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オルティア・レコード  作者: 南 泉
二章 〜 魔女と小さな銀の鍵 〜 ベルゼ浮遊大陸編 第一部
56/75

56話 浮遊大陸の噂

残酷な描写があります

 わたしは、ギルドの一角でミーアと食事を摂っていた。

すると、なにやら髪の毛がワサワサ反応するくらいには興味深い話声が飛び込んで来た


「なぁ、あの話ってホントだったぜ」

「あの話ってどの話よ? 」

「あの浮遊大陸での話だよ」

「って、まさか 竜の骨に植物が絡まって出来た島? ってヤツか? 」

「その、まさかさ」

「何でも”キリンズ”で浪漫を追いかけていた野郎がそのほんの少しを目撃したとよ」

「へぇ、してどんなだったって? 」

「それがよ、厳重に封印の結界があってよぉ 尻尾まいて逃げて来たとよ」

「ちぇ、つまんねぇの」

「いやいや、確かに奴さん逃げて来たのには変わりねぇがよ さすがはベテランだぜ

得るものも得て来たとさ」

「ほぉ、 教えてくれよ」

「おぉっと、ここからは大きな声ではいえねぇな 」

「さっきから聞き耳立ててやがる小娘が二人居るぜ 彼処の隅によ」

とチラリと彼らの視線が突き刺さる。


 (流石はウル族ね感づかれたわ)

わたしは、何気ない風を装い居住まいを直す


「あの娘、鋭いな何気ない風を装って関心を反らしやがったぜ」

「小娘なんぞに聞かれたってどうせ”ベルゼ”にゃまだまだ行けやしねぇって

あんな何処かの令嬢のような格好なりしてるヤツになんか聞かれたって

お屋敷に帰って母親にでも自慢気に語るぐらいだろうさ」

と一人はわたしの意図に気付きもう一人は気付かない様子だった。


 今、ここで素知らぬ振りを決めて立ち去るか、彼らの話を聞き取ろうともう少し居座るか

思案していた


 数瞬の逡巡の後、わたしは彼らの元へ近づいた

「あのぅ、ちょっといいですか? 」

と恐る恐る声を掛ける


「おぅ、何だい譲ちゃん? 何か用か? 」

と先ほどの気配に感づいたウル族の男性がわたしに視線を向ける。

盾役タンクらしい筋肉質な体躯、多くの漢の勲章を浅黒い肌に刻んだ

太いニの腕、分厚い胸、盾役タンク中の盾役タンクがそこにいた


「おっと、勘違いしないでな オレはお嬢ちゃん達に敵意はねえよ

ただな、他人の内緒話に聞き耳とはあまり感心しないな」

と怒る風でもなく飄々と論す。


「どうして、わたしが聞き耳を立てていると? 」

「そりゃ、その髪だよ いかにも聞き耳立てていますと言わんばかりだっだぜ さっきからな

がははっ」

とエールの大きな持ち手付きの樽をゴトリとテーブルに置く


わたしは咄嗟にワサワサ動いている髪を手で押さえる


「令嬢様かと思ったが、その得物を見るによお前さん”召喚士”だな

その髪はまぁなんだ 召喚士の術か? 」

「そっそうです コレは ”術” です無意識に発動してしまって」

と腰に結わえたクロに目線を移す


「はい、わたしは”召喚士”です あっと 

わたしはシーア シーア・オブライエン シーアでいいですよ えーと......」

「へぇ、”家名持ち” かい 見えねぇな......

おっと、オレは ”ケインズ” だ此方はオレのダチの商人の ”ラリム” だ」

と会話をはさみつつ挨拶を交わす

わたしも彼も、お互い腹の探り合いをしながら。


「まぁ、せっかくだ相席といこうぜ いいよな? 」


(さぁどう出る? 、それとも軽くあしらわれるかしら? 先ずは乗ってみるべきね)

とわたしの勘がささやく

「えぇ、わたしはいいですよ ケインズさんそれにラリムさん」

「そうと決まれば おーぃ姐さん 追加頼まぁ 嬢ちゃんらは 果汁ジュースと甘味かな? 」

「えぇ、但し追加のお代は全てわたし持ちでお願いしますね 

更に特級エールの持ち手付きの樽3つでお願いします 

ふふこれは情報料と言うことにしておいてくださいな ケインズ様」


「うわぁ、こりゃあ参った一本取られたぜ 好し、ここはオレも折れねばなるまいな」

さっきの噂話包み隠さず教えてやらぁ ラリムよオメェも聞いていきな」

とラリムさんもコクコク頷く


「おぅ、そうしていきな商売の”ネタ”見つかるかもだせ

所でそちらのケット族の嬢ちゃんと”オートマト”の嬢ちゃんもシーアの一行パーティーだろ? 」

ここで改めてミーアとビヨンが挨拶をする。

「ケインズ様、”オートマト”がいても驚かれないんですね。 」

と当たり前の様に挨拶を済ませたケインズに聞いてみた。


「あたぼうよ オレの一行パーティー頭目リーダーとしていろんなヤツ抱えてんだ

”オートマト”ぐらいでどうのこうのと煩く言うようじゃ務まらねぇ

ウチらにも異性装好きの姉弟がいてな見た目はまるっきり兄と妹だぜ

だがよ冒険者としては二人とも優秀だぜ、あと優秀な斥候役の半魔族の女もいるな

全部がオレの家族さ」

そこへ、特級エールと果汁と甘味と追加の料理がテーブルに並ぶ。


「おっ来たきた特級エールなんざオレの稼ぎでも中々おいそれとは飲めねぇ

先ずは手付に一口っと......  ......っつはぁ〜うめぇ〜 さてと喉がご機嫌になった所で

あの話聞かせてやるぜ ちくと話ぃ長くなるがな」

ちびりと特級エールを呷りながら話す


「竜の遺骸に蔦や植物が絡まって出来た浮遊大陸ベルゼ第七層の、ベテランの間では

封印地域 ”ギアトレス” と言われていてな 何でも偉い昔邪道に堕ちたヤツが

支配していた島毎封印されたってぇ話だがよ」

わたしは固唾を飲んで次の言葉を待つ


「ソイツは、ありったけの術ぶっ放してよ結界を破ろうとしたんだが

何がどうしたのか 一瞬だけ封印が揺らいだらしく”一部”を見れたんだと

つい昨日か一昨日の話さ」

(もしかして”ギメル”攻略に関連があるのかしら? )


