再生の能力ちから...確かに痛みはあるがそれも一瞬であった

「どうですかな、手痛い初手は?  転がり込む軸足が見え見えですぞ

そちらに転がると教えておるようなもの

転がるときでさえ相手に ”気取れられて” はなりませぬ

まぁこれは場数を踏むしか無いでしょうな

これを砂が落ちきるまで 続けますぞ いざ参るっ」

と先ほどの流れを何回か繰り返し

わたしは都度、大きなダメージを負う


「ねぇ、あの女ぁ 手加減していないじゃないの

シーおねーさまに”ダメージ”を付けるなんて

本来なら万死に値するわよ これ ねぇ」

とコトン

「「ねーっ」」

と二人も同意する

しかしミーアが”宿り木”を出す構えを見せて少女達は

「「「分かっているわよ ”ミーア”絶対ちょっかいは出さないわ

だから、早く構えを解いて! 」」」

とミーアを睨め付けた

「ご ごめんねつい 反応しちゃったの 赦して」

「「「ふん まぁいいわ その代わり後でおカネとお菓子頂戴

後、シーおねーさまにはこのこと絶対いっちゃ駄目よ」

彼女達もおカネはレヴィアから貰っていたが

無駄使いはしないようにと定期的にしか貰えないのだ

次回貰えるまであと何昼夜かはがあったのである

「今回だけよ 私も構えたのは悪かったと思って居るし」

「「「は・や・くッ は・や・く おカネち・ょ・う・だ・い」」」

と手を差し出したり髪の茨を伸ばしてきたりしていた

ミーアは渋面を拵えながらも

ちょっと大きな額面を渡す

「「「きゃっは〜ん これで後で街に行こ 

雑貨とか靴とかね 欲しいのがあるの〜 ふふありがと ”ミーアおねーさま”ッ 」」」

とニコニコ顔。


こんなやり取りをミーアと三人の少女達がする内に最後のひと粒の砂が落ち切ろうとしていた

わたしも遠目でこれを見ていて思わず気を緩めてしまい今度は右肩を彼女の切っ先が抉る


ッアァ...... 。


「油断はまさに生命取りですぞ ダメージが再生の能力ちからに勝れば

貴女様も撤退は免れませぬ

迫りくる悪意はその場で完全に滅しておかないと、対策をされたり

志を同じくする輩を集められたりといろいろ厄介ですぞ

我らドラコ族の信条としては一戦で生死に蹴りを付けるモノをいくさの信条としております


 貴女様にまで”強制”するおつもりはございませぬが 遺恨や禍根は出来るだけ

その場で断つのが宜しいかと思いまする。 」

「えぇ、とめておくわ」

と息を上げながら返答する

丁度その時、最後の一粒の砂が完全に下に落ちきったのを確認した

「おつかれでした 結局一太刀いや一筋も赤い筋をつける事は叶いませんでしたな

まぁ、初日としてはこんなものでしょう


ですがこれはワタクシめの最後の修練のとき一筋でも赤い筋を付けることが叶いましたら

貴女様のものです」

と彼女は持っている蛇腹剣を見せた

竜の鱗の様な形をした刃片が連なった ひと目で”至宝級”と分かる

蛇腹剣である。


「 これは持ち主によって首飾りや指輪・刻印などの形となりまた、持ち主の意思で剣から鞭へと

自在に形態を変え

また芯線はエンシェント・ドラゴンの尾であるためゆうに貴女様の200歩圏内の間合い

を持ち、相手の血を吸収することで斬れ味が衰えないドラコ族の至宝でありますぞ

次回の修練までまたお待ちしておりますぞ

頃合いはそうですな ワタクシめの鱗をお渡ししますこれに接吻してくだされば

何時でも馳せ参じましょう


 後、得物のお手入れは欠かさぬ様に どんな粗末な得物でも手入れをすると

持ち主のココロに応えてくれるモノですぞ お手入れの仕方はミーア殿に教わりなされ」

と手の平くらいの大さの青翠の鱗を渡される

「では、後のお時間は貴女様の物ですごゆるりとお寛ぎくださいませ

では 後免ッ」

と言って気配も無くルベラは掻き消えた


「あ、修練が終わったようね シーちゃん大丈夫かしら? 」

「わぁ シーおねーさま抱っこしてぇ」

と三人の少女が群がって抱っこをねだる

「はい、順番ね 今回はラヴィアちゃんからね」

「ねぇ、おねーさま躰はどう? 」

と心配そうな彼女

「何とも無いわ、ダメージは痛かったけどそれだけよ

今は何ともないわ

それと貴女達、さっきミーアおねーさまに何か剣呑な気配を向けてたでしょ? 

ミーアおねーさまを脅かしちゃだめよ」

「えっ しっ知らないわ ねぇコトンねーさまにレメ。 」

「そうよ 知らないったら知らないわ」

「そう? ならいいけど」

彼女らがウソをついているのは分かっていた

しかしミーアは片目を瞑り彼女らの”ウソ”に乗ってくれと頼んだのである

「しょうがないわね 後でレヴィアから聞いたと思うけどラヴィアには

ご褒美あげるわベルゼに戻ったら 医術院へ行きましょ

”生の骨”貰ってあげる ”死霊術”の見習いということにしておきなさいな

いい只人には手を出しちゃ駄目だからね」

「きゃは〜ん いいわアレのためなら ”死霊術”の見習いでも何でもいいわ

早くあのの処遇決まらないかしら

まったく面倒な”時代”になったものだわ もういやぁ〜 お屋敷で遊んでていい

此処は辛気臭いから居たくないの」

「えぇ、遊んでていいわ貴女たちもよ」


んっ...んんんっ...


