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オルティア・レコード  作者: 南 泉
二章 〜 魔女と小さな銀の鍵 〜 ベルゼ浮遊大陸編 第一部
57/75

57話 噂に関する出来事

 翌朝、コトンとレメテュアには用件が済んでからキリンズへ向かう事を

昨夜の内に伝えておいたのでわたしは目的の人物が現れるのをギルドで待っていた。


 程なくドヤドヤと聞き覚えのある足音が耳に入ってきた


「ふぅ〜これでようやく俺らも”浮遊大陸 ベルゼ”の渡航許可が出たぜ

シーア達どうしてるかな〜」

と赤毛のウル族の大男がドカリと隅の椅子に座り

大声をあげる。


「そういえば、彼処が彼女らのお気に入りの場所だっけかな」

とすい〜と視線の気配を感じる。

「うおぅ、っとシーアじゃねぇか? 噂をすればなんとやらか 何処ほっつきまわってたんだい? 」

と多少無遠慮な物言いはニースそのヒトであった。


「また、アンタってヒトはもぅ そんなこと言えるわけないだろ 馬鹿だねぇ

元気そうじゃないさ? 」

「えぇ、お陰様で ナリアさん そちらこそ お元気そうで」

「勿論さね。 まだまだ魔物のエサに成り果てるには早いってもんさ」

と相変わらずの姉御口調のナリア、そしてアレから少しは顔つきが精悍になった

ソーヤと相変わらずの面子が其処にいた。

(やはり、オトコノコね経験が顔に出てるわ あれは相当な経験したよね)

と彼の顔つきの変化で戦闘技術が相当向上した事を伺わせた。


 特に、ソーヤは体中いたる所に張り薬を貼って痛そうに時々顔をしかめていて

そんなソーヤの背をバンバン叩きニースは、

「俺らはあと一回の実績で行けたんだがな

コイツだけはな事情があってな足並みが揃わなかったんだけど

今回の3昼夜の依頼でようやく浮遊大陸に足をかけることができたんだ

コイツを置いては”浮遊大陸 ベルゼ”は渡れねぇしな 拠点も今度あちらに移そうかとも

思っていてよ 資金稼ぎも兼ねてな よかったら少し話いいだろ? 」

「えぇ、ニースさん わたしもニースさん達に渡したいモノが会って ”浮遊大陸 ベルゼ”から

一旦此処に戻って来たんですよ。 」

と言うと


「ヒュー、こりゃたまげたシーア達はもう渡っていたのかい するとあの”噂”は本当かもな」

「あの”噂”? 」

と怪訝そうに鸚鵡返しに尋ねると

「おめぇさん達が”トリシ大地下墳墓”でアイツ(ディーボ)を討伐したという

冒険者共の間での噂さ、

なんでも銀の髪の少女の一行パーティーが”アイツ(ディーボ)を討伐たと言うな」

「ふふっ、それはどうでしょうか?  ニース様のご想像にお任せしますわ」

「こりゃまいったね、随分と見ねぇ間にそっちも成長してるとはな 

と口をパクパクやる身振り(ジェスチャー)をする

(わたしの会話術も成長したのかしらってことかしら? )


「まぁ何が有ったってぇのは

俺ら冒険者の”ルール”だからな 興味はあるが話は聞かないでおいてやらぁ

......て俺らに渡したいものって何だい? 」

そこでわたしは、浮遊遺跡での出来事を”かいつまんで”話す


「ほぅそいつはたまげたぜ 先ずはメシが先だな俺らは依頼からあがったばかりでよ

ガッツリ食うけどシーア達はどうする? 」

と朝に食べない理由もなく

「一緒の相席でいいですよお代は別勘定でどうですか? 」

「いいとも俺らに依存は無いぜ なぁ、お前ら」

と言うと頷く一同。


 特にソーヤは顔を真っ赤にして相変わらず分かり易かった

それからわたしは歓談と食事を兼ねて、今の状況をそれとなく聞いてみた

特に”ディーボ”絡みは気になるところではあった。


 しかし、トリンデから更に南の”ルベリト大岩礁帯”で大型の魔物が暴れているが

 正体が、はっきりしていないことや其処を仕切る大海賊 ”ケモール” が各地のギルドに

依頼を出さない限りは ”ルベリト大岩礁帯” には入れないとの事等、や

”キリンズ”で無宿人が数名謎の殺され方をしたらしい事などが

主な話題だった 向こう(キリンズ )の

ギルドでは魔物の仕業であろうと結論が出たらしい...が...