「してな瘴気が切れて様子を見て腰が退けたんだと」

「何か目撃されたとか有りませんか? 」

「シーア、やけに食いついてくるな まぁ、特級エールの礼がわりだ

ヤツが言うには見たことも無い 闇の眷属や冥府にしかいない魔物果てはドラコ族までいたらしい

してな皆一様に  ”ァタウェー” と叫んでいたそうだ

オレには何の事か分からねえがな

そしてまた元のように”島”毎見えなくなってしまったというわけさ

その事をギルドに報告しても一笑に付されてな”報告記録”には残ってもいねえだろうよ」

(まさか ”ァタウェー” の居場所がつかめるなんて 特級エール代としては

破格の情報だわ)


とわたしはミーアとビヨンと視線を通わせる。


「あのぅ」

「まだ聞きたいことあんのかい オレの”ネタ”は品切れだぜ」

「いぇ、その封印とかに詳しい人物知りませんか? 」

「なぁ、シーアそろそろ お前さんのネタ明かしてくんねぇか? やけに食いつくじゃねぇか

それに、お前さんの目 何か算段を踏んでいるとオレは見たね

こう見えても オレは盾役タンクだ些細な気配や機微には鋭いんだぜ

此処が駄目なら”密談部屋”に移ろうか? 」

 どうやら腹の探り合いは彼に軍配が上がったらしい

「いえ、それは結構ですわしかし、わたしは既に”浮遊大陸 ベルゼ”に渡っておりますの

どうしても”ある依頼”を成し遂げねばなりません。 それで、

先の通りつい噂が耳に入り気がはやり、後の顛末はケインズ様の承知の通りですわ」


「こいつぁ、おどろいたまさか通行許可持ちだったとはな、

アレ持ってるかい なぁにチラッと見せてくれるだけでいいぜ 

オレはマギの操作が苦手でな このまなこで確認したいんだ」

にぶい金色の目を指差す


「えぇ、通行税の証の玉なら今此処に......」

とタグリで受け取った玉を見せる

「これは本物だな、俺もシーアのようなが渡ってたとは思っても見なかったぜ

まだまだヒトを見る目が足りんな

さっきの件だが賢者 ”ランドルフ” を尋ねてみな半分ヒトをやめている爺様さヒントがつかめるかも

知れんぜ」

と言う


「有難うございます。 これで今後の方針が見通せますわ ケインズ様」

「へっ、礼には及ばねぇお互い”冒険者”だろ? なぁ髪を操れる”召喚士”さん」

「ふふっ、これ以上の”ネタ”はケインズ様の”覚悟”を問わねばならなくなりますわ」

「ふん、てぇいした肝だぜ」

とその時、ドヤドヤと他の冒険者が依頼からあがって来る気配が押し寄せる

「おっと、外野がいやが煩くなってきたぜ 此処でお開きといこうせ」

「えぇ、ケインズ様に女神”リーン”の息吹の加護がありますよう」

と言葉を向ける

「おぉ、お優しいことで、ベルゼで逢う機会があったらいいな......ではな」

と踵を返そうとその刹那。

「シーア、 ”ヴェネイーラ” と ”ネリスティーナ” には気を付けな」

「えっ? 」

とたった一言、後は素知らぬ顔でラリムと歓談を始めていて、わたしの最後の言葉には何も答えは

返ってこなかった。


 この時、シーアはこの二人がシーアにとって宿敵になろうとは

さしもの女神”リーン”も推し量ることが出来なかった。


二人の名を頭に刻み、ギルドの空気は食堂から酒場へ変化していく


明後日にはニース達が戻って来る

わたしは軽い吸血衝動を感じながら沐浴を丁寧に済ませて、今では当たり前のように

長い髪を梳き、櫛を通す夕刻から黄昏そして宵闇へと陽の変化につれわたしの髪は虹色に揺らめく


「シーちゃん? 」

「なぁにミーお姉様」

「私、お屋敷で修練していい? なんかアレ欲しがってみたいだげど? 」

「えぇ、今は、いいわだいぶ衝動の制御が慣れてきたみたい 此処オルティアには

”エリス”も居るしね ふふっ」

「あまりガッつくのは”お行儀”が悪いわよ」

「はぁい、お・ね・え・さ・ま」

「段々、コトンちゃんに似てきたわね」

とクロの中に吸い込まれて消える


[ シーア、先程のケインズ様の言っていた ”ヴェネイーラ” と ”ネリスティーナ” って

何者でしょうか? ]


「今はなんとも言えないわ 誰が来ようがわたしは降り掛かる火の粉が有ればそれを払うまでよ」

[ そうでしたね、シーアはいつもこんな感じでしたね ]

とビヨンが目を閉じようとした時


<<<<きゃーーぁ、アレ何? どうして貴女がそんなモノ持ってるの? しーおねーさま早く

レフィキアに来て!! >>>>


とコトンとレメテュアのただならぬ念話飛び込み思考を遮る

わたしはビヨンと素早く視線を交わし クロのレフィキアに飛び込む

 

 屋敷に到着するやいなやコトンとレメテュアが血相を変えて駆け寄りわたしの後ろに

バッとしがみつく

”あの”二人が血相を変えるなんて何ごとがあったのか?