 と順番に濃厚な接吻を交わし少女達は屋敷へ戻っていく

よくよく見るとローブは使いものにならなくなっていた

結局ドロワーズを除く簡素な靴や肩紐無しのブラまで全て捨てて

普段の豪奢なフリルやレースのワンピースに着替えようやく

落ち着いたのである。

わたしはすでに、フリルやレースの洋服や小物無しでは

落ち着かない躰になってしまっていた。


「あ シーア様此処でしたか 只今、賢者・ランドルフより通達がありまして

”遺産の少女” はシーア様に全てお任せするとの事

我々の器・能力ちからでは扱い切れない上ネグリールの賢者総出でも彼女を抑えることは不可能である

と結論が出たようです」

とトリスティ

「そうですか 分かりました ...で彼女の様子は? 」

「まだ眠っておられます時々、眉や睫毛が此処に運ばれてきた来たときよりは

幾分動くようですが、 ...一度ご様子を伺われてはどうですか? 」

と提案してきた

「そうですねわたしも今、修練を終えたばかりで

ほんのすこし疲れを癒やしたいのです 後でなら伺いますわ」

「では彼女の寝所に暖を少し入れておきます

見た様子からどうも氷の性質が強いようで物を近づけると

悉く凍てついてしまいますので

暖は苦手なようですがお寒いと貴女様のお体の具合が心配ですので

暖は入れておきます。

寝所に赴く際は一言お声がけお願いいたしますね」

「はい分かりました」

と廊下を歩き彼女の寝所からは確かに凍てつく冷気が漏れていて

暖を入れているはずなのに扉にはうっすらと霜が降りていた


 途中エル族のメイドとケット族のメイドとすれ違う

「ねぇ テレス お給金でたら ”セネストリ” かギルトスまで出向いて

ワンピースや甘物食べにいこ? お菓子の新作出たんだって

なんでも渡り人が作ったっていう ”けーき” なるお菓子よ

牛の乳から作る ”くりーむ” が美味しいって噂よ

「わぁ〜 いいわぁ テレスも早く食べたいな それ」

「ところで、テレス その指輪なぁに 殿方からのいただきもの?

