60話 封印地域 ”ギアトレス”
生理的嫌悪感のある描写があります
王都ギルトス地下大空洞部 古代聖堂遺構内 クィエル教本拠地にて
「あぁん、シュリエル ね〜さまぁ〜 もうやめて サラぁくすぐったいですぅ」
「ふふ可愛い子 もうすっかり”オンナノコ”の言葉になったのね
此処に来た当初は ”オレ”とか”くそったれ”とか下品な言葉で神聖なこの場が
汚い男共の酒場の様だったものねぇ 流石にお仕置きの 闇蚯蚓の戯れ は
効き目あるわぁ ちょっとでも小汚い男言葉使おうものなら 全身に”埋めている”
闇蚯蚓が ”歯” を立てるしもっと大事なトコ潜るからねぇぇ〜」
とダークバイオレットのロングワンレングスの妖艶な笑みを浮かべた長身の女性が
妖艶に微笑んだその足元には
可愛いメイド服に包まれてなかば呆けた目をした ”サラ”が跪いていた。
よく見ると、彼女の肌が”不自然”にモコモコ動いている。
そう シュリエルが 闇蚯蚓の戯れ と称してサラにお仕置きをしてたのは
大きさは畑蚯蚓の3倍くらいの大きさと長さが有り
体色は群青色で鋭い歯が環状に付いていて、こんな暗く湿った遺跡にも多数棲息している
闇蚯蚓 (ケープ・ワーム) と呼ばれる小型の魔物である。
それを手先、足先、顔以外に全て生きたまま埋め込まれ
二度と ”男言葉” を使わないように ”教育” されてきたのである
「ふん、半人半魔以下の除外者のくせによくも抜けしゃあしゃあと
小汚い”男言葉”で喚き散らしてくれたわね」
加虐嗜好者独特の獣が得物を嬲るようなそんな顔でハイヒールの先を跪いているサラの
後頭部にグリグリ押し回していて
地面はサラ自身が垂れ流した小水が浅い水たまりとなりそこに無様に顔を押し付けれる。
「もぅ、ゆるひて おねーひゃまぁ」
と何を粗相したのか、それに対し赦しを乞うていた。
彼女が言う 除外者 とは半人半魔のさらに 半半人半半魔 の事を指していた
ヒト依りの容姿でもはや魔族としての特徴も薄く おまけに特殊な魔器なくしては
術行使もままならない
この世界で奴隷以下の扱いを受けてる、最も立場が弱い混血種族であった
サラの小水で活性化したのか 躰中の ”モコモコ” は一層目に見えて動きが
激しくなりサラは声なき声を上げた
「ッーーーーぁッ...ぁぁあッ! 」
「ふん、この純血のヴァン族たるアタクシに向かってゲスな男口調で怒鳴りやがって!
このッ除外者めっ
おまけにシーアという小娘に、大事な盟主様からの拝命品まで奪われてッ!!
どうしてくれよう
ふふふ でも、アレから 2の月? いや3の月経ったかしら さすがに
小汚い男言葉も言わなくなったと油断したらこのざまよ 呆れるわ
これからやっと此処のメイドとしての働きを見れるって時に まだアタクシに口答えとは
恐れ入ったわ
でももう今日のこれで、最期の”お仕置き”にしてア・ゲ・ル♡
どお 取ってほしいの? サ〜ラちゃんッ? 」
とニヤリと加虐嗜好に満ちた顔で目の焦点が合わなくなりつつあるサラを
さらに愚弄していた。
サラは狂気をはらんだ目で
「ねぇ取ってッ! 取ってぇッッ!! シュリエルね〜さまぁ はははぁぁんぁぁ......もぅ 言わないからぁ」
と今にも 心の心の迷い仔の仲間入りしそうだった。
「しょうがないわぁ これで自分で取るの 背中はウチの”男”の信者共が”念入りに取って上げるわ
感謝なさいな」
「もぅゆるひて 誰でもいいでひゅからぁ〜 ひぐっひぐっ... ...かひゅッ」
と嗚咽が哄笑に変わる直前 小型の短剣がシュリエルから手渡たせられた
サラ はそれを自ら疵付くのも厭わず短剣の刃を引ったくる様に掴み取り、
自ら皮膚を切り裂き医術用の掴み挟み(ピンセット)で引張りだす
背中は、醜い男の生臭い鼻息を浴びなからも恥辱に耐えるしか無く
醜い手がサラの初心な少女の背中を蹂躙するに任せるしかなかった。
ズルリ と一匹引張り取る度
「ツァーーッ」
とまたもや声無き声が遺構無内に響く
この闇蚯蚓 潜っても簡単に取れないように細かい”返し”がついているのだ
おぞましい痛さとムズ痒さに絶えようやく最後の一匹になった。
取り除こうとするとシュリエルの待ったがかかり、手を止めざるを得なかった
「そこは駄目よ 今から縛めの術で 永久に定着よ 何かお仕置きが必要に成った時
縛めがないとねぇ また、上級の魔器を敵の手に渡す粗相があったら このシュリエル
どう盟主様にお詫びいいかわかんないものン♡ 」
と腰をくねらせる。
そこは彼女の双丘の谷間でまだ皮膚が激しくモコモコ蠢いていた
「ふふ、どれどれぇ えいっ」
と何やらシュリエルが人差し指の長い爪で線を引くと縦に人差し指くらいの長さの
裂け口が出来て疵口が出来る
サラが、悲鳴を上げなかったのは痛みが無かったのである
ぱっくり開いた裂け口の中を
ぬちゃりぬちゃり
と
一際大きめの闇蚯蚓が頭を自由に出入りさせていた。
「えっえっこれは? 」
ぬちゃりと湿った音を立てて裂け口を触ると
「あぁぁん♡ 」 と彼女に痛みとは対極的な感覚が襲い嬌声が漏れる。
「ふふ驚いた? 此処が新たな闇蚯蚓達のお家よさぁ 皆入りなさいな」
というが早いか数で100ぐらいの今取り出したばかりの闇蚯蚓が我先に潜り込み
ヌチャリ と裂け口が閉じる。
モコモコ と蠢いているが お仕置き時とは違う対極的な感覚が双丘の谷間に走った。
「ソレは、”ご褒美”よ苦痛ばかりじゃ可哀想だもんねぇ 快楽も与えないと
良い働きは期待できないからね
さぁ今日からあなたは蚯蚓使いの ”サラ” として自分の使い魔に監視されるのよ
もし ”禁” を破れば分かるわね その闇蚯蚓飼い主の貴女を即座に食い殺すわ
貴女が大人しくしてれば何でも言うこと聞くし、貴女の唾液にもほん少し催婬効果が出るわ
これで 手始めに”男女”各3匹生きたまま捕まえてきなさい できるだけ若い子よ 若い子ッ
貴重な人材があの小娘に殺られて少なくなっちゃったしね。
刻限は次の ”日蝕儀礼” の前日とするわ でないと貴女がオネンネしている
本物のディーボの目覚ましに成ってもらうからね後一の月の間がんばりさいな
それまでは駄弁るのも好し、画策するもよし”使い魔”の修練するも好し
好きになさいな だたしメイドの仕事はちゃんとするのよ
でないと愛しのソラちゃんには逢わせてあげないから 分かった?」
「はぃ、シュリエルおねーさま このサラ、おねーさまのお言葉のままに」
とヴェネイーラがそうしたように ハイヒールのパンプスのつま先に接吻をして
それから 差し出された手の甲に接吻をする。
「ふふ、いいわね 従順な娘は好きよ
さぁ仕事よオシゴト 次の日蝕儀礼に向けて ルベリト大岩礁帯に
向かうわ ふふ 乙女の伝説で有名よね彼処 ねぇカリエル〜 んんゅ 貴男も来るんでしょ
ここは一旦放棄かしら?
あの銀の娘が此処嗅ぎつけても大丈夫よね」
「んんッ ...あぁ、ボクに任せ給え闇蚯蚓の王と女王が好むエサを置いていく
直に奴らの巣になるだろうよ また落ち着いたらサラに頼んで王と女王に此処を引き払って貰うと
しよう なにせ彼女は蚯蚓使いだからね 君にボクからも課題を出そうじゃないか
必ず闇蚯蚓の王と女王も自由に使いこなせるようにしておきなさい 生態もきちんと学んでおくんだね
学の無い除外者は此処には置いておけないからね
本はウチの教団の蔵書を貸してやるよ 尤もほとんど古代語だがね......君に読みこなせるかな
ふふ はっははっ」
とカリエルは意地の悪い舅のような物言いをして 読み書きも除外者故、満足に
覚える機会が無かったサラに取ってまた重圧がのしかかる。
「おっと ...ネリスティーナ様、お待ちかねでしたかな」
と口調を変え
さっきから クジクジ と何やら動物の皮を剥ぐ音ともに
可愛い少女がおぞましい行為をしていてた隅を見やる。
すると暗がりでまだ息がある少女を前に可愛い少女趣味なワンピースドレス
を着た少女がシュリエルがしたように指で線を引きそしてスルリと肌を剥く
そしてワンピースドレスを脱ぐとそこには オンナノコには決して有ってはならないモノが
見えた
「ひッ...オ...」
とサラは声を上げるがシュリエルに口と目を塞がれる
「ふふ、あの可愛い ”オンナノコ” わたしと同類のヴァン族よ ソレ以上言葉を紡いだら
どうなるかは いくら学が無い貴女でもわかるわよねぇぇ〜」
とシュリエルは少女の格好をした男(?) に視線を送り囁く
サラはただコクリと頷く事しか出来なかった。
肌を剥いてご満悦のネリスティーナはすでに剥いた肌を着て新たな少女になり変っていた
顔や手や脚をさすり肌の感触を整え、そして手には何やら人型のモノが”二枚”
ぶら下がっていた。
「ふふ、もう皮は剥ぎ終わったし エサは置いて行くわ それと
シェーラ 気を付けなさい あの ”マリアージュ” が目を覚ましたわ
この前 貴女が欲しいって ”おねだり” されたわよ
かろうじて断ったけど逢わないようにしなさいな。 マリアの ”淑女の嗜み” を
お受けしたいっていうなら別だけどぉ〜」
「いやーぁッ 絶対に嫌よ!!! ...おっお父様、 叔父様はいっ今何処に? 何で封櫃が なんで!? 」
シェーラは激しく失禁をしてへたり込み激しく怯え
あの加虐嗜好でいつもヴェネイーラをメイドの様に見下していたシェーラは
この時ばかりは、幼い少女の様に泣き顔になる。
「あの莫迦ヴェネが”うっかり”解いたのよ まったく予想外よ予・想・外ッ・!!