ニースは、

「キリンズの件はな、ありゃどうみても”魔物や獣”の仕業じゃねぇ知性のある人外の仕業じゃないか

と俺は思っている」

「ニースさんは現場を見たの? 」


「あぁ、いや見た訳じゃねぇ素材を持ち込んで一服してたらよ 医術師が着るような恰好なりをした

連中が言ってたのよ ガイシャは綺麗に骨が抜かれてたとよ それとソイツらが

いうには目撃したヤツもいてな なんでも男女の睦言のような会話が聞こえてきて

スケベ根性丸出しで、覗こうとしたその無宿人がやられたってな 

後には綺麗な見たこともないような

恰好なりをした少女が泣きじゃくっていたってな 可哀想におっかねぇモン見せられて

ふらふらと北の方に歩いていったらしいが ちゃんと親元へけぇったのかな? 」


 とわたしは後者の”綺麗な見たこともないような恰好なりをした少女” が気になった。

コトンとレメテュアがいうには東つまり”キリンズ”にライブ・アーテファクトの強い気配を感じたという

そして、今のニースの話である どうにも繋がるような気がしてならなかった

わたしはケインズに言われたとおり、髪には気を付けて反応しないようにしたつもりっだたが


 さすがは、大雑把な印象イメージがある彼でも盾役タンクである

僅かな興味をそそられた気配に気付かれた。


「シーア今のキリンズの話、興味有りそうだな おっとカネはいらんぜ今のは

単なるダベリだからな

俺の知り合いには興味を引きそうな噂話をして絡んできてカネとったりするヤツもいるからな

いいやつなんだがな悪い癖持ちさ 

いつも話のネタを連れの商人から仕入れているという噂もあるくらいだ」

と聞いてわたしは、真っ先に”ケインズ”を思い浮かべていた。


食事も進んで一服の後、ギルドの個人取引用の密談用倉庫をわたし持ちで借り

一同を其処へ案内する。


「これから見せるモノは、口外無用でお願いしますね。 」

「おぅ、勿論だとも なぁ皆。 」

一同が頷くのを確認し、

ギメルでの成果を改めて全てミーアが取り出す


「すっ、すげぇ何だーこりゃぁ 今までの冒険者生活でも見たことねぇ

いってぇなにやらかしたんだい? 」

とニース ナリアも

「こりゃたまげたね まぁ、貰っていいってんなら アタシはこれね」

といち早く拳に嵌める籠手のような武器に手を付ける

「なら俺はコレな」

と大ぶりの盾と大剣を取るニース

「すげぇ、軽ぇな素材はオーパーツ製か? 、真銀ミスリルか? ともかくこれは頂くぜ」

と早速躰にあてがい馴染みを確かめる

「何ていったって一行パーティーの命預かるブツだ......うんいい具合だな」

「おっ俺もいいの? シーア」

「えぇ、ソーヤもどうぞ 貴男は剣士? 」

「そうさ、やはり ”勇者” の華だもんな コレって」

と使い回しの良さそうな剣と盾を手にと取る


「僕はこれかな、丁度今のを下取りして新調しようかと思っていてね。 」

と妖術使いのオルトさんも、長杖を一本手に取り

「コレも、僕のマギによく馴染むね」

と満足げに頷いていた。


「私の弓もいいの? 」

「勿論ですよ リーリャさん ヒュージワームの時は斥候役ご苦労様でした。 」

「ううん、いいのよお礼なんて、お互い助け合うのが冒険者ってヤツよ

まぁ特殊技能集団の連中と違って、私らって得意な得物で大物の魔物や難物の依頼を

こなすしか出来ないもの だからこそ得物には一番こだわるのよ この弓はオーパーツ製で

とてもいいわ ちょっと調整は必要だけどね。 」


「わっ私も、おねぇちゃんのお下がりの錫杖じゃ”ベルゼ”に行けないですぅ

でもでも、お下がりの錫杖は下取りには出さないで私の宝物にしようっと

シーアさん これほんとにいいの? 」

「えぇ、お姉さんに羨ましがられるかもよ? 」

「ふふっ、そうですね おねぇちゃんたら最近、上司の殿方に懸想していてお役目が

おろそかになって......あの錫杖狙っていて......ごっごめんなさいつい余計なことを

もうすぐ訪れる ”日蝕儀礼” に錫杖もらおうかなと思っていたのに

へへっ 自慢しちゃおうかな♡ 」

と各人それぞれの得物で軽く素振りをして馴染みを確かめていた。


「後の”ブツ”はどうするんだい? 」とニース

「後は、このトルティアのリアさんにお任せしますわ オーパーツのガラクタはビヨンのために

全て此方で引き取る算段ですよ」

「すげぇ、抜け目ねぇな此処もこの残りのブツの引取りでギルドの位階も上がって

買い取り価格やより難物の依頼が舞い込み、評判も上がるってか いいね」

俺らは早速、調整やら少々鍛え直しがあるんでな 」と

新しい玩具オモチャを与えられた子供みたいに気もそぞろなようだ。


「アンタっていつもそうだよ といいつつアタシもワクワクしててねェ 早く試しをしたいさね」

と一同気持ちは同じなようだ。


「帰りにリアを呼んで来るから、このまま待ってるといいぜ それじゃな ベルゼでまた会おうぜ」

「えぇ、 皆様に女神・リーンの息吹があらんことを」

「へへ、シーアの加護貰ってやる気も十分ってもんだ あんがとよ」

と一同が立ち去る とビヨンの横にふいっとコトンとレメテュアが現れた

「「ねぇねぇ、御用とお話終わった? 」」

と二人共キリンズの方角を指差す。

「まって、後少しリアってヒトに御用があるの ごめんね」

「「ちぇっ、つまんな〜ぃしーねーさま早く終わらせてね それと此処にあるアレは必ず

引き取ってね お・ね・が・い」」

と彼女らが指差すソレはシーアがうずくまった位の大きさのオーパーツの塊だった。


 巨大な何かの卵を思わせるソレは

ドクリ・ドクリ

とかすかに脈を打っていた。


「あれは? 」

「「ふふ、ナイショだけど私達と同類よいま言えるのはそれだけ あっヒトの気配がする

もぅレフィキアに戻るわ お菓子食べている最中なの それに

折角のレヴィアの氷菓子も溶けちゃうしね その

ヒト見るとまた”おめめ”が欲しくなりそうだからね この後は

必ずあっち(キリンズ)に向かってよ しーねーさまぁ」」

とわたしの周りをくるくるまわり、クロへ飛び込んで吸い込まれていった。


 程なく、リアが現れて 目の前のブツを目にするやその場にひたり込んでしまっていた

ミーアが助け起こして改めて

「これは、おもった以上ねぇ、よし全部買いとるわ オーパーツのガラクタとその大きい塊以外なら

いいよ ちなみにその大きな塊ってなに?

「さぁ、わたしも正体不明だけど、コレはわたしが必要なので此方で引き取らせて貰っていいですか? 」

とわたしは大きな塊を指差す。

 

「えぇ、いいわ こんなの見たことも無いけど、シーアも物好きねぇ

皆が欲しがるのって武器や防具ばかりなの オーパーツって正体不明な

物ばかりで専門家や好事家でないと買い手は付かないわね」


「この代金はミーアでいいの? 」

とリアが尋ねてきたので

「この代金はミーアお姉様にお願いします」

と言うと

「随分と、おねーさん思いね それと前から気になっていたんたけど

ミーアの髪や耳の色変わったよね 何? お洒落に目覚めたのあんた? 」

とミーアを凝視していた。


 ミーアは

「そっ コレはお洒落なの シーちゃんに負けていられないと思って私も

お洒落して染め粉で色を変えてみたのッ! 」

と何が気に障ったのか語調が荒い。


「なんか気に障った? 何も、ムキになることじゃ? 」

「ごっゴメンリア、 ちょと他に考え事してて」

「ふ〜ん、まぁいいわ 何か有ったら相談しなさいよね お互い孤児院育ちの幼なじみじゃないの」

「うん、ごめんね」

「何か変なの」

この時、ミーアは自分だけが定命のことわりから外れてリアに対して

わたしが嘗てミーアに同じ思いを感じて悩んでいたとは知るよしもなかった。


「ひとまず、ブツはこのままでいいわ 後で鑑定師の査定が済み次第、カード更新の際

額が確定されていると思うわ

それにしても、あなた達っていいわね おカネ持ってて あぁ私もいいお相手いないかしらね」

と年頃の娘らしい愚痴をミーアにこぼしていた。


「あとの予定はどうするの? シーア、 ニース一行パーティーの用は済んだんでしょ」

「えぇ、これからはキリンズに行って ”ある噂” を確かめに行ってそれからビヨンの製作者に

逢いに行く予定なの」 と


 わたしが答えると、

「キリンズでちょっとした騒ぎが起きた事は知ってる? 何でも変死体が発見されたという」

と流石はギルドの職員である 耳聡ざとかった

「さっき、ニースさん一行パーティーから噂としてなら」

「そう、気をつけてね キリンズの受付からも伝書が届いたの これ以上騒ぎになると

ギルドが動くかもってね。 」

(これは早急に、ライブ・アーテファクトの存在が公になる前に接触しないといけないわね)

とわたしは内心気が少しいた。


 その頃、ライブ・アーテファクトの少女はかわいい小鼻をひくつかせ

ブレイル宅のある北のトリスに向かってふらふら歩いていた。


「なんか、同類の残滓の気配がするぅ ふふふ、生の骨もた〜んまりいただいたしぃ

当分は、おとなしくしてなきゃね」


と可愛い口になにやら小さな骨片をまた含む 

骨片はまだ ”真新しく” 多少赤い色も混じっていた。


「ふふ、うめぇこれだから生の骨ってやめられねぇな」

とまた思わず”男”の声音でひとりごちて

「いやんまた殿方の声出してしまって いや〜だもぅ」

と地の少女声に戻しニヤつきながら髪にまぎれている三本の茨がワサワサ動いた。

ゆっくりとだが確実に彼女の足はブレイル宅へ近付きつつあった。


 わたしは、例の塊とオーパーツのガラクタを小鞄ポシェットにしまい

ユラに乗りキリンズに向かって遊覧していた。 その途中、


<<シーア、いまブレイルのヤツから念話が入ったぞい>>

<<えっ、なんと? >>

<<見慣れぬ少女が押しかけてきて、闇騎士が出迎えたようだがの

何事もなかったようだがのぅ そのまま二階の空き部屋に居座っての

(マスターが来るまで此処に居る)

って聞かないそうだ なんでも(同類を探している)の一点張りで拉致があかないそうだ

それでその方面に詳しい儂に念話が飛んで来たという訳じゃよ

くだんのライブ・アーテファクトかもしれん まっすぐブレイル宅に向かってくれんかの>>

<<えぇ、いいわブレイルさんには何と? >>

わたしは心配になりクローティアに聞いてみた。


<<あまり、刺激をしないで二階に上げて菓子でも与えとけと言ってやったわ>>

<<まず安心かなぁ>>

お菓子類は、特殊な嗜好品が有るとはいえライブ・アーテファクトの少女達

共通の好みのようであった 

問題は、お菓子類が彼の自宅に常備されているかではあるが。


<<まぁ、闇騎士が本気だせば儂も分かるでの 安心せい>>

<<よかった、至急そちらへ向かうと念話入れておいて おねがいクローティア>>

<<あい、分かった>>

とひとまず話は付いたようである。


 わたしは、進路を北東に変更してブレイル宅に急行した。

 