「どっどうしたの? 貴女達が血相を変えるなんて? 」

と慌てて問うと

「「だってだって、ミーアおねーさまがミーアおねーさまがぁ」」

と 取り付く島も無いくらいに狼狽している

「ミーアお姉様が何かしたの? 」

「「あれよアレ何でアレミーアおねーさまが持ってるの」」

と二人共武器を構える勢いである


「待ってまって、何がどうしたの落ち着きなさい 二人共! 」

とキツめに諌めると

ようやく武器の構えを解き

「「あれよ」」 とビシリと指差すその先には

右手から”宿り木”の武器を出し剣・盾・そして網状に変化させ感触を確かめていた

「「や・ど・り・ぎ......っよ」」

「宿り木? 」

「「そうあれは、私達ライブ・アーテファクトが本能的に恐れるるモノなの」」

「あれが? 」

「「そう、あれはどんな強大な能力ちからを持っているライブ・アーテファクトでも

あの武器の前なら赤子のようなそっ存在よぉ しかもしかも、アレおねーさまのマギで

強化されてるじゃない! 」」

とかなりの動揺をしていた あのコトンとレメテュアがである


わたしは事の顛末をコトンとレメテュアに話して聞かせた

決して、ライブ・アーテファクト達に向けてでは無く

あくまであれは、悪しきモノから身を守るためだけのモノだと

「「それでも、怖いものは怖いの! 」」と

納得が行かない様子


「「シーおねーさまはアレ怖くないの? 」」

「えぇ、わたしは平気よ」

とあっけらかんと応える


「「やっぱりおねーさまって、自分がいかに凄いか自覚ないのね」」


と呆れ顔。


「ソレはともかくミーアお姉様だって”修練”をしないと困るでしょ? ねっねっ? 」

と子供をあやすように論した


「「だってだって」」

と口を尖らす

「まぁ、わたしがミーアお姉様と話をつけてくるわ ふふ貴女達も来る? 」

「「しーおねーさまぁの いじわるぅ〜」」

とわたしがミーアに近寄るとサッと木陰に身を隠す

ミーアに近寄り事の顛末を話すと


「えっそんな事がでも”修練”はしないとだし 困ったわ 取り敢えず

”視界”から見えなくなればいいのかしら? 」

とミーアが彼女らとわたしとの会話と同時に念話でも話したらしい

彼女らはコクコク と激しく首を縦に振る


「仕方がないわ広い此処でやりたかったけど今は見えない片隅でやるから

それで赦して貰うしか無いわね」

とミーア言うとこれは聞こえたらしい 二人共、ビシリとミーアを指指し

盛大に ベー をして屋敷に入っていった

「もぅしょうがない達ねぇ、後で叱っておかなきゃ」

と言うと

「いいのいいの気にしないしないから うふふでも あの達に意外な

”弱点”があったなんて ふふっ」

とミーアは孤児院の職員の様な

かなわない相手に苦手な物を見つけた、姉のようなどちらともとれない眼差しを向けていた。



<<ついでだから今夜はレフィキアで休むわビヨン、クロをお願い>>

<<[ えぇ、シーア任せてください私ビヨンは何時でもシーアとクロの

お傍にいます ]>>

と念話でやり取りをする


 さてミーアはコトンとレメテュアが居なくなり騒ぎも収まってようやく”修練”を

始めていた


わたしも落ち着いた空気に促され睡魔が忍び寄り小さな欠伸を一つ

幸いにも以前の様に灼けつくような吸血衝動はまだのようであった。


自室に向かいネグリジェに着替え寝台に潜り込み意識が沈みかけたその時、

ドアのノックが聞こえた


「だぁれ? 」

「しーおねーさま れめよ れめを中に入れて」

と普段のレメテュアとは違い幼子のような口調でわたしの返事を待つ

「えぇ、いいわ いらっしゃい」

と入室を許可すると

レメテュアは、片手に大きなちょっと不気味な黒い兎のぬいぐるみの耳を

掴み入って来て寝台に近付き


「ねぇ、しーおねーちゃま れめを抱っこしてして」

と甘えて来た

「ふふ、可愛い抱っこしてあげるわ」と

寝台に靴を脱ぎ潜り込んできた

「レメちゃん、駄目じゃないミーアお姉様を脅かしちゃ」

とやんわり諌めると

「だってだってアレ怖かったんだもん 

コトンねーさまにアレを向けちゃどうなるかレメだって分からないだもん」


「ミーアお姉様にも修練する時間を与えてやってね ね」

「それはわかるけど 怖いものは怖いの 視界に入らなければいいけど

チラッとでも見えると レメ達ライブ・アーテファクトは大騒ぎになるわ」

「どうしてそんなに怖がるの? 」

と先の騒動から不思議に思っていたことを聞いてみた

「レメだって分かんない けど、レメ達ライブ・アーテファクトに姿と自我を

与えた”おかーさま”が居るの全てのライブ・アーテファクトの始祖たる

”おかーさま”は特別な”宿り木”から産まれたとされるの だから

怖いんだと思う」

「その”おかーさま”って 今何処に? 」

総てのライブ・アーテファクトの始祖たるライブ・アーテファクトとはどんな人物なのか

興味が湧く


「今は、知らない ......それよりレメをぎゅっとしてして」

と懇願され思考を中断し色の濃いひと房の髪でレメテュアを優しく巻きつける

「いーきもち れめ眠くなっちゃった」

「ふぁ〜わたしもよレメちゃん」

ともとより睡魔が囁いていたのである 

わたしとレメテュアは双方同じ寝台に意識を預けた。



※※


同刻、王都ギルトス王都大聖堂内では陰惨な光景が繰り広げられていた。


 ラクティカスが、背はシーアと同じ位の、

一人のみすぼらしい身なりだが可愛い面立ちの少女を連れて

私室の地下の沐浴場に入っていく

するとそこには二人の美しい少女が待ち構えていた


 一人ヴェネイーラでもう一人背はシーアと同じくらい