封印したのがネリスのお父様のしたことでなくて
あの子が、咄嗟にお熱の”シーア”って娘のせいにしたけど
どこまでごまかせるやら いまから憂鬱よ ゆ・う・う・つッ
それとマリアなら ベルゼに渡ったわ
シーアって娘 痛い目に合わせるって息巻いていたわ」
「そぅ、 その娘に、少し同情するわ」
とシェーラはすこし、哀れみを帯びた目で遠くベルゼの有る方角を見上げた。
「だから、しばらく此処クィエル教に厄介になっていたほうがいいわよ」
「あらん ネリスティーナぁ 何時から親バカに成ったのかしら? 」
と会話に割り込んだのはシュリエルである。
「ふん 煩いわね ネリスちゃんはいつも子供思いよ」
と少し剣呑な視線を、シュリエルに送った。
「おお こわ ”オンナノコ” って怒らせるとこわいわぁ〜♡ 」
「そういうこと♡ 後はこの3匹の ”残骸” にお小水を振りかけてっと
うんしょうんしょ
と重ねたペチコートとスカートを両手でつまむ
ふふこんな時、アレが付いていると便利よね ふふふ いあぁぁん オッキクならないでよぉ もぅ」
とネリスティーナは普通の”男”の様にスカートをめくり 立って用を足していた。
「ふふこれで好し これで此処は直に魔物の巣よ 早く行きましょ
あとネリスね 蚯蚓が大嫌いなの 其処の除外者の娘ッ!!! いいわね
ネリスの目の前で使い魔出したら 皮ひん剥いてあのエサの仲間入りよ分かった? 」
と今度はサラに剣呑な視線を送り
先程の可愛い少女が実は男でヴァン族であることを再認識し
サラは、だた頷くしか無く既に固く閉じている胸の裂け口を必死に押さえていた。
蒼の金魚亭に戻って
わたしは、サオリさんと歓談を楽しんでいた。
「あの ”キンギョ” ってなんですか? 」
「そうねぇ、なんて言えばよいのかしらこう尾ひれや胸びれが長くて綺麗なお魚よ」
と素描を見るとわたしの 水の双魚を寸詰まりにしたような魚が描かれていた
「わぁ、こんなのが異世界にはいるのね」
と言うと
「そうよ、このお魚を水を張った硝子製の入れ物に入れて ”観て” 楽しむの
とっても可愛いわ でもねあのヒトったら 魚は食いモンで観て腹が膨れる訳ねぇだろ
と取り付く島のもなかったわぁ
飼ってたあの子達どうしているのかしら? 」
とサオリは遠くを見つめる様な目をする。
「ごっごめんなさいね しんみりしちゃったわ」
「いぇ、そんな事は無いですよ サオリさん」
とはいったが彼女の目にはかすかに望郷の色が浮かんでいるのを
わたしは見逃さなかった。
「えーコホンッ それでね。 色々あってこの世界
に降り立った此処って ベルゼって隔離された浮遊大陸って言うじゃない もう”遊戯”や
”小説”の中のお話をとばかり思っていたわ
最初は、読み書きも出来なくて戸惑っていた私をあのヒト(コーエン)が助けてくれたの
ウル族なんて まんまお御伽噺じゃない ステキな白馬の王子様では無かったけどね
ワンちゃんのお耳や尻尾のヒトなんて珍しくて触ったらひどく怒られたの
”これはオモチャじゃねぇよ!” ってね ふふ今考えたら失礼な事をしたものね
でも、あのヒト強くて聞いたら冒険者の元盾役っていうじゃない
向こうでも遊戯で遊んだことあるけどこれが目の前にいるなんてもう感激モノでしょ
私から”求婚”したら あのヒト 何て言ったと思う?
”サオリの生涯の盾役になってやる” ってこれが決め手だったわぁ
そして、あのヒトも現役を五体満足な内に早めに退いて此処で 宿屋を開いたってわけ
あっち(異世界)では、キンギョは幸運を招くとも言われていてね
更に存在しない ホントの蒼色のキンギョに肖ってよ どぉステキでしょ? 」
彼女のいう”遊戯” や ”お魚をお水を張った硝子製の入れ物に入れて ”観て” 楽しむ
とうのはいまいち想像出来なかったが 彼女が キンギョなる魚に思い入れがあることは
伝わってきた。
「えぇステキです でも失礼を承知でお聞きしていいですか? 」
「えぇ、あのヒトの躰の黒子の位置以外についてならいいわ」
「今でも、元の世界に還りたいって思った事は、有るんですか? 」
「今の質問、突いてきたわね あのあのヒトの躰の黒子の位置以外の
質問だから答えてあげる
そうねぇ .........もぅ向こうの世界に”未練”は無いわ 向こうでもこの世界にも
ある孤児院育ちで育ての親からは独立して その親も亡くなって大きな街で
独り立ちの矢先だったし ちょうどいい踏ん切りが付いたわ
お墓参りに行けないのが残念だけど いつも此処にいるのよ」
本題に切り出すまでたっぷり間が有ったのは、言葉とは裏腹に彼女の望郷の念の強さが
そうさせたに違いないと想像させるに十分だった。
彼女の首飾りには 小さな白い粉のような灰のようなものが入った
水晶が下げられていて愛おしそうに手を添える
「此処って ”魔法”が普通に有るでしょ 高名な術師にたのんで
首飾りに入れてた育ての親の遺骨を
水晶に入れてもらったの 唯一この世界に持ち込めたものだから
だから これがお墓がわりってわけ」
と隠せない涙を浮かべて彼女は語る。
「わたし 余計な事を聞いてしまってごめんなさい」
「ふふ優しい子、気にしないで、いまは此処で私なりに異世界生活楽しんでいるもの
あなたのような娘も来てくれるしね。 」
と半地下の イザカヤから
「おお〜ぃ サオリ〜っ 何時まで油売ってんだ こっち来てくれぇ〜 人手が足らねぇぞ」
とコーエンの野太い声。
「は〜ぃ、コーちゃん今行くわぁ〜」
「その ”コーちゃん” ってのやめてくれ お客さんのいい笑いのカモだぜ ガハハハ」
「ゴメン、此処はメイドにお食事運ばせるから待っててね」
とサオリはしんみりした顔を捨てて 奇妙な前合せの服をパタパタいわせ半地下の ”イザカヤ”
に降りて言った。
やや有って運ばれてきた食事は、ギルトスのアカネさんの
所でみたコメなる白い粒と ”イモノコジル” なる
ねっとりとしたイモらしきモノと鶏であとは野菜が入った、 ”ショーユ” なる調味料で作ったスープが
振る舞われてわたしは ”イモノコ” なる新食感の食材に四苦八苦しながらも
お腹が満足するまで味わう。
「シーちゃんこれ美味しいわ それにしても ”待ち人さん” はどうなったのかしら... ...ッ」
とここで会話が急にとぎれる
「ーーッ シーちゃん!! 後ろっ! 」
ミーアが片目を眇め短剣に手を掛けた。
わたしの色の濃いひと房の髪がふわりと反応する。
ビヨンの目が淡く輝く
三人共”臨戦体勢”だった
「おっと、お待ち下さい シーア様、ミーア様、ビヨン様 わたしくめは シーア様の
ご母堂君 リーメア様より 蛇腹剣の拝命を仰せつかっており
シーア様に拝命の”試練”を言い付かって居ります
何卒、構えを解いてくだされ」
と背の高い妙齢の女性が其処に気配も無く立っていたのである。
女性にしては古風な男言葉を使っているが
相手は此方の名を全て呼んで更に わたしの母様のリーメアの名
を口にした。
仔細有りと踏んで、咄嗟に手を斜めにして皆を制止する。
それを見て取って
「まずは、お食事中のご無礼をお赦しくだされ 今は歓談の場、わたくしめのせいで
場に泥を塗るつもりは有りませぬ
詳細は明日、ランドルフ様の地下転送陣の先
霊峰 アガテ連峰麓の 名も無き村外れの 拠点 ”永久の懐” にて
お待ちしております。
そこで名乗りと 試練の詳細おば説明いたしまする 今夜はごゆるりと
お休み下され では後免ッ 」
というが早いか気配も感じさせずに掻き消えあとは甘い彼女の残り香が漂うのみ
<<ほう、この儂にも気配を追えなんだ 彼奴め相当な手練だぞい>>
<<そうなの? >>
<<そうじゃとも、現れた時といい、消え失せた今といい気配は微塵も感じなかったぞい
お主の 白い虚魚なんて言ったか? 古代浮遊魚:リムレールでさえ反応出来ん
かったしの まぁおおよその察しは付いとるが
安心せい、きっとお主に良いことが舞い込むぞ 試練がどんなものかはしらぬが
早速 ”蒼いキンギョ” とやらのご利益が有ったではないか ふふ善きかな善きかな>>
とニヤニヤしていた。
「分かったわ、わたしまだ眠くないの 少し夜のお散歩してきていい? 」
幼子ならとっくに睡魔の手の上の頃合いだが
今宵わたしは、無性に背中に蝶の翅で遊覧散歩したかった。
<<うむ、よかろ シセラや小奴に付き合ってくれんか 儂はミーアと宿屋で話があるでのぅ>>
「えぇ クローティア シーアのお守りって訳ね ねぇシーアぁ 一緒に遊覧散歩しよ
殿方を斬りつけて遊ぶのも今日は飽きたしぃ」
と漆黒の乙女はからから笑う
「えぇいいわ ビヨン、ミーアおねーさまとクローティアをお願いね」
[ はい、お任せを ]
とここでそれぞれの夜を過ごす。
私とシセラは夜の空へ
あとの三人は宿屋の部屋へ
夜空を遊覧散歩していてシセラは突然
「ねぇ シーア あたくしを実体化させて頂戴♡ 殿方にはちょっかい出さないからぁ」
と何やらおねだりをしてきて
「ふッ いいわよ」
と彼女を実体化させた ...途端
「......んんっ......」
「シッ、...シセラ?... ん....んんっ」
といきなり唇を奪われ
「ふふ、貴女最近独占欲出てきたでしょ あたくしには何だって分かるわ」
「そっそんなことは ...ないわ」
と潜在意識を覆うように言葉を出すが、シセラにはお見通しだった。
「...ウ・ソ... ね 正直におっしゃいな だってランドルフ様に可愛い”妹”達の頭撫でらせているときの
貴女、ちょっと怖かったもの それに3人じゃ飽き足らない様子もね 感じるのよあたくし
ここの夜空の上なら誰も聞きやしないし気配に敏いわたくしなら誰か来ても
分かるから 正直におっしゃいな」
と甘くわたしの潜在意識の覆いを取り払おうとする
根負けしてとうとう
「そぅ、シセラ貴女のお察しの通りよ あの時、悔しいような何かムズムズした気持ちに成ったわ
アレが ”嫉妬” かしら 可愛い”妹”を取られるような気がして... 上手く言えないけど
あの娘達ランドルフ様に可愛い笑顔見せてわたしにも 同じ笑顔見せてくれないかもって
