59話 霊峰の詩(うた)
トリンデでの空振りから馬車で戻ったヴェネイーラは、苛立ちをかろうじて抑えベゼリン学術院
近くの魔器屋 ルネスの小箱の店の奥にひっそりと張ってある陣を踏む
此処は、彼らの本邸があるボルグラン城基底部の中央大地の最深部で常に濃い
瘴気で淀んでいる場所へと通じていた
”銀の三日月” にも父・ネリスティーナが取り入り、太い関係が築かれていたのである。
「まったくもう、なんでヴェネちゃんだけこんな目に遭うの? 信じられないワっ!!
あぁっ、イライラする あぁそうだお屋敷の地下に取って置きがあったわね
アレ、こっそり頂こうかしらね」
「ヴェネお嬢様、あれはネリスティーナ様から お嬢様にはまだお早いと止められているのでは? 」
とメイドが恐る恐る進言する。
「うるさい! うるさい! ヴェネはもう”オトナのオンナ”なの だからいいの
いいのよ頂いても アンタはお父様が来ないか見張ってればそれでいいの ワカル? 」
長い爪でメイドの首元を突き立てた。
「ひぃ お赦しを」
「ふん、今この場でヴェネがぁ〜 アンタ食べちゃってもいいのよ それでもよくて? 」
「いっいえ それはご勘弁を」
ヴェネイーラはニタリと嗤うと
「ふふ、ウソよウ・ソ アンタを今食べるもんですか ヴェネの”オトコノコ”で味見した後に
決まってるじゃない どぉ? 味見されたい?
準備はもう出来てるわ ほら」
と下半身の違和感をスカートの上から見せつけた
「 ひぃ お赦しを」
「ふふ またそれぇ 語彙が少ないのね おバカさん ヴェネはおバカはきらいよ」
と言い放つもそれ以上は何もせず二人の少女否一人は見た目は少女が
陣を踏み掻き消えた。
二人が陣を拔けたその場所は
まだ昼というのに仄暗く、濃い瘴気で霞みが掛かって得も言われぬ甘ったるい匂いが
辺りを覆っているここは彼らの屋敷がある本拠地とも言える場所であった。
遥か上では今も何事もなく人々が生活を営みあまつさえ、女神リーンの御神楽までその存在を
主張していた
遥か足元に対極たる存在が息づいているとも知れずに。
カツカツ と何時になくせわしない足取りでヴェネイーラは地下の最奥、
以前こっそり父・ネリスティーナの後つけて盗み見た通りに一見何もない壁をなぞる。
するとレンガの隙間が無作為に開いていく 奥からは更に強い瘴気独特の甘ったるい匂いが
漂ってきていた
其処へ涎をたらたら垂らしながら吸い込まれていくヴェネと
ビクビクしながら従いていくメイドの姿があった。
やがてひんやり空気の温度が下がり、銀の小壺がずらりと並んだ小部屋に到着する
「あぁん、 これよこれ」 と
甘い嬌声と共に
とヴェネのオトコノコがスカートの上からでもはっきりわかるくらい存在を主張する
銀の小壺の蓋を きゅるり と軽く捻ると何やら 赤い
鉄錆のような生臭いようなとろりとした液体で満たされていた
これは過去に先祖達がよって手に入れた取って置きの過去の聖人達の血であった。
再び手に入らないためこうして寝かせてあるのだ。
その中でもヴェネの好みは若い青年の血が好みだった
「はぁん だってだって 若いオンナノコの血も好きだけどぉ 乳臭くていや
今宵は ステキなお兄様のがいいわ うふっこれにしよっと♡ 」
一人大はしゃぎでツボに手をかけ取ろうとした時、
ふと先程の怒りが蘇り思考が一瞬停止したのと、早く舐めたい一心で注意がおろそかになった。
「お嬢様!! お足元っ! 」
とメイドが言ったがもう遅い
棚の下の方に置かれていた長持ちのような棺のような物にとり零してしまった
貴重な聖人の血は精緻な棺の彫金細工の彫り込みに溜まり不思議なことに
すうっと 土の地面に零した液体の様に染み込んで消えていく
触って見ても血は手に付く気配もなく棺(?) も金属か木材か分からぬ虹色の
素材であるやがて
ガチり
と大きな音がして蓋が溶けるように液状になり球体の形で浮かび
中ですやすや可愛い寝息を立てて
眠っていた美しい少女の小振りなパウダーピンクの口に吸い寄せられる様に尾を引いていく
よく見ると棺(?) の中は淡いピンクと白のフリルやレースの内張りで彩られ
高価な ふるもの(アンティーク)人形の匣のようでもある
更に目を引くのは今だ色褪せぬ黒薔薇の花びらに埋もれた
髪はパウダーピンクでローズピンクのメッシュが血管のように入っている
唇もパウダーピンクと大変愛くるしい少女が艶っぽい目つきを伺わせる睫毛をふるふる震わせて
両手が見えない位の姫袖を丁寧に胸の上に交差させていた
父親のネリスティーナよりも遥かに
フリルやレースがたっぷりでお嬢様趣向の強い
両手は手首が隠れるほどの裾広がりの姫袖・可愛いローズドラジェの薔薇柄の
ワンピースドレスで身を包み足はフリルのソックスにリボンパンプスでこれは
スノーホワイトで色が揃えていた
やがて艶っぽく可愛いねっとりとした声音で
「ふゎぁ〜ん、だぁ〜れぇ〜 マリアージュちゃん起こしたのぉ
なんかぁずいぶんとオネムだったような気がるけどぉ〜 」
と半身を起こし辺りを見渡す
ふわりと長い髪にはリボンを散りばめられ右のこめかみ付近からこれも長く髪を
ひと房に分け更に2つに分けてパンプスのリボンと同じスノーホワイトのリボンで飾っている
彼女の呼吸に合せてゆらゆら揺れ、
瞳もパウダーピンクで先程の艶っぽい目つきを伺わせた通り
艶美なねっとりとした視線がヴェネイーラを絡め取った。
あまりの美しさと可愛さにヴェネイーラは
「これが、噂のライブ・アーテファクト? きゃん大当たりよ お・お・ア・た・り」
と思わず口走ってしまう
と途端に少女の口調が声音はそのままにガラリと豹変する
「んだとぉ、この乳くせぇオスガキはぁ? このオレに向かって ライブ・アーテファクトだとぉ」
と声は艶っぽい少女の声音だが口調は下品な男のそれであった。
尚も少女の言葉は続く
「しかもよぉ、よく見たらオレの寝ているコレ封櫃じゃねぇかよ どこのどいつだ
マリアージュ様をこんなクソ狭くて ”小汚ねぇ” 匣に押し込めやがってよぉ
クソガァー 貴様かぁ? そこの呆けている乳臭ぇオスガキィー」
と開口一番凄い剣幕だった。
「待ってまって ヴェネはヴェネイーラよ えっと落ち着いてねっね えーっと...」
「オレかぁ おれは ”マリアージュちゃんよぉ” 良くおぼえとけよ糞ガキめ」
”マリアージュちゃんよぉ” の部分だけ外観相応の少女口調で
語調を変え後はゲスな男の口調で怒鳴り剣呑な空気が二人を支配する。
これを察しメイドはヴェネイーラに気付かれないようにその場を退く
退いた理由は後で、どうとでもなるしこのままでは従者である自身も危ない
ヴァン族の揉め事に不必要に関わるのはメイドにとって ”死” を意味していた。
「先ずは落ち着いて マリアージュちゃん」
と言ったが今度は何が気に障ったのか
「この オレに向かって マリアージュ”ちゃん” だとぉ オメェ テメェの叔父さんにそんな
口きくのかよ」
とさらりと聞き捨て出来ない事を言う
「えっ ”叔父様”!? 」
「そうだよ、みてわかんねぇか叔父貴に向かって マリアージュ”ちゃん” などと
オンナノコの様に呼びやがってよ オメェの目ん玉どこについているんだぁ」
と少女の格好をしていてその言い草は、もうめちゃくちゃな難癖であった。
尚も訝しんでいるヴェネイーラにマリアージュと名乗った少女(?) は
「チっしょうがねぇ だったらオメェと同じモン見せてやるよ」
と すくっと立ち上がり
これまた完璧な仕草で、スカートを摘み丁寧に脚を交差させて腰を低くして
一礼して
其処にあった椅子にふわりと豪奢なスカートを広げて片足を抱えて艶っぽい仕草で
ショーツが見える様に抱えて座った。
可愛いペチコートと白の靴下留め(ガーターバンド)の太ももを見せつけ
これまた衣服と同様に少女趣味な可愛いショーツからは
自分にもある ”オトコノコ” がはっきり確認できた。
「ごっごめんさい マリアージュ叔父様...」
と言いかけて 頬に鋭い痛みが走る。
「マリアージュ叔父様じゃねぇだろ 叔父様じゃ」
とよく見ると姫袖に隠れて見えなかった可愛い手のパウダーピンクの長い爪を頬に深く
食い込ませてぐりぐりさせてその爪は口腔を貫通していた
「ふぁにを ひゅるの ひゃめて」
(何をするの やめて)
とかろうじて言うと、
「もっとさぁ 別の言い方あんだろ この可愛いオレに相応しい言い方がよぉ
きちんと言えるまではもっと広げてヤラぁ 可愛いお口が2つになっても知らんぜ
因みによぉオレの爪から滲み出るのは毒でよ 指ぃ抜くまで塞がらんぜ
これはオレの母親、つまりお前のお祖母様からは引き継いでいてな
ヴァン族いえどお前じゃ直せんぜ さぁもっと別の言い方で呼びな」
とねっとりとした上目使いで見つめながら空いている手の指を可愛い口で咥えヴェネイーラですら
ドキリとするあざとさで、問い詰めてきた。
「ごねんなひゃい マリアージュおねーひゃまぁ もうゆるひて」
と彼の意をなんとか汲み取り言い直す。
「あぁぁん、ちゃんと言えるじゃないのよぅ もぅヴェネちゃんたらいけずぅ〜
はい これご褒美よぉ〜 うふふマリアちゃんからの取っておきよ♡ これのんでッ♡ のんでよッ♡」
と急に少女口調になり
接吻をして唾液を飲み込まようとする。
「ちゃんと飲みこむのよ♡ マリアちゃんの唾液は解毒効果があるの これ飲めば後は
ヴァン族なら永久に効果があるからね ちゃんと飲むのよ」
とゴクリと少しむせながらもヴェネイーラは嚥下した。
「はぁぃ、よく出来ましたぁ あとねヴァン族なら効き目ないけど
催婬作用のオ・マ・ケ付きこれもお母様からの
贈り物よ これもマリアージュだけなの どぅ? 羨ましいでしょ♡ 」
とようやく指から開放されて、疵は程なくふさがり元に戻り
ヴェネイーラは彼が効き目が無いと言っていたが、催婬作用のせいか少しぼんやりしていた
「ところで改めて オメェに聞くぜ オレを封印しやがったのは誰だ はっきり言いな」
と急に男口調に戻りせっかくの余韻から醒めて改めて問われる。
言い淀んでいるとまた目つきが剣呑なモノに変わっていき
お及び腰になって丁度、脳裏をかすめた ”シーア” の名を咄嗟に出した
「あの マリアおねーさまぁ」
「何だぁ? 」
「 マリアねーさま を封印したの ”シーア” って娘よヴェネと同じくらいの娘よ
マリアねーさまを謀って、あの封櫃に誘導したのよヴァネ見ていたんだからぁ〜」
とシーアが憎くてしょうがなかったヴェネイーラは出任せを言ってしまう
「ほう、そのシーアという小娘がオレを封印しやがったんだな? チクショウめ この礼はたっぷり