髪はオールドオーキッドでツーサイドアップで髪を

両脇に纏め残りの髪は足首まであるロングで毛先がくるくるカール

していて所々に小さなリボンを散りばめている

 瞳はパウダーピンクの大き大きな目

唇はオールドオーキッドで透明な口紅でつややかに濡れそぼっていて

手首が隠れるほどの姫袖からは、長い黒い爪化粧をした指がチラチラと覗く

足はフリルのソックスに、リボンパンプスの妖艶な雰囲気を纏っている少女が

ラクティカスに何やら可愛らしい声で指示を出していた。


「後の始末はネリス達がやるの ラクティは出ていって頂戴! 」

「”ネリスティーナ” 様 これはこれは今宵も一段とお美しゅうございますな」


 ネリスティーナと呼ばれた少女は、

「当たり前じゃないネリスが美しいのは当たり前よ いまさらのように

言わないでいいわ」

「そうでしたな ではわたくしめは執務がありますので どうかゆるりと」

とい言って下がる。


 ネリスティーナは

「ヴェネまずは、アナタが下ごしらえしなさいな お手並み見せてもらうわ」

「はぁい」

とラクティカスが連れてきた少女に

「先ずは身体からだを綺麗にしてきてよね これじゃ家族にふさわしくないわ」

と囁き少女が沐浴が終わって用意した可愛い服に着替えるのを待ち

沐浴場から少し離れた石造りの部屋に連れ立っていく


「貴女は今日からヴェネとネリスの家族になるのよ 先ずはお粧ししなきゃネ」

とヴェネは優しく囁きかける

 部屋中の赤黒いシミを見て怪訝そうな視線を泳がせながらも

少女は据え付けの鏡台に座った。


「どぉ、可愛いワンピースドレス ステキでしょ 髪も梳かしてあげるわね」

少女は初めて着る豪奢な服に戸惑いつもレースやフリルを弄る

その後ろでヴィネは瞳にくらい輝きを秘めて少女の髪を梳かし始める


しゅるり、しゅるり


と心地よい単調な音が響く

やがて

少女は目を細め気持ちよさそうにして、ヴェネに身を委ねていた


「ふふ、ヴェネそろそろ頃合いかしらね」 と 可愛い口調で囁き

ネリスティーナが視線をヴェネイーラに送る

ヴェネイーラは

「さぁさ立って 可愛い貴女をもっと良く見せて頂戴♡ 」

と少女を立ち上がらせ

て取って代わって今度はヴェネイーラが鏡台の椅子に座る


「さぁ、抱っこしてあげるわ此処へどうぞ」

と広げたスカートの上に座るように促し

少女は嬉しそうに座り、ヴェネイーラはやけに力を込めて少女を抱き寄せた

途端に少女の顔が青ざめていく

スカート越しでもはっきり分かる違和感を尻に感じたからだ

「これってまさか!? 」


 とここで始めて、声をあげた少女は此処が何の部屋かそして

姫袖から見え隠れするネリスティーナのワンピースドレスの股間の違和感と

ヴェネイーラのスカートの違和感が同じである事に始めて思い当たった。

「貴女方っておと......ッ」

「おっとと、危ないそれ以上は言わせないわ」

とヴェネイーラに口を塞がれる。


「「うふふごッ明察ぅ 私達って可憐で可愛い少女の オ・ト・コなの♡ 少女でもなんでもない

ふつうの オッ・トッ・コッ ふふ...あぁん こうして可愛い少女のフリして

かわいいむすめを騙す...これよこの感覚よ 当然ここもオッキクなっちゃうよね」」

と二人の少女もとい、二人の”男”にあざ笑われる。


言葉が続かない少女に更に追い打ちをかけるようにヴェネイーラが言葉を継ぐ

「しかもそこに立っている美しく可愛いオンナノコは産まれた時から女性名を付けられ

徹底した”少女”教育をうけたヴェネのお父様よ ヴェネもそうだけどね

どぉ可愛いでしょ? ヴェネちゃん達って

貴女はオ・ト・コ二人に飛び込んだ可愛い”エサ”ってわけ」

言葉の意味を理性が理解したときはすでに


ネリスティーナはニコニコしながら可愛い姫袖を股間の辺りに添えていて

違和感がはっきりと形を作っていた

「ネリスティーナねぇ もっともっと可愛く綺麗になりたいの♡ オンナノコなら

分かるでしょこの キ・モ・チ」

とネリスティーナは指を咥え上目使いで少女を舐める様に見つめる


「イヤァァア 離して! 」

と自分の状況を把握した少女は叫ぶがもうとき既に遅く

ヴェネイーラが、がっちりと少女を抱え込む

「ふふ駄目よぉ貴女はこれからネリスティーナのお人形さんごっこ

のお人形さんになって貰うんだからぁ♡ 」

とネリスティーナは股間の違和感を見せつけながらニタニタ嗤う

「このネリスティーナが一番よヴェネイーラ それではごめん遊ばせ ネリスのかわいい

”ご馳走”ちゃん♡ うんしょうんしょ」 とネリスティーナがスカートをめくり上げて


しばらく湿った音が続いた

数刻後


後にはついに、声も出せなくなった服が乱れた少女が転がっていた。

そして

「後ねぇネリスねぇ貴女のきれーなお肌も欲しいの♡ ついでに貰わよ 

これ被ると美容にいいんだから だからネリスにちょーだいね♡ 

おおっと意識は失っちゃつまんないわ ヴェネちゃん噛んで意識を保たせなさいよ

後服は脱いで貰うわ」

と朦朧とした少女に囁き

手慣れた手付きでヴェネは服を汚れないように脱がせ下着姿にさせる


そして髪の毛を乱暴に掴み引き寄せ

「わかっているわ ネリスお父様」

と哀れな少女の首元に牙を穿つ、これで少女は従者と化し簡単には意識と理性を

手放せなくなった。

そしてネリスティーナの黒く長い爪が肌に刺さりツーと幾条もの赤い線を引くそうして


ズルリ

 

と果物の皮の様に剥かれてそれでもなお、少女は意識を手放せなかった


 気が狂いそうな激痛の海の中で、ぼんやりと見た光景は自分の肌を”着る”