考えたら怖くて」
「そうね、それが独占欲よ 安心なさいなオンナノコって贅沢でそれが普通なんだから
でもあの娘達貴女を非常に怖がっているもの あぁ勘違いしないでね
怖くて”契約”したんじゃないから 貴女のような凄い娘にほんとに付き従っていいものか
という 畏怖の感情かな 貴女は実感ないだろうけど
そんな凄い貴女にたくさんのお菓子や私室まで果ては”特殊な嗜好品”まで
提供して貰ってるそうじゃない あの娘達が畏怖するものも無理ないわね」
「どうして? わたしは当たり前のことをしてるつもりだけど」
わたしはわたしとして”妹”達にしてあげられることは出来るだけ叶えてやりたいとも
思っていた。
「ふふ あの娘達にとって その当たり前のことが当たり前じゃないの
いくら凄い能力を持っていたって 所詮はオンナノコなの
世界相手に粋がることなんて出来ないし
ひっそりと”特殊な嗜好品”を得る楽しみを支えに”生きて”来たんだから
ときには疎ましがられ、ときには邪険にモノ扱い、都合が悪くなると今度は
哀れな贄をヒト共に捧げられ祭り上げれる こんな事の繰り返し
それが嫌で自ら封櫃に封印した娘もいるの」
「そんな、わたしあの娘達ってヒトから邪険にされるなんて
想像出来ないわ 恐れ、畏れられるのはなんとなくわかるけど」
「ライブ・アーテファクトって奥が深いのよ」
私は以前、ガラティアが自分を卑下したような物言いが気になったが
まさかこんな扱いを受けていたとは想像つかなかった。
「貴女は違うわあの娘達に能力の行使を強要するわけではないし
ましてモノ扱いなんてしていないから、すこし戸惑っているのよ
これからもそんな貴女にたくさんのライブ・アーテファクトが
貴女の優しさを求めてくるでしょうね
それに貴女はその娘達を抱え支えるだけの器も財も十分あるわ
このシセラが言うもの間違いないわ 独占欲あったっていいじゃない
本当はオンナノコって殿方より強いのよ 可愛い外観で覆い隠しているだけ
大丈夫、独占欲が止められなくなったら
クローティアとアタクシで全力で止めてあげるから」
「うん、ありがと少し安心しちゃった シセラ 続きいいかしら? 」
とまた 唇を重ねる
「んぁぁん おねだり上手ねシーア こんなところまで
あの娘達に似てきたのね」
「ふふメトリエーテさんとお話して別れていた分、貴女を独占したいの いいでしょ?」
と本音を言う。
「それでいいのよ♡
んんッ、今宵は”銀の君主”様の御身にこの身を委ねてみようかしら」
と堅苦しい台詞を芝居がかった言い方でいい
わたしもそれに倣い
「ふふ、漆黒の乙女シセラ その身をこのシーア・オブライエンに委ねるがいいわ」
と芝居調でかえす
「ふふ、まるで”殿方”みたいな言い方ね」
と元男性であるわたしはドキリとしたが、冷たい夜風に流され彼女には気取られずに済んで
遥か下の喧騒の遥か上空で、黒と七色に揺らめく銀の髪が絡まり
背中の蝶の赤黒い鱗粉が戯れに彩りを添えた。
宿屋の部屋にて
ミーアはクローティアとある話をしていた
「あのね クロー...」
『おっと、皆まで言うでない分かっておるわ、専属受付人 ”リア”の事じゃろ』
「さすがクローティア様、誤魔化しは無用でしたか
お察しの通りです リアも私達と同じく完全に定命の理から外す事は...」
と語尾は流石に掻き消えてしまう。
『うーむそうじゃのう これコトン、レメテュア、ラヴィアや出てきてくれぬか? 』
「「「えっクローティア様!! 直ちに」」」
とビヨンの脇に三人のライブ・アーテファクトが現れる
「「「あれあれっ!! シーおねーさまは何処なの? 居ないじゃない」」」
とキョロキョロちょっと焦り顔で見渡した
『心配せんでもええ あ奴はいま夜空の遊覧散歩中よ マギで探ってみい』
と例の神域文字で三人ともそれぞれ細い糸の様な物を何本か作りふわりと漂わせた
ミーアの頬を掠めそうになって避けようとすると
「「「心配要らないわ これ気配を探査する時用だから ミーアおねーさまのお肌には
疵はつかないわ」」」
と早速ツーーと頬を掠めたが変化はなくミーアは
「これくすぐったいわ」
と言っていた。
糸がふわりふわりと部屋を漂う
「「「ホントだ 高いお空に居るわ いいなぁいいなぁ 私達も
お空に行きたい行きたい」」」
と駄々をこね始めた
『これ、駄々こねるでない じゃがのぅ お主達が10人ぐらい揃ったら 専用の騎乗獣くれてやるわい
それまでガマンするんじゃ ちと大きいでの10人で仲良う運用するんじゃ』
「「「なんで10人なの なんでなんで」」」
と理由をせがむ
『お主達ももっと同類がほしかろ? 』
「「「うん!!! 」」」
これは即答だった。
『シーアが ”妹” を10人揃えられたら 褒美にやるつもりじゃて
後から儂も言うつもりじゃがな 楽しみにしておれ』
「「「 は〜ぃ 」」」
とニコニコ顔ではしゃぐ
『先のミーアの話じゃが お主達定命の理を外す術を持って
いる奴に心当たりあらんかの』
コトンは、
「あたくし、活動範囲が狭かったから知らないわ」
デカラヴィアは、
「ラヴィアも知らない世界は巡って回ったけど知らない
そうだ レメ、貴女遺跡や遺構の主みたいなモンでしょ 知らないの? 」
「っふふーん、レメは知ってるわ」
「えっレメちゃん知ってるの? 」
「そうよ ミーアおねーさま 普通のヒトを定命の理を外す事ができる
物はねぇ ...んとその前にぃ この前シーおねーさまがキリンズで貰ってきた
お菓子作ってよ 昼に貰ったのはもったいなくて 魔樹の遠足籠に
入れたままなの」
「「レメ、今度は一人でほとんど食べないでよ あれ美味しかったから残しておいてって
キリンズで貰った時言っておいたのにぃ」」
「ごめんなさい おねーちゃま方 今度はちゃんと分けるから それでいいでしょ
「「しょうがないわぇ まぁいいわ」」
「それで 本題だけど ”再誕の種” よ ミーアおねーさまの希望に添えるモノって」
『ほう、再誕の種とな してそれは何処に? 』
「ごめんなさい其処までは、ただ私達の同類がそれ持ってるという噂よ
大昔にレメの迷宮に迷い込んだヒト共が噂しあっているの聞いたから
今代は何処に有るか知らないの」
『おお でかした名さえわかればそれが実在しているとう事の証左ともなろう
っふふ 早速、シーアに知らせねばな また楽しみが増えたわい
だからミーアよ 機を待つんじゃ 良いな』
「えぇ、ありがとクローティア」
『礼なら小奴に菓子を作ってやることで返すが良いぞ』
「そうだったわね、ありがとレメちゃん」
と頭を撫でようとすると、
「ごめんなさい シーアおねーさま以外にあんまり触られたくないの」
とクローティアの後ろへ隠れた。
まだまだミーアとライブ・アーテファクトの少女達の間は距離が有ったが
今回でだいぶ縮まった感じがしてミーアは嬉しそうにしていた。
丁度其処へ、シーア達が帰ってきた
「「「 わぉ なにそれ すごっ きれーな翅 触っていい? 」」」
「ふふ、いいわ ふあぁん そっとそっとよこれわたしの血なの」
と翅を体内に吸収する。
先の一連の話で部屋の中は和やかな空気が支配し
そして遊覧散歩の軽い疲労感が襲い沐浴を済ませると
頃合いの睡魔である
「「「それいいなぁ いいなぁ」」」
とさっきからしきりに彼女らは訴えていたが
「「「あふぅ もう眠くなっちゃった じゃあね シーおねーさまぁ あとお屋敷に還るわぁ」」」
と三人もクロの中に掻き消え、
わたしも厚めの生地のネグリジェに着替え今は刻印の中の
シセラとの一時の戯れの余韻を胸に今度はわたしが睡魔に身を委ねた。
翌朝、サオリさんは 異世界の携帯食 ”オニギリ” なる食べ物を拵えてくれた
なんでも ”コメ” 中に アカネさんの宿で食べた事の有る ”ウメヅケ”なる
あの酸っぱいプラムを入れた珠状の食べ物である
そして黒いペラペラしたものが張り付いていて
向こうでは ”ノリ” と呼ばれる海藻らしい トリンデでも海藻は食されていたが
黒い色のは見かけなかった
「これ探すの苦労したのよ 商人に頼んでこういうのだって書付けに描いて見せて
何回か往復してもらってやっと見つけたの 尤もこの世界では ニロ と呼ばれて
漁師の厄介モノ扱いだったけど これなら代用出来るかなって思ったの
そうしたら、まさに ”ノリ” だったわぁ
今はまだ厄介モノ扱いだから 安い内にたくさん仕入れておかなくちゃね
宿の精算はここの出立の時でいいし 都合が付かなければ各地のギルド経由でも
支払いは可能よ
お部屋は二部屋は空けて置くから 安心していいわ」
「必ず、精算には戻ります お願いします」
と頭を下げる
「ふふ、律儀な娘 おねーさん気に入ったわぁ
それじゃ気を付けてね」
と宿を離れ わたしは、再び賢者の杜と呼ばれている場所 ネグリールに向かった。
ユラに乗りながら
「それにしても ”渡りビト” って不思議な人達ね 色んな変わった食べ物が在るもの」
『そうじゃな 案外お主が好きな異世界譚も渡り人の執筆かも知れんな』
「えっそうなの アレって異世界に実在するのかしら」
わたしは期待にすこし言葉の音程が外れた。
『まぁ、あくまで ”仮定” の話じゃよ 儂が渡り人の噂を耳にするように成ったのも
今代になってからで 本になる少し前じゃよ あのころの儂は無為に世界をあてど無く
彷徨っておったからのぅ おっと、いかんいかん 儂の話はいずれ近いにな』
とこの話は打ち切りと言わんばかりに強引に〆られた。
※※
ランベルからロコスへと大きな黒い馬車が進んでく
今日もマリアージュは可愛い台に素足を乗せ黒い爪化粧をさせていた
重ねたペチコートをふんわりめくり上がらせて露わになった腿には豪奢なフリルが
あしらわれた白い幅広の
靴下留め(ガーターバンド)がチラリチラリと見える。
白の靴下留め(ガーターバンド)には、可愛い少女の外観には似つかわしくない
不気味な装飾が施された短剣が二本その存在を主張していた。
更にその二本の脚に跨るように一人の可愛い少女が呆けた目で
マリアージュに抱かれていた
「ふふ ぁぁん 最高だぜこの小娘 オレの ...をこうも......