紅くてきれーな 指輪」

「へへぇん いいでしょこれ お察しの通りよ 意中の殿方から頂いたのよ

アンタにもそのうち いい殿方が出来るわよ」

と会話を弾ませすれ違う


とん


と軽く テレスと呼ばれた少女にぶつかる

「ごめんなさい シーア様 トリスティ様には どうか内密にお願いします。 」

と頭を下げる。

「いいわ 気にしないで 」

と言ってその場を彼女達は離れた

テレスが頭を下げた時可愛い口が大きく醜く歪んで目に仄暗い

光りが灯った事はこの時この場にいる誰も気付かなかった。 



ひとまず部屋に戻り、クローティアを抱き寄せわたしも寝台に横になった。



「ねぇ サラぁ お勉強進んでるぅ? 」

とニヤニヤ嫌味な笑みを浮かべるのは

シュリエルそのヒトである

「はぃ、おねーさま大分解読も進んでいます」

「ふんっ 除外者のくせに難儀してると思って 莫迦にして

苛めるつもりだったのにぃ つまんない

でも そんなクソマジメなサラちゃんに オ・シ・ゴ・トよ

貴女”ヤンス”って知っているわよね 莫迦な貴女でも

元・お仲間の事ぐらいは忘れてはいないでョ? 」

「はぃ、あの”裏切り者”の事は忘れね......っと...忘れませんわ」

危うく禁を破りそうになり素早く言い直すも

グチャリと胸の裂け口が盛り上がり

痛痒いおぞましい感触が全身を巡る


ツッー


と怖気が走る

「あら、言いたければ男言葉で言っていのよ

その代わり此処で貴女は オ・シ・マ・イ

愛しの ソ・ラちゃんに会えなくなってもワタクシは関係ナイワ

何でも、あの拠点の最奥で泣いて暮らしていて貴女に逢えることを

ココロの支えにしてやっと正気を保っているそうじゃない

そんな貴女が闇蚯蚓如きの餌食になって居なくなったら あの

どーなるかしらねぇ うふふ ははは」

「もう、 ソラに逢わせて お願い」

とサラは懇願する

こうして”近況”は知らせてくれるのだが

此処にきてからまだ一度も妹のソラには逢わせては貰えなかった

彼女も教団の虐めやシュリエルの嫌味に耐えて

妹にまたいつかは逢えるその一点を支えに、辛うじてココロを保っていたのである。


「煩いっ 除外者のくせにわたくしにお願いするんじゃないのッ

このクソ娘め あ〜ぁ 今のアンタの一言で気分が非常に悪くなったわ

この簡単なオシゴト出来なかったら

ソラとか言うメスガキすぐディーボの贄するわ 今度のディーボは”本物”よ

まぁ二目と見れない姿にはなるでしょうね はっはは いい気味だこと」

「そっ、そのオ・シ・ゴ・トって? 」

しまったと思ったがもう遅い

シュリエルは言葉をこうして取られるのが一番嫌いだったのである。


「これから言うって言うのに このメスガキィ! 私の言葉を取ったわね

こうしてくれるわ」

とやおら首の後ろを掴み地面に叩きつける様に押さえ込み

踵の高く尖っているパンプスでまたグリグリ激しく後頭部を捻り込む

「ごめんなさい 赦してぇ」

と何度も懇願する。


「ふん アンタの今度のオ・シ・ゴ・トはね ”裏切り者”のヤンスの居場所を掴むことよ

どうせ始末なんか無理でしょうから 居場所を探して来なさい

後はこちらで”手配”するから 分かった? 」

「ハヒッ 分かりまひた おねーさま」

と上から何やら生暖かいきつい匂いの液体が注がれる

見ると シュリエルはスカートをたくし上げショーツを下げ事もあろうに

立ったまま小水をしていたのである。

この前の異性装の男性とは違ってシュリエルは女性では有ったが

加虐嗜好が行き過ぎていて、昂ぶるとこうして小水を掛けて嗜好を満たすのである

そして

「さぁ お口で綺麗にしてよ オンナノコって”後始末”必要なのしってるでしょうよ」

「はぃ、 ん.....んん」

と綺麗にする


 銀の三日月に拾わる前、彼女は小汚い地下遺構で残飯を漁り、数少ない

清水の湧き場を争って喉の乾きを癒やし

魔物や同類に負けて水場を奪われたときは自分の小水や

溜まって腐っている小水で乾きを癒やしたことも数多くあった。


こんな綺麗な小水は今までに比べたらずっと ”マシ” であった。

「あぁん よしよし いいね 今彼はベルゼに居るというのがあのお方からの情報よ

ルベリト大岩礁帯に渡る前に一仕事してきなさいな

貴女にはまだ死んで貰っては困るの

莫大な投資をしてきてるのよ アンタにはね 

ちゃんと投資に見合った物を返してから死んでよ いいこと? 」

「はぃ分かりました 直ぐベルゼに渡ります」

彼女は、悔しくてもこうして返事をする他は無かった。


「渡るときは裸で魚の干物の大樽に潜って”密航”しなさい服は従者にもたせるから

安心していいわ

服は”除外者”じゃないから丁寧に扱ってあげる さぁ早く支度なさい

あとはルベルト大岩礁帯に直接来なさいな

密航方法は自分でなんとかなさい 其処までは面倒は見ないからね

少しでもおかしな素振り見せたらソラはもう居ないと思いなさいな

...... 


何よ? 

いつまでもワタクシの眼の前に居ないで

全く、自分が除外者って事 分かっているの?

...... 。



シッシッシッーッ!!! 早くワタクシが苛つかない内に早く眼の前から消えて頂戴 」

「はぃ」

と言ってサラは涙をこらえ自室に戻った。


 隠者の懐で安泰な生活をしている ”ヤンス” の身にジワリジワリと危機が迫っている

シーアもヤンスもまだ、か細い闇の爪が迫って居ることには気付いて居なかった。



 永い永い夢を見ていた。

古代より 

古代の深海に産出した巨大な蒼水晶の結晶が地殻変動で

アガテ大山脈に隆起し現出して信仰の対象となったわたしが

少女の姿をとり幾星霜。

やがて

大氷狼フェンリルと硝子竜の二柱にちゅうを眷属として迎え

只人共を蹂躙し氷漬けにし、心の臓の蒐集を愉しんでいたあの頃。


 何時からかわたし、チフェーリアをめぐり

眷属二人は仲違いをして永い不毛な意地の張り合い

意地の張り合いが単なる意地の張り合いでは無くなって

それが闘争へと変わる頃、竜体の眷属 レオフィールの手に掛かり

巨大な氷柱つららに封櫃され 意識はそこで途切れた


 ふと意識に再度灯が灯る

蘇る感覚、少女としての意識 

一番最初に感じた感覚は...... 感覚は...... 。




 わたしはひと休みして、遺産の少女が眠っている寝所へ向かう

すでにトリスティには連絡済みであり彼女の了承も取り付けてある

扉の霜が舞い散り水滴に変わる


ミシリ と音を立てて開くと暖炉の火晶石ひしょうせきが赤く励起しているにも関わらず

ひどく寒い

其処に髪は銀光沢のアリスブルーで所々にライトスチールブルーのメッシュが入っていてメッシュが入る前髪2ヶ所には雪の結晶体の髪飾りをしている

肌は病的なほど白く唇は淡いライトコーラル

雪の結晶の意匠のワンピースドレス、色は裾が濃く大ぶりなフリル毎に段々薄くなって

雪の結晶の意匠も微妙に変わるこれまた豪奢なワンピースに着飾った

少女が寝ていた

陽の光りが眉や睫毛に反射して七色に色彩が蠢く

わたしが近づくと

開口一番上半身を起こし


「なんて ”暑い場所” なのここって? 信じられないわ この”フェーリア” 

を炙り殺す気なの!! 」

と文句を聞かされた。


「あら、ごめんなさい 貴女が この ”フェーリア” を解放してくれた おねーさま? 」

「えぇ それは今この場にいる皆が一致した見解ね

わたしは、シーア シーア・オブライエンという者よ」

と略式の挨拶をする 


「ふ〜ん そうなんだぁ ......で アイツラは何処? 私のオトモダチは?