 道すがら、あのオーパーツの塊についてクローティアに聞くと

『あれは、儂の見立てだとライブ・アーテファクトに違いないのぅ』

「えっ、あれが? 」

『そうじゃとも、なんらかの理由で封印されておるようじゃが、単純な封印とも異なるようじゃ

じゃが、お主もよくもまぁふたつ返事であの塊を引き受けたのぅ』

「だって、ライブ・アーテファクトともなれば、少しは興味あるじゃない? 」

『それはそうじゃが、全部が全部お主を慕うとも限らんだろうに

敵対すると厄介な相手じゃぞ、ライブ・アーテファクト共って』

「そう? 」


『そうじゃとも、人知を超えた術に強大な能力ちから、気まぐれで残虐な性格と

前代も前々代も彼らを手懐けようとして、身を滅ぼしてきた連中を沢山見ておるからの

よく、少女型のライブ・アーテファクトを手懐けておるもんじゃて』

「えっ、少女型のライブ・アーテファクト? 」

わたしは、クローティアの言葉に少し引っかかった

「少年型のライブ・アーテファクトもいるの? 」


『勿論じゃとも、彼らはヒトの社会に上手く溶け込んで自らの ”特殊な嗜好” を満たそうとするんじゃよ

だから、皆美しい少女や少年の姿を取り、着ている衣服もあまり見ない様な恰好なりじゃろ

そうやって貴族の連中やら王族に取り入るからの

何も対価無しにお主に懐いておるのは儂も初めてじゃよ』

「そうね、コトンはもとよりレメテュアの両肩の立方体等の

あまり見ない様な風体もとても可愛いくてステキ」

『ふふっ、お主らしいのう』

「どゆこと? 」


『お主は、あ奴らを単なる強大な能力ちからのある”モノ”としてはみておらんじゃろ』

「当然じゃない、あの達はわたしの妹のような存在でそれ以下ではないわ

たとえ、強大な能力ちからがあっても、多少特殊な嗜好があろうと関係ないの

わたしの傍にいてくれるだけでいいの 

ほんとうは可愛い妹がほしかったし、髪を梳いたり抱っこしたりするのが好きなの

不思議ね”男”だったという記憶ははっきりとあるのに”オンナノコ”をしている

今のほうが研究に明け暮れていたあの時より充実しているなんて」

『研究に未練はないのか? 』

クローティアは、じっと視線を向ける。


「う〜ん、どうかしら? 未練が無いと言えばウソかな、でも”昔”みたいにガツガツしたくないの

研究に明け暮れる日々もそれはそれで楽しいしね 

でも今のこの現状も、これはこれでとても充実しているのよ...... ごめんね 話がそれて」

『いや、いいんじゃよあの塊が何にせよ儂が全力でお主を守ってやるでの』

「嬉しいな。 こんなこと言って貰えるなんて」

これは、わたし偽ざる本心だった。


『なんとなく、あ奴らがお主を対価無しに慕う気持ちが分かるような気がするわい』

<<ところで、ミーアお姉様が何かまた悩んでいるような気がするの

それとなく話聞いてやってくれる? >>

<<さすが、つきあいが長いな、儂もそれとなく先のリアとやらの会話でな

上の空だったしこうしてお主と念話でわざわざ会話するのもミーアの事を思っての

事じゃろ? >>

<<ふふっ 分かっちゃた? >>

<<何をいまさら>>


 とこんな会話をしているうちに、懐かしいブレイル宅が遠目の視界に入ってきた

彼処に寄ったらついでに空の大樽とビヨンの飴と交換の算段である。


 9の月に入ろうかというこの時期、空から突然水滴が落ちてきた

『おぅ、”雨”じゃな 幾星霜振りかの』

「これが雨? 」

『そうじゃ、空からな極たまに水が落ちてくるんじゃよ エル族などはこの事を知っておるヤツも

いるが殆どは知らぬだろうな』

「コレって毒? 」

『いや、普通の水じゃよ リーンのヤツめ何を嘆いておるのじゃ 

ふだんは、傍観者を気取っているくせに 涙なんぞ流しおってからにのぅ』

「えっ、リーンってあの女神様? 」

リーンといえばこの世界オルティアで広く知られている十字聖教の象徴シンボルであり

女神信仰の中心である。


『いや、...うむ...昔の知り合いの名じゃよ たまたまその女神とやらの名と同じだけじゃ

気にするでない』

と歯切れが悪くこれ以上の追求は無駄と思われた。


 雨とやらの降り方がいよいよ激しくなり、

雨を知らないわたし達は当然対処方法もしらず


ビショ濡れになりがらブレイル宅に飛び込んだ。


「「わわっ」」


ブラやショーツが濡れたワンピースを通して丸見えである


「うわっと、シーア君達じゃないかっ って...凄い格好だよ 早く中へ入り給え」


 あわてて飛び出てきたブレイルはわたし達の姿を見るなり

「ささ早く中へ沐浴場はあっちだ」 と

ブレイルは顔を真っ赤にしながら大きめのタオルをわたし達に投げ渡し

「ボっボクは、居間で待っているからね ゆっくりしておいでよ

例の話はそれからにしよう」

とわたしとミーアは一緒に沐浴場へ レヴィアに二人分の衣服と下着を持って来てもらい

少し熱めの湯に浸かる。


ミーアは雨が嫌いらしく、さかんに耳をふるふるさせていてとても愛くるしかった。


「ふわぁ、びっくりしたぁ 私、初めてよ こんなの ねっ、しーちゃんもよね」

「えぇ、わたしもよお姉様 少し寒気がするわ」

「早くお湯に浸かりましょう 髪のお作法は今回は特別に無しよ」


 ブレイル宅の沐浴場は男性の割には非常に綺麗に清掃が行き届きていて

とても快適だった。


お作法なしに髪を結えずはらりと湯船に広げ 

輝晶石きしょうせき(明かりの代わりの石で辺りが暗くなると仄かな光を出す 

輝度が高いほど高級品)の仄かな明かりを反射して

虹色に揺らめいていた


 ようやく、人心地がつき彼の居間でくつろぎつつ例の少女について

話しを聞く


「いやぁ、吃驚したよいきなり押し掛けてきたと思ったら

いきなり かわいい少女が男の声で(アンタの骨貰うぜ)なんて言うもんだから、

腰を抜かしてしまってね あわやの時に、クローティア君の闇騎士が出て来てくれてね

それを見た途端 急にしおらしくなってこんどはマスターは何処と言ってきてね

一体何のことやら」

と一気にまくし立てた。


『ほぅ、やはりな そやつは ”ライブ・アーテファクト” じゃよ』

「”ライブ・アーテファクト”? 」

『詳しい説明は後じゃ まずは二階のあの部屋に儂らを案内せい』

「ボっボクは怖いからシーア君達だけでお願い出来ないか

かつて知ったる部屋だろう 

ビヨンちゃんとレヴィアちゃんの整備も有るから、施術室に篭もるよ」

と及び腰である。


 そこで、レヴィアも もう一度呼び整備を彼に任せてわたし達は二階の部屋に向かう


そして、ドアをノックするが返事がない

ここでじっとしていてもしょうがないので

もう一度ノックをしてから相手の許可をまたずに中へはいる


と そこには、寝台に髪に包まれてすやすや寝息をたてている

一人の美しい少女が其処にいた。


 肌はシーアより白く

髪は銀光沢のラヴェンダー・ブラシで、淡いオリーブドラブのメッシュが入り

オリーブドラブのメッシュ部分は一部棘はクリムゾンの茨に変化している


彼女の黒の唇からは可愛い声が漏れ


「フレイルぅ? お菓子もぅ飽きたぁ 氷菓子ほしぃ〜」


 と可愛い声が漏れる、よく見ると

少女趣向の非常に強いゴーストホワイトのワンピースドレスに薔薇の刺繍柄で

柄は淡いラヴェンダー・ブラシでリボンとレースも同色

可愛い脚は白の薔薇柄のタイツでくるまれて、フリルの踝丈ソックスは白で

リボンパンプスを履いたままううっすらと目を開けた


 瞳は淡いイエローグリーンは柔和な目つきで、全体的に清楚な印象を与え

此方を凝視していた。

かわいい伸びをした、ラヴェンダー・ブラシの爪化粧をした手で胡乱な目をこすり

はっ と此方を見た


「あなた達ってもしかしてあの闇騎士のホントの持ち主? 」

『いかにも、儂があの闇騎士のマスターでは有るがのぅ お主はライブ・アーテファクトじゃな』

「あなた様は って 失礼致しました わたしは、ライブ・アーテファクトが一翼

”混沌のデカラヴィア”と申す者でございます先だっての強い気配で永き眠りより覚めて

嘗ての杜も今代はすでに無く、新しき拠り所を探して居りました。 其処の銀の御方がわたしの

新しき拠り所でしょうか? 」

と 急に態度を改めた ”デカラヴィア” に問われ


 わたしは、

「そうだと、嬉しんだけどね。 貴女はどうかしら? 」

と微笑むとクローティアが

『さて、 ”デカラヴィア” よどうする? 儂らは有る目的のために世界オルティアを回っておる

就いて来るならお主に、永劫の安寧の場と安心してくつろげる場所を提供しようではないか

儂らと契約以前にヒトを殺めた件は、不問とするがシーアはな 不必要な生命いのちの奪い合いは

好まぬ 命令が有るまで殺めるのを堪えられるのなら契約とするがの あと嗜好品も出来るだけ

希望に応えようぞ なぁシーアよ』

「えぇ、出来るだけ応えるわ そうしているもすでに居るしね」

とクローティアと視線を交わす


するとデカラヴィアは間髪入れずに

「もったいなきお言葉 不殺の誓いなぞ 其処の銀の君主にお仕えする喜びに比べるべくも無き

瑣末な事。 この私めをどうか銀の君主のお傍に」

と床に深々と頭を垂れる

『その言葉を以って、お主の合意と取ってよいかのぅ』

「はい、あなた様方に絶対の忠誠を誓い我が依代をこれに」

と懐から彼女の依代であろう薔薇と茨のブローチを預け、例の水晶の棺に収め契約が完了した。


 早速コトン達が現れて

「「ねぇ貴女のお名前はなぁに? 」」

と尋ねて

「わたしは ”デカラヴィア” っていうの よろしくね ねーさま方」

「きゃはぁ〜ん やはりシーねぇさまに従いたのね アレやろうよアレ」

と三人共、例の情報交換を済ませて

「 ”デカラヴィア” って言いにくいわぁ ”ラヴィア” ちゃんってどうかしら? 」

とコトンが言うと

「いいわ それ ふふ ”ラヴィア” ねぇ いいわぁ」と

うっとりしていた


 わたしは先の契約で彼女の全ては分かったが、今一度確認しておきたいことがあった

「ねぇ、”ラヴィア”ちゃん 聞きにくいけど直近で殺めたのは二人? 」

「そうよ、ここの南の街で無宿人らしきヒトの骨を抜いたのはわたしよ

お得意の男の声音で男女の睦言を演じていたら、案の定ムサくるしい男が引っかかって

生骨ブツを頂いたわ それがどうかして? 」

と素っ気なく即答する。

 逡巡もなく即答するあたり、彼女がライブ・アーテファクトであることは

明白であった。


 わたしは、契約以前にヒトを殺めた件については、不問にすると

クローティアが断言した以上これについてとやかく言うつもりが無かったが

問題は、これがつい昨日起こったという事である。

魔物や野盗が普通にありそれの被害もまた日常である。


 この世界オルティアでは、些事として片付けられることだが

昨日今日の事となると、近縁者もいなさそうな幾星霜も前と違い逆恨みや仇取りが出張り

それに官吏が介入して面倒事になる可能性があった。

それに、ギルドに依頼登録されて、世界オルティア中の冒険者の目の敵になっても

これもまた厄介で有る

そのためにもぜひともニースの噂ではなくこの目で確かめる必要があった。


「後で、近縁者がいないか確認しないとね。 知っての通り今代はいろいろ面倒なの。

「たとえ、縁者が逆恨みや仇取りで来ても貴女は手を出しちゃ駄目よ わたしが何とかするわ

わたしは降り掛かる火の粉まで見過ごすつもりはないし

相手が悪意で向かって来たのならそれ相応の応酬はいとわないつもりよ

だから、手を出したくなってもガマンするのよ」


「「「は〜ぃ」」」

 