んんッ マリアちゃんうれしーっ...... ...しかも婚姻用のワンピースドレスじゃねぇか
後で、このドレスはオレ様が着てやるから光栄に思えよ
今はそうだなぁ ...あぁん、このマリアージュをねぇ〜♡ 先ず悦ばせて頂戴ッ♡
んんぁ... んんっ」
とニヤニヤ嗤いながら可愛い口から舌をだして少女の頬を舐めあげた。
「...ぅあぁぁ... おやさしい おねーひゃまがた... ...とおもって...いたのに......」
少女はうわ言の様に呆けた声でつぶやく
目の焦点は既に虚ろだった。
「おっと勘違いするなよ おねーさまがたというのはは当たっているが 生憎と、お優しくは無いな
まだ、意識を手放したり心の迷い仔に成ったりするんじゃねぇぞ
正気を保っていろよ おぃ、この娘に気付けを飲ませろッ!! 呆けた娘と戯れたって
面白くもねぇからな」
「はっ、マリアージュ様 気付けなら此処に」
とメイドは酒精の強い葡萄酒を今にも呆けそうになっている娘の口に
強引に口移して含ませた。
「うぉ、この娘また、 オレの ”オンナノコ” を ...... やがったぜ ふふいい塩梅だな
”あぁぁん マリアージュ嬉しい” 」と うっとりと享楽を愉しんでいた。
「どれ、そろそろ頃合いかしらね? この娘のお味はどんなかしらね ふふふ
では いだだきまぁ〜す♡ 」
と
マリアージュは優しく少女の首に腕をまわしつつ髪を乱暴に掴み顔を上に向けさせ
少女の薔薇色の頬に爪を食い込ませて毒の影響で頬の肉が腐れ落ちるのを
見てニヤリと嗤う
かわいい半開きの口からは涎が垂れ、牙が覗き首元にブツリと突き立て食事をする。
その少女もスカートをめくり上がらせ更に醜態を晒していた。
「......うぅぅ ...ぁぁあぁ... ...んんっ...」
恍惚か呆けか判別の付かない表情で少女は呻く。
そして
マリアージュの下からも湿った音が聞こえ響いていた
そんな痴態を黙って見過ごすヴェネイーラではない 劣情をたんまり刺激され
いてもたっても居られなくなっていた。
「マリアージュおねーさまッ おねがィッ ヴェネにもヴェネにもちょうダイっ
その娘の血ぃ 飲ませてぇッ! 」
と半ば泣き叫ぶように懇願していた。
「うっせーな 糞ガキぃ オンナノコのくせに なにオスガキのようなこと言ってんだぁ
オレの ”淑女の嗜み” が終わるまで黙って観てろッ!! 」
と凄みのある少女声でいわれヴェネイーラは言葉を閉ざす。
脚の手入れをしていたメイドは
「マリアお嬢様、これ以上はヴェネ様がお可哀想です
まだ経験も少ないお若い身、婚姻式の娘を連れてきただけでも好しとしませんか? 」
と見かねて進言する。
「 ...んっんっ...」
くちゅり...くちゅり...
マリアージュの嬲りは、優しくてそして陰惨だった。
「それもそうか 婚姻式直前の娘なんて滅多に手に入らねえからな
でよ この婚姻用のワンピースドレスはオレが貰って着るからな それと下着小物
靴もだわかったか? 」
「はぃ ...でもでも その娘の髪飾りヴェネに頂戴 おねがィッ! おねーさまぁ」
とまたもや強烈な物欲に負けてヴェネイーラはおねだりする
どうしても白バラの髪飾りが欲しくて せめてソレだけでもとヴェネは
必死だった。
「これくらいはいいぜ このマリアちゃんからの褒美だ
それとこの娘の腿から特別に血を舐め取る事を赦してやる たっぷり味わいな
だたお前の ”オンナノコの嗜み” は今回お預けな 分かったか?
後、ちょっとこっち来い」
彼から、髪飾りの件で譲歩を引き出せただけでも今回は僥倖であった。
「なぁに? おねーさまぁ きゃんッ」
とするりとマリアージュは腕を回し今度はヴェネイーラを引き寄せ
既に呆けてしまった少女の意思に関係なく、痴態は続けられる。
「あのなぁ オレを謀ったのホントにシーアってクソ娘なんだろうなぁぁ んーっ?
あの時オレは、誰かから葡萄酒を勧められて飲んで
オネムになった.. ...と思ったら意識が飛んで
次に目ぇ覚ましたら其処に莫迦顔のオメェがいたからよ
どうにも前後がつながらねぇんだよなぁ? どうにもオメェの言うことは”ウ・ソ”臭ぇ
んー? ......まぁ例え”ウソ”だったとしても今回は、 ヴェネイーラよぉ オメェの話に乗ってやる
退屈しのぎだ いずれ ”真相” を掴んで落とし前は付けさせるがよぉ
まぁ ”当分” 先だ 安心しな。
今回の婚姻式のこの娘一匹で二匹分だこれで晴れて計4匹だ
まぁ、オメェの命繋いだこの娘に感謝するんだな」
ヴェネイーラはほっと胸をなでおろした
この叔父が”命繋いだ”と表現するくらいである
定量を達成出来なかった場合の事を想像すると
いくら被虐嗜好が強くても彼からの折檻だけは避けたかったのである。
「おいメイド共、 この娘の服は俺がデメテルのトコに行く時着ていくからな
ちゃんとオレの”淑女の嗜み”が済んだたら綺麗にしとけよ
後は 色は、俺好みのパウダーピンクに染めとけ 後は 絶対に手を加えるんじゃねぇぞ」
「はぃ、マリアージュお嬢様 お言いつけ通りに 後は、ごゆるりと続きをご堪能下さいませ」
とメイドがそれぞれ持ち場に付く。
「それと、ヴェネイーラよぉ オメェはまだ若いから忠告しとくぜ
デメテルに限らず闇社会の関係者を絶対敵に回すなよ」
「えっなんであんな寄せ集めの連中......ッ いひゃいれす(痛いです) おねーひゃま」
いつぞやの様に頬を鷲掴みにされ派手に頬が裂ける。
「まだそんな呆けた事言ってるとその内 テメェの口ホントに無くなるぜ
いいからよく聞けよ 闇社会の連合 ”仄暗き霧” はオレや兄貴が産まれるよりはるか幾星霜も前から
連綿とこの世界に根を降ろし 闇・冥界・現界果ては神界まで
既に大きく枝葉が広がってるんだ そんな連中敵に回してみろ あとは莫迦なテメェの
オツムでも分かんだろ。
キレー事だけでこの世界が成り立っているとは思わんことだぜ
派手な動きも気をつけな 要望のまま娘掻っ攫ってもいいが事が済んだら上手くそこらの
魔物の仕業に、見せかけてから放り出せ
兄貴から聞いたぜ トリンデで剥いた娘そのままにしてたってな このクソ莫迦野郎がッ!!