あっとその前に わたしは チフェーリアっていうの 只人共は ”煉獄のチフェーリア”

って呼んでいたわ

所でもう一度聞くけど私のオトモダチは? 何処? 」

「そうね 大氷狼フェンリル様は貴女の目覚めをお待ちかねで

硝子竜 レオフィールはわたしがとある理由で滅したわ」

と淀み無く答えた。


「え レオちゃん貴女が滅したですって ウソよウソ 仮にも遺産の少女であるフェーリアの

眷属なのよ 信じられないわ 証拠を見せて 銀のおねーさま」

と言われ

小鞄ポシェットから 蒼の宝珠を二つ取り出した

勿論碑文入りである

「うわ〜ん どうしてこんな事になったのよぅ いくらこのフェーリアを手に掛けたとは言え

わたしの眷属なのよぅ」

と大粒の涙を零す

こぼした涙はたちまち蒼い結晶体に変わる


「これについては 弁解はしないわ ただ言えることは

わたし達に”悪意”として向かって来ただけ わたしの目的と彼の目的がぶつかり

わたしに利が向いた それだけよ」

「そう でもでも”リンリル”ちゃんは元気でしょ」

「当然よ わたしはその大氷狼フェンリル様の願いと私の利害が一致したの

今はアガテの祭壇で貴女の意向を待って居るわ」


「此処で貴女と敵対する気はナイワ 貴女からは”同類”の気配がするし

理由もなしに暴れたりするほど子供でもないの

私を”リンリル”ちゃんのトコ連れ行って 貴女を見ていると盟約を結びたくて疼くけど

今は”リンリル”ちゃんの話を聞くわ 敵対か盟約かはそれからよ」

「えぇ、勿論いいわ わたしは強引な事はしない 貴女の判断に任せるわ」

「へぇ、驚いたこんなもいるのね 只人と来たら直ぐ盟約を迫るってのに

いいわこの部屋は”暑い”し早く連れてってよ

あとこの涙は貴女にあげる 一応解放してくれたお礼」

と言って大きな蒼い結晶体を10程受け取る

この永久凍結した彼女の涙は希少品で

闇競り(ブラック・オークション)でも垂涎の品あることは

後で知ることなる


 トリスティに経過を話しわたしは再び大氷狼フェンリルの祭壇へ

道中の彼女は盟約も済んで居ないのに始終わたしのスカートを掴んで離さなかった

フリルソックスを揺らし、リボンはゴーストホワイトのアジュールのパンプスで、

サクリサクリと歩をすすめる

すぐさま彼女の足元の雪は更に凍てつき砕け散った


例の祭壇では大氷狼フェンリルが伏せて待機していた

大きな体躯には雪が積もり時折

 

バサリバサリ

 