してやるからよ 覚えてろよ クソ娘がぁ!! 」 と派手に床にツバを吐く
忽ち床が黒く変色してボソリと崩れ小さな陥没を作った。
「後よぉ、腹ぁ減ったぜ メスガキは居ねぇか 早く喰わせろや
勿論、オレの ”淑女の嗜み” を済ませてからな ウフフ」
と自分の股間を指す
「いまは二匹いるけどお父様のお楽しみ用なの」
「んなぁに 二匹もいるだと? でクソ兄貴はどうしたよ? 」
とマリアージュは可愛く小首を傾げ聞いてきた
口調を除けばこのマリアージュという人物は
ねっとりした目つきや声付きも相まって小悪魔的で艶美な雰囲気を湛えた
完全に少女にしか見えなかった
「今はご公務よ、氏族を切り盛りしているし母様は行方知れずだし」
ヴェネイーラは母親は古代の戦いで行方知れずだとネリスティーナから
聞かされていて薄っすらと記憶に有るようだが曖昧だった。
と答えると
「クソ兄貴の野郎 フフフフッ そうオメエに教えてたか? 」
「? 」
なんの事か分からず首を傾げると
「なぁオメェの母親 ”ミーリア” がどうなったか知りてぇか? 」
「えっ 母様知ってるの? 」
「当然だろ兄貴のオンナだぜ、 うふふ ミーリアはなぁ〜...... 」
とたっぷり間を置き
「オレと兄貴でな オメェらを産んだ後によ
喰っちまったぜ 美味かったぜ 産後でちいとばかし肉が硬かったがな ふふ
どぅだぁ? 驚いたろ」
「えッッ!? 」
と 呆けていたが言葉が染み込み頭が理解した
次の瞬間
ヴェネイーラはあまりの驚きと悔しさに目に大粒の涙をため唇を噛んだ。
マリアージュはスカートを片手で持ち髪をふわりとなびかせ
くるくる ヴェネイーラの周りを楽しそうに回る。
「えぐっえぐっ どうして? どうして?」
とヴェネイーラは嗚咽しながらもようやく、紡ぎ上がった言葉を発し問いただす
「そりゃ どうしてって......簡単だろ 俺達は可愛いオンナノコとして育てられたまではいい
オレはオンナノコになって
可愛い恰好してメスガキ共を謀るの好きだし、今でも好きで好きでしょうがねぇからな
”あぁぁん 可愛いワンピースドレスに可愛いリボン可愛いオレを引き立たせるフリルやレース
魅力的な下着小物達 何てステキなのかしら♡ ”」
とうっとりとマリアージュは髪を手櫛で梳いたりふるもの(アンティーク)の姿見に映った
自分の姿を見て接吻までしていた
先の男性の劣情を満たすことを ”淑女の嗜み” と言い放った事といい
今の姿見の件といい彼は極端な性倒錯者であり自己性愛者でもあったのだ。
うふふふ とまた可愛くスカートをショーツが見えるまで摘みくるくるまわる
白い脚に白い靴下留め(ガーターバンド)がチラリチラリ見え隠れして
母親の事を聞かされた直後でもヴェネイーラはマリアージュの艶美な姿や仕草に
劣情を掻き抱いた。
彼の告白は尚も続く
「でだ、婚姻したまではいい 一番赦せなかたのは、オレを差し置いてガキを二匹も作ったことだよ
オレは可愛さも、艶美さも美しさもお嬢様らしさも兄貴には負けた事はなかったぜ
なぁ、今のオレ見てそう思うだろ なっな」
と同意を求められて確かに父・ネリスティーナより叔父のマリアージュの方が
見た目は可愛かった。
コクリと首肯する
「ふふ そうだろうとも そうだろうともよ」
と彼はニヤニヤ嗤う。
「だがアイツはミーリアのヤツを術や脅し無しでモノにしやがった
普通の魅力でモノにしやがってオレは、そんな ”ミーリアが憎くて” 仕方なかった
クソ兄貴よりオレの方が魅力がなかったなんて認められなかった
そしてある日オメェらがちいと大きくなって手にかからなくなった頃によぉ
兄貴によ こう囁いたのよ
(ねぇ〜、 ネリスぅ〜ミーリア食べちゃお〜よ♡ きれーなオンナノコ喰うと
もっともっときれーになれるらしいよ ねぇ〜、ねぇ〜、) ってな
はっはは そうしたらまんまとあの莫迦兄貴、あっさりオレの囁きに乗りやがってよ
っふふっ
アイツ(ミーリア)が泣き叫けんで泣き叫けんで 命乞いしたがな
オレは ”淑女の嗜み” を済ませてから二人でぺろりと
喰っちまったってな訳よ」
とニヤリと嗤い舌なめずりをする。
今も男を匂わせるのは言葉だけで仕草は完全に少女そのものな彼の
嫉妬に狂った艶美な女の顔がそこにはあった。
ヴェネイーラはこの時心底マリアージュに恐怖して
この傍若無人で奔放で型破りな、個性の持ち主には逆らえないと本能が理解した。
「これからオレはそのシーアって娘に落とし前を付けなきゃなんねぇ
これからはこのマリアージュ様が、シーアって娘いたぶってやる
勿論オレの言うことは絶対聞くよな えぇ、ヴェネイーラぁ〜 」
とねっとりした目つきで恫喝する。
「えぇ、マリアージュおねーさまの言いつけ通りにしますわ」
「あぁぁんそのマリアージュおねーさまって響きステキ
これからもマリアージュおねーさまって呼ぶのよ 分かった? 」
と機嫌が直った(?) らしく少女口調でうっとりする。
「はい、 マリアージュおねーさまの御言葉のままに」
とヴェネイーラは床に脚を折れて頭を垂れマリアージュの
パンプスのつま先に接吻をしてそれから差し出された手の甲にに接吻をした。
「はいは〜ぃ よく出来ましたぁ〜
先ず手始めにヴェネちゃんの血 ちょぉ〜だい♡ マリアージュねぇ
お腹へったのぉ」
ぞっとするほどの少女口調で囁く
ヴェネイーラは、この艶美な叔父の囁きに逆らうことはもう出来るはずもなく
「はぃ、マリアねーさまぁ」
とマリアージュに髪を寄せて首を差し出した
マリアージュはヴェネイーラの首元に牙を穿つ
ブツリ
という音と共に可愛い牙が白い肌に食い込んでいく
「あぁん」
と嬌声が漏れる。
「ちっ、まだ乳臭ぇしオスガキの味だな まぁいいか 今宵はこれでガマンしてやる
早く、もっと可愛くなれよ そうしたらこのマリアちゃんに
可愛がって貰える権利を与えてオンナノコとして扱ってやる 楽しみにしてな」
「はぁい おねーさま」
「ふん、調子のいい甥っ子だぜ」
と毒付かられるもヴェネイーラは、すっかりマリアージュの艶美な美しさの虜になっていた。
「まったくしょうがないぜ 後メイドに空き部屋にオレの小鞄を
運ばせておけよ あの中には喰った小娘共から奪ったオレお気に入りの物がみっしり
詰まっているからよ ぞんざいにあつかったら今後お前でもオレの眼の前に立てると思うなよ
それと 部屋の模様替えもな、ピンクと白を基調に少女趣味にしねぇと落ち着かねぇし
早めに指示しておけよ
それから兄貴の言うことはちゃんと聞けよ アイツは本気で怒るとオレより怖ぇからな
オレは疲れたからこの封櫃でしばらく休むから後は頼むぜ。 甥っ子君」
と言って
「うんしょうんしょ ここは狭くて いやだわぁ御髪が傷んじゃうわぁ♡ 」
モジモジ拗ねて見せ
「マリアちゃん気が滅入るわぁ 」
と最初に寝ていたように可愛い寝息を立てて、見た目少女の男が眠りに就いた。
この後、ヴェネイーラが父・ネリスティーナからこっぴどく折檻されたのは
言うまでも無かった
虎視眈々と、銀の風を付け狙うパウダーピンクの髪と瞳の美しい
艶美な少女の姿をした男が狙っているとも知らずに
シーアがベルゼ入りすると同時に刺客の手もまた新たな胎動を始める。
今宵は月明かりもない新月であった
数刻後、ヴェネイーラも羨ましがる程可愛い白とピンクを基調とした少女趣味な
部屋も整い、
大いにご満悦のマリアージュは大きな天蓋付きの寝台に枯れることのない
黒薔薇の花びらを敷き詰め可愛いフリルのソックスの足をバタバタさせ寝台に
うつ伏せでネリスティーナと何やら話込んでいた
「ねぇねぇ、ネリスぅ マリアージュにね あのメスガキ一匹頂戴、ちょうだいよぅ
お腹減ったのぉ〜 ねぇぇったら〜♡ 」
とあのねっとりとした目で あざとい少女口調でおねだりしていた
ヴェネイーラもマリアージュのその甘い囁きにゾクリと蕩けそうになる。
「もぅ、マリアちゃん ワ・ガ・マ・マね いいわ一匹あげるわ
またラクティに採りに行かせるからいいけど、あまり頻繁に孤児院から引き取ると
面倒事の元だから 間隔を開けないといけないけどね♡ 」
「きゃぁ〜ん ステキぃ〜 流石はマリアージュの大好きな”おねぇちゃま♡” 」
等とあざとくおねだりをしていた
傍から見ると微笑ましい姉と艶美な雰囲気を湛えた妹の様に見えるが
実のところ父親と叔父・兄と弟の会話である。
その後、マリアージュは
孤児院から連れてこられた怯える少女に
「えぐっえぐっ、マリアージュもね 怖いおねーちゃんにね 連れて来られたの
そしていきなり可愛いドレス着せられたの これからどうなるの あぁぁぁん おかーさまぁ
マリアージュ怖いわぁ 」 ウソ泣きをする
口元から可愛い舌を出して舌舐めずっていたが、年若い少女にそんなことは見抜けない。
目に大粒の涙をためたマリアージュに少女がばーっと抱きつくと
途端に
「バカな小娘め このオレの嘘泣きに騙されやがってよ 早速 いただきまぁぁす
その前にっと
”おほほッ 淑女の嗜みを済まさせてもらいますわ 楽しみだこと”」
と巧みに男口調と少女口調を巧みに使い分けて
散々男の劣情を満足させた後、
呆けた少女に追い打ちとばかりに彼の少女趣味の様な姿とは裏腹に
大量の寄生バエを喚び出し卵を全身くまなく植え付け、すぐさま幼虫を孵化させて体内に潜り込ませ
”柔らかくなった”所を意識がまだ手放さないうちあの毒爪で肉をむしり取りがつがつ平らげていた
彼のワンピースドレスには血の一滴シミ一つ付いていなかった。
流石のネリスティーナも目をそむけ、ヴェネイーラは初めて少し失禁をして
改めてマリアージュの恐ろしさと外道っぷりを目の当たりにする。
「ふぅ、美味かったぜ 久方ぶりだなこうやって喰うの ミーリアもこうして喰ったけな
なぁ、ネリスよぉ」
「その話は、よしてちょうだい」
とネリスティーナも顔を顰める
「おっとこりゃ失言だったなぁ んー...なんだぁションベン臭ぇぞ おいおい
お漏らしかよ だらしねぇなヴェネイーラぁ〜 こわかったでちゅかぁ〜? 」
と散々なじる
しかし、ヴェネイーラはその言葉にすらゾクゾクしていたのはいうまでもない。
こうやって、狂気と痴態の宴が王都の遥か下の新月の暗闇の中繰り広げていた。
「あと、マリアージュ 近いウチ ヴァン族重鎮の会合 ”赤い爪と金の瞳” が有るから
覚えておきなさいよ」
「げっ、あのジジババ共か クソッタッレ共オレに色目使いやがる輩もいるからな
おれは攻めるのが好きだけどな攻められるのは苦手だぜ
”マリアージュぅ〜 こわいわぁ 強引なオジサマ・オバサマ達相手に ”貞操” 守れるかしらぁ」
とにやにやしていた
「ところでよ、シーアとかいう娘いたぶるにあたってだ 今の進捗教えろや