チッ... ...済んじまった事はしょうがねぇ
まぁみてろ後始末ってのはこうするんだ、おいッ誰かこの娘喰いたい奴いるか?」
と誰も縦に首を振るものは居ない。
「しょうがねぇな 今回はオレの使い魔共で処理するか」
と言い放ち 少女口調に変え
”あ〜ぁ、この大きなお人形さんもぅ壊れちゃったわもぅ遊び飽きたぁ〜ん もうい〜らないっと”
腐れ大鼠共 黒紋病の末期症状にして、この娘を始末しろ」
とマリアージュは多数の腐れ大鼠を喚ぶ。
呆けた顔から狂気の顔へ変わりつつある少女の衣服・下着を剥ぎ取り
全裸にしたうえで 喚び出した腐れ大鼠に齧らせ 更に黒紋病 (こくもんびょう)と呼ばれる疫病の
末期症状にして 馬車の外へ乱暴に放り捨てた。
「あはは ...ははっ... かひゅっかひゅ ...なにこでぇ赤くてあたたかいの ...黒いのから
出てくきゅひゅぅ... ...ヘャハ......えへへへゃひゃぁははッッ... 」
と哄笑から狂笑へ完全に変化した少女の全身には黒紋病末期の
黒いかさぶたの様な硬質の斑点が躰中を覆い既に割れ始め血が吹き出していた。
このようになるともう助かる見込みはなく、あとは死神がいつ魂を刈り取っても
おかしくはなかった。
「これでこの娘は腐れ鼠共の仕業でこうなったってことに成るわけだ
奴らは何処にでもいるからな
肌は惜しい事をしたが兄貴じゃなきゃ綺麗に剥けねぇからな まぁいい おい馬車を出せ」
とまたゆっくり馬車は進み
後には恋人の名も両親の名も
一言も口に出来ず完全に”黒紋病末期”の症状で死んだ全裸の少女の死体が
転がり意識を完全に手放した目はただベルゼの虚空を見つめていた
「おのれー、 ”腐れ大鼠共” リンナの仇必ず取って殺るからなァ〜 」
ともの言わぬ嘗て、リンナと呼ばれた肉の塊に向かい後から
駆けつけた婚約者の男は雄叫びを上げた。
※※
ここはネグリール
シーア達は、今日も粧し込んで九の月の爽やかな空気に
フリルやレースで彩られた、ワンピースドレスのスカートを揺らしていた。
『姐さん姐さん ありゃシーア達ですぜ 彼処に滞在するのにあの遠足気分の恰好じゃ
ちくと具合が悪くないでやすかね』
「あらホントだわ ふふネルちゃんお手柄よ 今日の沐浴時は
特別にお腹側を洗う権利をあげるわ どお? 嬉しいでしょ?」
『そりゃ嬉しいでやすがあっしは姐さんの後頭部についているもんでせめて
姿見を合せて貰えませんかね』
「いやよ 合せの姿見なんて魔女に取って一番気を付けないといけない状況じゃない
何が起きるか分からないわ」
『うへぇ そうでやんした でも姐さんほどの魔女ならそんなものは魔抗陣でちょいちょいで
やんしょ? 』
「ふふ、ばれたか しょうがない、黒蝋燭とお香を後で買いに行くわ」
『へへ、こりゃ久々の......でやすね』
「何か言った? 」
『いえね 久々の目の保養ってでやつすよ 殿方で在るあっしをあまりいじめねぇで下さいまし』
「まぁ今回は本当にお手柄ってヤツよ たっぷり目の保養していいわ」
とノアはシーア達を偶然見つけた振りをして近づき声を掛けた。
「あら、シーアじゃないもう行くの」
ネグリールに到着するやいなやノアから声を掛けられる
「おはようございます ノアさん もう出立しようかと
準備する物も無いですし」
「だめだめ、そんな格好じゃ 危なかったわ ”偶然” 通りかかって
今度貴女達が滞在予定地は ”名無しの村” よ貧困村で長はいるけど
領主様からも見放された 村落でね 今のどこぞの大貴族の様な恰好は
ちょっと具合が悪いの なんとなく察してもらえると おねーさん嬉しいんだけどな」
とつま先から頭までじっくり観察された。
この世界は 色々な種族・や職はたまた
マギの才や武芸の才そういったあらゆる要素が人々の間に格差を産み資産にも
格差が生じる。
華やかな英雄譚の裏側で、今日明日生きるか死ぬかの選択を迫られ
薬草一枚採取出来ない程心を喪ったヒトがいるのも事実である。
そんな中に高級なワンピースを着ていく行為がどのような意味を持つのか
分からないシーアでは無かった
自分も一歩間違えば、今日明日生きるか死ぬかの選択を迫られるヒトの
中に入るかも知れなかったから。
シーア(シアズ)の場合は、非常に”運”が良かったと言う他ない
これにはミーアも同様に頷く 彼女も孤児院上がりで武の才に
恵まれなければ奴隷や、娼館行き運が悪ければ、外道な好事家に種族の誇りである耳や尻尾を
もぎ取られていたかも知れない
この世界は否が応でも早くに自身の才を見極め自立する必要があったのだ。
「あぁ、そうでした ...では簡素なワンピースとローブにしますね」
「それがいいわ あと ”名無しの村” はアガテ連峰の麓で彼の大氷狼の
支配下よ したがってその名に恥じぬくらいには 寒いの いくら冥界の住人である
貴女達いえど寒さは敵よ 防寒もしっかりしていきなさいな
装備が揃ったら確認してあげるけど
貴女達も冒険者なのだから今回だけ特別よ、いいわね」
「はい、有難うございます 支度を整えたらまたここで良いですか? 」
「えぇ、いいわ 私はランドルフの代理でこの地をあまり離れられないからこの辺でウロウロしてるし
地下の転送陣の近くで待って居れば
からなず寄るから其処に待機してていいわ
あと、あの遠足籠は 魔樹の遠足籠 ロムルスっていって
生きているの」
「えっっ、アレって”生きて”いるんですか」
「ふふ、驚いた? 当然よ 遺産の少女を
見せて貰ったんだもの 魔樹トリニー・トレントの更に希少変種個体から特別に
蔓を分けて貰って拵えた特別製よ
外観体積は普通のサイズだけど中の空間は広く
大量に食べ物と食器専用だけど入るしね
村のど真ん中で食べ物を見せびらかして食べるような事をしなければ
拠点内では自由にしていいしお洒落もしていいわ
それにシーア貴女の血ならアイツに特殊な効果期待できるから
与えて見てはどうかしら? アイツも欲しがるだろうからね」
なんともオドロキでは在った。
「それって”エサ”が必要なんじゃ? 」
”生きて”居る以上は対価が必要ではあるが、想像が付かなかった。
「それは、アイツに聞いてみなきゃ分かんないわねぇ
後、中の食料を勝手に食べる事はしないから 其処は安心さないな」
「はい ...ッっ」
しばらく来てなかった”アレ”の予兆がまた下腹にシクシク 来ていた
今度は髪全体がワサワサ変な感触がしてきていて
また何らかの変化が今度は髪に現れそうだった。
<<どうした? また変化か? 今度は何処じゃ>>
<<今度は髪全体みたい まるで生きているかのような感触が今からするのよ>>
<<ライブ・アーテファクト共みたいに色違いの髪が血管のように入り動かせると
面白そうだがの ますますあ奴らっぽいがの ふふ変化が楽しみじゃわい>>
<<えぇ、ホントはあの娘達羨ましかったの ラヴィアちゃんみたいに成るといいなぁ
えへへ>>
<<贅沢なヤツじゃわい>>
でもこれがまさかホントになるとはこの時はわたしは本気で思っていなかった。
「あら どうしたの 顔しかめて 何か悪い物でも拾い食いしちゃった? 」
「ノアさん わたし子供じゃないわ そんな事しませ〜んだ」
と幼子がやるように顔を顰めてみせた。
「ふふ、そういう所が子供っぽいていうのよ まぁ体調には気をつけなさいな」
「はい、そうします」
<<シーちゃん、もう一昼夜間空けようか? >>
とミーアが心配して念話で話しかける
<<まだ、大丈夫みたい あっちに到着後は分かんないけど>>
<<そう、でもあっちに着いたら 待ち人さんと
あっちのヒトに訳を話してお休み取ろ>>
<<うん、そうしようかな 今度は変化が大きい感じなの>>
<<えっえっ どうなるの? >>
<<こればかりは、まだ薄っすらとしか分かんないの 大抵夢で変化の切っ掛けが
来るのよ 今までがそうだったし 今度は何かちょっと楽しみなの
また母様に逢えるかもって思うし...>>
<<そう、じゃ明るい内に向こうに行きましょ 早くお買い物を済ませてノアさんに確認して
貰いましょうよ>>
<<そうするわ>>
と念話を済ませ 此処 ネグリールの総合雑貨屋で簡素なケープコートと
防寒用の帽子
厚めの生地のフリルやレースが申し訳程度にあしらった簡素なワンピース数枚を
購入する。
店内で着替えを済ませお互いに確認して螺旋塔ネグリールの地下で
ノアを待っていた。
皆、忙しそうに何やら儀式魔術の準備をしたり
まだ若そうな魔道士・魔女に講義をしたりと
わたしは、まだ”お兄様”で有った頃を思い出していた
(((いいかい ...... よくおきき何事も”準備”は肝要よ
慣れるまでは 準備には刻を掛けなければね 例え一瞬で結果が出るとしてもだよ
...... 分かった? )))
...... シーちゃん? シーちゃん?
「えっ、何? 何? 」
「ノアさん 来てくれたわ さぁ確認してもらいましょ」
「ごめんね、 ちょっと昔のこと思い出してた。 」
「そぅ、それで ”御兄様”の事 思い出した? 」
「ううん、それは駄目みたい 名だけがどうしても思い出せないの」
「ゴメン、余計な事きいて」
「いいの、わたしはわたしの覚悟でわたしになって更にわたし(シーア)になるだけ
また変化が来てもわたし(シーア)でいたいの もう元の躰には未練はないわ」
これは偽ざる本心だった。
「そぅ、分かったわ シーちゃん もう二度と ”御兄様” のことについては聞かないわ」
「ミーアおねぇさまって やっぱりやさしいのね さぁノアさんに確認して貰おうかな
他人から装備確認してもらうなんて二度と無いでしょうからね
わたし達を
陥れるために意図的に変な装備で送り出す事だってできるしね
それを他人から確認してもらえるなんて絶対にありえない
だってわたし達って ”冒険者”なんだもの 盤上遊戯とは違うわ」
「そうね、私も前色々な目に遭ったわ
陥れる為にわざと魔物に有効でない属性付加を進められたりね
まだ私もネンネだったわ」
と少し剣呑な調子を含ませた声音でミーアは語り遠い目をした。
「「好し、行こっか? 」」
と決意も新たにノアに確認をしてもらう
「ふ〜ん どれどれ まぁいいんじゃない簡素なのでもよく似合うじゃない
後この陣ね一回使ったら日を跨がないと駄目だからね 儀式魔術って段取りが面倒なのよ
分かった?