と地面に落ちてくる


{おぉ、わがあるじ 目覚められたか って痛いではないか どうした? }

見ると小さな躰で大氷狼フェンリルを蹴っていた

「莫迦 莫迦 なんでレオちゃんと喧嘩したのよぅ

理由を聞かせて頂戴」

と永い大氷狼フェンリルの語りが始まって

それが済む頃は彼女は次第に目を遠く懐かしむ様に変えていく。


「そうだったの レオちゃんって甘えっ子だったのね わたしとおんなじね

で貴男はそれでいいの 寂しくない? 」

{あぁ我は我なりのヤツへの贖罪と弔いを果たそうと思うてな ヤツの居場所に

この身を隠居させようと思っておる

あるじ殿はシーア殿とこの世界を満喫されるのがよかろうと我なりに思うておった

先程も言うたがヤキモチ焼きのヤツのこと

我と居ればどんな厄災が迷い込むやも知れんて 

シーア殿を待たせるでないぞ 盟約の儀をはよ済まさんか

 シーア殿と達者であられる事も 我の願いよ}

「もぅ どっちがあるじか分かんないわね」

とこんな会話が漏れ聞こえていた。


「おまたせいたしました シーア様 改めてこの

煉獄のチフェーリア 貴女様の手となり武器となり盾になりましょう

貴女様のお仲間に是非ともこのわたくしめを置いてやって

くださいますよう


 このフェーリアは見ての通り 氷のたちでございます

何卒、存分にこの氷のたちをお使いくださいませ

先程の無遠慮な振る舞いはご寛大な処断を」

と私のパンプスと手にスルリと自然な所作で接吻をする

『ふふ、良かろう ではお主の依代をこの儂が預かろうではないか

皆と仲良くな』

とクローティアがチフェーリアの前に歩み出る。


「貴女様はもしや 旧き贄の...... 」

『おっとこれ以上は内緒じゃてな 今代では儂は クロにクローティアじゃよ』

「では クッ、クローティア様これが我が依代にて御座います」

と彼女は雪の結晶体を模したような蒼水晶の胸飾り(オーナメント)を

先の遺産の少女達の様に水晶の棺に預けた


そしてパスが通い彼女の全てが流れ込み

私に新たな四人目のライブ・アーティファクトが加わる

それを見て取って、大氷狼フェンリル

{シーア殿、わがあるじを頼み置きますぞ

我は何時でも音無しの谷の先に居ますのでな

これを音無しの谷に掲げてくだされば”橋”を拵えますのでな 

時々我に冒険譚を話して下され}

大氷狼フェンリルの毛を撚り合わせた髪飾りを渡され


{これは、氷の魔力を秘めた髪飾りでもあります わがあるじどのが

身に付けていてくだされ}

と彼女の左からすいっと伸びている髪に髪飾りとして改めて収まった

また彼女の淡いミディアムスチールブルーの瞳から大粒の涙が零れた

 この時ばかりは、怜悧な笑みをたたえた冷たい印象の目も幾分薄れて

穏やかな空気を纏っていた。


{後、シーア殿と遺産の少女に詫びを入れるとしよう}

「詫び? 」

「初めての邂逅の際 我はそなたへの恐れだけで遺産の少女が付き従っていると

申したな その詫びだ我があるじが盟約したのを見ての 

ただ恐れだけで付き従っていたのではないと悟ったのじゃ

赦せよ}

と謝罪の言葉を言う

「気にしないでいいわ ...貴男って律儀なのね」

{これが我の性分なのでな では最後であるな

祈りの言葉は紡げぬが

お主達の縷々の息災を祈っておる 達者でな}

と氷結遺跡 ザキル に入って行った。 


 これを機に名無しの村付近の気候は劇的な変化を遂げ

アガテ連峰からの凍てつく冷気は季節の一時期のみとなり

豊かな食材を育み村は潤っていく 

でもこれはまた別のお話。


早速フェーリアことチフェーリアはすでに居る少女達の歓待を受け

質問攻めに合っていた


 氷結涙ひょうけつるいを全てわたしが貰い受けてその一部をミーアに渡す

「いいの これって至宝級って話よ」

「いいの おねーさまだってお役目を果たしたしこれはわたしからの報酬よ」

聞けばこの蒼い結晶体は宝飾品によし、冷気の触媒によし

競りでもし出回ろうものなら一国を買えると噂される物であった

そんな永久氷結の大きな結晶体がわたしの手元には20もあった。

「フェーリアちゃん、ホントにいいのこれ」

「いいの どうせわたしの分泌物だしぃ 要らないわ

おねーさまにぜ〜んぶあげる

それよりあの達にしているように フェーリアにもして! 」

といきなり唇を奪われる


んぁ......んんぁんんっ


「あぁん おねーさまってステキな接吻をなさるのね

あの達が懐くのも今になって分かるわ」

ニッコリ微笑む彼女の唇はひんやり冷たかった。


「ミーアおねーさま 冷たいお菓子作りのときは手伝ってあげる

そこらの氷晶石なんかよりわたしの方が優れててよ」

「えぇ、ありがと」

と和やかではあったが

「でも、宿り木だけは向けないでね どうなっても知らないから ふふ」

とやや語気を強めて言う

ミーアはただ無言で頷いていた。


 永久とこしえの懐へ戻り経過を報告して

いよいよ舞台は再びベルゼへ


四人の少女達は棚にある魔物の素材やらをみて何やら話し込んでいた

「さぁ、あなた達も挨拶しなさいな」

と促すと

四人共 は〜ぃ と返事をしてスカートを軽くつまむ


「ではお世話になりました トリスティ様 またいつか大氷狼フェンリル様に

冒険譚を語りに来たいと思っておりますわ」

「転送陣のご用意は整っております 遺産のお嬢様もご一緒に? 」

「いえあの達は御本の中に入りますから お気遣いなく」

とクロの中に飛び込んで消えていく


凍てつく風止み、息吹は育みの風と変わらん 銀の髪揺らす銀の子

たおやかな息吹が貴女達を導きますよう願い給う


と祈りの言葉を背に受けてわたし達は転送陣に飛び込んだ。


トリスティはシーアが去った後

「あの達は何処へ向かわれるのでしょうね ふふ」

「どうしたんですか トリスティ様? 」

とエル族のメイド テレスは問う

「いえまだまだこの世には面白いことがまだ有るって知っただけでも

嬉しくて

エル族のわたしでさえ此処暫く退屈しておりましたの

だって変化が無かったんですもの 良い変化だといいこと。 」

とふーとため息を付き

「さぁさ、貴女達は業務に戻りなさい 彼女らと違って