となぜか三人が揃って返事をする

「ねっ シーお姉様って変わってるでしょ? 」

とコトン

「「うんうん そーよね変わってるわ」」 

と後の二人がそれに続く。


 とひとまず契約も済み三人の少女を引き連れて階下の居間へ向かう

まだブレイルは整備中らしく、戻って来ていなかった

菓子皿には先程の菓子がまだ沢山残っていてそれを

目ざとく見つけた少女達は早速思い思いに口に運ぶ


菓子皿が空に成る頃、ブレイルがビヨンとレヴィアを連れて戻って来て


 デカラヴィアを見るなり

「君、ボっボクをあまり脅かさないでくれ給えよ 

それに後の二人もライブ・アーテファクトとやらなのかい? 」

デカラヴィアは ふふ と可愛く微笑み

「そうよ ブレイル様。 私達三人ともライブ・アーテファクトよ 以後お見知りおきを」

と三人丁寧にスカートを摘み挨拶をする。


しかし最後にデカラヴィアだけ

「でも、貴男の骨欲しかったなぁ 」

と下品に舌舐めずった。

「ふふ  でもシーアねーさまのお許しが出ないだろうし、聞けば其処のオートマトの

製作者っていうじゃないアレは素晴らしい逸品ね 

かの ”デカラビア・シリーズ” にも負けるとも劣らないわ

その製作者を殺めたとあっては わたし、シーアねーさま の目の前に立つことですら

赦されないでしょうね。 ふふっ

 貴男は、特別に私達の仲間と認めてあげるわ ふふふ ねぇ〜 ねーさま方」

とコトンとレメテュアに視線を送る。


そしてニタニタ下品な笑顔をみせブレイルを震え上がらせ

私が諌めるつもりで睨むとふいっと後ろに隠れた。

「ごめなさい、ブレイルさん ライブ・アーテファクトって皆こんな達なの」

「うへぇ、皆相当癖が強そうだね」

と半ば呆れ顔である。


 そしてクローティアはブレイルにライブ・アーテファクトの事や今までの顛末を

知らせる。


 外の”雨”とやらはまだ激しく降っていてブレイルの厚意で止むまで二階の部屋にとどまる事になり

 例のオーパーツのガラクタを見せると、先程の表情とは一変して

さながら子供のようにはしゃいでいた。


 その時、レヴィアによってレフィキアの屋敷の空き部屋に運ばれたオーパーツの塊の

脈動の調子が早まったのは、誰も気が付かなかった。


「あのね シーお姉様、いいかしら? 」

と後ろに隠れていたデカラヴィア突然話しの切っ掛けを作る。

「なぁに? 」

「あのね、わたしが眠っていた封櫃ね、レフィキアのお屋敷の私室の寝台にしていい? 

アレに入ってると安心するの」

「いいけど、まずはモノを見てからね でどこなの? 」

「わたしが知ってる名だと ”鎮めの杜 キエス” とヒト共がよんでいたわ

今代の呼び名は知らないけど 場所は”キリンズ”とやらから日の出の方角の海よりかな? 」

というが ”鎮めの杜 キエス” なんて初めて耳にする地名であった

ミーアに視線を向けても首を横にふる

すると、いままで沈黙を保っていたビヨンが


[ シーア、私が”アルカーナ”にパスを繋いで検索してみますね......完了... 一件該当有り 

旧い文献にその名が出てきました 古代信仰の一翼の拠点だったようですね 何でも大樹信仰の

中心地で、巨大な薔薇の呪樹が有ったようですね ]

 呪樹と聞いてライブ・アーテファクトの来歴を鑑みるとその信仰集団は、

邪教集団らしい印象があった。

 

「うわっ、こののここんな事まで出来るの? さすがはシーアお姉様が所有者オーナー

だけのことは有るわねぇ コレを製作したの貴男? 」

今の発言に鋭く反応したのは以外にもデカラヴィアだった。


「勿論さ、このビヨンちゃんとレヴィアちゃんはボクの最高傑作さ おぉ愛しき我が娘

また新しいこと覚えたんだね お父様として誉れ高いよ」

と妙なな調子が久しぶりに表へ出る。


「こんなとこまで”あのヒト”に似てるのね 

そういえば貴男 ”デカラヴィア・シリーズ” って知ってる? 」

デカラヴィアは遠い目をしてポツリと言葉を紡ぐ。


「さぁ、ボクが師事したあのヒトなら知ってるかもだがね

師匠は純粋な魔術的な手法のオートマト専門で、ボクは錬金的手法の魔導工学専門だったからね

お互い相入れない分野だったけど、よくしてもらったなボクが一番尊敬するに値する人物さ

いまはじいちゃんだろうけど同じエル族だからね どこで、どうしてることやら」

「その貴男の師匠とやらが同じように自慢してたのよ

(儂が受け継いだ”デカラヴィア・シリーズ”こそ最高傑作で魔術工学に進む切っ掛けになった)

ってね」

「それで、今はどこにっ! 」 

と珍しく研究以外でブレイルは色めきだっていた。


 その剣幕にデカラヴィアは慌てて

「まってまって、 わたしが見たのは一回きりでしかも封櫃に眠りに就く前よ

分からないわ」

「そっか、残念 いやぁ久方ぶりに昔を思い出したよ

やはり彼の ”デカラヴィア・シリーズ” も? 」

「知らない。 名も知らない、わたし達って嗜好品がぞれぞれ異なるし、あまり交流はないの

ごめんなさいね 期待させちゃって」

「いや、いいんだ、彼なら鬼籍に入ってもおかしくないだろうしね 

こっちこそ問い詰めるようなマネしてすまなかったね」 と

ブレイルは謝辞を返す。


「「「貴男もシーお姉様とどこか似てるわね」」」

と 他の二人もデカラヴィアも同じ言葉を重ねた。


[ ンっ コホン 話しがそれましたが、今代の場所は此処ですね ]