丁度良い機会だから 今回は、見習いの子達に詠唱させようと思っているわ
儀式魔術だから段取りは手筈通り済んでるし
後は詠唱だけだから安心なさい それと
念を押すけど 絶対食べ物を見せびらかして食べちゃ駄目よ」
「はい気を付けます」
「そう、それでいいわ では行ってらっしゃいな」
『お嬢様方、お気をつけて行ってらっしゃいまし』
と多数の魔道士・魔女の詠唱が重なる中、わたしは陣を踏んだ
例のふわりと宙に浮く感覚を覚え多数の魔術文字が飛び交う空間を進みやがて
目的地に到着した。
そこは、名無しの村 村外れにある ランドルフが管轄する屋敷の
地下室であった。
「お待ちしておりました、シーア様とミーア様・ビヨン様 私トリスティめが
此処、 ”永久の懐” の屋敷長で御座います 我が主ランドルフはもとより
シーア様を丁重にもてなす様に仰せつかっており
位階二位のノアからもこの屋敷内ではシーア様方が不自由が無いよう配慮せよ
と念を押されております。 ご希望が有ればなんなりと」
と丁寧にエル族女性 トリスティ はいう
ふわりと、甘い薔薇の香りが何処からともなく漂いライラックのストレートロングの髪
を優しげなラベンダーアイスの瞳が此方をみる
「あのわた... ...」
「ご挨拶はいいですよ ノアからお聞きしてると思いますが 近くには貧しい寒村
名無しの村 が御座います それに南東には広大なレウシス砂漠帯が控えており
危険な魔物が多数棲息して御座います。
不要不急なお出かけはお控えなさって下さいませ
......とは言ったものの冒険者たるもの 好奇心には勝てますまい
”お出かけ” の際にはメイドや執事に一言お申し付けてからお出かけになって下さいますよう」
と丁寧な ”注意” を受ける。
「こんな辛気臭い地下でも何ですから上の貴賓室にご案内致します」
と地上階に登ると冷たい風が頬を撫でる
「ふふ、近くに灼熱の砂漠があるというのに驚いたことでしょう
常に吹く北東寄りの風は彼の大氷狼が支配地域 アガテ連峰の
吐息ですわ おかげで少々寒いだけで嫌な灼熱にはアテられなくて済んでおりますもの
拝見した所貴女方も暑いのは苦手でございましょ? 」
「「はい」」
[ 私も暑いのは苦手 水銀の巡りが悪くなり 演算速度が落ちます ]
「演算? 」
聞き慣れない概念の単語だった。
[ お気になさらず シーアやミーアの概念に置き換えると ”思考” という事ですよ
躰の構造が違いますから ”思考” の算法も異なるのです
これが熱を発生させるのです。
それにシーアは、錬金の心得が有りますからご存知でしょうが
水銀は暑くなると膨らみ微妙な魔導機構の調整が必要で
そちらにも ”思考” の領域を充てなければなりません
そのうえ 二つのコアの冷却の役目も果たしておりますから ビヨンは暑いのは苦手です ]
ミーアは理解出来てないようだったが
なんとなく言わんとしていることは理解出来た
そういえば、前ビヨンやレヴィアの内部を覗いた時立方体のコア表面にも
精緻な幾何学文様の水銀の血管(?) が張り付いていた
回転や変形していてどうやって躰の血管と繋がっているのかは謎だが
ともかく、全員暑いのは苦手らしい事は一致していた。
貴賓室は豪華では無かったが三人分の広さとしては十分だった
「三人とも一緒で構わないですか 殿方もいらっしゃらない事ですし」
<<ミーアお姉様 わたしと一緒でいいでしょ わたしもオンナノコだし>>
<<えぇ、勿論いいわ ふふシーちゃんの寝顔ってどんなかしら トリンデのディーボ
討伐以来だわ>>
<<それ言わないで>>
「わたしはいいわ ミーアもビヨンも一緒でお願いします」
「では貴賓室に滞在なさって下さい
あとこれは 此処の 名無しの村 に限らず貧しい村落のギルドには高価な素材を
もち込まれないよう 正当な価格で買い取り出来ないばかりか
横領の危険がありますし 闇のギルドの危険もあり闇社会に
知らぬ間に物資を提供することにも繋がります。
更にギルド内で素材をめぐって新たな争いの火種とも
なりかねませぬ。
貴重な素材は公平にギルド専用の競りにかけられて
流通させなければなりません 尤も貴女方の選択も采配も自由ですが
くれぐれもお忘れなきよう」
とわたしとミーアはまたこの世界の一面を垣間見た様な気がした。
「高価な素材は此処 ”永久の懐” でも買い取りは出来ませぬ資金が有りませんからな」
丁度其処に
「これ、買い取ってくれる? 鉄蠍の殻拾ったんだ」
と貧しい身なりをした少年が壮年の男性と共にやってきた。
「うちのが砂漠で拾ってきたんでさぁ 見てやってくんねぇかな? 」
と受付になにやら黒光りする物体を渡す
「はい、今鑑定しますね これは品質もいいですね これが買い取り金です」
とカネを壮年の男性に渡す
「うへぇ、今回は運が良かったぜ久々の ”燕麦麩パン” 食えるな
干し腸詰めも有ればよかったんだがな 今度はもうちょっと 遠くに行ってみるか なぁ? 」
「うん、 彼処なら死骸在りそうだね 父ちゃん」
「あぁ、そうするか おっかねえけどな」
と言って立ち去ろうとして
「今日は、偉い別嬪なお嬢様方も拝めて眼福モンだな
オメェもヨメにするならあんな別嬪さんを捕まえるんだぞ」
「うん、ボク頑張ってヘルデに家建てたいな 馬買ってそれから......それから」
「頼もしいヤツだぜ 商隊の連中の話じゃレウシス砂漠帯なんて渡りきれるかどうか
夢のまた夢だがな」
と視線は南の方ヘルデを見ていた。
「このように、村人から素材を買い取ってもいるのですよ
彼らの収入源にもなりますしちょっとした素材も手に入れられますしね
他にも 聖甲虫、目玉蜻蛉、蟷螂蜂
赤縞蚯蚓、(ミリッツ・ワーム) 等々の素材も此処では 買い取り対象で それらの端材でも
買い取っていておりまして
これらは常時依頼指定品目ですね 此処は ”正規” のギルドも兼ねておりますから
暇がお有りでしたら、掲示板が有りますからどうそご覧になって下さいまし」
と説明された。
「あと、何かありましら付近の者にお言いつけを ではごゆるりとお寛ぎ下さいませ」
と言って トリスティはさがった。
<<ねぇねぇ、また同類の気配がするぅ>>
とラヴィア
<<うんうん今度は近いわ>>
とレメテュア
<<早く、仲間にしてよ>>
とコトン
が念話で話しかけてきた
<<えッ、ライブ・アーテファクトの? >>
<<そーよ シーアおねーさま わたし達が勝手に契約なんて出来ないもの
絶対連れてきてお願い 今度の娘はどんな娘かしら ふふっふふっ たのしみぃ〜>>
とまるで既定事項の様に全員口を揃える。
<<来てくれるかどうかは分からないけど説得はしてみるわ>>
<<きゃぁん ウレシー 気配は冷たい空気が流れて来る方よ此処内も
外と同じだもんね>>
とレメテュアははしゃぐ
<<流石は、クローティア様のお造りになられた空間世界ね お屋敷内は快適だわぁ〜>>
<<そうじゃろうとも そうじゃろうとも お主達も小奴が困っていたら
手を貸すのじゃぞ>>
<<はぁ〜ぃ もとよりそのつもりで〜す♡ クローティア様♡ >>
と三人で唱和する。
<<しっかり頼みおくぞ >>
『所でシーアよ お主も村の方へ行ってみたいじゃろ 髪がワサワサしとるぞ』
「へへっ 分ちゃったかぁ ちょっと お昼食べてから行こうかなぁと思っていたのよ」
『そうか先の親子をみたろ やはりここは、貧しい者が寄り添ってくらしておるみたいじゃの
お主、分かっておろうな? 』
「えぇ、下手な情はかけない事と わたし達はあくまで先の目的の為に滞在している
だけだと言うことよね」
『そうじゃ、全部のヒトに平等に情をかけることが出来ない以上
余計な介入は却って不和の元じゃ 心して置くんじゃ ミーアお主もだぞ それと
ビヨン分かっておるな』
[ シーアやミーアが”余計な介入”をしたら諌めるのも私の役目 ]
『それで良い 儂は後は口出しはせんて 己の采配を信じて行動してみせよ
これも必要なことじゃて もし良くない結果を招いても自分で始末を付けるんじゃぞ』
「えぇ、肝に命じておくわ ミーアねーさまもお願い」
「分かったわ 冒険者時代に嫌と言うほど体験したもの 心得はあるつもりよ」
と食事後の行動指針を決めて
例の 魔樹の遠足籠 ロムルス をミーアが小鞄から
取り出す
『プハァー やっと外の空気が吸えやしたぜ うんめー』
と開口一番若い男性の声が籠から発せられた
「貴男は? 魔樹の遠足籠の ロムルス(?) さん? 」
『おっと 開口一番失礼しやした あっしが 黒いトリニー・トレントの希少変種の蔓で編まれた籠
ロムルスっていうモンでさぁ 早速其処の 銀のお嬢様 あっしと契約と参りますか
それとも 其処のケット族のお嬢さん? それともそこのオートマトのお嬢さんで? 』
「シーちゃんお願い」
とミーアビヨン頷く
「わたしが主人のシーアよよろしくね 」
『ではお手から血をいただいてもよろしいので? よろしければ
あっしのどこでもいいんで 垂らしてくだせいまし』
「いいわ」
と牙で指を噛みタラタラと籠の蓋付近にかけた