一部以外は完全な少女なネリスティーナがそこにいた


「うふふふ どお驚いた? 幾星霜にも渡る”美容”の効果かしら ネリスねぇ

オ・ト・コなのにどぉしてかなぁ? お胸もあるのよ ねッこのブラも可愛いでしょ」

と外観年齢相応の淡い双丘も見せつける


ずにゅる、ずにゅり と足先からタイツを穿くように肌を”着”ていく


「うんしょ うんしょ 貴女オンナノコのくせにお胸無いわね

ちょっとお胸がキツいわ、それとやっぱりアソコがねぇ こればかりは

強引にっと ふぅこれで好しっと うふ なかなか着心地いいわ」

と一部と髪以外は完全な哀れな少女が目の前に立っていた

「ヴェネ、髪をまとめてちょうだい」

「はぁい、お父様」

と外観は先程の少女の姿の”ネリスティーナ”がヴェネイーラに指示を出し髪を三つ編みにまとめる

「これはこれでいいわね 」

と自分のドレスをヴェネイーラに預け簡単に沐浴を済ませてから

少女用に誂えた服に着替えて

「後の”残り”はあの子達の”エサ”にしなさいな”」

と少女になり変わったネリスティーナは部屋の片隅で身体からだを触りながら

四人の、美少年を指差す


「ぉねがぃ......もぅ殺して.....ぇ...ぅ......」

と意識を手放そうとすると

「だぁめ♡ こんどはヴェネの番よ 可愛いお顔無くなったからあとは あの子達に”エサ”をやる番よ」

と四人の少年がゲス顔で涎を垂らし待ち構えていた


 四人のライブ・アーテファクトの少年は、モジモジして気が急いているようだった

「いいわ好きに”嗜好品”取っていいわ」

とヴェネが言うと四人の少年達は哀れな少女に群がり”嗜好品”を意識に関係無くもぎ取る

ようやく意識を手放し只の肉塊と化した少女のかろうじて残った目からは

一筋の涙が零れ落ちて、床に新しいシミを作った。


「ヴェネ、今回の手筈はまぁまぁよ ネリスティーナの”息子”としてはね 貴女も早く

綺麗に剥ける様に練習なさい」

と哀れな少女の姿をした”ネリスティーナ”が言う


「はぁ〜ぃ おとぅさまぁ♡ 、ところでお父様のお耳にシーアの噂は聞こえてきませんか? 」

と先のシーアとの邂逅が気になったヴェネイーラにネリスティーナは

ビシリ と突然頬を張る

「何をするの!? お父様? 」

「噂は聞こえてきませんか? ですってシーアの件は ヴェネちゃんに一存している筈よ

ネリスちゃんは別件で忙しいの 分かる? 貴男を”オンナノコ”として

そして、我がヴァン族の振興氏族として

社交界のお披露目デビューが近いの 分かるでしょう シーアとやらを見つけさせるのも

始末を任せるのも”経験”を積ませるためなの!! 何? またオッキクしちゃって シェーラに

教育されたいの? ねぇッねぇッ!! 

シェーラはホントに良い娘よ 今でもシェリエルのところに通い加虐嗜好を磨いているそうじゃない

ヴェネちゃんとは大違いだわ

どうしてこのネリスちゃんみたいに”オンナノコ”らしく出来ないの!! 

それにそれに、レースやフリルが乱れて居るわ居住まいをきちんと正しなさいッ!! 」

と更に頬を張られる

はっきり言ってレースやフリル云々は言いがかりだった


「ごめんなさい、お父様二度と頼ろうとはしません”結果”だけをお持ちします」

「ふん、最初からそう言いなさいな まぁ直ぐって言っても

ヒトの感覚からすればずーーっと先でしょうけど

まぁ今回はこの可愛い肌の持ち主を連れて来たから

これはご褒美よ」


といきなりネリスティーナはヴェネイーラの唇を奪い

ヴェネイーラの下半身に手を添える


「あぁん♡ 」

とヴェネイーラは可愛い嬌声をあげた。


 程なくラクティカスが戻り

「ネリスティーナ様、お人形遊びは終わりましたかな? 」

「えぇ、今回のお人形は最後まで理性を保っていてこの肌も最高に

いい状態で手に入ったわ

今回は特別に後の残骸を片付ける”名誉”を与えるわ

好きになさい」


「はっ、久方振りですな」

とラクティカスは”エサ”に飢えた犬の様に元少女の残骸を跡形もなく

綺麗に”片付けた”。


 女神の御神楽でこのよな陰惨な事が時々、行われていていようとは

ラクティカスに密かに、懸想するノージェには及びも付かない事だった



※※


 わたしは一夜明けてまだ眠っているレメテュアを寝台に残し

外で修練して居るミーアに声をかける


「どう、お姉様あの達騒ぎは起こしていない? 」

「うん、まだ起きて来てないからなんとも言えないけど

視界に入ると厄介だから此処でやるわ あの達に此処には

近づかないように言ってくれると助かるんだけどな」

「えぇ、あの達に言い聞かせておくわ」

表の庭には彼女達のお気に入りのテーブルや木陰などがある場所があり

幸い此処は視界から完全に外れていて

声は聞こえるが、何をどうしても目には入らない場所だった。


 後、どうしても広い場所でやりたい時は寝て居る間を見計らう

必要が有るが彼女達は夜は早くに、寝台に就き昼近くまで起きてはこない

しかも、その習慣が狂うことは無いとレヴィアから聞いていた

なかには習慣が違うライブ・アーテファクトも居るだろうがその時はその時である


「シーちゃんニース様達は明日でしょうその後はどうするの? 」

と予定を聞いてきていた


 わたしは、昨日のケインズとの会話を思い出していた


((( あのな、シーア? おメエさん 剣術の心得はあるかい? )))

((( いいえ、わたしは術特化で剣の心得は何も その術も我流で...... )))

と言い淀む


((( そうかぃ これはな、オレのお節介と思って聞いてくれ、オレの一行パーティーには

術士もいるが皆、剣の心得もあるんだぜ 世の中には術や召喚獣だけでは乗り切れねぇ

局面ってのがあるんだよ そこで最後の最後に頼りになるのは

やっぱり”自身の力”で切り抜けられる”武器”なのさ

わたしはとっさに血の鞭や短剣を思い浮かべる。


((( おっと勘違いしちゃこまるのはオレが言っているのは”物理的な”武器さ )))

(((”物理的な”武器?_))) 


(((そうさ そこのミーアが色っぺぇ太ももにいている短剣のような...な )))