と可愛く咳払いをして 

ビヨンが描いた見取りを見ると キリンズ南東に位置してるらしく

魔物も小型のヤツくらいで危険は少ないらしいが植物系の魔物が多数確認されているという

デカラヴィアが近くに来たら案内してくれると言うので

キリンズでのデカラヴィアの部屋の装飾品を取り揃える必要もあるし

街に立ち寄った際に寄り道しようかと考えていた。


 程なく雨とやらが小振りになり雲の切れ目から9の月にふわさしい

蒼穹の空が顔を覗かせて出立の頃合いである。


 此処のお菓子を食べ尽される前にブレイル宅を後にしようかと思案していると

ブレイルは、空気を察したのか

「そろそろ、出立かい? なんか気がそぞろだね」

「えぇ、この達がお菓子を食べ尽す前にと思って

お菓子代をお渡して置きますね。 」

と手持ちの金子が入っている革袋から

お菓子代にしては色がついた額のおカネをわたす

「えっ、こんなに受け取れないよ」 と

かなり強く遠慮されたがどうしてもと受け取ってもらった

「後は、裏手の工房に寄ってビヨンとレヴィアの ”飴” を受けとって

レヴィアの衣服を受け取って行きますね」

と言うと

「あぁ、構わないよ あっと、最後にいいかい? 」

「何でしょう? 」

と呼び止められる。


「あー、 これはもしでいいんだがね 例の ”デカラヴィア・シリーズ” のオートマトが

シーア君の元へ来た時はボクも是非一度お逢いしたいと思ってね。

な〜に 待つのは慣れているからね お願いできるかな」

と遠慮しがちに尋ねる。


「勿論ですよ わたしも興味が湧いちゃって 旅で出会うことが叶えば

連れて参りますわ ねぇクローティア? いいでしょ」

『おお、ブレイルよ お主も儂らの一行パーティーの大事な仲間じゃ 当たり前の事じゃてな

皆もそれで良いかの? 』

というと首を横に振る者はいなかった

そして、飴を補充して、レヴィアの衣服等を購入して

ブレイル宅を後にする。

三人は、レフィキアでおしゃべりしたいというので屋敷へ戻っていった。


 雨が降った後は濡れた草や土の匂いが辺り一面に漂い

空には、七色の光の輪が視えていた


『ふふっ リーンの奴め粋な事をしよるな』

クローティアがごちたのを聞き

「あの七色の光の輪って何なの? 」

とクローティアに聞くと

『あれはな、この世界オルティアでな 未練やら生への妄執に取り憑かれて

はからずも大地に伏した者の魂をな

リーンのヤツが、転生の輪の手前にあるという

妄執を和らげる場所に、

その魂共をみちびしるべとなる

たとえお主でもな、ける者がどんな手段を使っても追いつけない架け橋じゃよ  

ヤツめ、滅多にあんな大盤振る舞いなんかせんのにのぅ 

ここしばらくは幽体系の魔物も数が減るじゃろうて』

「ふ〜ん そうなんだ 初めて見たけど綺麗ね。 」

『儂も五本の指に入るくらいしか見たことないからのぅ』

とまるで旧知の友に語りかけるような遠い目をしていた。


 やがてそれは、淡くなり後にうっすらと残っていたがそれも掻き消える

わたしは、躰が震えるような不思議な感覚に身を委ねていたが

ユラに乗り一路南のキリンズへ向かう。


 例の如く郊外で一旦ユラから降り人頭税を支払い街へ入る。

早速あちら此方で、吟遊詩人達が感性を凝らした謡を披露していた


帽子を逆さに大衆に綺麗な通る声で語りかけていて

わたしが耳を済ますと、こんな一節が飛び込んできた。


〽 おぉ、数多いくたの大地に伏した魂よ! リーンの袂の架け橋に導きされしは癒やしの庭園

〽 大きな樹々が歌い、小花が囁くの地で

〽 穢れを払い転生の輪の身支度を整えん

〽 嘆きの涙のその後は、女神たってのご歓待とならん

〽 さぁさ、我の謡で精神こころの座に響いた者あれば、

〽 此処に現世の金子を幾ばくか、放り込むも好し放り込まぬのもまた一興


と早速吟遊詩人達は、先の雨や光の輪で即興の謡を拵えて、現世のせいを謳歌していた。


 早速、見知ったギルドへ顔を出す

前回は男性の受付だったが今日は、ケット族の小柄な女性だった


「やぁ、いらっしゃい貴女方冒険者かな? 」

「はい、カードの更新とちょっと聞きたいことがあって...」

「まずは、カードの更新ね はいっと...しゅううりょうでぇ〜す。 」

と軽い雰囲気だが、彼女も立派なギルドの職員である。


 各種族の、慣習や字の読み書きや勿論、簡単な算術を修めないと職員の

試験は突破できずかつ、面接官との問答があるらしい

ミーアの受け売りだが。


 そんな彼女はこんどは小声で

「わわっ こんな金額初めてだよ そちらのオネェサンもね ......で

キキたいことって なにかな? 」

 と可愛い耳をよせてくる

「先ず、此処最近奇妙な事件の犠牲者のそれの縁者がいるかどうかと、

あと 鎮めの杜 キエスについて教えて欲しいんですけど」


「ふ〜ん先の質問だけどぉ〜 これはコレ特秘事項なんだよね 

どんな事件か縁者が居るかも含めてね 

後の質問ならいいよ でも 鎮めの杜 キエス なんてよくそんな旧い名知ってるね

博識ぃ〜 ...で場所は、ここから南東だよ 彼処って冒険者じゃ魔物も少ないし依頼も

ないし物好きや魔導考古学のセンセぐらいだよ それと彼処らは空飛ぶの厳禁だよ」

「なぜ? 」

彼処って大昔私が影も形もないころ変な集団が強力な結界を張っていて

ななんと今もそれが 生きているので〜す。 あなた召喚士様でしょ してして召喚獣に

乗って一足飛びに行こうとしたでしょでしょ どんな強力な召喚獣に乗ったとしても

落っことされちゃうんだから」

「でも、走行型の召喚獣なら問題ないのでは? 」

とそれとなく聞いてみた。


「うん、それならいいけど召喚士様って大抵は空飛ぶ召喚獣で自慢したがりが多いし

2体ともなれば、経験豊富な召喚士様でないと使役できないからね

エサ代やらなんやらでね、おまけにヤキモチを妬いて主人を食い殺すこともあるらしいからね」

「えぇっ、食い殺す 何で? 」

わたしは、いつぞやのベゼリン学術院地下での惨状が目に浮かび

少し躰が震えた。


「そりゃ、ご主人様を独占したくてしたくていっその事、たべちゃうんだろうねぇ

召喚獣のキモチは分かんないや」

「そぅ」

とそんな不安な気持ちを気取られたのか、

<<お主のケールやヘルちゃんやユラはそんな下賤な感情は持っておらんぞ

”下等”な召喚獣共ならありえるかもしれんがな みなお主に尽くせることが出来れば

それで満足な奴らじゃよ 安心せぃ>>

<<良かった、何かホッとしちゃったわ>>

<<心配症なとこは以前と変わらんな 全く>>

とこれで一つ問題は解決した

「後、其処にに入るに当たって気を付けることがありますか? 」

と更に質問を続ける。


「これで質問は合計3つだね まぁいいわ、魔物は子鬼ゴブリンや豚犬位かな

後腐肉塊スライムが少々。 でも犠牲になった冒険者も少ないし纏っている

武器はほとんどないわ汚いし臭いけど

後、例の事件で調査で入った ”検視官” の話だと白いお魚が漂っていて

ある場所にはどうしても近づけ無かったって言ってたわ」


<< シーアお姉様それ、多分わたしの守り手かもよ 封櫃の周りにそんな

浮遊魚がいたわ>>

とちゃっかりパスを通じて、デカラヴィアもといラヴィアが念話で割り込んできた。 

<<するとその浮遊魚を目印にすればいいのね>>

<<そゆことね あとそのお魚さん達 シーアお姉様を気にいるかもよ>>

<<どういうこと? >>

<<それは、その場所に着いてからのお楽しみ けっして悪い結果にはならないと思うわ>>

と担保した。


「えぇ、わかりました気を付けます 後で”検視官”のセンセに聞いてみますわ

ありがとね 」

「わわぁ、なんで分かっちゃうかな また、お目玉喰らうか最悪給金が減らされて