『うおぅ すげぇこんな血の契約は初めてだぜ 漲って来たぁ〜〜 』
と編んでいる蔓がグニグニ蠢き、金の爬虫類の目玉があちこちに無作為にギョロリと
現れた
「きゃぁ 」とミーアが驚く
『へへ驚かせちまって済まねぇ あまり血の力が凄いもんで つい目玉一杯生しちまった
なぁに”普段”はつむってまさぁ 二箇所は開けさせていただきやすがね』
と無作為に現れた目二箇所を開き後は閉じるが、瞬きをすると今度はまた別の目玉が開く
『お次は管理者を決めておくんなし これは実際に使う方がよろしいのですがね』
「それは、ミーアおねーさまとビヨン、あと今は此処に居ないけどレヴィアにするわ いいでしょ? 」
と同意を取り付けると二人共首肯する
『それでは 血 を頂きやす』 と
するする と籠の蔓の一部が解れて
ミーアの指から血を少し吸い取り ビヨンからは水銀を吸い取った。
『これはこれは 素晴らしいおふた方々の血・水銀共特級品でやすね うんめぇ あとお一方は
あっしが後で契約しておきやしょう』
と蔓をグニグニ蠢かしていた。
「ロムちゃん? 貴男のエサは何がいいの? 」
生きている以上何かしら”食べる”と思うのだが気になっていた。
『そうですね その前にあっしの中には食物素材なら何でもいいですぜ
魔物・獣・植物・調理品等の食用の素材や成果物なら何でもお預かりしやす
固体や液体もどうぞ 後食器の格納もお任せくださいまし
シーア一行様以外が触れるとこの蔓を解して
このあっしが喰ってしまいますんで 安心してお預けになって下さい』
「広さはどれくらい? 」
『シーア様の血のおかげで大型ワイヴァーン5匹なら余裕ででさあ
ただのヒトだとこうはいかねえ シーア様の血サマサマでさぁ
骨や皮等の素材は勘弁してくださいまし腹ぁ壊しますんで』
ここはノアの説明通りだった。
蓋を開けると黒い空間では無く見た目は普通の大きさの遠足籠であり
食器等が見えていた
『これもあっしの能力でさぁ こんなあっしを拵えた職人でさえ知らない能力
をみたら大騒ぎになりやすから見た目は普通に見えるんで 試しにお手を突っ込んで下さいまし』
と言われて手を入れると
中に見える木の食器や陶器の食器は見せ掛けでグニャリと歪み黒い空間が広がった
『取り出す時は思い浮かべてもらうだけであっしがここまで持って来まさぁ ほらね』
とサオリさんの ”オニギリ” がすうと浮かび上がるように現れる
『後は、あっしのお手入れなんですがね 皆様のように沐浴って訳にはいかねぇんで
ナシューの脂で軽く優しく拭いてくだせいまし 最期になりやすが
エサはそこらの豚犬や子鬼で十分でさぁ シーア様のおみ足で20歩圏内でしたら
あっしの蔓届きますんで 時々、このあっしに喰わせちゃ貰えませんかね これは別腹で
骨も残さず喰いますんで何卒をば』
「それくらい、いいわ 移動中はなるべく貴男を持つようにするから見つけたら勝手に食べていいわ」
『うへぇ ありがてぇ 後、遺産のお嬢様方にお菓子せがまれた時はどうしやしょ
ちょっとおっかなくて』
と訴えた なるほど彼女らにせがまれればどうしようもあるまい
「そうね、その時はわたしがレヴィアに全て配分管理を任せていると言っていいわ
嫌味は言われるかも知れないけどね わたしの名を出していいわ」
『そうしやす 今後もあっしを旅のお供にご愛願くだせいまし』
「「当然よ、よろしく ロムちゃん」」
『シーア様のお言葉のままに』
とこうして、私達に新たに しゃべる魔樹の遠足籠 ロムルス 愛称 ロムちゃん
が加わった。
「うぅ、さむっ」
北東寄りの風はマギを帯びた冷気で普通のヒトとは違うわたしも流石に
ふるりと震える
南東に広大な レウシス砂漠帯を控え目が眩むくらい陽の光が地面に当たり
陽炎が見えるというのに。
ちょっと北よりに目をやると 皇帝亀 と呼ばれる
巨大な亀の魔物の遺骸が所々に散見される。
朽ちても尚、その巨体は植物や魔物果てはヒトの街の苗床として君臨していた。
名無しの村はそんな天然の要塞とも言える 皇帝亀の遺骸の恩恵にも
預かれず 粗末な草葺きやかろうじて風の浸食を免れた遺構に板葺きの屋根で
冷気を凌ぐそんな名無しの村が其処にはあった。
わたし達が近づいてもヒトの気配はするものの 警戒の気配が辺りを支配していた。
屋根の草葺きの手入れをしている壮年の女性に声をかける
「あのぅ、 ここの”長”がいると聞いたんですけど場所知りませんか? 」
「 ......ん、 あぁ、永久の懐ンとこの客人かえ? 話すことなんかないし
歓待は期待出来ないよ わたしゃあんまり ヨソモンとは関わりたくないんでね。
で... 銀のお嬢さん きれーな髪ケープコートから見えてるよ」
と指差す方を見るとなるほど わたしの髪がローブからはみ出て
七色とも銀とも言えない輝きを見せていた。
「わわっ ありがとう ミーアおねーさま お願い」
「えぇ 、いいわこれで」
とケープコートに押し込んでもらう
髪一つでもこの反応である。 ノアの忠告は本当だった
「ふん 、まぁいいさ 此処で話しかけられたのも何かの縁さね
わたしゃ シリー ってもんさ
女のやもめ暮らしてやつだ 気にせんなら ”長” に話しつけてやるよ
家上がってくかい? 」
と家に上がることを勧められた」
わたしとミーア・ビヨンも警戒の色はなく目配せでお互い首肯する。
「はい、おじゃまします」
「そうかい、 こっち来な」と 辺りの見えない視線を浴びながら
風の浸食を免れた遺構に板を屋根にでさらに草葺きで補強した家に招かれた。
中は閑散として簡素な寝台と壊れかけた机五脚の椅子等があり
薪が燻っていた
「挨拶がまだでした わたしはシーア・此方がミーア・ビヨンです シリー様」
スカートをつまもうとすると
「よしとくれ、ここは王宮でもなければ領主様の家でもないよ」
言うのでペコリと頭を軽く下げる。
「律儀だこと まぁ座っとくれ あたしゃアンタらを立ちっぱなしにする
拷問を強いるつもりはないんでね」
「「「はい」」」
「まぁ お茶でも飲みな そこらの雑草のだし汁だがね
一人は 人形かえ? 」
「えぇ、ビヨンは”オートマト”ですから、水だけでいいですから お茶は遠慮します」
「あぁ、ごめんよ 言葉が悪くって 世間じゃオートマトだったね ...は風当たりがつよいからね
で 用件は”長”に用かえ」
「えぇ、この辺りの様子をちょっと聞きたくて それで...」
「理由は言わなくてもいいよそれくらいは知っている
アンタらの目的の人物は”眼の前”にいるよ わたしが此処名無しの村の
”長”さ 亭主が長でね砂漠で行方知れずになって待てど暮らせど戻って来なんだ
それで代理をしている内にって訳でいつの間にか 長になっていた こんなとこさ」
ずーっと シリーは”お茶”をすする
わたしも口をつけたが凄く苦かった。
「アンタも 永久の懐 客人なら大体の事情は知ってると思うが
ここは極貧よりかはちょっとマシな連中が寄り集まっでできた集落さ
来る時 皇帝亀 と呼ばれる巨大な亀の魔物の遺骸が
集まっていたのを見ただろ」
と言って北の方を見る
「えぇ、大きな亀の遺骸が 沢山、ありました彼処ヒトが住んでいたんですね。 」
「そうともさ
彼処ら辺は セネストリ といわれていて皇帝亀
の墓場とよばれる場所でね 遺骸都市さね 武具や防具の一大生産地でもあるし
色々な魔物・植物・ヒトの苗床さね
其処に居場所がなくてあぶれてきた連中や 南のヘルデから セネストリに行く途中
砂漠帯で大怪我をして動けないでそのまま此処に
居着いてしまった連中の子孫もいるね
戻りたくてもやんどころなき事情を抱えた連中も多い そんな吹き溜まって枯れた場所ってわけ」
「そうだったんですか」
「更に始末が悪いことにセネストリの一部の外道な連中が 心の迷い仔 を 此処に
”置き去り” にするんだよ まったく」
「心の迷い仔? 」 初めて聞く単語だった。
「 おや知らなかったのかい 心の迷い仔ってのは 眼の前で親・きょうだいを魔物や
人外や野盗に蹂躙されて心を喪いかけている連中さ奇っ怪な恰好や行動だけなら
変わり者で済むんだが 他人を見るや仇討ちとばりに誰彼構わず敵対したり
人として最低の規範さえ守れない厄介な連中さ ほんとは医術院で保護するんだが
彼処の連中ときたら ......後は言わなくても良いだろ」
「えぇそれ以上は...」
うすうすは感じていたが魔物や野盗・人外の化物が闊歩する普通の世界 誰もが
英雄や勇者に成れるわけはなく、心が死んだ者、重すぎる現実の重圧に屈服した者等が
いるのも隠す事の出来ない事実である。
英雄・勇者譚に名を連ねるのは一掬いの砂にも満たないのである。
「だから、あまり出歩くんじゃないよ アタシに声掛けて正解だったさあんたは、
心の迷い仔 の中には一見まともに見えるのもいて
禁句を言ったり特定のモノを目にしたりすると途端に本性を現すヤツもいるからねぇ...」
と後の台詞は無かった
<<ふふ おねーさま 嘗て、そんな連中は私達への贄として処分されてきたのよ>>
とラヴィア
<<だけど 本当はどちらが幸せなのかしら?