今まで眠ってて状況が掴めてねぇからよ」
とやおら言葉をヴェネイーラに向ける。
マリアージュは鏡台の椅子に座り艶出しの口紅を塗りながらメイドに髪を梳かせ
それと鏡台の下の空間にもう一人メイドを侍らせて、ふんわりとスカートをすっぽりかぶせて
ごそごそとなにやらさせながらしゃべっている。
「今は......というわけなの マリアおねーさま」
とヴェネイーラは報告する。
「はぁ また莫迦が始まったぜ それ進捗って言わねぇよ てめぇ自身の莫迦さ加減の報告じゃねぇか
いい加減にオレをおちょくるのもい加減しろよ あぁん? 」
と艶っぽい少女声で凄みのある調子で言われると
ヴェネイーラは押し黙る。
「でその ”ロージィ” てのは何者だよ? このマリアちゃんに喰わせてくれるエサ? 」
「いえ、おねーさま ”ロージィ” は”千変の御使い”の事よ
今は 武闘集団フレジア を立ち上げて荒事の請負をやっているの」
と
「はじめから ”千変の御使い” って言えや ヤツはオレも見知りだからこれからは
このマリアージュ様が中心になってその娘追うぞいいな ヴェネ」
とヴェネイーラに言う
「兄貴もそれでいいよな 可愛い甥っ子のためだ、この可愛く妖美なオレがうごいてもいいよなぁ」
マリアージュはネリスティーナに同意を求める。
「いいわ ネリスはネリスでやることが有るの」
「ケッ まだ、実在が疑われている冥府の屍・霊魂・悪霊を統べる”王”なんてもの追いかけているのかよ
道楽兄貴め
”その代わりぃ〜 ベルゼに転送陣作ってぇ お兄様ぁ マリアージュねぇ
それがあるとね 嬉しいんだけどなぁ いいでしょ オ♡ネ♡ガ♡イ”」
と彼お得意の”おねだり”をする
転送陣などは儀式魔術で形式張った様式の通り儀式を運ばなければ、
何処へ飛ばされるか分からい代物で、
構築には面倒な手順や日取り等が必要で、ライブ・アーテファクトの様に移り気で気まぐれな
マリアージュにとっては苦手な術式の最たる物だった
クローティアが、本に血で陣を描いて発動したり指を鳴らして屋敷の結界を
簡単に張る事自体が規格外なのである。
「いいわ デメテルに陣を手配させるわ 場所は第四層島群 ”トノベル” よ
彼処に着いたら彼と接触して頂戴」
「げ、デメテルってあの豚犬面一家か 爺さん・親父・息子と例外なくだよな傑作だせ
よくあんなのに女が寄ってしかもガキまで作れるな オレの視界に入った途端血煙に成り果てるのにな
”あぁン マリアージュちゃん あの顔見るのもいやぁ〜”」
と妖美なしなを作る
「オレが合う人物ってそれの孫?それとも曾孫? 」
「そうね、つるのこの更につるのこよ」
「あぁメンドクセ あの豚犬面はそのままだろ? 」
初代よりは幾分は見れる顔よ安心なさいな マリアちゃんがあまりの彼の醜さに
思わず殺してしまわないくらいにはね」
「ふん、利用価値の有ものはたとえそこらの雑魚魔物の豚犬でさえ活かす マリアージュ様だぜ
怖気が走ろうともガマンしてやらぁ」
としかめっ面で言う
「ぜひそうして頂戴。 」
とネリスティーナ
「あのぅ、マリアージュお嬢様 おみ足の爪のお手入れと爪化粧・短剣2本と
靴下留め(ガーターバンド)の
準備が整いまして御座いますそれとオト...」
と先ほどから座ったマリアージュのスカートの中でごそごそやっていたメイドがくぐもった声をあげる。
「おっとそれ以上言ったら、皮剥がされて喰われるか寄生バエの幼虫の餌食になるかの選択を迫るぞ
言葉には気をつけろ ......でも先ず、これががねぇと落ち着かねぇからな」
と立ち上がりスカートをめくり右足の靴下留め(ガーターバンド)に挟まった短剣を弾く
「後靴下留め(ガーターバンド)はオレ好みのフリルやレースがたんまりあるのを
用意しとけよ でないと落ち着かないんでな」
「マリアージュお嬢様の御言葉のままに」
と メイドが下がる
メイドが下がったのをみてとって
「では言ってまいりますわ 御兄様」
とネリスティーナの頬に軽く接吻をする
「ええ、マリアの接吻なんて珍しいわ 気を付けていってらっしゃいな」
「ありがと ネリスティーナお・ね・えちゃ・ん♡ 」と
艶っぽく片目をつむり部屋を出ていって
ニ昼夜後、彼らもまたベルゼに旅立った。
シーアがベルゼ入りしてニ昼夜後、マリアージュは使い魔兼騎乗獣の赤い大蝙蝠
”キキュール”に 可愛い敷物をしいて 日傘をメイドに持たせ
お嬢様のように脚を丁寧に揃えて横座りしながら こう言い放った
「いいか、ヴェネイーラぁ よく聞けよベルゼでの滞在費や諸経費は全部テメェ持ちな
オレは、ある目的の為の大事なカネ使うわけにはいかねぇ
テメェの稼ぎがどんだけ有るがオレの知っちゃこたぁねぇからな 分かったかよ
なぁに ”無理” な注文はしねぇよ デメテルの野郎に貸しを作るのも嫌だしな」
と艶っぽい声に恫喝の色を乗せる。
「......はぃ、おねーさま......」
今までの彼の性格や所業を思い出していた
ヴェネイーラは肯定の言葉を発するしか選択肢はなかった。
浮遊大陸”ベルゼ” 飛行艇発着場 タグリ 早速、二人の
美少女(?) は降り立った冒険者達の視線の的に成っていた
特にマリアージュに注がれる視線には激しい劣情を含んだものもあった
それに気付かないはずもなく
「これだよ この視線だよ このオレが待っていたのはこの小汚い
野郎共の視線だよ
”あぁんマリアージュのぉ かわいい”淑女が オッキクなってきたわぁ”」
とうっとりと指を咥え目を細めた
屋敷内ではワザと違和感を目立たたせて、メイドが視線のやり場に困っているのを知ってて
難癖を付けて楽しんでいるというのに、流石に衆目の中である
彼はフリルやレースがたっぷりのペチコートを二枚
重ねて穿きスカートの違和感は目立たなかった。
そして彼らは貸し馬車の多数留めてある一角に向かう
「へぇ、いらっしゃいませ お綺麗なお嬢様方どんな馬車をご所望で? 」
一人の貸し馬車屋が下心見え見えの下卑た目で両手を擦る。
マリアージュはねっとりとした目を更に艶美に細め
普段の男口調は微塵も無く
「そうねぇ このマリアージュにふさわしいのがいいわぁ ウル族用の十人乗り用と
それとねぇ お馬さんは おっきな牡馬がいいわぁ たくましい殿方みたいで
とってもすてきだもの それを四頭よ 四頭。 んとねぇ〜後ねぇ
これ買い取りは出来ますかしら? しばらくベルゼに滞在しますのよ マリア達」
「へぇ、お代は高いですがそれも出来出来やすよ でお支払はどちらが? 」
と同じような背格好な二人を交互に見やった
どちらが年長の姉か判断が付かなかったのである。
するとマリアージュはヴェネイーラの首に腕を回し
視線は貸し馬車屋の方をチラリチラリと見て
「ねぇ〜 ねぇ〜 ヴェネイーラ”おねぇさまぁ” マリアージュねぇ あのおっきな馬車がいいなぁ
中で”お食事”もできるしぃ オルティア大陸のお姫様が乗るようなのいいなぁ
早くのりたい のりたい ねっ ねぇったらぁ〜マリアにあれ買ってよ 買って」
とあざとく大粒の涙を浮かべる。
< いいか、オレに恥ぃかかせるなよ ここで拒否でもしてみろ どうなるかは分かるよなぁ
血煙に成り果てるだけじゃ済まさんぜ >
とあざとくヴェネイーラの首の腕を回し直し
ヴァン族だけが発することの出来る特殊な音域の声で囁く
この音域の声は本来は蝙蝠等を自在に使役するための物でもあるが
通常のヒトには全く聞こえないため念話代わりになるのである。
しかし、傍の犬には聞こえたようで激しく怯え粗相をしてしまう
「この莫迦犬が!、 お嬢様方の前で粗相しよって このっ! 」
と貸し馬車屋が手をあげようとするも
マリアージュは
「まぁ、おやめになってくださいまし このワンちゃんマリア達のあまりの美しさに
”驚いただけ”ですわ ねぇ〜 かわいいワンちゃん? 」
と貸し馬車屋に気付かれぬ様に鋭い恫喝を込めて犬に視線を送る
途端に犬は
キュ〜ン
と尻尾を股に挟みおとなしくなり黙り込む
何も知らない貸し馬車屋は
「そうやって大人しくしてやがれ クソ犬がッ! 」
と犬にツバを吐きかけ
改めてニコニコして手を擦る
「お見苦しいトコお見せして すいやせんでした。
へへ 改めてどうです? 妹さんも涙ぁ浮かべて懇願してまさぁ
ここで姉としての器を見せてやってはどうでやしょう? 」
と事情を知らない貸し馬車屋も煽る。
ヴェネイーラは彼・マリアージュの演技と分かっていても逆らえるはずもはなく
「此処はヴェネが...」
と言ってメイドにカネ袋を持てこさせて現金で支払う
「うへぇ、現ナマですか 流石は姉でさぁ 器が大きいや ポンと大金だせるなんてね」
ささ 此処に著名をしてくだせぇまし
と出された羊皮紙には 所有者を記す欄がある。
「うふふ おやさしい”おねーさまぁ”」
と マリア・ヴェンベルジュ の名を記す この ヴェンベルジュという家名はマリアージュが
対外活動をする時に大商家を装うため好んで使う家名であり
はるか幾星霜も前 マリアージュが ”淑女の嗜み” を丸3昼夜そしてその後、
ヴェネイーラがそうしたように意識を手放さないように首を噛み従者にして寄生バエの
幼虫をたんまり潜り込ませて、更に3昼夜時間を懸けてゆっくりと肉を毟り取って
喰ったお気に入りの少女の名だった。
「まいどありっ、ニ昼夜程前に見かけた ”銀の娘” といいお嬢様方といいあっしは眼福もんですわ」
「えッ ”銀の娘” ですって!? 」
とマリアージュとヴェネイーラはニンマリ嗤う
「おっと、今のは聞かなかった事にしてくだせいましお嬢様方 他人事ペラペラ
喋ったと官吏に知れたら、ここで商売出来なくなりまさぁ 」
「うふふ、いいですわマリアージュもぉ その銀のおねーさまと追いかけっこしてるの」
「そうでやしたか 追いつけると 良うござんすね」
と今の会話でマリアージュはシーアがニ昼夜前にベルゼ入りしたこと
後の (追いつけると) との 会話で今、確実にベルゼ内にいる事実を掴んだ
早速馬車にメイドに予め儀式魔術で用意させた結界を張る
わざわざニ昼夜遅らせてこの日取りに
したのも馬車の屋根に強力な人払いと防音の結界を張る準備をする為でもあった
馬車に乗り込み優雅に座るなりマリアージュは
「がはっははぁ 愉快だぜこれで2つも有益なネタ掴んだぜ なぁ、ヴェネぇ〜
テメェだったら彼処でしどろもどろでメイドにヤツ当たりだったろ
”オンナ”としての年季が違うんだよ 年季がよぉ」
と軽くヴェネイーラの股間をスカートの上から掴む
「きゃうん やめておねーさまぁ」
「ほう なかなかかわいい声で啼くじゃねえか。 ちっとはオンナノコに近づいたのか?