月賦で購入したお気にの家具の支払いどうしよ? 今から食費切り詰めなきゃだわ あぁん」

と困り顔。

「ふふっ、今の余計な一つ分の情報の対価としてこの癒やしのポーションに色付けて

購入しようかなぁ? 」

と彼女とポーション類に交互に視線を泳がせた。


「そうして下さぁい。 お願いします わたし新人だから

これら消耗品の販売基準量ノルマも有るのよ」

「ふふっ、いいわこれ(癒やのポーション)一つ下さいな」

とたんまり色を付けて購入した。

この前の特級エール代に比べれば安い買い物で有る。


「うれじぃです あぁわたし今月、ひもじい思いしなくでずんだぁ〜」

と鼻を汚し泣いて喜んでいた。

「はい、毎度です。 」

と最後はきっちり営業微笑で締めていた。


 日は高く、雨の後の空気は何時になく澄んでいて9の月の天候にふさわしくなっていて

遠出えをするには持ってこいの天候だった。


 今後の予定としては先ずラヴィアの寝台を手に入れそれから”検視官”がいる医術院へ足

を運ぶ予定である。

ミーアとビヨンも異存が無く、コトンは念話で

また”おめめ”が貰えると思っていたらしいが予定を念話で伝えると

先の”おめめ”を愛でるからいいワと拗ねた声音で返事が返ってきた。


 レメテュアの要求には当分応えられそうにないと応えたが

過去の哀れな犠牲者を愛でるから当分いいわとさり気なく恐ろしい事を言ってきた。


ともかくわたしは、南東の”鎮めの杜 キエス”に向けて足をすすめる。


その頃、キリンズ南西の海岸近くの遺構内の最深部では


「あぁん、 どうして綺麗にお肌が剥けないのかしらお父様の様に早く綺麗に

剥けるようになりたいなりたいっ!! 」

と”男性”の劣情を満たした後、肌を剥きに取り掛かっていたヴェネイーラは

ワンピースのスカートの一部を不自然に膨らませながら、お付きのメイドが背を

そむけるのを尻目に喚き散らしていた


「まったくもう、やはりロージィの情報は正しかったのね とういうことは

やはりあの二人もライブ・アーテファクトを手に入れたことになるわね

悔しぃ〜 ソレもアンタがみな悪いの」

とメイドの髪を乱暴に引っ張る 

「ひぃ〜 ヴェネ様お赦しをーっ」

と彼が満足するようにワザと大袈裟に悲鳴をあげる。


 このメイドは、彼が極端な被虐嗜好者であると同時にネリスティーナやシェーラが

居ないところでは、極端な加虐嗜好も持ち合わせている事も承知していて

これ以上自分に危害が及ばぬように、ワザと悲壮な声を上げたのだった

「う〜ん ステキなお声 貴女をメイドに徴用したのは正解だったわ

これからもヴェネの前ではステキなお声で鳴いてね。 コレもすっきりしたし

早くお父様みたいなかわいいオンナノコになってステキな殿方も頂きたいわぁ」

とうっとりしていた。


「コレの残骸どうしようかぁ 貴女、食べる? 」

「いっいえ、わっわたしは今は、ヴェネ様のお食事の残りを頂こうなどと

恐れ多くて出来ませぬ ラクティカス様がいらっしゃればよいのですが

今は、表のご公務の最中で...... 」

「そうねヴァン族って”血”しか用はないからね あの子達もいないしこのまま、放っといていいわ

それとこの櫛可愛いわ これヴェネの物にしちゃおうかな後、リボンと靴も貰っちゃおっと

貴女、綺麗にしておいてよ」

「はい、ヴェネお嬢様 お言いつけ通りに致します。 」

「ふふ、何度、聞いてもいいわね その”お嬢様”って響き 悪くないわぁ」

と満足げに乱れた髪やリボンや衣服をメイドに整えさせて

外に出ると王都ギルトスの方へ馬車を進めるのだった。


 ヴェネ達も、綺麗に骨を抜かれた事件をラクティカスから聞き出して

わざわざ、いつもより念のいったワンピースと少し大人なヒールの高い靴を

選び、事件の中心と考えられたライブ・アーテファクトの調査に来たというのに

空振りに終わり、イラだっていた所へ可愛い少女が目に入り更に

怒りが増し凶行に及んだのである。

 馬車内では始終爪を噛み、メイドはまた矛先が自分に来るのでは無いかと

久し振りの拠点からの遠出というのに、とても観光気分どころでは無かった



 ここは、王都ギルトスリブス王執務室

「リブス、彼女がオルティア入りしたよさっき、ギルドカードの更新があったよ

何の用向きで此方オルティア入りしたか興味は無いかい? 」

「何が言いたい? 」

と怪訝そうなリブス。


「その前に、彼女の血液から興味深いことが分かったよ」

「ほぅ、して結論は? 」

「相変わらず、せっかちだねぇ現役の頃も盾役タンクを差し置いてよく敵陣に

突っ込んでいったけ、いくら前衛の剣士様だってあれは無いだろうよ ははは」

「昔話はよせ」

「すぐそうやって、逸らそうとするんだからね 戦闘の後の一杯で

よく盛り上がったもんだよね おまけに妻をめとるのも子供を授かるのも

一行パーティーで一番ときた。 あれには、お前なら納得だと酒の肴に事欠かなかったわ」

と悪ガキの悪戯の算段のような、笑みをかわす

「もう、よさないか エリスが聞いていたらどうする? 父親の威厳が保てないではないか」

「あぁ、すまんついあのの調査結果が面白くて悪ノリしたよ」

「して? 人払いならルカスに任せておる」

とリブスは身を乗り出す。


「あのはどうやらドラコ族とヴァン族の両方の特質を持っているらしいね

血液やこの前来た時、果汁ジュースの杯の唾液からね ようやく分かったよ」

「何だと!! あの娘はドラコ族とヴァン族の両方の特質を持っているだと!!」

と目を剥いてリブスは呆けていた。

「うん、間違いないね王宮魔導研究の粋を集めた魔導装置の結果さ」

とドリエルは断言する。

「あの娘は、儂らには敵対しているようには見えなかったが? 

むしろ、礼儀正しくエリスの病を完全に取り払った儂の大恩人だぞ」

「問題は、敵対者か敵対していないかではないよ 本質はそこじゃない

ボクも彼女の人格に問題は無いと思っている ディーボの件しかりだしね」

「では、何を問題視しておる? 」

とリブスは、羽ペンのインクが羊皮紙におおきなシミを作っているものも忘れ

聞き入る。


「そうだね、決して契ることの叶わぬ種族同士偶然に子ができたとも考えにくい。

これはボクの”推論”だがね あれは誰かの手で造られし人造種族だ

有り体に言えば”ホムンクルス”ってトコだね にわかには信じがたいがね。

何度も、結果を検証したがやはり其処に行き着くんだよ ボクの思考はね」

「うーむ、 あの美しい外観は人外と思っていたがよもや”ホムンクルス”

とはな してその製作者は分かるか? 」

と息巻く。

「ちょっとその前に、リブス最近大錬金術師”シアズ”が行方知れずになっていることは知ってるかい

それに、彼の屋敷がこつ然と消えて今は大きな池になってると言う話

もう一つおまけに彼の代理人であるあのケット族の少女が常にシーア君に付き従っているという事実

何かあると素人のボクでもわかるさ」

「いや、儂は市井には疎くてな。 」

「ふふ、君らしいや」

「ええぃ、茶化すでない」

「すまんすまん、この世界オルティアにはまだ知られていない少数種族の存在も確認されておるがね

シーア君は、全くの異質な”種族”だ まぁこれで世界オルティアがひっくり帰り我々既存種族の

重大な脅威になろうとは微塵も思っていないがね。

ボクが憂慮しているのは世界オルティアそのものがシーア君を放って置かないとい事だよ

これからも彼女には、特異な存在に相応しい、試練と言うかなんというか

色々な事が好むと好まざるにかかわらず降り掛かるだろうぇ 

ボクは、それが辛くてね......うん」

と急に押し黙る。


「さては、ドリエルよあの娘に懸想したか? 色好きめ」

「さっきの君の 茶化すな という言葉きっちり返させて貰うよ 

なんかこう たった一人一種族の娘だよ 応援したくならない?  