お給金をもらえなくなるわよ」

「はい」と一斉に皆持ち場に戻る


 その中で一人のメイドが裏庭にこっそり出ていく

「ケッ わざわざ女の恰好した甲斐有ったぜ こりゃスゲぇ情報だぜ

まぁ これでオメェともおさらばな テレスちゃんよぉ

これで此処でのテレスとしての役割も終わりだな 早くから 潜り込んでいて

正解だったな テメェには感謝してるぜ 成り代わるときはどうしても

元を生かしておく必要が有ったからな でねぇとテメェの記憶やら経験やら参照出来ねぇからよ

オレが他人だって看破されちまうからな」

とテレスになりすました”男”はスカートをつまみくるくる回る


「だからめんどくせぇんだよな 他人に成り代わるってのはよ

いままで生かして貰ったんだ 感謝しな」

この台詞を聞いたやつれた”テレス”は自分の死期を悟りどんよりした

目を見開いた。


 男は尚も続けてのたまった。

「全く女みてぇな顔や体付きのお陰で苦労もしたがこういう生き方もあるとはな

オレもたんまりメイドを堪能したからもうこんなトコに用はねぇ

さてお次は ネグリールだ 今度は

オレ様の十八番の人格キャラの見習い魔女っ子 シシリー として

あの娘を探らなきゃなあばよ」

と納屋に閉じ込められ衣服を剥がされ猿轡をしたテレスがいよいよ最後を覚悟して

目を瞑るそれも束の間だった。

テレスになりすました男に短刀で胸を刺され短い生を終えた。

男の指には紅き”血喰みの指輪”が嵌っていた

そそくさとワンピースドレスに着替え帽子、靴、杖を身に付け長い

淡いローズミストの髪に変化する

そして見習い魔女 シシリー になる

「どぉ、よく似合うでしょ? ってもう死んでたか ハハッハ」

この”男”は異性姿の達人であらゆる少女の異性姿を極め若干の変身能力ちから

ある ”エル族男性 ラーゼス”であった

ルナティアの寵愛を受けた数少ない”男性”で声色も変化出来背も少女くらいで

ルナティアに噛んで貰って止めてあるヴァン族の従者として継続時間は長くないが

変身能力も身に付いている

衣服を剥ぎ取り

こうして既存の只人に成り代わる場合も有れば

見習い魔女っ子 シシリーとして

新たに 名を作り人格キャラを設定する場合もあった

シシリーは彼のお気に入りの人格キャラで成り代わりの必要が無いときは

よくこのシシリーに変身することが多かった。


「ではでは、 ごきげんよう 今は死体のテレスちゃん」

スカートをつまむ所作も完璧に死体に向かって挨拶をして王都ギルトス方面へ向かう

永久とこしえの懐ではちょっとした騒ぎになりランドルフの元へこの事がが伝えられるも

肝心の本人がすでに死亡しておりいつすり替わったのかさえ不明であった。


わたしはまた長い文字列の奔流に身を任せていた

往路より若干転送時間がかかっているように感じたが

それでも、 無事 賢者の杜 大樹の杜 古代遺構 様々な呼称で呼ばれる

”ネグリール”へ到着する 見知った地下は すでにノアとネウスネルが待ち構えていた

『おっ戻って来やしたぜ ノア姐さん』

「お帰りなさい 今貴女がここにこうしているってことは 無事蒼の宝珠手に入れられたのね」

「はい大氷狼フェンリル様を説得、硝子竜レオフィールを討滅

件の品を入手いたしました。 

証拠のお品は此処に」

小鞄ポシェットから例の 蒼の宝珠を取り出す

「わぉ すごいわぁ こんなの初めて見たわ 賢者・ランドルフは例によって

儀式の準備に追われているわ

明日昼頃また此処に来て頂戴 封印解除の儀はその時ね


トノベルと往復だと時間がかかるし此処だと簡易宿もあるし

それまでここら辺うろついてていいわ

蒼の宝珠は 貴女が直接渡してやって頂戴」

「えぇそうします」

と言ってこの場を辞した。


『っへへ 気づきましたか姐さん? 』

「当然よ、あの髪あれ 吸血樹の根よ 私の目はごまかせないわ

それにしても怖いわね いつアレに絡め取られるかとハラハラしてたわ

それを自然に扱えるなんて 一体何者なのあの ネルちゃん

知ってる? 」

とノアは 緊張からか長いため息をついてからネウスネル に問うていた


『いや あっしもアレを自在に使いこなせるヤツは見たことありやせんぜ

武器にするにしても使い手がすぐさま喰われてしまうってのに

まるで自分の躰の一部であるかのでやした もしくはあの娘の

躰の一部やも知れませんぜ

初期古代文字の文献を当たればなにかしら記述があるかもですがね』

「貴男は解読出来る? それ」

『うへぇ勘弁しちゃくれませんかね あっしのオツムじゃ一文節解読するだけで

幾星霜も掛かりますぜ どこぞの偉い魔導考古学者のセンセにお願いしなきゃ

いけませんぜ』

「そう、あとで賢者・ランドルフに伝手を聞いてみましょ

これから何か有ったっけ? 」

『いや 姐さんは日が変わるまでは予定はありませんぜ』

「そう 新しい 魔道士・魔女 見習いの子の修練所に遊びに行くわ

あそこの講師ね 私と同期なの ラトア って若い子好きで

それで講師になったくらいのヤツよついさっきも男性六人女性二人

入って来たらしくて魔器で興奮して喋っていたわ」

とニコニコ顔

彼女がこんな顔をするときはたいていからかい目的である


「......でありますから あなた達には先ずはマギの座学から

...マギとは......生来...云々...である」

若い男女が淡い金の髪アメジストの怜悧な瞳の女講師の前でマギの座学を受けていた

その中にとんがり帽子、可愛い薔薇刺繍のウィスタリアのワンピース黒のペチコート

黒いタイツに黒のリボンパンプスのシシリーの姿もあった


(めんどくせぇ座学だぜ、こんなの何十回と集団に潜り込む度に

同じモノ聞かされちゃたまんねぇな

おッ あのオスガキ オレがオトコとも知らねぇで色目使いやがったぜ

気持ちわりぃ でもこの視線はたまらんな 異性姿に嵌ってしまいそうだぜ

尤もすでにオレも虜だがな この”お楽しみ”に刻限があるのは癪だが

仕方あるまい これは”仕事”だからな

あのお方は躰まで変性させる程の熱の入れようだし

ふッ オレはまだあのお方の域まで達してねぇな

さてと うぶでオンナノコらしい シシリーを刻限まで演じるとするか)