チラリとケインズの視線がミーアに動き、ミーアは、顔を真っ赤にしてスカートを正す


((( マギで作り出した武器は確かにえぇが攻撃が当たると術者に

直接響くからな 痛み慣れしてないと折角の術で拵えた武器の威力が

弱まってしまうからな そこで役立つのがマギに頼らぇ物理的な武器さ

武器とは言ったが要は剣・槍や斧・棍棒などの物理武器だな これぞ”漢”の浪漫って言いたいが

嬢ちゃんでも一つは扱えねと そこのビヨンやミーアの足引っ張る事になるぜ

その二人も存分に”力”を出せねぇし、良い武器持っていても存分に生かせねえぜ )))

わたしは、思い当たることが有り思わず髪が反応してしまい


((( シーアって分かりやすいよな ガッフハハァ ゲフゥッ)))

とエールでむせながら笑う

((( ともかくだ一考には値するんじゃねぇかな 他人のオレが言うものもなんなんだがな 

まぁ今のは、特級エールで酔った勢いの戯れ言ということで聞き流してくれや 悪かったな )))


とわたしは、それをケインズの”戯れ言”と聞き流すには、聞き流せない何かを感じていた。


ふと意識が現実に戻り


「そうね、わたし剣術を学んでみようかしら 武器屋を見て回りたいわ お姉様」

「えぇっ、シーちゃんが”武器屋”ですって 驚いたあ てっきり服飾店巡りするものとばかり

......で 得物の姿イメージはあるの? 」

と聞いてきた


「そうね、短刀と鞭を兼ね備えた武器がいいなぁ」

とぼんやり姿をいうと

「う、嫌なヤツ思い出したわ」

「嫌なヤツ? 」

「そ、ベルゼで話したじゃない”ニール”ってヤツよ彼は”蛇腹剣”の達人よ」

「ニール? たしか異性装の男性だっけ? 」

「そ、ソイツ でソイツの得物がまさにシーちゃんが今言っていた短刀と鞭を兼ね備えた武器

”蛇腹剣”よ」

「”蛇腹剣”? 」

「そうね、具体的なブツは武器屋で見た方が早いわ」

と今日は服飾とは縁遠い”武器屋”を見ることで二人の意見は一致した。


早速、レヴィアにアーテファクトの少女達の世話を任せ

8の月に相応しいトリンデ着てお気に入りの、袖なし(ノースリーブ)で肩紐だけの

ワンピースに着替え足は素足につま先の開いたパンプスに身支度を整えて

レフィキアを出る


 わたしは、ミーアに武器屋の同行を頼むと

「私の馴染みがあるの、其処になら有った筈よ」

トルティアの西郊外の武器屋”大熊の手”に入る


「おぅ、ミーアか 其処の横に居るのが”シーア”か? 」

とやはり熊のような体躯のウル族の男性が現れた。


「えぇ、 ”ギタリ” さん久し振りね そうよ此方が私の妹の”シーア”よ」

「シーアです ギタリさん 」

「おぅ、宜しくな ところでミーア、最近短剣の調子はどうだい? 見せてみな

調整してやるぜ」

と言ってミーアが”アルゴルの牙”を見せると

「おっ、ついに新調しやがったな 前のヤツ刃が、ちびてきてそろそろオレも此処のお勧めを

売りつけようととしてたトコだったんがな。 ちッ先、越されたぜ」

と軽口を叩く。


「ふふ 残念ねでも これ凄いのよ...詳しくは言えないけど」

「分かってらぁ どれどれ、かなりの業物だな 迷宮でか? 」

とためすすがめつギタリは手にとって観察する

「ふふ、内緒よ でも迷宮では無いわね ちゃんとドワ族の手に依るものよ」

「ほう、いい腕しやがるなまぁいいわ 手入れはどうしてる? 」

白金しろかねの星砂をまぶした布で 磨き込むだけよ」

「これは、また贅沢な話だな なぁよかったら オレにも白金しろかねの星砂少し

分けてくんねぇかな その代わり其処のシーアの武器代はチャラに

してやらぁ」

「いいわ白金しろかねの星砂なら”たんまり”と有るから」

とミーアは少し大きめの”白金しろかねの星砂”が詰まった革袋を ギタリに渡す。


「うひょーすげえ ありがてえこれでオレの店の品揃えが増えるってもんだぜ」

としばらく旧知の仲のような会話が続く


「おっとごめんなシーア... ...あんたの武器だったな ほう今のアンタの得物は

魔導書ってことは 差し当たり ”召喚士” ってぇとことだな 戦士に鞍替えか? 」

「いいぇ 、術士が術に頼り切らない方がいいってある人に言われて

補助武器として ”物理” 攻撃も出来たほうがいいかなと思って

とりあえず”練習用に”ひと振り欲しいの 」

「ほう ソイツは中々出来るヤツだな アンタもいい心掛けだ とかく術士は 術に頼り切る傾向が

あるからな 尤も”物理系を選んでる奴らも似たようなモンだがな ガハハ 

...で得物は決めたのかい? 」

と武器種を聞いてきたそこで、わたしは

「”蛇腹剣”が欲しいの 術で短剣と鞭があるから使えるかなと思って... 」

「そうだな蛇腹剣なら女の腕でも力に全面的に頼らないでダメージを与えられるから

いいかもな

但し効率よくダメージを負わせる技巧が必要だぜ ただ鞭を振るようにはいかねえ

後で、簡単な手本を見せてやらぁ」

と棚に有った素朴な作りの蛇腹剣を渡される


ソレは少女の躰になってからは元より男性の時すら

手に取る機会はなかった一振りの剣が手に握られる

一見ひと振りの片手剣に見えるが刃に幾筋もの切れ目らしきものがあり

 柄には親指に当たるところに丸い出っ張りがあった

「先ずは通常は普通の剣と使えるし、 その出っ張りを押してみな」

とギタリに言われ、ぐいと押し込む


 するとシャラン と軽い音をたてて切れ目から刃が分かれてバラけるも

中心に細い紐状なものが通っていて、多数の刃片が付いた鞭の様になる

「これは通常の鞭の様に使うんだが ちいと技巧ががいる ソレは後だ

もう一回そこを押してみな」 と言われ