すぐに私達の贄として処分された前史代・古代と
医術院で定命の理が来るまで何時までも肉体の檻に繋がれたままの
今代とでね ふふふ...ふふ>>
とコトン
<<ほんとヒトって愚かね 進んで迷宮に飛び込んで来て 心の迷い仔
になるんだもの>>
とレメテュアとそれぞれのライブ・アーテファクトは念話で割り込んで来た
<<そうなのかもね でもそんな、悲しいこと言わないで お願いだから
でもねレメちゃん ヒトって 例え心を喪うかも知れないと分かっていても
好奇心には簡単に屈服するもなのよ だから遺跡に潜るの>>
わたしがわたし(シーア)になってベゼリン学術院の地下で
ケールに邪教徒を喰わせた時も陰惨な光景では有ったが
それで心を喪うことは無かった。
一番驚いたのは、わたしの心の奥底で必死に恐怖に抗う
この少女の外観には
そぐわない荒々しいモノを感じたのだ来歴に依るものか生来のものかは
分からなかったが。
冒険者は時に、自分の内面に住まう心の怪物にも討ち勝たなければならない場面にも
遭遇するので
肉体的にも精神的にも過酷な生業であった、
<<ふふ、わたしは 心の迷い仔になんてならないわ
そう感じるもの 心配なのはミーアおねーさまよ こればっかりは
個人の資質でわたしじゃどうにもならないもの>>
<<そうじゃとも お主は心の迷い仔なんてならんさ 儂がそうさせないからのぅ
それに お主の中に儂をも戦慄する何かを感じるのじゃからの>>
とクロも担保する。
<<ふふっやっぱりおねーさまって面白いわ>>
とライブ・アーテファクト達の念話は此処で途切れた。
「どうかしたのかえ 急に黙りこくってからに」
とシリーが怪訝そうに言う
念話は気取られはしなかったが
流石に会話しながらは難しかった。
「いぇ、今後の方針を算段していただけです シリー様」
「で、私になんの用なの? 」
とシリーは長を訪ねにきた理由を問うた。
「今の、この集落の状況を知りたかっただけです アガテ連峰にどうしても
ある目的の為、行かなければいけない状況なので」
「そうかい、 あまり頻繁此処に来られても困るさね ヨソモンと親しくしすぎると
ロクな目に合わないからねぇ」
「これ、お話を聞かせて貰ったお礼です。 」
と日持ちのする干し豆と干し腸詰めを渡す
「いいのかい? こんな”豪勢”なもの貰っちゃってさ」
「ええ、これは情報の対価だと思って下さい」
というと
「ふん、いいよ 有り難く貰っておくさ 気ぃ付けて、大氷狼と ”交渉” してきな」
と彼女はニヤリと笑う
「えっ それって? 」
「おっとこれは、貰った対価の余剰分だ」
とわたしを見透かしたように言い
「さぁ、用が済んだらとっとと出て行っておくれ」
と言葉ではそう言っていたが剣呑な空気は含まれていなかった。
「はい、それでは」
と頭を下げシリー宅を辞した。
日も下がり 永久の懐 に帰る道すがら ボロボロのドレスを纏った
ソーヤくらいの”男性”が
「あぁ ...#&#%%... 貴女は何処に... ヒャヒャア... こんなにも お粧し込して
待っているのに ...んぁ... ”おねぇちゃん” 寂しいわ ふふ...あっはぁ...」
などと意味不明な事をいながら ふらふらと わたし達は眼中にないのか
視線をあてどなく彷徨わせ 何処かに歩いていった
「またアイツだぜ 気の毒にな」
「あぁ、奴さん 下の妹二人魔物に目の前で喰われたんだろ」
「ヤツは長男で下に妹二人居たんだけど、たんまり蹂躙されてからな」
「うわぁひでぇ」
「と此処まではは ”普通” の話さ」
「続きあんのかい? 」
「あぁ、その魔物がよアイツの妹達に姿を変えてよ 仇討ちにいく度に
”おにーちゃん わたしを殺さないで” などといいやがるんだと」
「して? 」
「奴さんもギルドに依頼出して仇討ちにいって 二体の魔物を
討伐したまではよかった......が...」
「が? 」
「何とその魔物 妹達に覆いかぶさっていただけで 討伐したのは本当の妹達だったてわけ」
「つまり どういうことよ」
「喰われた様に見せ掛けて実は覆いかぶさっていただけだったということよ
散々嬲ったあと喰った様に見せかけて、嬲ったヤツの全体を覆って中で生かしておいて
異形の姿を象って中に捉えたヤツを親しいヤツに殺させてから
その死体を喰うって魔物よ」
「うはぁ、エゲツねぇ その魔物は? どうしたよ」
「奴はドロドロした液体状でな 地面に潜ってどっか行ってしまったらしいぜ」
「それ腐肉塊かね? 」
「わかんねぇな ヤツ(スライム)の変種かも知んねぇしな
そこで奴さんとうとうおかしくなっちまったのよ」
「ああやって居もしねぇ 双子の妹の”姉”の方になりきって探していたり
ある時は逆に 双子の妹の”妹”の方になりきって探しているらしいぜ
セネストリ からの流れ者よ」
「うへぇ」
「まぁふらふら彷徨うだけで敵対はしねぇらしいしこのままよ
あれはまだ ”まとも” な方だぜ まだ若ぇのに気の毒にな」
そんな会話がボソボソ聞こえてきた。
先のシリーの話もありミーアは眉をひそめていて、わたしもまた眉根が寄るのを感じていた
ミーアは彼の背中に向かって
...心を喪いし彼の者に女神リーンの灯火が視え迷いの杜から抜け出せますよう...
と風陣の指輪で癒やしの風を捧げていた。
わたしも、彼が心の迷路から無事抜け出す事を祈らずには居られなかった。
賢者の懐に戻りわたしはシリーの
((( 大氷狼と ”交渉” してきな)))
との言葉を考えていた。
彼女は”討伐”でなく”交渉”と言っていたのである
彼の大氷狼とはどのような存在なのか調査する必要があった。
「ねぇ、ビヨン? 大氷狼とはどのような存在って分かる? 」
アルカーナとパスで繋がっている彼女に聞いてみた
[ 少々、お待ちを ...蔵書...検索中... ...検索終了 どうやら閲覧禁止では無かったようですね
いま書付けますね ]
大氷狼
その体躯 霊峰の如く巨大
吐く吐息は吹雪をもたらし総てを凍てつくすなり
アガテ連峰の主・遺産の少女の眷属にて冷気の化身・霊気の狼である。
討滅これ叶わず、幾多の生命を屠り数多の大陸で爪痕を残す
かの霊峰の深い割れ谷はかの者の為業なるも、性質は静穏である
硝子竜と覇権を争いアガテ連峰一帯を氷結させ今だ冷気は衰えず
気に入らぬ相手にはその巨大な氷爪の裁きが下るであろう
※ これは自然現象と同じで討滅は不可である
彼の者の怒りは氷結域を更に広げるであろう
触らぬ大氷狼に障りなし
某・魔物学者 付記
とビヨンは書付けた。
<<これくらいで腰が引けるお主ではなかろ>>
<<当然よ、明日の出かその次の日の出には出立かなぁ>>
<<そうか、アレが来そうなら アレの後からにせい
どうせここは何日かは逗留しても問題はなかろ>>
<<うん、そうする 気を使わせるわね クロ>>
<<気を急くのも考えものだぞ>>
とミーアとビヨンには今の念話を伝え頷く。
「シーア様、お夕食の準備が整いました簡素ではありますがどうかご容赦を」
「とんでもないです豪華か粗末かは問題ではないですわ
お食事をいただけるだけで嬉しいですわ」
「そう言っていただけるだけで有り難きこと
食材は砂漠帯や氷雪のアガテ連峰を控えて
居りますが彼ら名無しの村の方々のおかげでそれなりに有りますよ
さぁどうぞ」
と出された夕食は乾燥豆の塩スープに名も知らぬ葉
そして燕麦麩のパンである彼らのいう”豪勢”な食事であった。
食事を終え地下の沐浴場で汗を流す
すると頃合いの眠気である ミーアには
”待ち人”が来たら大氷狼との交渉の後でベルゼのネグリールで再度時間を
作る旨伝えネグリジェに着替えた所で下腹部が例の感覚に襲われて
「クローティア お願い」
『うむ、儂が守ってやるでの安心せい』
と急に意識が遠のきわたしは浮遊感に身を任せた
「ふふ、ようやく彼の地の出掛かりを掴みおったか 良きかな良きかな
今回の変化でお主も冥界の王女に相応しい能力を備えるはずじゃ
彼の大氷狼を上手く説得するのじゃぞ なぁリーメアよ 早う
レフィキア世界に住みたいものよのう そうねレーリア シーちゃんを早く背中に乗せたいわね」
「かーさま? かーさま? なの? 」
「そうじゃ他にだれがおろう 更に綺麗に成ったお主が来るのを楽しみにしておるぞ......」
と見知った二人に抱きつくも感触はふわふわ心もとなかった。
翌朝、
「シーちゃん、何? その髪 どうしたの?」
『おぉ、お主もとうとライブ・アーティファクトのようになりおったか 美しゅうなりおって』
「えッ、どういうこと? 」
『先ずは姿見で見てみい』
と姿見をみたわたしは其処にライブ・アーティファクト達のように
髪がユラユラ動く自分を目の当たりにした。
次回 61話 ギアトレスの万魔殿
お楽しみに
活動報告にシーアの変化とケープコートを
掲載しました みてみんのリンクへ飛びます
拙著
イゲン・ルート・オンライン
〜VR 調査官 斎木木涼 受難のスクリプト コード〜 も連載開始しております
もう一つのオルティア・レコードともいえる遠い未来のVRMMOが舞台のストーリーです
スターシステムを採用しております
ストーリーのリンクはゆるくあります
此処のキャラクター(脇役のみ)がどのような
役割で向こうに登場するかはお楽しみに
細かい修正はあるかも知れませんがストーリーは変わりません




