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オルティア・レコード  作者: 南 泉
二章 〜 魔女と小さな銀の鍵 〜 ベルゼ浮遊大陸編 第一部
46/75

46話 月蝕祭儀


※※


「ヤンス君もあちら側に従いてしまいましか、アナタがイジメルからですよシュリエル

イケナイだね」

「あら、もうワタクシったらもうそんな”歳”ではなくてよカリエル、娘と言うには

いささか”オバアちゃん”寄りではあるのですのよ それをご存知?

それにしても、今は新しい玩具サラの教育係としても何にしても

”殿方言葉”の少女を”再教育するには時も必要、あの”血”もどのみち必要な事には

変わりないしね。


 こうして時を待つと言うのも

うふッ♡ ワタクシの”加虐嗜好”とはいささか趣向は違えどたまには”被虐嗜好”も良くってよ

チャンスを待ちますわ」


「どのみち明日は ”月蝕祭儀” 月の力が弱い明日は何も出来ません

我々も、月の力が最大になる次の ”日蝕儀礼” まではおとなしく”フレジア”に

”役割”を譲るとしようではないですか」


「カリエル、アナタも気が長くなったものね♡ 」

「定命のことわりから外れている僕とアナタにとっては過ぎる時など瑣末な事でしょう」

「あら、そうですわね”オバアちゃん”になると気が急くと言うけど、嫌だわぁ〜♡ 」

と今だ”妙齢”の容姿のシュリエルはそう愚痴た。


※※


明日は、”月蝕祭儀” の日 皆祭儀を楽しむ、あの邪法集団でさえも

そんな ”月蝕祭儀” の日が明けようとしていた。



〜:〜:〜


朝の刻


〜:〜:〜


神殿内 神官控えの間



「ノージェ姉様、こんな恰好で言祝ぎを捧げるのですか? 」

「そうよ、サリ...祭儀用の衣装は女神様に隠し事をしないでありのままを

見せるのよ...だからこんなのよ 恥ずかしがる事はないわ

堂々としてなさいな」


 と言って衣装を合わせてみれば、海水着より布面積が少なくその上

アラクネの糸から織ったという薄絹の生地である

流石に劣情を催さないように配慮はしてあるが年若いサリにとって

いささか”冒険”すぎる意匠デザインではあった


方やノージェは 「今回は、もう少し”冒険”してみようかしら」

等とまで言っている。


「いい、サリ言祝ぎの祝詞は私が一の句あなたが二の句と交互に

言うの最後に一緒に合わせて捧げるの 分かった?」

とサリのおでこを突き

「言い淀んじゃ駄目だからね、次回の”月蝕祭儀”まで女神様はご機嫌を悪く成されて

混沌と混迷が続くとされているわ」

「えぇ〜そんな〜」

「だから読合わせしましょサリ」

「はいノージェ姉様♡ 」

そして二人は読合わせ始める。


一方、俺はルカスに事のあらましを伝え

「シーア様、素晴らしい功績ですぞ我が君からいずれ褒美を賜われるでしょう

ご一報をお待ち下さいませ」

「はいルカス様、ありがたく拝受致したく存じます」


と俺は、考える振りをして

<<ヤンス、聞こえる? >>

<<へぃ、良く聞こえやす>>

<<なら、いいわ...今後エリスが狙われる可能性はあるかしら? >>

<<祭主・カリエルが言うには”青い血”はもはや必要なしとのたまっておりやした>>

<<そう、ありがと...そこは”隠者いんじゃふところ”? >>

<<へぃ、そうでやんす...あっしには、こんな広い”隠者いんじゃふところ”は

広くて独り身には勿体ないくらいでさぁ>>

<<そう、良かった>>

(居心地は、悪く無いらしい)