出っ張りを押し込むと

カチャン と軽い金属音が聞こえ元の剣の姿に戻る。


「業物や迷宮産だとその出っ張りが無く、持ち主の意思に従って剣に成ったり鞭に成ったり

するし その弱点でもある芯線しんせんが特殊だったりとかするのさ

これは安物だしあくまで”練習用さ”5本まとめて持っていきな」

と5本まとめて白金しろかねの星砂の対価として受け取る

「手入れは そうさな其処のミーアにも聞くんだな」

「えぇ、シーちゃん後で教えてあげるわ あと手入れ用の”リーヴ油”も頂戴」

「へぃ毎度有り」

「ってこれは”おまけ”じゃないのぉ ギタリ」

「へへへ これはこれよ 此方も”商売”だからな あと壊しても気にすることぁねえから

あとはちゃんと”お代”を頂くぜ あとは師匠は自分で探しな

オレは”武器”を売るのが仕事なんでな でもちょっくら演武をしてやるから

あの量の白金しろかねの星砂だとちょっとこっちがボッタグリ過ぎ...いや何でもねぇ......おい

店番頼むぞ」

と丁稚奉公の少年に代わる


「此方きな 今日は、ミーアが居るからよぉ 特別に演武を見せてやる 」

とギタリの頬がだらしなく緩み

実にわかり易かった。


 わたし達は裏庭にまわると ヒトの形をした石と木が何体か立っている

「あっちの”石人せきじん”は使わねえ あれは”打撃系”用に誂えたモノさ

今回使うのは此方の”木人もくじん”さ」


と50歩ぐらい先の木人を見据え

ギタリが蛇腹剣を構える

途端に姿が見えなくなりわたしはミーアの視線の動きでようやく動いたと認識出来た

ほどだった。


彼は、一体の木人の前に姿を表すと剣の間合いに入ると

一閃ニ閃と一回は袈裟斬りに返す動きで逆袈裟斬りに斬る

あっという間に木人の躰に大きな☓の印が刻まれた


「これは通常の”剣”だなシーアもこれは見たことあるだろ」 と

大声で叫ぶ

私はコクリと頷く


「これからがこの武器の真骨頂だぜ」

、と今度はミーアの視線を追うと私から20歩ぐらいまで退いた

つまり木人から30歩ぐらい離れた事になる。


すると彼は例の出っ張りを操作したらしく”刃片”の付いた”鞭”に変わる

そしてこんどはあの体躯からは想像できないほどしなやかは動きをみせ

大きくふわりと、木人を柔らかく撫でるように振るう。

するとあっという間に表面に刻み疵が付き表面がブサブサになって

黒ずんだ木人に真新しい色が増える。


そして又、一瞬にわたし達の元へ戻ると


「剣の時は肩や肘を使って最小の動きと力で、鞭の時は手首を使って最小の動きで

万編なく相手を撫で付けるように、いたぶってやるのさ

感覚は自分でつかむしか無いがな 後、鞘と腰に結わえる革帯がどうする お代は貰うがな」

「えっと、とりあえず小鞄ポシェットがあるので、それに一本はギルドに登録するので

古布につつんで貰えばなと......」

小鞄ポシェットに吸い込まれていく様を見た彼は

「さすがは召喚士だぜ 術士はこういう時はいいな それに可愛い鞘とか革帯なんかウチは

置いてねぇからな そこはやっぱりオンナノコだな がっははは

あと最後の注意だ 鞭の時は目一杯まで伸ばすと芯線が痛むからな気ぃつけな

それと、もしいい業物や迷宮産がすぐ手に入ったとしても”基本は今渡したブツの動きだし

これは躰に染みつかせて置かねえと相手に動きで舐められるからな

粗末で一番手間の掛かるこの位階ランクの武器での研鑽は欠かさねぇこった 」 と

これもケインズと同じく、単なる”お節介”と聞き流すことは出来なかった。


「はい、このシーアしかと心に刻みます」

「おいおい、そんなに畏まらなくてもいいぜ 今のは単なる”戯れ言”さ」

「ギタリぃ アンタ一体何者? あんだけのことが出来るなんて 私の短剣術もアンタのお陰だしね」

「オレは単なる一介の武器屋にしか過ぎんさ それとミーア、オレは気まぐれで最後の弟子である

アンタを育てたにしか過ぎんさ お前に請われたからじゃねぇしよぉ あん時は、特級エールで酔っぽらってつい承諾しちまってぇ......成り行きだったろ」


「まぁ、そういう訳さ、シーアがんばりな」

「はい ではこれで」

「おうシーア・ミーア達者でな」

その声を背に

武器屋”熊の手”を後にする


 ドアが締り静寂が戻ると ギタリは、

「くそっオレもケット族に産まれたかったぜ、そしたらこの想いミーアのヤツに思い切り

ぶつけんたんだがな それにあのシーアって娘、ありゃとんでもねぇ事に巻き込まれるぞ

強い魔性の瘴気纏っていて平然としやがるし、俺にも全く影響が無いなんてしかも

ミーアのヤツの濃い茶色が赤黒く変わってやがったし何されたんだぁ

いってぇ何処からやって来たんだぁあの銀の娘は」 

と一人ごちだが聴覚に優れたケット族のミーアにもこれは、聞こえなかった。


わたし達はギルド向かい第二の武器として先程の練習用の蛇腹剣を見せて

武器種 ”蛇腹剣” を登録した


※※

 同刻、浮遊大陸”ベルゼ” 第六蒼島群”イドル” 迷宮”メギスト内最奥封櫃の間 

「よもや、お主と同じ得物を選ぶとはな、リーメアよ」

「えぇ、あたくしも驚いたわ。 シーちゃんってやはりあたくしのよレーリア」

「ふん、言ってろ してそれをシーアにくれてやるつもりか? 」

とレーリアはリーメアの首に下がっている小さな棘のあるエンシェント・ドラゴンのウロコの

芯線は同じくエンシェント・ドラゴンの尾の骨で誂えた蛇腹剣に視線を移す。


 これは持ち主の依って首飾りや指輪・刻印などの形となりまた、持ち主の意思で剣から鞭へと

自在に形態を変え

また芯線はエンシェント・ドラゴンの尾であるためゆうにシーアの200歩圏内の間合い