そんな不思議な魅力が有るんだよ わかるだろ 彼女には」 


「あぁ、あの娘には俺も同じように感じていたさ、儚そうな恰好なりなくせに

どこか芯の通ったあの性質たちの娘は我がエリスにはないモノをもっておるしな。 」

「そうだろう」

「儂にどうしろと? 」

とリブスは顎を捻る

「君は黙って今までどおり彼女に接していてくれればいいよ

彼女は芯が強そうならしいしね 魔導研究施設では”人造種族”ではないかと

憶測が飛び交っているだけで”確定事項”ではないし

まぁ、箝口令ぐらいは魔導研究施設内にしいておいたよ」

「おいおい儂の仕事まで取らんでくれよ ははは」


「それと、もうひとつ重大な案件があってねぇ」

「なんじゃ、あの娘に関わることか? 」

「そうだよ、でないとこんな長い前置きはしなかったさ 

浮遊大陸から面白い情報が入ってね

なんでもシーア君が、みたこともないような少女を引き連れて救護院で”検死官”から

死刑囚の目玉を買っていったそうだがね」


「別に不思議でもなんでもないだろ”触媒”としとてはありふれている」

「問題はそこじゃない 目玉を買う事自体は魔女の使いの少女でも普通の事さ

ボクが気になったのは、くり抜かれ方が人知を超えていたということだよ

方法は知ないが、遺体に余計なダメージ一つなく綺麗にくり抜かれていた事実さ

でだ 最近キリンズで起きた綺麗に骨が抜かれる事件があっただろ

アレもみたこともないような美しい少女が傍にいたらしいじゃないか

なんかこう気になるね」


「うむ、この件はお前に任せよう 幸い犠牲者には気の毒だが縁者のいない無宿人っだったし

ギルドにも正式な依頼はきてないだろ? 」

「来てないね まぁ、キリンズでは魔物の仕業の線が濃厚らしいと結論がでたし

アレから新たな被害もでていない、ボクとしても動く気はならないね。 」

「そうか あいわかった ただ謎の美しい少女の件はおって調査するように

あのシーアに関わることかも知れん」


「勿論、手配済みだよ それとリブス、ライブ・アーテファクトって言葉知ってるかい? 」

「ライブ・アーテファクト? なんだそれは、魔導研究施設の装置の名か? 」

「ふふ、君やはり市井には疎いね すこしは、エリス姫殿下の相手をして市井のこと

逆に学んだらどうだい? 」

「うるさいわい」

と二人の、他人にはおいそれとは聞かせられない会話がここで途切れた。


ドリエル去って一人残された執務室で、リブスは

「シーアよ、そなたはどこへ向かおうとしてるのか 儂にも分からぬな

若ければ、そなたと冒険の旅へ行きたかったわい」


 リブスにとって彼女は人外であろうが人造種族であろうが、驚愕の事実ではあったが

それは内に占めるもどかしい感情の中では二の次で、

ただただ彼女に訪れる ”面白い事” を一緒に経験してみたかったのだ

しかも一個人に肩入れしたと有っては、

一大陸を任されている王としては示しが付かぬのも、また事実。


 目を落とした立派な執務机には、

インクで真っ黒になり公文書として用を成さなくなった羊皮紙が彼の冒険への未練を

あらわすかのように乾いて張り付いていた。


その公文書には、統制庁 リームレスへの出向の要請 の文字が見て取れた


 わたしは、キリンズ郊外でヘルハウンドを喚び暫し戯れる。

<<ふふっ、さしものヘルハウンドでさえシーアお姉様の前じゃただのワンちゃんね>>

早速、ラヴィアが念話で語りかけてくる。

<<そんなにこの子ってすごいの? >>

<<それは、聞かないほうがいいわ>>

となにか含みのある言い回しをして念話が途絶える。


「さぁ、お願いヘルちゃん方角はあっちよ と南東を指す」


{ウォン} と

久方振りの外界にいささか興奮気味ではあるが、さすがにシーアはもとより

ミーア・ビヨンを振り落とすようなことはしない

安定した走りをみせ次々と景色が流れてゆく

ときに大岩を大跳躍で高く跳んで見せ

大きな裂け谷を軽々と飛び越えるそうこうしている内に

段々ガイガ大森林地帯のような仄暗く鬱蒼とした樹々が

眼前に迫り、ヘルハウンドの歩みをめる。


「ご苦労様」 と頬を撫ででやると


{ウォン・ウォン} と大きく応えてくれる。


「ラヴィアちゃん、出ておいで 今ならいいわ」

というが早いか

「はぁ〜ぃ おねーさまぁ」

とコトンのようにいきなり抱きつき 唇を奪われる

淡いピンクの唇と彼女の黒い唇が重なり合う

ミーアは場を読み慌ててそそくさと昼食の用意といいでこの場を離れる。


「んーー おねーさまぁ ラヴィアね もっと骨が欲しいのぉ〜

もっともっとぉ〜♡ ねぇねぇ」

とおねだりをしてきた


「わたし、知ってるのよ おねーさまってココが弱いんでしょ」

とわたしのように前髪から生えている茨を ワサワサ と伸ばし

わたしの色の濃いひと房の髪に絡めてくる

「きゃうん、それはよして  ラヴィアちゃん」

と嬌声を上げてしまう。


「ふふ おねーさまって かわいいの こんな んっ...くちゅり... こと出来るのわたしだけよ」

「骨なら、遺跡や遺構に一杯有るじゃない アレじゃ駄目? 」

とダメ出し覚悟できいてみた


 枯れた骨なら遺構や遺跡に沢山あるからだ

しかし、案の定彼女は、

「いやいやぁ、アレじゃなくて ヒトから抜いたばかりの赤いヤツがいいの 

そういうのじゃなきゃ絶対いや」

とコトンと同じようにコダワリを見せる。


「なにも生きていなくてもいいの死にたてのでもいいもん

たまにあるじゃじゃない魔物に襲われたのが転がっていて放置されているヤツが

新鮮ならあんなのでもいいの」

「でも官吏とかがいたらどうすのるの ”その骨下さい” と言うわけにいかないでしょ? 」

「ふふ、そのためのこれが有るじゃない」

と先ほどの髪の茨を10歩先におあつらえ向きにいた小型の魔物 豚犬 目掛けて

シュルリシュルシュル とわたしでさえかろうじて目に入るくらいの速さで伸ばす

そして、手元に戻ってきた時はもう、豚犬の背骨と思われるモノを絡め取っていて

豚犬はトサリと地面に伏した。


「ねっね こうやるからぁわかんないわ けどわたし魔物の骨じゃぜぇっ〜たいいやだからね

ヒトじゃなきゃいやぁ」

と半べそになりそうな顔をする


「しょうがないわねぇ、わからないようにやるのよそれと生きているヒトからは絶対抜いちゃ駄目よ

悪意があれば別だけど」

「は〜ぃ、分かってまぁ〜す」 

と途端に微笑みコトンの用にしっかと腕を組まれた

すると、突然コトンが現れて、

「ねぇ、ラヴィアちゃん あたくしの”おめめ”もこれで取れる? 」

と聞いてくる

「いいわ、コトンねーさまのためですものちょっと気持ち悪いけど取ってあげるね♡ 」

「きゃは〜、ラヴィアちゃんありがとー お人形さん目立つし シーおねーさま目立つの

嫌いなんだって もっと堂々としてればいいのにねー」

「ねー」

「ねー」

と二人で手を取りはしゃいでいた

「ねぇレメちゃんは? 」

とわたしが滅多に現れないレメテュアの事を聞くと

「「あの子まだ ”お子様” だからお屋敷でお菓子に夢中よ」」

「「おこちゃまねー」」

「ねー」

「ねー」

とまたはしゃぐ


「あたくしもまだお菓子残ってたわレラヴィアちゃんの分はレヴィアに寄せておいてって

言っておいてあげるわ しーおねーさまにメイワク掛けないでよ」

と言い放ちクロに吸い込まれた。


「まったく、どっちがおこちゃまなんだか」

とデカラヴィアは自分の事を棚に上げぐちていた。

「あなた達って喧嘩はしないの? 」

とわたしは、不安になり聞いてみた。

ライブ・アーテファクト達が暴れるとどんな惨事が待っているか分からないからだ。


「えっ、喧嘩なんかしないわお互い軽口言っても気にしないし

たしかにおっかないもいるけど皆そんなもんだと割り切りが早いの

ココの皆はシーアおねーさまに、同じ絶対の忠誠の誓いを立てた者同士深い絆があるの

お互い反発なんてあり得ないわだから安心して」

とヒトの付き合い方の理想形をあっさりと言ってのけた。




 彼女は可愛い鼻をひくつかせゆっくりと杜の中を進む

ガイガ大森林地帯とは異なり、此方には明らかに植物系の魔物が多かった

蔓に擬態してヒトを絡めて瓶のような形をした本体? に閉じ込めて

ゆっくり溶かして哀れな犠牲者とそっくりな人面花を咲かせるのや、


 地面の上に綺麗な小花を咲かせて、ヒトをおびき寄せひょいと上からぶら下がった

これも瓶のような格好に棘の有る口に吸い込むのなど

動けない躰からは想像の付かないようなやり方で捕食するモノが其処かしこにいた。


 しかし、わたしの脚にもその蔦や触手? が伸びてきても一定の距離で

ピクリ と動きがとまるのだ

「ふふ、ここの子達ってねわたしの眷属でもあるのよだから おねーさまには手出しは出来ないわ

もし手出ししたら、どうなるかわかってるのものねぇ ふふ どうなっても知らないんだから」

とまた下卑た笑みを浮かべ涎が垂れる。

 

「あと、あの子の種持って返っていい? お庭に植えたいの

レフィキアねーさまの許可は取ってあるわ」

いつの間にやら、ちゃんと算段を付けていたらしい

彼女らの賢しい一面をみて重ねた刻の重さを感じていた。


 みると先程の、相手を絡み太くふくらんだ胴体部に縦に裂け口が現れ其処から出てきた

蔓に擬態した触手で閉じ込めて喰う 魔物 ”トラファイド” 