好し だたクソ豚犬面の野郎まで行くのももったいねぇ
”食料” の調達の兼ねてこのマリアージュ様が課題を出してやらァ
第四層島群 ”トノベル” に着く迄 メスガキ5匹オレのトコに連れてこい
ウル族用の十人乗りだし広いしいくら騒いでも結界張ってあるからな
おい結界の抜かりはねえよな」
とメイドに確認する。
「はぃ、マリアージュ様が ”淑女のお嗜み” をなされてましてもお食事をなされても
お声は絶対漏れませぬ ごゆるりとお楽しみ下さいませ」
とメイドは深々と頭を下げる
「オレは到着するまで此処でのんびりさせてもらう 四匹の残骸の血ぐらいは舐めさせてやるからな
このマリアージュの慈悲だ 有り難く舐めとれよ
最後の一匹はヴェネイーラ テメェにくれてやるから好きにしていいぞ
いい思いしたかったら頑張って五匹連れてきな」
と下品に舌舐めずった。
ちなみにヴァン族にとって ”血を舐めさせる” というのは最大の侮蔑の言葉でもあり
”血を舐める” のは最大の屈辱でもあった。
当然、口答えは赦されず
「はぃ、おねーさま」 と半べそで答えた。
何もかも彼・マリアージュの手腕はヴェネイーラとは彼我の差が有りすぎたのである
マリアージュは早速パンプスとフリルのソックスを脱ぎ
小さな台に可愛い素足のせペチコートをふんわりとメイドにかぶせ両脚の手入れをさせながら
可愛い嬌声を漏らしてうっとりしていた。
ふと、ヴェネイーラはマリアージュの左耳に光るリッチーの大鎌のような鈍く銀色に光る
耳飾りが目に止まる。
そして最大の侮蔑の言葉を浴びせられた直後にも関わらずどうしても欲しくなり
出処を聞いてみた
どこぞの雑貨屋で買った物ならカネで事足りる話であるからだ。
「あの おねーさま? 」
「何だ? うっせーな」
としかめっ面をされたが物欲には勝てず話を切り出す
「その耳飾りは何処から、買ったの? ヴェネも欲しいの」
と聞くすると
「んだとぉ、こらぁ このオレが大事なゼニ出してまで物買う訳ねぇだろ
オレの身に着けている衣服や下着まで全部 メスガキ共から奪った物だぜ
衣服・下着・装飾品一つ一つにメスガキ共の啼き声が染み込んでラァ
それが価値が有るってモンよ
店で買ったモンはそれがねぇし ある目的のためだけの大事なカネだ
そんなモンに使うわけねぇだろ
オレは略奪嗜好でな、着るモンや身に付けるモンは泣け叫ぶメスガキ共から
奪ったモンでないと落ち着かないんでな よく覚えとけよ
これも、同じさ ある ”遺産の少女” と張り合ってな
その時の戦利品さどうだ ”遺産の少女” 共が身に付けている
装飾品だぜ こんなお宝ぜってぇ手放すもんかよ
分かったら 黙ってメスガキ連れて来る算段でもしてな」
と剣呑な空気を和らげるためか空気を読んだのか、
スカートに潜り込んでいたメイドがいっそう念入りに”手入れ”をする。
「あぁあん、貴女、脚のお手入れお上手ね マリアの専属にして ア・ゲ・ル♡ 」
とまた可愛い少女口調で嬌声をあげ 以来そのケット族のメイドは彼の脚のお手入れ専属になった。
このときヴェネイーラはやっとライブ・アーテファクトと言わずに ”遺産の少女” といえば
彼の怒りを買わずに済むことを学んだのである。
もう一つ、身内に対してでは有るが
マリアージュの機嫌がいい時は少女口調か、お嬢様言葉で機嫌が悪い時は
下品な男口調であるらしい事もヴェネイーラのとって大きな収穫であった。
刻はマリアージュ達がベルゼ入りするニ昼夜前、
キリンズで最後にギルドの掲示板を確認した限りでは仇討ち人や、デカラヴィアが引き起こした
事に対しての依頼は出ていない様である。
「いつまでも、こだわっていてもしょうがないわね クロ? 」
『あぁ、そうじゃなこういうことは割り切りも必要なんじゃ どうせお主なら
悪意でくれば それ相応の応酬は厭わないつもりじゃろ? 』
「そうね、あの娘達と契約する以上 これはわたしの”覚悟”よどんな因縁が付いて来ようともね」
『ほぅ、随分と冥界の住人らしくなりおって』
「ふふそれは、クロのおかげでもあるのよ」
『ではベルゼに向かうとするかのぅ』
「そうしましょ」
と三人の意見が一致し9の月に相応しい蒼天の下
流麗な姿に ”進化” したユラに乗ってベルゼ入りをした
「ふふ シーア君、君はどれだけ自分が凄く可愛くて”特殊”な存在か分かっていないようだね
でも、それでいいんだ ボクは総長として 一個人と...... おっと危なかったこれ以上は
ボクの心に秘めて置くとしようか」
とキリンズのギルドから覗く、少し頬を上気させたドリエルの姿があった。
タグリに着いたときにはもう既に夕刻で、ランベルに一泊の運びとなった
デカラヴィアもすっかり私室が整い部屋で生骨をしゃぶっているに違いないし
コトンは目玉を愛でてニヤニヤしているだろうし
レメテュアはお菓子を食べ嘗て迷宮に迷い込んだ犠牲者を眺めているだろう
それぞれの夜は更けていく。
わたしは久しぶりの吸血衝動を覚え、ミーアの部屋をノックする
ミーアがまた何か悩んでいることは先のトルティアでの会話で
察していたが
あえてそれには触れないようにしながら、おねだりする
「ねぇ、ミーアおねぇ様おやつ頂戴ぃ 久しぶりなの」
「うん、優しくして♡ 」
沐浴直後ということも相まって苺の様な甘い匂いが鼻腔をくすぐる
ミーアは、髪を寄せ首元を晒した
そして、優しく接吻をするように牙を穿つ
「あぁぁん シーちゃんッ ガッつかないの お行儀悪いわ」
「ふふ、ミーアおねぇ様それウソね シーちゃんはね みんな分かっちゃうんだから♡ 」
自身の名を自分称につかい 幼子のように囁く
ちゅるりちゅるり
つつー、と少し口元から溢れるも構わず血を嚥下する
「んふぅ、美味し♡ 悩みごとあったらクローティアに相談してもいいのよ
クローティアも心配してたわ」
「シーちゃ......」
「それ以上言っちゃダメ いまはわたしのお食事中よ お行儀が悪いわ
お行儀が悪いお口はこうよ」
とデカラヴィアにしたように腕を彼女の首に回しまだ血で赤く染まった唇でミーアの唇を奪った。
...んん んゅんゅ ちゅぷちゅぷ...
わたしの牙とミーアの犬歯がかちりとぶつかり
夜空がますます濃い闇色に色を落としていく中、ホムンクルスの妹のちょっと艶美な夕餉は続く
此処は再び、タフタル大陸統制庁の最重要貴賓室
早馬でタルタル大陸の難所 刻の迷い森 や 禁呪の言の葉の地 を
くぐり抜けドリエルは 嘗ての冒険者一行”竜の瞳”治癒役 ルルスと
”個人的”な会談の場を設けていた。
「あら、エルちゃんじゃない 前もって面談の予約も無しに よく私を捕まえたわね
流石だわ」
「ふふっ、ボクが何の用向きで来たのなんか、お見通しのくせに」
「あなたが一人の冒険者に肩入れしている事も女神・リーンは
とうにお知りになられてるわ」
「いやいや、流石だね どうやってボクの行動を知り得たのかは置いておくとして
早急に君に処断を下して貰いたい事項があってね キリンズのギルド長と ”銀の風”
の 自血の契約書の件だよ」
と懐から契約書を封蝋のまま渡す ルルスは自らの人差し指で封蝋をドリエルの前で
触り開封の呪文を短く唱える
すると封蝋はとろりと溶けて霧状に霧散した
そしてそのあと文面に目を通しつつ
二者の生命の貨幣にて締結するものなり
の魔術語が透かし模様の如く浮かぶ羊皮紙を 有翼馬の脂の火に翳した
すると淡く魔術語が光り 色が濃くなり浮かび上がる
「確かに、”本物”ね この件については早急に合否の”合”の判定を通知するわ
エルちゃんも どうせ私と同じでしょ? 」
としたり顔のルルス さすがは他人の機微を汲み取るに長けた治癒役である
「勿論さ、ボクも異存は無しだ 尤も、契約時からすでに結果は決めていたけどね」
「エルちゃんも、リーちゃんみたいに気が早くなったのかな? 」
とまるで子供に話かけるように言う
「はは、これに関してはボクも気が早くなるというものだよ 分かるだろ? 」
「でね、符丁はもう決めたの? 」
符丁は一回決めたら二度と変更できない これもまた重要な事案であった。
「いろいろ迷ったけどね やはり ”竜の瞳” に因縁のあるあの魔物の名を取って
”ベルゼキュートの眼” とうのはどうかな?
ボクの嘗ての専属受付としての独断だがね」
「うふふ、全く ”ベルゼキュート” の名を符丁にするなんてエルちゃんらしいわ
嘗て”竜の瞳”がたった一度だけ討ち損なった古代の生き残り
それをよりによって ”銀の風” の専属受付の符丁にするなんて
もしかしてエルちゃん ”銀の風” に私達に変わって討ち取って貰いから
あえてこの魔物の名を? 」
とニヤリと目を細めドリエルの次の句を待つ
「はは、まいったなぁ 女神・リーンの前ではボクも赤子同然に心を剥かれて
しまうよ まぁ解釈はまかせるよ ルルス、この符丁も異存は無いかい? 」
「えぇ、いいでしょう この
統制庁現最高統括責任者 聖主 ルルスの名に於いて
符丁 ”ベルゼキュートの眼” を許可いたします」
と自身の血で今の契約書の一番下に著名するそして
既に四枚入っている封櫃の匣に今の五枚目を入れて全てが完了した。
あす朝一番には大錬金術師シアズ製の魔器によって全五大陸の全てのギルド
に通知されるだろう。
※※
その朝リアがギルド入りして制服に着替えているとトルティアのギルド長に
喚び出しを受ける 日頃”特定の冒険者”とばかり駄弁っているのを見咎められて
大目玉を喰らう覚悟で 文字通り怯える子猫の様にギルド長執務室で入ると
それには一切触れず
「君が 推薦人 シーア・オブライエン一行からの強い希望もあって
”専属受付人” に本日、この朝より任命する 勿論、通常の依頼受付も出来るがね
これが 君と彼女ら専用の 符丁だ 君のギルドカードに記録しておいたよ
受け取り給え」
と見ると職業欄のところに ギルド職員と シーア・オブライエン一行の
専属受付と符丁 ”ベルゼキュートの眼” が併記されていた
「はっはは このトルティアのギルド開設依頼の快挙だよキミィ これからも職務に励んでくれ給えよ
この前の ”至宝級” の武具の大量買取といい どうやってこの冒険者捕まえたのか
私事に触れることだ 規定がなかったらボクも是非、経緯を聞きたいくらいだ
後、給金は規定により10の月からギルドカードに反映させて置くから確認していておいてよ」
とエル族のまだ”童顔”が残る背の高い男性ギルド長からカードを受け取った
その日の通常受付の業務を滞り無く済ませたが彼女の心は王都キリンズの
百貨店に向いていた。
※※
「さてボクはせっかく難所をくぐり抜けて聖都まで来たんだ 観光してからオルティアへ戻るよ」
踵を返そうとする。
「ちょっと待ってよ んんっ」
とリブスにしたようにルルスはドリエルの唇を軽く奪った
「オイオイ いいのかい ここは女神の御神楽じゃなかったのかい? 」
と彼も軽く奪い返す
「ふふわたしは聖主である前に 女神様と同じ一人の恋多き女よ同性にはやさしいはずよ
お怒りになんかなさるものですか」
「まったく 恋多き女ねぇ 男のボクには理解し難いね」
唇を奪ったままくぐもった声で肩を竦めた。
「貴男も ”銀の風” にでも恋してご覧なさいな 理解が深まるとは思わない? 」
ドリエルは秘めた心を見透かされた様にビクリとする
「ふふ、今の反応は気になるけど内心の自由は有るわ たんまり観光してたんまり
おカネ使っていって頂戴な」 と
首に腕を回し彼のエル族特有のトンガリ耳をカリリ と軽く噛んだ
「とんだ やんちゃ猫もいたもんだ」と