<<今日は知ってると思うけど ”月蝕祭儀” よ今日はゆっくりしてていいわよ>>

<<へぃ、ありがとでやんす>>

<<それじゃね♡ >>

と念話を切る。

彼には彼の時間があるし元男性として男性の私事プライバシーは分かっているつもりだ


「どうかなさいましたか? シーア様」

「いぇ、”ある筋”の情報によれば姫殿下のお命は今後狙われないようです

しかしながらいつ矛先が向くやも知れません

わたしからも”守りの者”を姫殿下に従かせたいと存じます

よろしいですか? 」

「もちろんで御座いますとも、シーア様ご推挙の”守りの者”のともなれば

さぞかし頼れる御仁で有りましょう...謹んでお受けまする」


<<いいよね、クロ? >>

<<あぁ、うって付けの者が居るぞい

但し、これはお主がエリスに儂の代わりに授けんるんじゃ>>

<<どうして? >>

<<これは、契約で有るからしてな”本来”の姿でなければならぬ

ブレイルやヤンスの時と同じでな>>

<<なるほどな>>


「この件は後ほどで宜しいですか? 」

「承知致しました シーア様」


「わたしは、これで」 と辞した


さて、後は客を装って”ルネスの小箱”に行く

何と、学院の裏手にひっそりとそれは、有った


「いらっしゃらいませ♡ 」

と妙齢のロージィブラウンのストレートロングの髪も

綺麗な双丘もたわわな美熟女の店員が出迎える

「どんな、御品をご所望ですか? 銀のお嬢様。 」


「いぇ、わたしの彼にお相手がいそうで困っているんですよ

独り身とは言っていたんだけどぉ...信じられなくてそれで遠くから”お話”

が聞ける魔器を見てみたくて丁度ここに”お店”が有ったので見に来たんですぅ

もう彼ったら♡ 」 

と人差し指を唇に当てあざとい仕草を恋多き女生徒がする様にして見せた

勿論、彼云々はでまかせである。

でもさすが”この手”の悩み事が多いらしい”立地”も手伝って

種類は豊富だった


虫・蝶・花・後はオトコノコが好きそうな”英雄譚”の登場人物を模した物まである。

伝い方は簡単で自身の血を少々垂らし遠聞とおぶん呪文スペル

唱えるだけである

 しかし不思議な事に、こんなに”オトコゴコロ”をくすぐられる状況なのに

ちっとも”オトコゴコロ”が依然シアズの時の様に湧いてこなくて

考えるのは専ら、洋服の事や香水のことや靴や帽子のことばかり頭に浮かぶ


 今日の洋服選びは雰囲気に合っているだろうかとか、新しいネグリジェや下着が欲しい

とか

香水選びは間違っていなかっただろうとか

早く”仕立て直し”した制服を着てみたいとか頭に浮かぶのは

そんな事ばかりだった。

(ますます”少女”じゃないか...”少女”には間違いいないのだが...うーむ)