であったが、これは人面花の代わりに美しい少女の上半身が

白い花の中心に現れるという希少変種であった。


 美しい少女に惑わされて近づくと哀れな犠牲者が太くふくらんだ胴体部に取り込まれて

溶けて行く様が透けて視えるらしい


「レフィキアの許可があるなならいいわ エサはどうするの? 」

「 ”お肉” ならなんでもいいわ 最初は地面で育てて 大きく育ってもレヴィアくらいかな

そうしたらある程度自ら動いてあの少女の姿でおびき寄せて獲物を捉えて

更に成長して再び地面に定着するのそうしてあのような ”親樹” になって種を実らすのよ

しかもあの少女体ってね 人語が分かるし話相手に丁度いいの

「だっておねーさまっていつも外界にいるし忙しいでしょ 彼処も退屈だしね お・ね・が・い」

「それなら、いいわお肉はレヴィアに言ってちょうだい あなた達とレヴィアでちゃんと

面倒見るのよ 分かった? 」

「は〜ぃ」 と可愛い返事をして

あの ”親樹” から種を貰っていた

こうして レフィキアに初めて 愛玩動物ならぬ愛玩植物の仲間が加わることになった


 この魔物 ”トラファイド(希少変種)” が後にシーア達の冒険に多大な貢献をもたらすことは

まだ彼女ら一行パーティーは知らないことである 


 ここで、ミーアが食事の支度を終え戻ってきた

「あのぅ、シーちゃん? 御用は済んだ? 」

とかなり気を遣った物言いで恐る恐る聞いてくる。

「あら、ミーアお姉様 シーアお姉様との”御用”は済んだわ

わたしは、お菓子と紅茶が欲しいわ ふふ お屋敷の分も有るけどね

ねぇ、ミーアお姉様 私にも頂戴」

とラヴィアが言葉をわたしより先に取る。


「えっええ、いいわラヴィアちゃんもどうぞ」

と明らかな及び腰な物言いに

やはり彼女らの対応はまだ苦手なようだ

「あら、怖がらなくていいのよ  ミーアお姉様もすでに定命のことわりから外れて

私達と同類じゃないの それに仲間と認めているのに? 」

「まだ、ラヴィアちゃん達との付き合いに慣れなくて」

「そぅ?  変なの」

と素っ気なく応えるラヴィア ミーアがライブ・アーテファクト達の

扱いに慣れるにはまだ時間が必要そうだった。


 久しぶりのミーアの手料理に、此処が植物系魔物の巣窟の真っ只中ということを

忘れさせるくらいわたしは満たされた気分を味わう。 


「もうすぐよ この場所は、眠かったけどよく覚えているの」

幸い彼女に恐れをなしてか魔物は先程の豚犬一匹であった


 やがて少し開けた場所が見えて崩落した古代の遺構が視界に入る

よく見るとギルドの新人が言っていたとおり 白い魚が五匹程ふわりふわりとある一点を囲む

様に漂っているのが見てとれた。


 ただ一つ新人はウソをついていた、上司から言わぬように言われていたのか分からないが

この杜は、植物系の魔物の巣窟でとても軽い気持ちで

此処までたどり着けないだろうとは感じてはいた。


「ささ、あのお魚さんのとこ行きましょ 彼処にわたしの封櫃が有るわ」

と彼女は先導して、彼の場所へたどり着き

浮遊魚を目の当たりにする。


 一匹は、4匹の魚よりやや大きく、胴が長くヒレが3対ありそれぞれ筋肉質の基部のような

ものからのヒレがついている、尾ビレはひし形で

肌は石のような質感が有り威風堂々とした体躯である。


 そして、他の四匹は先の威風堂々とした体躯の魚とは違いやや細長く

鰓から突起のような器官が飛び出ていてゆらゆらゆれ

そしてなりより特徴的なのはその背びれであった、ひし形の背びれが10ほどずらりと並び

尾ビレと一体化して波打つように揺れている


 ラヴィアは、何やら早口で先の大きな魚と言葉を交わしていた

『あれは、神域言語じゃよお主には早口に聞こえるだろうが

あれでも普通の速度で会話しておるよ』

「そうなの? 」

『この前も言ったじゃろう 神域言語も一語一語が普通の一語の何万もの

情報量があるとな 久方ぶりに会話を聞いたわい』

「あれ、今の言葉に解釈出来るの? 」

『あれを同時には解釈出来ぬが

ある程度かいつまんでなら儂でも可能じゃがな非常に疲れるがな... 情報量が違いすぎるのじゃよ

神域言語と今代語ではな あ奴の会話が終わるまで待っておれ』

「えぇ、そうね」 とラヴィアの会話が終了し

「久方ぶりで疲れたー もういやあ

今回だけよ説明するの、今後は彼らが今代語で”ゆっくり”話してくれるって


あの大きいのは古代浮遊魚類 リムレール よ

わたしの守り手だったけどわたしが おねーさまと契約したから

守るべき新しい主人がほしいんだって其処で、おねーさまがその新しい主人ってことね

能力ちからは 薄い護りの加護を与えるんだけど、ある程度の物理攻撃から守ってくれるが

咄嗟の危機にしか効力がないんだってだからつまり、不意の攻撃や死角からの攻撃等は有効ね

後は、ほんの少しだけ”物理”攻撃から守ってくれるって

ただ、術攻撃はだめだって言ってるわ


後の小さいのは古代浮遊魚類 ランコーリ よあれはおねーさまも興味本意で触っちゃ駄目

相手に纏わりつきマギを奪うって、だたし殺傷能力はないから相手は

昏倒したり一時的な疲労感に襲われるだけだって言ってるわ


 まぁこんなとこかしら

それとおねーさまの右手小指のその指輪に住まわせてほしいとも言ってるわ

どうやらお仲間がいるらしいわね いいでしょ? 」

「えぇ、彼らが良ければいいわ」

 とわたしは  

「((アグワ・ピスケース))」 を唱え 水の双魚を呼び出す

「わぉ、おねーさまってこんな至宝級のお宝まであるの いつもの様に

あまりその凄さ分かっていらっしゃらないわね ふふねーさまらしいわね」


 と水の双魚と リムレール・ ランコーリがお互いくるくるまわりすぃーとまた

指輪に吸い込まれて水色だった色は所々が白の色が混じって更に神秘的な雰囲気

に変わる。


「さて後はわたしの寝台だけどこれよ」

とみると魚達がいたあとには大きな深皿を二枚向かい合わせたような

種のようなモノがあった。

大きさはわたしの寝台くらいでクロも問題無しと言う。


「ビヨンねーさま これ持てる? 」

とレヴィアはビヨンに頼み込んでいた。


[ えぇ、簡単ですよ...レヴィア ]

とあっさり持ち上げクロの転送陣に吸い込ませた。

<<レヴィア とりあえず空き部屋に置いててくれない? >>

とわたしは、レヴィアにお願いする

<<はーい、しーあねえさま>>

と既に待機したらしくすぐ移動した気配があった。


 帰り際、ラヴィアは先程の、植物系魔物トラファイドの少女に何やら話しかけた

すると、今まで碧色をしていた体色が草木が枯れると同様急に茶に変色して

しおれてしまった。


わたしとミーアは慌ててラヴィアに駆け寄るとミーアは 風陣ふうじんの指輪で

癒そうとするも

ゆっくり首を横に振った

「ラヴィアちゃん! 」

とわたしは思わず大声を上げて仕舞い大粒の涙を浮かべたラヴィアを抱きしめる

「シーアおねーさまぁ、あの子これが最後の種だったのね

ミーアお姉様、魔物なんかに癒やしの術をつかってまで助けようとしてくれるなんて

有難うね

あの子、幾星霜も幾星霜も彼処にいて

わたしを見守ってくれたのよ 

でもねでもねあの子わたしに最後にこれを託してくれたわ

きっとかわいがるからね 

あなたの種大切にするね わたし貴女の子きっと此処へ連れてくるからそれまでまっててね


名も無き、魔物の貴女あなた大地の懐にいだかれて冥府の王の袂へ

永久の安らぎと転生の環に導かれし魂は新しき種子に宿らん 


とラヴィアは、ライブ・アーテファクトとは思えない祈り? の言葉を発し

地面に膝を折り頭を垂れ長い接吻をした

その光景は、なにより高潔で敬虔な姿で、わたしとミーア・ビヨン・クローティアの脳裏に焼き付いた。


そしてささやかながら彼女? の亡骸を丁寧に弔い其処にどこからか摘んで来た小さな

名も知らぬ幼木を植えてわたしとミーアは


ともに、


女神リーンの慈悲の息吹が、献身な魔物にも届きますよう


と祈りを捧げる。


「ホントは、あの子も定命のことわりから外れた存在だけどあまりにも長い星霜を

過ごし過ぎたのね ゆっくりおやすみ」

と最後にポツリと言い


「さぁ、辛気臭いお話は終わり シーアお姉様これからどうするの」

と気丈に、振る舞っていたが彼女の涙は止まらなかった。


「あのわたしちょっと疲れちゃった お屋敷で休んでいい? 

後、植物系の魔物は襲ってこないと思うわ」


「えぇ、勿論よお買い物は明後日するわ」

「おねーさまって、優しいのね」

と言い残しラヴィアは、クロに吸い込まれていった。

『儂も驚いたわい ライブ・アーテファクトが祈りとはな

初めてじゃぞい これもお主の影響かの

どれ儂も一肌脱ごうかのぅ』

とクローティアは パチリ と指を鳴らす

「なにをしたの? 」

『なぁにこの場所をヒト共に荒らされぬようにな 強力な人払いの結界

を張ったのじゃ お主のめいあるかぎり決して解けぬやつをな』

わたしは、クローティアをいきなり抱きしめる

「やっぱり、クローティアって好きよ」

『これ、よさぬか どうせ何か儂に注文をつけるつもりじゃったじゃろ』

「へへ、わかっちゃった? 」

『ふん』

と立ち去る時に短めの黙祷をささげこの場をあとにする

そしてギルドに戻ってきたときはもう日は傾き、宿で夕食を摂り

部屋へ戻る

そして、

<<ヤンス、今いい? >>

<<おや、シーア様今どちらへ>>

<<今は、......ということよ>>

と此処に来た理由と経緯を念話で伝えた

<<そでやしたか、お疲れでやんした あとシーア様に待ち人でやんすよ>>

<<待ち人? >>

<<詳しいことはラストレのお宿で待つとしか伝えてきて居りやせん

刻限は無しとのことで>>

<<分かったわ、ベルゼは入りは明後日以降ね あとさっきの大賢者”ランドルフ”の件は

早急にお願いね。

これは最優先事項よ 銀の三日月の連中とギメルの遺跡で鉢合わせしたの

貴男も危ない目に合いそうに成ったらすぐ隠れなさいよ 分かった? >>

<<異性装の双子まで出張ってきやしたか 後の件は早速明日から動きますんで

シーア様は、ごゆるりと観光しててくだせぇまし>>

<<ありがと、貴男も無理をしちゃ駄目よ 吉報を待ってるわ>>

<<わざわざ、すまねぇっす>>

と念話を切る。

「あとは、お買い物とそれから......それから...あれでしょ...ん...」

と考えを巡らしているうちに、心地よい睡魔の囁きに意識をゆだねた。


次回 58話 浮遊大陸からの吉報

お楽しみに

活動報告に ”デカラヴィアと浮遊魚2種” を追加して

設定ラフのリンクを張りました 

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