誰かと同じ様な反応をして
ドリエルはルルスの出立の聖句を背中に受け貴賓室を後にした
「ま〜た 大きなお魚 逃がしちゃったわぁ」
と背の高い恋多き乙女は呟いた。
シーア達に ”符丁” の連絡が入ったのはランベルで一泊後の翌朝
第三層島群 ”ラストレ” 魔女の集い亭にてであった
「おはようございます。 ドニスさん しばらく空けていてごめんなさい」
「おや、シーアじゃない 相変わらず律儀な娘だよ
中には 鍵持ち出してふいっと知らぬ間に離れに戻って代金だけ
テーブルの上に放り投げてそのままって連中もいるのに」
「はぁ 」
と間抜けな返事を返す
「シーアに待ち人さんから今夜夜半にもう一度離れに再訪するって言ってきたよ
凄い美人のお姉さんさね 綺麗な娘には訪れるヒトも美人が来るのかねぇ ははっは」
とまるでウル族のようなヒム族である。
離れの空気を入れ替えレヴィアに来てもらい掃除を済ませ
これからの予定を巡らせた。
先ず、先き立って魔女・メトリエーテ宅に向かいデカラヴィアの紹介と離れていたシセラと
合流し今までの情報を共有する必要があった。
何の前触れもなくビヨンの横に現れたラヴィアは
「今代の魔女ってもう喧嘩はしてないの? 」 と小首を傾げて聞いてきた
これには珍しくクローティアが
『そうじゃお主が寝ている間に等に魔女・魔道士の戦は終わっておる
まだ、戦気取りの跳ねっ返りや邪法に身を堕した者などはいるがな』
「わざわざ、君主様自らのご講釈......」
といいかけたデカラヴィアの言葉を遮り
『よすんじゃ シーアも言っとったろ 堅苦しい言い回しは無しじゃ 今の儂は
クロ であり クローティアじゃよ』
「はい、クローティア様」
と言い直した。
わたしは、ライブ・アーテファクト達が床に頭を垂れ睥睨するほどの
クローティアこと ネクロンの出自が気になっていた
しかし、本人(?) は問うなとも言っているし敵対どころか数々の支援や指南
をしてくれる大事な存在でもある
いつかは語ってくれることを信じ今は疑念を頭の隅に追いやった
この時、シーアにもライブ・アーテファクトの様に強い独占欲が芽生えはじめていたのは
シーア自身ですら気が付かなかった
本能的に、クローティアやライブ・アーテファクト達が自分の元から遠く離れていくのを
恐れていたのである。
そんなわたしの思いとは関係なく会話は続く
「そうでしたか、ラヴィアはまだ喧嘩しているものとばかり これからお会いする方も
魔女様なんでしょ クローティア様」
『そうじゃ、ここベルゼには統治者など言う為政者はおらぬ 名の有る魔道士・魔女・賢者等と
呼び称される者共が政を担う自由大陸じゃよ 会合はあるようじゃがのぅ 』
これはデカラヴィアにだけではなく、わたしやミーア・ビヨンにも言葉が向けられていた事には
流石に気付いていた。
「へぇ、そうなんだヒトって変われるものなのね ラヴィアはヒトって何時までも
愚かな事を繰り返す生き物って感じだったわ」
『今でも、愚かしい事をしでかす輩はいるのも事実じゃが
愚かしさを認識し変わることが出来るのもまた事実じゃよ』
このクローティアの言葉は、今後のわたしの行動原理に大きな影響をもたらし
大きな源流となる切っ掛けを作った。
『とうじゃシーアよ 儂もたまにはイイコト言うじゃろ』
と髪にぎっちり掴まったままいつもの調子に戻っていた。
「そうかしら? 」
『小奴め いうように成りおって』
などと駄弁っていると見知った魔女・メトリエーテ宅が見えてきた
「へぇ凄い術式が張ってある、 ちょっとは魔女って奴見直しちゃおうかな〜 」
等とラヴィアは感心したような、上から物を見下すようなそんな物言いをした。
「あら、シーアじゃないお帰り それにその娘”ライブ・アーテファクト”の娘ね」
と開口一番デカラヴィアを娘をみる様な目で見つめたのは
魔女・メトリエーテ そのヒトであった。
デカラヴィアはしっかりわたしの腕を組み
「へぇ、ラヴィアはねぇ 魔女って言うからぁ もっと おバァちゃん......むぐぐ...」
わたしは、慌てて二の句を告げないように 彼女の口を塞さいだ
「ごっゴンナサイ メトリエーテさんこの娘、貴女にとんでもない事をッ!!」
「あら、いいのよぉぅ 魔女っておバァちゃんって 印象があるものねぇ
尤も彼女の言うことも分かるしね その娘が新しいライブ・アーテファクト(こ)? 」
「えぇ、一時トルティアに用向きで行ったら 偶然この娘と巡り会えて ......と今までの
経緯を話す。 」
「ねぇ、シーア ヒトの世には ”偶然” なんてものは無いのよ
何かが起こる 誰かと新しい縁が結ばれる 良い事、悪いこと これらは
”必然”よ 今の貴女に相応しい 相応しい縁と因縁が用意されているのよ
ふふっ、どう捉えて貰ってもいいけど、ちょっと大げさな物言いかしらね」
「いぇ、ここのところあまり”必然”が重なって ちょっと戸惑っていて......」
と語尾が消え入った。
尚も彼女は、言葉を続ける
「貴女が受け入れるか拒むか私には分からないけど清濁含めて”楽しんだほう”が
完全に定命も理から外れた貴女にとっても ”面白そう” じゃない?
だから わたしとしても その娘にどんな言われ方したって気にしないわよ
もっとお姉さん感覚で甘えてもいいのよ
迷って灯火を見失いそうになったらいつでも照らしてあげるわ」
「つい、最近同じような事わたしの大切な”存在”に言われたばかりです
とクローティアの
”邪念に囚われ、堕ちそうになったら儂が引き上げてやるのでな。”
の言葉が蘇る。
「どなたなのかしらネ」 と魔女の視線はクローティアの方を指していた
「あッそうそうシセラをお返しするわ シセラ、お話楽しかったわ
シーアがヤキモチ焼かない内に シーアの元へ」
「いいの? 魔女・メトリエーテ 貴女まだ話足らなそうだけど」
とふわりと漆黒の乙女こと シセラがわたしの周りを漂う
「いいの、あの娘ねぇ私の見立てだど以外と独占欲強そうよ 後は傍に
いてやりなさいな」
とボソボソと”ハッキリ”聞こえる様にメトリエーテはシセラに耳打ちしていた
漂う、シセラを見つけたデカラヴィアは早速
「わぁ〜 ステキな漆黒のおねーさま ラヴィアはデカラヴィアよ」
と丁寧にスカートを摘み挨拶hしていた
「ふふ、宜しくねラヴィア 貴女の事は シーアのパス通じて知ってるわ
あまり我儘言っちゃ駄目よ」
「ふふ おねーさまこそ”殿方”のアレあまりその鎌で弄っちゃ駄目よ」
「言うわね、娘のこ」
とシセラが言いながらもデカラヴィアは髪の茨を自分の腕に絡ませ握手を交わしていた
「いいわぁその茨 ねぇそれでどれだけの”生骨”抜いて来たの
あたくしにも見せて頂戴な」
「今は、駄目 シーアねーさまに叱られるもん」
と可愛く拗ねてみせる。
「ふふ、冗談よ 後、お屋敷に戻るの? 」
「そうするわレヴィアが作った氷菓子まだ残って居るし、氷晶石が保たないわ
それじゃねぇ」
とクロの中に飛び込み掻き消えた。
そしてわたしはメトリエーテとシセラとで今までの事の詳細の経緯を改めて伝え
情報を共有した。
すると、
<<シーア様、今はお暇でやすか? >>
とヤンスから念話が割り込んで来た
<<えぇ、いいわ 大賢者 ランドルフ様の件? それとも ”待ち人”の件? >>
わたしには、どちらも重要である。
暇が無いとしてもヤンスから”直接”話を聞く必要があった。
<<大賢者 ランドルフ様の件でやんす シーア様は魔女様のお宅で?
あっしの黒い金糸雀が頻りにそちらの方に誘導しやがるんで>>
<<そうよ、今メトリエーテさん宅よかったら来てくれるかしら? >>
<<承知しやした 暫しお待ちを >>
と言って念話が切れる
「あのぅ、メトリエーテ様いまここにわたしが懇意にしている情報屋さんが来る手筈ですが
この場をお借りしても宜しいでしょうか? 」
と聞くと
「えぇ、その ”情報屋さん”って興味か有るわぁ 同席していいかしら? 」
とメトリエーテが艶っぽい目つきで聞いてくる
わたしは軽く首肯で返事をする。
すると、 ドアのノックの音が響きヤンスが現れる
相かわらず彼は、フード付きローブですっぽり覆っていて
「ヤンス、フードを外していいわ この方が魔女・メトリエーテさんよ」
と紹介する。
「うへぇ、えれぇべっぴんさんでやんす あっしの好みにぴったしの姐さんでさぁ」
と久しぶりにヤンスの素の言葉が飛び出した。
「ヤンス 言葉には気を付けてよ この方はベルゼでも有名な方なの」
とややきつめの調子で窘める
「失礼致しやした あっしは、シーア様に拾われて依頼専属の ”情報屋” を
やっておりやす 以後お見知りおきを メトリエーテ様」
「ふふ、貴男半人半魔ね シーアにいじめられたから無理やり”情報屋”を ? 」
と仔細有りげな顔でニヤニヤする
「とっとんでもねぇ シーア様には良くしていいただいまさぁ
あっしがひどい目にあわされのははシーア様に拾われる前の事で... 」
「そう、それなら良かった 半人半魔って 今でも根強い”差別”があるから
貴男も術で縛られているものとばかり ふふ」
「いや、それは断じてねぇ あっしからシーア様達に絶対の忠誠を誓って居りやすし
そんな事はねぇすよ 姐さん」
「ふふ、からかいが有るわね」
どうやら知っててワザと出した言葉らしい。
「からかわねぇでくれやし」
と挨拶は済み
「さて シーア様例の件でやすが 大賢者 ランドルフ様でやすがどうも
シーア様がキリンズのギルドで滞在した最後の日の昼頃急に 黒い金糸雀が
騒ぎ始めやして急いで 探らせたって訳でして... そうしたら トノベルで市井の連中が
ざわついて居るのを黒い金糸雀が知ったって経緯でさあ」
「そう、場所は”トノベル”でいいのね 後はどうやって接触するかかしらね」
何しろ 魔道士・魔女の中でもさらに高位らしい賢者の称号を与えられている
人物である。
わたしは、思案にふけっていた
マリアージュとヴェネイーラを乗せた馬車は”ゆっくり”進んでいく
今日のマリアージュは機嫌が良いらしく
鼻歌交じりで 使い魔の一つの大きなふるもの(アンティーク)人形”ベリア”の髪を人形用の櫛で
髪を梳いていて ふと人形の顔に視線を動かすと
その可愛い黒い唇からは彼ら同様にハッキリと分かる牙が覗いていた。
「あの、マリアおねーさま なぜ早く馬車を進めないの」
とワザとゆっくりと進ませている馬車に疑問を抱いてたヴェネイーラは彼の機嫌が良いらしい
今、聞いてみた
「それはねぇ〜 マリアぁ 目醒めたばかりでベルゼの今の様子が分かんないの
遊覧ついでに、お外の市井の可愛いメスガキの好みや服の流行りを観察してるの
後ねぇ ”莫迦なテメェには理解出来ねえだろうがよ” 殿方を待たせて焦らすのも
淑女としての嗜みよ ”よく覚えとけ” 」
と一部男口調ではあったが
人形の髪を櫛で梳いている彼は機嫌が良かった
尚もマリアージュは言い放つ
「ふふ、ヴェネぇ〜 この娘( ベリア )ねぇ〜 前はオトコノコでしかも
マリアの幼なじみの子よ」
「えッ!? オトコノコ? 幼なじみ? 」
ヴェネイーラは驚きを隠せない マリアージュが抱いている人形はオトコノコらしさは欠片もない
上、幼なじみというのだから。
「ふふ むかしね 可愛いワンピースドレスお父様から買ってきて貰って嬉しくて着て遊んでいたら
”このガキ このオレをこともあろうに異性装者だなんて莫迦にしがってよ
”オンナノコ”のオレに異性装者だなんて とんでもねぇ事抜かしやがってよ
それで おねーさまに頼んで莫迦にしたテメェ自身をその ”オンナノコ” にして更にオレの