を持ち、相手の血を吸収することで斬れ味が衰えないドラコ族の至宝である。


「当然よ、これが母親として当たり前の事じゃない」 とリーメアが言うと

「それは構わぬがまだ、早いのでは無いか剣技すらまだだというに」 と

やや諌めるように言うと

「心配はご無用よ、彼にはシーちゃんの師匠センセイに就いて貰うから」

「ふむ、それなら妾も納得じゃな いくら得物が至宝でも剣技がつたない

舐められるからの、術士とは違ってそこが面倒じゃな」


「さて、今言ったとおりよあたくしが直に渡したいトコだけど

こればかりは仕様が無いわね渡す頃合いは貴男に任せるわ

必ず、シーちゃんを剣技が使えるくらいには育ててちょうだいね あとシーちゃんて殿方は嫌だそうよ

逢う時は、女の姿を取りなさいな」

と近くに待機していたドラコ族の男性は、見目麗しい長い髪の妙齢の女性に姿を変えた

声も相応に変化して

「リーメア様の仰せのままに、必ずやシーアお嬢様の剣技を育てて見せます。 」

というと

「貴男、中々様になっているわね

あと、シーちゃんは痛み慣れしてないからそれも鍛えてやってね

ほんとは十字聖剣と十字聖槍で同時に心の臓を貫かれない限りは千々になってもすぐ

復活するというのにね 怖がりなんだから ふふっ これの匙加減は任せるわ

もうすぐ ”封印の揺らぎ” が来るわそのチャンスを逃さずにね。 」

「ははッ」

と無作為に起こる ”封印の揺らぎ” をチャンスに一人のドラコ族は

”至宝”を自らの躰に埋め込み 結界のほころびから飛びだしていく。



わたし達はギルド向かい第二の武器として先程の練習用の蛇腹剣を見せて

武器種 ”蛇腹剣” を登録した



※※


 同刻、キリンズ南東端”鎮めの杜 キエス”では露出した遺構の最奥では

ライブ・アーテファクトの少女が幾星霜振りに、ある同種の二つの強い力に惹かれて

巨大な種の封櫃を自ら破り目を覚ます。

肌はシーアより白く

髪は銀光沢のラヴェンダー・ブラシで、淡いオリーブドラブのメッシュが入り

オリーブドラブのメッシュ部分は一部棘はクリムゾンの茨に変化している

瞳は淡いイエローグリーンは柔和な目つきで、全体的に清楚な感じを与える

彼女の地色の黒の唇からは可愛い声が漏れた


「うふふ、やっとマスターが見つかったのかしら 強い気配がするわ

よいしょっと」

と のばした手にはラヴェンダー・ブラシの爪化粧をしていて

半身を起こして

ちょっとふらつきながらも種から這い出る

少女趣向の非常に強いゴーストホワイトのワンピースドレスに薔薇の刺繍柄で

柄は淡いラヴェンダー・ブラシでリボンとレースも同色

可愛い脚は白の薔薇柄のタイツでくるまれて、フリルの踝丈ソックスは白で

リボンパンプスはラヴェンダー・ブラシの

まさに、ライブ・アーテファクトの外観特徴を備えた少女は

「まだあの特技忘れて無いわよね」

とコホンと軽く咳払いをする

すると

今度は男性の声音に変わり

「良かったぜ まだ忘れてなかった、安心したぜ好し好し」

と口調も男性のそれに変わる

またすぐ地の声に戻して

マスターを吃驚させちゃ拙いからねまぁ尤も契約するとこの事もあの事も

分かっちゃうんだけどねぇ 今、マスターがいないうちに 大好きな”アレ”集めて

置かなきゃね」

「ぐふふっ、興奮してきたぜ大勢のヒトの気配がするぜ ああ早くアレ舐めてぇな」

とまた地の声で

「また殿方の声出ちゃったわ」 

と彼女の髪に紛れた茨3本がわさりわさり蠢き、視線はキリンズの方を向いていた

そしてふらりふらり とキリンズの方へ歩き出す


一方レフィキア内では

「ねぇ、レメテュア今の感じた? 」

「えぇ感じたわコトンねーさま 強い気配を一つあっちの方ねと

キリンズの方を違わずビシリと指差す。

これしーねーさまに教える? 」

「当然じゃない、この気配は間違いなくライブ・アーテファクトのしかもオンナノコの気配なんだから

あぁん、どんなかしら? 早く逢いたい...逢いたいわぁ」

とお気に入りの木陰でコトンは地面にうつ伏せで両の脚を交互に激しくバタバタさせて

はしゃぐ。


 シーアにコトン達の念話が届いたのはこの直後だった。

シーアからの返事によればキリンズに向かうのは明日、ある人物と会ってからだと言う


「「早く、しーねーさまの御用が済むとといいな

いっそのことそいつら殺っちゃおうか? でもでもしーねーさまのお怒り買うと怖いわ

ガマンガマン ふふ」」


「「ミーアのアレはもっと怖いけど、アタクシ達に向ける度胸なんて無いから安心よね

いっそミーア脅して、しーねーさまを動かす? 」」

「ふふふ、そうね」

「うふふ、そうよね」

「おねーちゃま達これどうぞ」

レヴィアは二人の物騒な雰囲気を読んだのか、はたまた気を逸らすためか

氷菓子や甘味を持って来ていた。

「「あら気が利くじゃないレヴィア」」

と二人はニヤニヤしてレヴィアが持ってきた氷菓子や甘味を食べていて

「「これ美味しいわ、今の件はまた後でいいわ ねぇ〜♡ ねぇ〜♡」」

享楽的で移りな彼女達の関心は、氷菓子や甘味にもう移っていた。



シーア達の足音はゆっくりだが確実に ”ァタウェー”の元へ近付きつつあった。



次回 57話 噂に関する出来事

お楽しみに

”シーアの宿敵” を追加して

設定ラフのリンクを張りました 

みてみんへのリンクへ飛びます


2017 09 03 

お待たせしております 今後の章タイトルについて ネタバレかも を活動報告に

投稿いたしました


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