と頬を癖でパシリと自分で叩く

「お 其処の えーっと 」

「はい ラトア様 私、シシリーですわ」

シシリーはしおらしく答える

「あぁ ごめんなさい名簿見ていたんだけど オトコノコしか目に入って無かったわ

いいわ 気合が入っているわね さぁさ皆も眠気眼まなこを見開いて

其処のシシリーの様に残りの皆もしなさい」


は〜ぃ


とシシリー以外の七名は頬を叩く

「はい よろしい では続きを...... 。」

「ねぇシシリー 後で お買い物行こうよ お菓子や服みてみたいの

わたしここの魔女に憧れててね...... ってどうしたの急によそ見なんかして」

「あっ ごめん いま見知ったいたの ステキな銀の髪のおねーさまよ

あなたフラウだっけ うんいいわ刻限までまだあるしね」

「刻限? 」

フラウと呼ばれた少女が怪訝そうな顔をする

「いえ 何でも無いわ オウチの門限がうるさくてそれのことよ」

彼の変身はずっと継続は出来ない

刻限があり変身が解けてしまうのである

例え解けても躰の大きさが変わるわけではないが

素人目でも少年であることはすぐ看破出来るくらいには区別が付いてしまうのである

その時は少し”休憩”して改めて変身するのである 

万能とも思える彼の能力ちからの唯一の枷であった。

彼の刻限は丁度真夜中であり今はまだ昼をちょっと過ぎたばかりであった


「うわぁ そうなのお屋敷のお嬢様みたいね」

「ウチの両親厳しくて 前におねーちゃん魔物に殺られて死んでるから

それから煩くて もぅシシリーは大人だっていうのにぃ」

とくねくね身を捩って

と幾度となく演じてきた可愛いオンナノコを演出した。


「でも刻限って真夜中なの」

「なんだ 安心したわ 講義こうぎが終わったら買い物行きましょ? 」

とフラウはまたシシリーを誘う

「いいわ 探る丁度いいチャンスだわ」

「探る? 」

「いっ いえ何でもないわ」

「シシリーって変なの」

と他愛もない会話を小声でする


「......で初日だし今日の座学はお終い 後は明日の今頃此処に来て頂戴

遅れて来た子には後で教えてやってね 

では 散会します」

と初日の講義は終了する 



「ちょっと 虐めにしては ”度” を越しているのでは無いかね? 」

と廊下を自室に向かって歩いていたシュリエルを突然、掴む太い腕があった。


「なッ ...によ 離しなさい!! このわたくしを誰だと思っているの」

「威勢がいいな ふッ 誰かって? 言うじゃないか 

淑女レディに不躾なのは うぬがしでかしたことを

思えば赦されるというもの、ヴァン族の純血の氏族とお見受けするが 

しかも魔族の一翼ときてる どうだ当っただろ」

「あっ 貴方は? 」

シュリエルのおごったまなこは狼狽のまなこ変わる。


「我ら魔族は 只人共の差別・蔑視等という愚かな因習・思想なぞとは無縁な筈だが? 」

見ると大きな体躯の偉丈夫な老紳士がシュリエルの細腕を掴んでいた

「な ...んで貴男が居るの 皇女様付きの執事の 貴男が? 」

「カリエル殿にある交渉事を持って来たのだ、 今は言えぬがな。


 我が盟主は 君らの言う

除外者アウターサイドが ”冥眼めいがん:イルゼリア” を銀の娘に奪われたくらいで

まなこの届かぬ所で無用な仕打ちをしている ...とな 

確かに奪われたことには、嘆いておられたが これも定めで有ったろうと

申しておられていて 彼の者の処罰は考えておらなんだ

ことろがどうだ いざカリエル殿に用向きで来てみれば

あの娘がお主の小水を掛けられていたばかりか 性器まで舐めさせる醜態とは

何事かね

いつからお主は只人共の差別思想に染まりおったのか

此処で弁解してみろ といわれてすぐには出来まい? 」

ここまで言われてシュリエルはガタガタ震えだした。


 魔族社会は徹底した序列社会である。

位階があり上の序列の者には基本的に逆らわないし

下の者を軽口で茶化す言い方はするが蔑視目的では無いのである

そんなシュリエル達 ヴァン族より遥か上の序列の魔族の男性

ハデス王 三皇女の内 第二皇女・第三皇女付き執事 フォルネウスそのヒトであった。


慌てて地に伏せようとしたがもう遅い

彼は、シュリエルがサラにそうしたように首を後ろを抑え壁に押し付けた

「ゆるひて サラにはもう仕置はいたしまひぬ」

とくぐもった声でいう

「ふぅ、 今はわが皇女様がこの場におられない 故にここまでとしよう

あまつさえ自身の加虐嗜好の嗜みにするとは この場でお主に処断を下しても良いが

我が盟主 ハデス王はそんな事は望んでおらぬし 今はこのフォルネウスの判断で

解放しよう まぁ我らも銀の娘の動向は気になるところ

今度の サラのオシゴトとやらの結果をまとうではないか

それまでお主の態度次第では、お主に直接沙汰は下る事はあるまい安心しろ

あとなサラのルベルト大岩礁帯への密航の手配は我らでする

お主は結果だけをカリエル殿に報告せよ

いいか”悪い結果でも結果は結果”だ

処断はわが盟主ハデス王が下す お主ではないそれを履き違えるなよ

これから、銀の三日月の君主 ”旧き円環の蛇” 様に交渉にいくってのに

 嫌なモノ見ちまってよ 気分が悪いぜ 全く!! 」

 ドシリ


 彼は一発壁を殴った

魔抗石の壁が大きく落ち窪む そしてシュリエルは初めて激しく失禁をした。

 

その後のシュリエルは”信徒”達に八つ当たりしたものの

いつもの様に千々になった死体は一つも無かった。


この時自室で泣いていたサラは自分達の命運がまた大きく動きつつある事は

まだ知らなかった


 ネグリールで、大好きな買い物をするため目抜き通りを歩く

魔道士・魔女の見習いや経験を積んだ者達が闊歩している

 

向こうから、若い見習いの魔女と思われる二人の少女とすれ違う

一人はフード付きローブ 粗末な杖、足もブーツも黒一色

もう一人はとんがり帽子、可愛い薔薇刺繍のウィスタリアのワンピース黒のペチコート

黒いタイツに黒のリボンパンプスであった。


「ふ〜ん シーア、シーアあのトンガリ帽子の

あれ”オトコノコ”よ 異性姿者って結構居るのね」

といつの間にやら隣に浮かんでいたシセラが言う

「えっ 気付かなかったわ わたし両方共オンナノコだと思った」

「そうね、やけに気合が入っていたわ 余程、オンナノコになりたいのね

ふふ 可愛いわ でも”エル族”にしては ”背”が低いわねでもまぁそんな子も

居るしね あアソコのおっきな殿方があっちに入るわ 早速鎌で悪戯しちゃお」

「ちょっと シセラやめなさいってば」

「だめだめ こればっかりはやめな〜ぃ」

とふわりのその男性の元へ飛んでいってしまった。

「しょうがないなぁ でも今回彼女は大きく貢献したし今は良しとしますか」

とミーアに言うと

「ふふそうね 彼処の雑貨屋にいこ? 」

返事が返ってきた


 しくもその雑貨屋は先程の異性姿の少年(?)が入って言った雑貨屋であった。

(おっ あの娘もおあつらえ向きに此処に入りやがった

えーと 銀の娘一匹、ケット族の娘一匹、と後ウヘェ オートマトじゃねぇか

ありゃりゃお人形連れかよ まだ”ガキ”じゃねえか

なんでまたあんな ガキの動向探れってそんな事になってるんだぁ

このオレ、ラーゼス様をなめんてじゃねの?