使い魔にしてやったのさ ふふどうよ だからヴェネちゃん てめぇも言うこと聞かないと
此処にもう一体 ”お人形” が並ぶことに成るぜ 覚えときな」
と当たり前のように独白した。
叔父がここまで少女願望が強くて外道な人物なのを更に見せつけられて
この叔父には絶対に逆らうまいと自分の心に誓うのだった。
わたしは、ヤンスと改めて3人のライブ・アーテファクトと顔合わせをする
みなレヴィアの初顔合わせとの時と同様な反応だったが
無事済ませて
次の出立地 ”トノベル” へ向かう事を告げて 魔女の集い亭に戻り
宿を発つ旨を話す。
「ドニスさん、せっかくのお料理 ご馳走になる機会が無くて ごめんなさい」
と挨拶すると
「ははは 気にしなさんな 今度機会があったら今度こそ
アタシの手料理食べっていっておくれよ」
と豪快に笑う。
「あのこれ ”ラジカ” さんに キリンズのお土産です
と差し出したのは 可愛い栗鼠のオートマトである
屋台売りとはいえ 製作者は不明だが大気中のマギを得て動いているらしく
精巧な作りであった。
「これ、高っただろ いいのかい? 」
といって受取を拒否していたがどうしても受け取って貰いたいと言って渡す。
もし ”待ち人さん” が尋ねて来たら ”トノベル” にいますと伝言を頼む
まだ昼をちょと過ぎたばかりで日は高かった。
この栗鼠のオートマト実は世間では、魔導装置の修理技師として活動している
ブレイルの習作品であった事はシーアも知らなった
ユラは目立つので、タグリで借り受けた小型の馬車を御者と馬の世話をビヨンに任せ
一路 ベルゼでも一番島が大きく多くのヒトが集う 第四層島群 ”トノベル” へ向かう
気怠い午後の空気が一行を撫で付ける些か遅めではあったが
見慣れない服を来た黒髪の女性を目にする
まるで湯上がりの湯着の様に、前を合せて幅広い腰紐で腰をゆわえている
服の柄は群青のわたしの拘束術の双魚のようだがちょっとずんぐりしていて
尾ひれが流麗に流れている見たこともない魚が泳いでいた。
その女性が、箒で掃き清めている表通りの上の看板を見ると
女性専用宿 ”蒼の金魚亭” と読めたが ”金魚”なる見慣れない単語に首をかしげる
「あら〜、貴女達この世界の冒険者さんね どお ちょっとは 看板目に引いたかしら
よかったら滞在していかない ギルドも斜向かいだしお宿代も専用宿としては ”破格”
かもよ
まずお昼食べてったら? 9の月に相応しいご馳走あるわよ 」
と何やら 甘い香りがする黄色の食べ物が皿に盛られていた
よく見ると蜜が掛けられているらしくテラテラ光って黒い小さな粒が付いていた
甘い蜂蜜とは異なる匂いにきゅるりとお腹が鳴る。
「えぇ、えっっと...... 」
「あ、ごめんなさいね 私、サオリよ貴女達には”渡り人”って言った方がとおりがいいかしらね」
よく見るとソーヤやアカネと同じように黒髪を丁寧に結い後頭部にまとめていて
ほっそりとした面立ちで瞳は茶色で唇は艷やかな赤であった。
「 えぇ、サオリさん お世話になっていいですか 丁度ギルドに言って
女性専用宿を探そうとしていたんですよ 助かりました」
「お宿は女性専用だけど下では ”イザカヤ” を主人とやっているのよ
”イザカヤ” っていうのはこの世界酒場ね 其処は老若男女問わずだけとそれでいいなら」
とどうやら酒場併設で酒場は 男性も訪れる事が出来るようである
「えぇ、わたしたち お宿の方だけ女性専用なら構いませんよ」
というと
「良かったわぁ、ささどうぞ 3名様ね アナタぁ〜 宿帳お願い」
と奥に声を投げる
「おぅ、お客さんかい うぉっとすげぇ可愛い娘じゃねぇか こりゃ眼福モンだぜ」
とぬぃっと顔を出したのは灰色の髪に金の鋭い目つきのウル族であった。
「まぁ、アナタったらまた怖い顔してお客さん逃げちゃうわよ
少しは営業微笑みしてくださいな」
「こりゃ、済まねぇオレの顔はいつもこんなんでな オレの名は ”コーエン”っていうんだ
でコイツはオレのヨメさんの サオリだ 宜しくな えーっと...」
「わたしは シーア・此方がミーア・ビヨンです」
「ほう、ケット族のねーちゃんにオートマトの嬢ちゃんか珍しい取り合わせだな
おっと誤解しねぇでなオレは オートマト排斥者じゃねぇ 安心して泊まっていきな
オレは”イザカヤ”の仕込みがあるんでな 後は サオリ オメェに任せた
早くその ”ダイガクイモ” 食わせてやってくんな せっかく作りだってぇのに
冷めちまわぁ」
「あらほんと 先ずは 其処に腰掛けてね」
と長椅子に座る そしてまだ口元に近づけると 何やら味わった事のあるイモの匂いがする
「これねこの世界にも似たようなお芋があって良かったわ 向こう(異世界)では
”サツマイモ” なんて呼び方してるけど 美味しければ名なんてどうでもいいわね
この黒いのは行商人から買った種を植えたらたまたま向こうでもある食材だったわ
さぁ、召し上がれ」
とはふりと口に含む ソレはホクホクと普段のイモとはまた違った種類だったが
甘くしっとりとしてテラテラ光っている蜜も合わさって大変美味で
すぐお腹が満たされた。
その オートマトさん えっとビヨンちゃんだっけ ほんとにそのお水とオーパーツの
粒だけでいいのかしら? 」
[ はい サオリ様 これだけでいいですよ お構いなく ]
とやり取りする
ミーアは
「んむんむ なにこれぇおいしー サオリさん後で作り方教えてくれますか? 」
と聞いていたが
「ふふ だめよ ヒミツよ ゴメンネ」
「残念ねぇ」
と言った和やかな歓談の空気が支配する
「ところで シーアさん達って滞在予定は? 」
と聞かれ
「そうですね、刻限無しの旅ですので 事が動く......済みません 予定が出来るまでいて良いですか?」
と危なく本来の目的を口走りそうになり 言い直す
「勿論よ、大歓迎だわソレじゃ ギルドカードをお借りしますわ」
といつもの流れである
それと部屋も2部屋確保して早速斜向かいのギルドへ出向く
”ベルゼキュートの眼” に依頼が来ているとも思わなかったが更新も兼ねて
確認する
すると一件 ”ベルゼキュートの眼” に依頼が来ているではないか
わたしは色めき立って依頼内容を確認した。
依頼内容 邂逅刻限有り 昼刻から夕刻まで 刻限外は昼夜を改められたし
トノベル南西端 魔樹の杜 ネグリール にてある人物との対談
符丁は 依頼符丁と同様
とある
「シーちゃん今なら間に合うかしら?」
「そうね、ちょっと聞いてみるね。 」
「あのぅ、」
「何でしょう? シーア様 」
とエル族の執事のような丁寧に髪を撫で付けた男性が対応する
「この依頼の 魔樹の杜 ネグリール までどれくらいですか? トノベルは
騎乗獣に乗っても良いですか? 」
「っふふ、そうですねぇ 騎乗獣の能力にもよりますが 魔樹の杜 ネグリール 迄でしたら
夕刻前までは余裕を持って行けますよ
私めからは、今の情報までしか申し上げることは出来ませぬ
後はシーア様が今の情報をどう読み取りどう行動なさるかは貴女次第でございます
この依頼は刻限以外に逢えなくても未達成にはなりませぬ
お日取りを改めれば済む事でございます故。 」
と返答する
専属依頼は、最低限の情報しか切っ掛けを与えられず行動判断も含めて
全て通常の依頼とは異なる様である。
今の受付の情報から推察するに、少なくとも トノベル内は騎乗獣での飛行は許可
されていて ユラ の能力なら余裕で目的地に着けそうではある
ベルゼ入りした時、魔霧帯を突っ切って来たが、あの時はあっと言う間だった
今夜は ”待ち人” の件もあるので
是非今の内に用事を済ませたかった
そして、トノベルの街外れまで徒歩で進み南西を望む
すると島が細く南西に突き出ている地形がある そこはガイガ大森林地帯の様な
杜が広がっていて 螺旋の通路がそのまま建物の外壁になっているような
尖塔群が見えてきた あの当たりだろうと目星を付け
ユラを尖塔群の郊外と思わしき場所へ降り立たせた
{きゅぅ〜ん、 きゅぅ〜ん}
と覇気が無い声
「お腹が空いたのかしら? 」
とつぶやくと
『いや、違うわい この頃出番が無くてな 拗ねて居るのかもな』
「えっ、前にこの子達ってヤキモチ妬かないって言ってたじゃない? 」
『そうじゃがのぅ ヤキモチと出番が少なくて 拗ねているのは違うじゃろ』
「そうかな? 」
『まぁ、腹いっぱい肉でも喰わせておくが良かろ』
「もう、クローティアってイジワルぅ 最初からお腹が空いてるらしいといえばいいのぃ〜」
とコトンやラヴィアが目玉や骨が欲しくて憤っているように言ってみせた。
『ますます、あ奴らに似てきたのう よきかなよきかな』
「全く、何が よきかなよ ごめんネ、後でお肉あげるからね」
と先のギルドに戻ったら 普通の依頼も探さなくちゃと考えていた。
ユラも機嫌をなおしたらしく
リボンに戻る。
杜は普通の樹々とは違い目玉や裂け口等が有る物が多く
かといって植物系魔物のように積極的に動くわけでもなかった
ぐじゅり、ぐじゅり と湿った分厚い落ち葉の上をショートブーツの靴底を半分以上も
潜らせながら尖塔群をめざした
ミーアの耳も絶えずクルリクルリと辺りを警戒するように動き、ビヨンも淡く目を光らせている
やがて上空からみた開けた場所に出ると様相は一変して
地面には石が敷き詰められていて所々、雑草が顔を覗かせている。
次に目に付いたのは行き交う人々の多くが色とりどりのフード付きローブを纏っていて
それぞれわたし目にみても名の有りそうな大杖や短杖などを携え盛んに路上で小集団を作り
何やら議論を交わしていた。
人々の様子からここネグリールが、ベルゼの政の中心地で有ることを示していた
「だから、いったであろう魔樹共に許可無しで実を取ろうとすれば
痛い目に遭うってのは自明の理じゃろが」
「そうはいうがのぅ、つい腹が減っての もいでしもうたんじゃ」
「まぁ気を付けなされ」
とか
「まぁ、その短杖 魔樹のトリニー・トレント製じゃない いいわぁ わたしも
ソレに新調しようかしらねぇ」
「貴女には、まだ早いわよん アタクシの様に立派な双丘に育ってから
新調なさいな ふふ」
「双丘の大きさとどう関係するのよぅ 」
「魔女はね 双丘にマギを蓄えるのよ」
「ウソ付かないで」
「貴女、一瞬でも本気にしたでしょ ふふ それと彼処に
珍しい”お客さん”がいるわね 冒険者のようだけどここ ネグリール に何の用事かしらね? 」
「さぁ、あまり勘ぐっちゃ駄目でしょうよ きっと魔女の修練の娘達よ 剣士や戦士等の
前衛でもよく マギの修練で来るじゃない いざっていうとき術で牽制も必要だからってね」
「それもそうね それにしても可愛い娘ね 特にあの銀の娘 おねぇさんの好みだわぁ」
「うわ、また病気がでたよ 娘喰いの ”ノア” さん」
「やめてよ その言い方 でも貴女の方に来るわよ あの娘達 たんまり味わってね
”ノア” さん 私、 まだ修練中だから行くわ じゃねぇ」
と何やら二人の女性が話していて一人が離れて行く
私も 賢者 ランドルフの居場所が分からいでもたもたしていると
夕刻になり日が地平に沈んでしまい明日の昼刻まで時間が無駄になる
えい、ままよ 女は度胸とばかりに
残された一人に声を掛けた。
「あのぅ、お尋ねしたいことが有るんですけど 良いですか? 」
「えぇ、いいわ 私も貴女達のことはさっきから見ていて気になっていたのよ
御用は何かしら えっと私は 娘喰の...って 違ったわ ”ノア” よ
貴女は? 」
と聞かれ名を名乗り此処に来た経緯を話す。
「ふふこれは”必然”かしらそれとも”偶然”かしら わたし ランドルフの秘書みたいな事
してるのよ それに貴女が言っていた メトリエーテとは ”同期” よ その様子だと
ウニちゃんと相変わらずのようね」
と ノア を改めて見ると ウイスタリアの長いストレートロングの髪
フロスティホワイトの瞳 でピンクベージュの艶っぽい唇
魔女が好んで被る先が折れた漆黒のトンガリ帽子でそのトンガリ帽子には骸骨のようなくぼんだ
眼窩と横に大きな裂け口があり赤い点の様な眼が光っていた。
双丘はメトリエーテに負けるとも劣らないくらい豊かで肩を出した意匠のヘリオトーロープ色の
ローブの胸元を大きく膨らませていて、腕の長手袋も同じ色で誂えている
『ケッケッ 姐さん これは渡りに船って奴で無いんですかい ランドルフの旦那も
銀の風に逢いたいと申して居りやしたでしょ』
といきなり トンガリ帽子がしゃがれた男性の声で言葉を発した
「うわ いきなりしゃべんないでよ ネルちゃん シーアちゃん吃驚してるじゃない」
『済まねぇな シーア あっしは ネウスネル という者でさぁ 姐さんからは ネルちゃんなんて
呼ばれてますがね これでも使い魔 兼 武器でさぁ
短杖は単なる虚仮威しですが まぁ姐さんが振るえば単なる
虚仮威しの武器ですらいっぱしの働きするんですがね』
と帽子の ネウスネル は自己紹介(?) をした
「でも、丁度良かったわ 私もあの修練の娘と駄弁って居なかったら 逢えなかったかもよ」
何やら仔細有りげだが彼女の表情からは何も読み取れなかった
「あの ノアさんの御用は? 」
彼女の用事を邪魔したのでは、と思い尋ねると
「いえ、私は無いわぶらぶら ”歩いて” いただけよ 気にしないで
そうねぇ ”丁度”良かったわ
ランドルフの所へ案内するわ ついてらっしゃいな」
と尖塔群の中でも一際大きな塔に吸い込まれていく
外の螺旋通路は使わず、普通の入り口から入る
「あの、外の螺旋通路って何ですか? 」
とちらほらと人影はあるものの皆、出入りは普通の入り口らしき所からだった。
「あぁ、あれ大昔に神界へ行こうとした古代人が拵えたらしいわ ふふ、神界何て
御伽噺もいいとこ 誰も信じちゃいないわ
闇の世界や冥界は ねぇ魔物やらいるから まぁ存在するでしょうけど
冥界にいたっては なんかわたしの近くに凄い濃厚な気配がするしぃ
ふふシーア 貴女じゃ無いわよねぇ まさかねぇ」
「ノアさんて イジワルですね」
と皮肉った調子を帯びた応えする。
「あらら、わたし何も言っていないし断定もしてないわよ
まぁ詳しい話は ランドルフの執務室でね それよりさっきの話だけど
あの螺旋通路今でも灯りを灯したり儀式魔術に重宝してるわ
古代人って凄いわぁ 魔術的にも最適なのよね 上は見晴らしは抜群だけど
勝手に螺旋通路登っちゃ駄目よ 此処の偉い人に大目玉よ」
と説明忠告を受ける。
『ノアの姐さんもよく修練サボって殿方と......って痛いですって あっしの目ン玉突かねぇで
下さいまし』
よく見るとノアが伸びをするふりをして ネウスネル の目に相当する部分を突いていた
「ネルちゃんが余計な事いうから 偶々(たまたま)指が入ったんじゃないのぅ」
とトボけた返事を返すノア。
『へいへぇ 帽子の身としちゃ大事なノアの姐さんのオツム守っているつもりですが
偶々(たまたま)目ン玉に指を入られると、守るモンも守れねぇですよ』
「ふふ、ごめんねぇ 今度は、偶々(たまたま)指が入らいようにしてよ」
『へぇへぇ』
そんなやり取りをしながら塔の内部へ足を進める。
内部はヒンヤリ冷たい空気が漂い
儀式用だろう 独特のお香の匂いが此処の雰囲気を
隠秘学の聖地に相応しい彩りを添えていた。
「”符丁” は大丈夫? 」
大きな扉の前でノアは突然話を切り出す
「はい、問題ないです」
「ふふそれならいいわ よく ”符丁” 間違えてね あの二体のガーゴイル像に喰われる
ヤツがいるのよ ”食い残し” を片付けるの大変なの」
と二体の ガーゴイル像 が衛兵の様に守る大きな扉の前にノア
わたし、ミーア、ビヨンの四人が歩みよった。
<<ふふ、シーア 気付いてる? あのガーゴイル像 ”生きているわ”
符丁を間違えると 石化が解けて ノアの説明通り、惨事が起こるわ>>
と今までどこへいたのか ふわり と漆黒の乙女 シセラが三人の後ろに従く
「何やら”気配”がするけど これで揃ったのかしら」
とまるでシセラが ”視えている” ような素振りを見せて”符丁”を促した。
扉の前に 浮遊遺跡 ギメル で見たような 四角に区切られた文字を刻印
した祭壇の様な遺物があり
文字は 全て今代の魔術文字である
わたしは、錬金術を レフィキアから教わるにあたって一通りの魔術文字は知っていたが
魔術文字も術派によりいくらか異なり解釈に苦しむ文字が散見された
<<此処の、主はこの期に及んでまだ試そうってのかしら 上等じゃない
受けて立つわよ>>
ニヤリと笑みを浮かべるシセラ
<<シーア、符丁は? >>
<< ベルゼキュートの眼 よ>>
<<へぇ ベルゼキュート ねぇ ......この件は後でね>>
なにやら ベルゼキュート という単語に身に覚えがあるようだしかし今は
此処を突破するのが先である
<<身構えることは無いわ これ単なる入力用の魔器いや遺跡の遺物(?) って
此処って 塔全体が特級遺跡じゃない ヒトってやっぱ酔狂な事が好きねぇ ふふ>>
<<さぁ、まずは間違わないように
いまは実体がないから出来ないから貴女が入力してよ シーア>>
と促され、
四角い 文字を刻印した出っ張りに指を触れる
すると触れた文字が
淡く青白く光る。 光はそのまま明るさを保ち次の文字の入力
を促しているようだった 重複する文字は今度は赤く光る
わたしは解釈に苦しむ箇所をシセラに支援してもらい
一連の 符丁 の入力を終えて、最期に右下の手の輪郭を象った線に右手を置く
するとガーゴイル像は石像のまま扉が奥に開き一行を受け入れた。
<<あれね、右下の手の輪郭を象った線は罠で アレに最初に手を置いててしまうと
入力し終えたとみなされて発動する仕組みよ>>
<<うわ それはやく言ってよ >>
<<貴女なら ガーゴイルが襲って来ても面倒な”小競り合い”が一回増えるだけだもの
彼らを討ち負かせば石像に戻り最初からだけなんだから たいした事じゃ無いから
黙ってたの>>
<<もぅ、イジワルぅ>>
<<まぁ、無事開いたんだし行きましょ>>
<<えぇ>>
と 更に奥へ進む
今まで茶色だった壁が蒼黒く変わる
「シーア ここからは 魔抗石 製よギルドの密談室より遥かに
高度な天然の結界よ 此処でどんな強力な遺産や呪物を出しても外部には魔力が漏れないから
安心していいわ もうすぐよさぁ行きましょ」
とノアを先頭にまた歩くやや有って今度は正面に見えてきた普通の扉をノックする。
「ノアです シーア様をお連れしました。 」
とノア
「”罠”は無いよ 入り給え、君の来訪を楽しみにしていたよ リブスに続いて 儂が二人目かな
おっと 、儂はランドルフ 世間からは ”大賢者” 等と持て囃されているが
賢者なんて勝手に呼ばれているだけの妖術師さ」
と相手を見ると 背が高く瞳は鈍い金色、肌は半人半魔なのか
淡い灰色で耳もやや尖っている。髪は白く綺麗に全てを後ろに撫で付け
肩での所で綺麗に切り揃えている
髭は顎から胸の辺りまででこれまた丁寧に手入れが行き届き
豪気印象を与えたリブスとは対極的な繊細さと鋭い突剣のような痩躯からは隠しきれない
気配を纏い、
歴戦の強者だけが持つことを赦された、非日常的な心酔させる力
がリブスと同様にわたしと、他二名を包んだ。
「わっわたしは......」
と言葉に注意しながらも型通りの挨拶を済ませる。
「ふぉフォフォ、噂に聞く貴女が ”銀の風” か 美しいのぉ 眼福眼福
改めて、儂が 一応世間からは”大賢者 ランドルフ”呼ばれておる者だ
以後、懇意にな。 しかし、半人半魔の儂を見てもあまり驚かんのぅ」
「はぃ、わたしの一行にも半人半魔の種族の大事な
仲間が居ります これでも驚いていますわ 半人半魔の方々は世間の
風当たりが強いと身内の者から聞いておりわたしの一行入までは
待遇もよくなかったと聞いております。
ランドルフ様のお立場になられるまでの苦労を考えるとそれが
一番の驚きですわ」
と言葉を慎重に選ぶ。
なにせ、世間では半人半魔は完全に魔物扱いでしかも数が少なく
差別対象でヤンスの様な身の上が多いと聞く
「フォフォ、 そうじゃったか 貴殿の一行にのぅ
まぁそれはさておき、 入り口で律儀に”罠”なんぞ解除しなくとも
彼処で 言の葉を申せばよかったのにのぅ ははは、おかげで貴殿の
実力が少し測れたとうものよ」
とあっさり腰を抜かす事を言い放った。
「先ず、こうして来てくれた貴殿の頼みを先から聞くのが礼儀というもの
先ずは申してみなされ 事の判断はそれからじゃの」
「はい恐れながら...... ァタウェー 攻略の鍵を求めるも居場所さえ掴めず
難儀をしていた所に トルティアのギルドである冒険者から ァタウェー の噂を聞き
ランドルフ様の お名を聞きこうして 此処に」
とかいつまんで話す。
「ふぉ そうじゃったか 彼奴はのぅ ”封印の揺らぎ” が発生しないと
垣間見ることすら出来ん場所に居るでのその噂は本物じゃわ 騙されんで良かったの」
「よかったでは ”封印の揺らぎ” が起こるまで待てばよいのでしょうか? 」
少しわたしに不安がよぎる
何時開くかも知れない ”封印の揺らぎ” を待ち、もし入れたとしても確実に離脱出来なければ
とても成功したとは言えない 自然と眉根が寄るのが分かった。
「まぁ儂の話を聞きなされ 貴殿らの求める場所は 封印地域 ”ギアトレス” と
呼ばれておる 嘗て魔道士・魔女とヒトが争っていた時世
有る邪法に身を窶し自ら魔物に成り果てた者が
最期の足掻きか身の保身か知らぬが第七層島群 ギアトレス ごと居城にして
最期の砦として自ら 封印しおった場所よ それが今代のこの時期何故か
”封印の揺らぎ”が活発に成りおってな
時々穴が空いて 数は多くは無いが絶滅した筈の古代の魔物が出入りしよる
尤も”小さい”ヤツだがの それでも 闇社会にとっては”利用価値”が有るからのぅ
困ったものよ
一度完全に封印を解き後は我々の完全な管理下に置きたいと考えておったところでな
ギルドからも観光地にしたいとか冒険者にも解放したいと要望が高くての
儂らにも渡りに船なのじゃ」
わたしがわたしになったばかりの頃、ブレイル宅近くで ”巨大長蟲”
騒動があったが空間の揺らぎで ひょこり現れて 邪教集団に利用れたのかもしれないが
今となっては知るすべもなかった。
「では、何か術があるのでしょうか? 」
「そこは、 このランドルフに抜かりは無いでの 封印の扉 扉と言っても
島全体は濃い魔霧に包まれていて 有る一部が裂けて居て其処だけ
魔霧が薄くての 儂らは其処を”扉”と称しておるのじゃよ
ほかは魔霧がしっかり結界を張っていて図体のデカイ奴は古代の生き残りいえど
出てこれぬ そこでじゃお主の出番よ」
とわたしは固唾を飲んで次の言葉を待つ。
「 封印の扉 を開ける解放四行詩があるのじゃよ それを取って来てもらいたのじゃ
場所は トルティア大陸北西部の 霊峰 ”アガテ”連峰じゃ 其処に出向き
大氷狼を説得し 蒼の宝珠 を持ち
氷結遺跡 ザキル の何処かにある碑文から
解放四行詩を読み解いて来るのじゃ 出来るかの?