上の連中何考えてんだか まぁカネさえ貰えればオレは ”ガキ” の監視でも

女の格好なりでもなんでもしますよっと)

「......シリー シシリーってばぁ さっきからぼうっとしちゃって

あの銀の気になるの? 」

フラウが盛んにシシリーを突いていた。


「あ ...いやゴメンね わたしあのおねーさまの御髪が綺麗で見とれていたのよ

こう陽の加減で七色に輝くなんてほら ちょっと前”雨”降ったじゃない 

あの時の”虹”にそっくりだなって思っていたの いいわぁ」

「そうね あれ染め粉かな ちょっと店員さんに聞いて来るっ」

とフラウが駆け出していく

「待って待って フラウったらお足が早いわ わたしも聞きたいの」

(また都合よくあの娘について聞けるチャンスが来たもんだぜ

ケッケッ それとなく聞き出すとするか)

とシシリー(ラーゼス)はニヤニヤ嗤いながら 

フラウをスカートとペチコートを揺らし追いかけた

そこにいた店員が二人の少女の激しい質問攻めにあったのは言うまでもない。


 わたしは買い物を済ませ簡易宿を取る

此処で素材を広げる訳にもいかず 粗末な寝台に横になる

『何じゃ レフィキアには行かんのか? 』

と唐突にクロが聞いてきた

「今は行かないわ あの達、例によって情報交換してるでしょ? 

邪魔しちゃ悪いわ」

と言うと

『ほぅ殊勝な考えじゃな』

「もぅ茶化さないでくれる? 」

『すまんすまん』

こんなやり取りして隣接の食事処に向かい麦パンと厚切りの塩漬け肉を食べる

でもなんかものたりなかった

特に肉の味が薄いような気がしていた

「どうかした? シーちゃん」

わたしの表情をみてミーアが不思議そうに尋ねてきた。


「お肉のお味が薄いの おねーさまは美味しく感じられる? 」

「うーん他人の味覚は分からいけどいつも食べているのと同じ位よ

味に敏感なケット族のわたしが言うんだもの 間違いないわ」


 彼女に限らずケット族やウル族は種族特性としてヒム族よりは

敏感な臭覚や聴覚や視覚を備えている

わたしも以前のヒム族よりはそれらは鋭敏にはなっているが

流石にそのニ種族には敵わなかった。


[ 塩分やその他の味覚を刺激する成分は以前と”さほど”変わりません

シーアが薄く感じているのは疲れているからでしょう と判断します ]

とビヨン

「そう? 」

と返事はしたもののやはりどこが味が物足りなく感じていた

パンや野菜はいつもの味と変わらないというのに。

まぁ不味くは感じないので物足りなさはあるものの

食事を終え横になる

獣の少女・ギアトレス・二人の母様かあさま・ウニサーレに預けた謎の呪物・

待ち構えて居るであろう ”ァタウェー” 考察すべき点をあれこれ思い巡らせているうち

睡魔の誘いに乗り私は夢に躰を預けた。



 ギアトレスの冥骸都市 ”ユクントス”では

「ねぇ もぅお腹一杯 遺産のオンナノコ 食べ飽きたぁ ねぇねぇ

でも”お外にでたらまだ沢山食べられるのかなぁ おねーさまぁ」

「あらら 下のお口から涎が出てるわ ちゃんと拭きなさいな」

「いやよ おねーさまだって 下のお口から出てるじゃない

粘っこいのが」

「ふふそうだったわね」

と彼女らが”下のお口”と言っている胸に縦に裂けた”裂け口”からはズラリと鋭い牙が

並び

 

ぐちゃりぐちゃり


湿った音が聞こえ手首らしき物が見え隠れする

そして粘っこい”涎”が地面に落ちる前に霧となって霧散していく

「早く私達の”おねーさま”に会いたい もう幾星霜もここにいるのいや」

「そうね此処の封印解けないとどうにもならないわそれに

”おねーさま”じゃなくて”おにーさま”かもよ私達のマスターは」

「いやいやよ 絶対”おねーさま”じゃなくちゃイヤッ 嫌なんだから」

「まぁ泣かないの でもねもぅ封印が解けそうよ」

「ウソっ いつもそうやってウソつくんだから おねーちゃんだって食べちゃうんだからね」

「ふふ 怖いわね」

と姉らしき少女は妹らしき少女に接吻をする


んんっ......んんんぁ...


「おねーちゃんのいじわるっぅ いつもこうやってご機嫌取ろうとするんだからぁ」

「ふふ いいね ......ちゃん」

「いこ ......ねーさま」

と二人の少女は派手なゲップを”下の口”から吐き出し歩いていく

不思議なことにだれも彼女らに注目する者はいなかった。




いよいよ封印地域への封印が解かれる

シーア達を取り巻く環境がまた大きく動く


次回 64話 冥骸都市 ”ユクントス”

お楽しみに


活動報告にチフェーリアを掲載しました

みてみんのリンクへ飛びます

シーアの獣の少女姿は、公開まで暫くお待ちください

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