報酬はそうじゃの メトリエーテ女史の依頼が完了したら
封印封印地域 ”ギアトレス”の自由な探索許可を特別に出そうかの
しかも転送陣の自由な使用のおまけ付きじゃ これは恒久的な物で ”冥界の住人”なら
心置きなく定命の理を気ににすることも無く探索出来るとも思うがのぅ」
ランドルフはニヤリとする。
「 それに、ギアトレスが儂らの管理下に入れば自由な探索許可もギルド経由でしか
出来んようになるし
たんまりカネも取るつもりじゃしの 転送陣はお主も此処へ入って来るとき
見たじゃろ あの螺旋通路の天辺に有る 儀式場から直接行ける様にするつもりじゃ
儀式場は封印の維持管理施設も兼ねる予定じゃし陣は”重鎮”しか使えん様に
厳しい制限を加えるしの どうじゃ引き受けてもらえんか? 」
破格の条件が提示され驚いたが、この状況は楽しまねば面白くないではないか
「はい、ランドルフ様このシーア・オブライエン一行
ランドルフ様のお言葉のままに 必ずやこの場に 蒼き宝珠 をお見せしてご覧にいれます
封印地域の攻略に辺り、大規模討伐隊依頼を出す許可も頂きたく存じます。 」
「そうかそうか、引き受けてくれるか 大規模討伐隊依頼の許可は勿論、良いぞ
その者達にも後の自由探索の代金は少し安くしてやるわい
規模、人選はお主達”若き冒険者”に任せよう 心当たりが有るのじゃろ? 」
「はい出来ることなれば」
「善きかな善きかな ではこれは特別追加以来じゃ ギルド総長”ドリエル”には儂から
話を通しておこう
霊峰 ”アガテ”連峰の麓の村落までの陣ならノアに手配させよう後で
”地下”に案内してもらうが良い ノア 頼みおくぞ」
「はっ、我が君のお言葉のままに」
と真剣な顔のノア
「それでは、 ランドルフ様」
と踵を返し執務室を辞そうと時、
ランドルフが恐る恐る呼び止める
「あの、これは個人的な ”お願い” じゃがの その......風の便りにきいたがの
その何だ 儂に”遺産の少女”を会わせてはもらえんかノアから説明有ったと思うが
此処は 魔抗石に囲まれておるしどんな魔力も漏らさぬし 嘗ての”竜の瞳”以外の
面子以外には漏らさぬ どうか頼むッ!! 」
と平伏しようとする
わたしは、”遺産の少女”という単語に引っかかりクロに念話で聞く
<<遺産の少女って”ライブ・アーテファクト”の事? >>
<<そうじゃろな 今代ではそう呼んどるんじゃが昔は遺産の少女と言っておったぞ>>
<<なんで、クロが”ライブ・アーテファクト”って呼称知ってるの? >>
<<ソレは儂が魔導書に成った時期に関係しておっての そのつまりじゃな>>
<<今は言いたくたくないって事? >>
<<すまんのぅ>>
<<そういうことならいいわ>>
と念話を終え
「待って下さい 頭を上げてください”竜の瞳”ってなんでしょうか
わたしってあまり詳しくなくて」
「すまんの取り乱してつい若い昔の興奮が蘇っての
”竜の瞳”と言うのは
一行の名でな
前衛の剣士 リブス
盾役 ケモール
治癒師 ルルス
斥候役 レルリア
後衛の妖術師 この儂 ランドルフ じゃよ
リブスやケモール・ルルスの名はお前さんでも知っておろう」
それを聞いて再度腰が抜けそうになる
リブスは勿論大海賊ケモール・聖主ルルスまでもが名を並べ
末席に大賢者の名を
欲しいままにしている人物が眼の前に立っている
それぞれの人物の今の立場から
如何に 一行名 ”竜の瞳” が重い意味を持つかは
かすかに振るえた脚が物語っていた。
「ごめんなさいわたし 学者畑の”兄”のせいで ”竜の瞳” を存じておりませんでした」
と頭を下げる
「ははっは気にしなさんな 名は名じゃよ 皆が勝手に祭り上げた名じゃよ」
とへりくだっていたが
わたしは視界が霞むくらい火照っていた。
「今すぐ、あの娘達をお呼びします 気まぐれで性格の癖が強く
ランドルフ様に粗相をしましたらわたくしシーアめを罰して下さいまし」
と ペコリと頭を下げ
<<さぁ、貴女達 出てらっしゃい ランドルフ様にご挨拶なさいな>>
<< 「「「はぁ〜ぃ おねーさま今行くわ」」」 >>
とコトン・レメテュア・デカラヴィアの三人のライブ・アーテファクトが現れる。
コトンはいきなり 「わぉ、金色のおめめだぁ〜」
デカラヴィアは 「すごっ あの生骨マギの塊じゃない いいなぁ〜」
と髪の茨をするする伸ばす あわててわたしは伸びた茨を掴み引き寄せた
「ぁあん おねーさまのイジワルぅ むぅ〜」 とささとわたしの後ろに隠れた
最期にレメテュアは
「おねーさま寂しかったぁ ねぇねぇ抱っこ抱っこ」
と頭をグリグリ 押し付けてきた
「きッ君たちホントにシーア君の......」
とランドルフは呆けながらも声を出す
「「「そーよ 私達はライブ・アーテファクトでシーアおねーさまの”妹”よ」」」
とそれぞれスカートを摘み挨拶をする。
「貴男、半人半魔のランドルフね へぇあの日和見な貴男が 今や魔道士や魔女の
指導的な立場になるとはねぇ オドロキ」
とデカラヴィアは くるくる ランドルフの周りを茨を ワサワサ させながら回る
デカラヴィアはこの中では一番の古株なのか活動期間や範囲が広いのか
他の二人よりは色々博識だった。
「それは、昔の事じゃないか 今は日和見な自分は捨てた これからは
大賢者の名に恥じぬ振る舞いをせねば後進がついてこんでな
はやく直弟子のノアにまとめ役をとも思うて居るんじゃが
彼女はまだ ”若いでな” 隠居には早い 儂もしばらくは現役よ デカラヴィア殿」
「 デカラヴィア殿という呼び方はよして わたしはラヴィアよ ラヴィアでいいわ」
「これはすまなんだ ラヴィア君 でいいのかな? 」
「それでいいわ ねぇランドルフ様 それよりお菓子頂戴
あのしっとりしてて中に少し苦いヤツが入ったヤツ おねーさまがキリンズという所で貰ってきたんだけど
レメテュアのおバカにほとんど食べられちゃたの」
「ランドルフ様 ごめんなさい この娘ったら お行儀の悪い事を言って」
「ふぉふぉ、何も気にせんでええよ 帰りに遠足籠ごと
もたせよう この籠は魔樹の蔓で編んだ特別製だから後でいろいろ役に立つはずだ。
遺産の少女に逢わせてくれたお礼代わりだ ノア君 帰りに持たせてやってくれないか
此処でも指折りの職人が拵えた遠足籠を頼んだよ」
「はっ、御意に」
と言って蟲らしきものを飛ばしその蟲は何処かへ飛んでいった。
レメテュアは相変わらず頭をグリグリやっていたが
突然ノアの方を見て
「あーっ 人面疽 ネウスネルがいるぅ 此処の遺跡産かしら?
絶滅したと思ったのに まだ生き残りがいたんだぁ
帽子になって可愛いヤツぅ」
と指をビシリと指す
「あら、流石は遺産の少女...ね。 おねーさんのコレ看破されたの初めてよ」
と被っている帽子 ネウスネルを指す
「ふふレメちゃんの言う通り ネルちゃんって 人面疽なの
そうねぇ此処がまだ未開封の遺跡だった頃 おねーさん達ね
此処を攻略したの そうして 有る大型の魔物を討伐したらネルちゃん
ソイツにくっついていたのね
お顔がコロリと落ちて コイツもついでに ”討伐” しようとしたの
気味が悪かったからねぇ
そうしたら ネルちゃんたら ......」
『ここからはあっしがお話しやすんで』
とネウスネルが言葉を引き継ぐ。
『其処の遺産の嬢ちゃんのご指摘通りあっしは人面疽でやす 人面疽ってのは自ら動く事が
出来ないモンでして ノアの姐さんに”討伐”されそうになった時
ある取引を持ちかけたんでさぁ
あっしを取り付かせてくれたなら 完全に定命の理から外れた人外のお仲間に
成ることが出来る事と 姐さんに多大な能力と叡知を与える事ができると
その代わり姐さんにひっついて一緒においてくだせいましってね
そうしたら姐さん 目立たない所に ひっつくならいいわと言ってくれやして
取引が成立 今に至るって訳で...姐さんアレ見せてやって下せいまし』
「そうね、ネルちゃん最初は私の双丘の谷間に取り付こうとしたの
取引が成立したと言っても 初心な乙女としては其処は流石に遠慮してもらったわ
そこで長い髪に隠れる後頭部ならいいわということで
後頭部にひっついて貰ったの」
またネウスネルが引き継ぎ
『姐さんのお綺麗な御髪ばかり目に入ってきたんじゃ
何のために居場所を確保したかわかんねぇでやしょ そこで一計を案じ
遺跡の至宝級のお宝のこの帽子に 魂だけを移すことにしたんでさぁ
この帽子を姐さんが被っているときだけ ”本体” は”眠り 帽子を取ると
本体が目覚めるって訳でこれからそれをお見せしやす
姐さん帽子を取って下せいまし』
「いいわ、私の後頭部よく見ててね」
とノアが大きな帽子を脱帽すると
忽ち普通の帽子に戻り目や口の相当部分は単なる穴やかぎ裂きに変わる
そしてノアの後頭部の髪が綺麗に分かれ 人面疽ネウスネルの顔が目を開け
帽子時と同様髑髏の様な眼窩と裂け口が現れた
『これが本来のあっしでさぁ 食いもんもほれこの通りで』
と彼女の長い髪がまるで腕のようになり 口に食べ物を運ぶ身振り(ジェスチャー)をする
「ふふおどろいた たまにネルちゃんお菓子の屑を髪につけるの
だからほとんど帽子でいてもらうけども
たまに本体に風を当ててやらないとかわいそうだものね」
『流石、姐さんお優しいことで
ただ、沐浴時も姐さんの御髪のお手入れの
お手伝いしているというのにときどきお湯を掛けられて目にサボンが入っていつも
えらい目に合わされるのだけは勘弁してほしいもんですわ』
「そのかわりわたしの背中を洗う特権があるじゃない」
『それはそうですがね』
と再び帽子をかぶり穴やかぎ裂きが目や口に変化した。
「若い娘達が気味悪がるからこれ内緒よ、お願いね」
「ヒミツは心の中に」
と胸に手を添える。
「これから、お主達どうするんじゃ そろそろ夕刻でな 儂は例の儀式魔術の監督をせねばならん
アガテ連峰の陣は何時でもいいが どうするかね? 」
とランドルフは問うてきた
「じつは ”待ち人” が 蒼の金魚亭 に尋ねて来るかもですので 一旦街に戻ります
転送陣は明日か明後日使わせて貰っていいですか? 」
「おお、構わんよ 儂がいない時はノアを訪ねるが良いぞ 最期に遺産の少女を撫でても良いかの
孫のようでな」
「「「 頭撫でていいわ、 ......んーっいい気持ち お菓子忘れないでよ」」」
「フォフォ、抜かりはないわい そろそろ儀式魔術の時間じゃ 」
〜 魔女のささやき・魔道士の息吹きが 銀の風達を導きますよう 〜
と言葉を背に塔を出る
ライブ・アーテファクト達は遠足籠いっぱいに菓子をもらい
屋敷に掻き消える
空の魔樹製の遠足籠は以後ミーアが所持・管理をすることになった
「ごめんねミーアおねえさま 勝手に話進めちゃって」
と始終頷くだけだったのミーアに声をかける
「いいの、あまり凄いものや事が起きて戸惑っていただけ
でもこれからはこれが当たり前に成るんでしょう? 」
「そうね、わたしとしては”普通”に過ごしたいけどそうもいかなさそうな予感がするわ
おねーさま・ビヨン覚悟しておいてよ」
「ふふ、今を楽しめでしょ」
[ シーア、ビヨンはいつでも貴女のお傍にいます この身全て捧げると誓ったのですから ]
と二人の心強い返事に、わたしは ほっ と小さなでも自分にとって、大きなため息が無意識に出た
正直、二人に否定の言葉をもらうのが怖かったから。
かくてシーア一行はアガテ連峰を目指し 一旦 ”蒼の金魚亭” にもどる
そこであらたな 武器 蛇腹剣を使いこなす試練がまた待ち構えていた
時は夕刻、蒼天が宵闇に染まり地平に溶け込む頃合いであった。
次回 60話 封印地域 ”ギアトレス”
お楽しみに
ノアについての設定を活動報告に掲載しました
言い回しの修正は有るかも知れませんが
ストーリーに変更は有りません
2017_10_06 活動報告に
今後、作中に登場するかも知れない魔物の設定です その2 を追加しました