「どうなされました、難しい顔をしてらしてたわ♡ 」

「いぇ今回は見てみるだけです どんなのが有るのか知りたかっただけなので」

「そぅ、ゆっくりしてってね」


店内の品揃えを見ても普通と変わらず

「わたしはこれで」 と 店を出る

ほんとに”銀の三日月”とつながりがあるのだろうかそんな印象だった


「ふふっ、あのが”シーア”ね♡ 早速手配しなくちゃね...あと二人は居なかったようだけど

まぁいいわ」

と又声音を野太い男性に変えて

「いや、僥倖・ 僥倖 オレが欲しくなってきたわ♡ おっとこれは”仕事ビジネス” だな

忘れるトコだったぜ」


 又今度はロージィブラウンの子犬に姿を変えニヤニヤ笑みを浮かべ

「ほんじゃ、オレは行くぜ”シーア”は確認したからな おつかれさんっと」

と本来のオートマトの男性店員に居場所を渡し”千変の御使い”は奥に消えた。


 それを裏手バックヤードで見ていた

二人のケット族の”少女”は

「ねぇ、見た見たあの見たマキちゃん...あんなふうになりたいわぁ〜 マニーちゃんもでしょ」

「マキお姉様ぁワタクシもよ こんな”ダサ”いドロワーズとは”バイバイ”したいわぁ」

とスカートをチラリとめくり上げフリルとレースたっぷりのドロワーズのフリルを引っ張る

「やだぁ、オッキクなっちゃあ...やだ〜♡ 」

「マキちゃんも〜 マニーちゃんの見てたらぁ〜オッキクなっちゃった〜♡ いやあ〜ん♡ 」

と甘い声が飛び交う。


ミーアとビヨンは俺より一足先に服飾店巡りである

早速、俺も服飾店巡りをすべく目抜き通りに向かう


店内に入るとさすが王都なだけはある今まで見たことのもないような素材で

織った生地で出来た洋服が所狭しと並んでいた。


 俺はまた数十点”自分”の好みに合うようなワンピースやケープやブラウスを購入する

<<お主も変わったのぅ、良きかな良きかな”少女”とは本来そういうものじゃよ>>

<<うるさいな、クロ”少女”が”少女”らしく振る舞って何が悪いんだ>>

<<それでいいのじゃよお主は、世に二人と居らんて男の魂に”少女”の器等という

稀有な存在はのぅ>>

<<そうか? >>

<<そうじゃとも、あとミーアにブックカバーをこさえて貰うでの

あの生地やこの生地も買うてくれ>>

<<分かった>>


 店内は早くも肌寒くなる季節を先取りして厚めの生地の服を買い揃えて置く

小鞄ポシェットの中の空間はとても元男性とは思えない様な、少女然とした空間になっていく。


「あッ、こんなトコにシーちゃんいたいたしかし、可愛いお洋服ばかりのお店を

選ぶなんて余程すきなのねぇ〜♡ シーちゃん? 」

「違います、ミーお姉様こッこれはえっとその...」

「好きなのよねッ♡ 」

「.........はい♡ 」


 どうしても”オトコノコ”のキモチより”オンナノコ”のキモチの方が勝ってしまい

可愛いお洋服ばかりのお店を選んでしまっていて

俺はもうウソを付く必要も無かろうと顔の火照りを感じながらも答えた


「こういう反応のシーちゃんカワイイの♡ 」

「 ...... 」


 ビヨンは相変わらず むぐむぐ と口寂しいのか”飴”を舐めていて

もうすぐ昼近くになっている事に気が付いた。



〜:〜:〜


昼の刻


〜:〜:〜


 俺達は、昼食を食べながら

「それで”ルネスの小箱”はどうだった? ”オトコノコ” がくすぐられた? 」

「それが、”以前”と比べてちっとも ワクワク しなくなっちゃった...さっきのお店の方が

ワクワクしたくらいなの♡ 」


「そう、もう”オンナノコ”なのねぇ...それでどんな感じだった? 」

「”目的”の物はなかったわ 普通の”お店”だったわ ミーおねぇ様」

「そう、動きを注視するしか手はないわね シーちゃん」

「そうね」



その頃、ニース一行パーティーは、サリの舞いを見ようと

王都ギルトス入りを果たしていて

シーア達とは別の場所で昼食を摂っていた。


「なぁ、ニースのアニキよぅシーア達ここに来てるかなぁ」

「んなこと、オレに聞かれても困るぜ...彼女らのおりじゃないんだからよ」

ポスポス とソーヤの頭を叩く


「だがよ、”黒き髑髏と剣”の奴らを”生きたまま”六人もしょっ引いできた

銀の小娘がいたらしいな王城の精兵の奴らが噂してるのと聞いちまったぜ

なぁ、ナリアよぉ」


「それは、アタイも聞いたよ、ソーヤお前さんも人の噂にはよ〜く聞き耳立てな」

「だげどよぉ、オレがいたセカイではそんな事は黙っててもよぅ...入って来たんだぜ」

「また、そのセカイをとやらの話かい...お前さんが居るのはどっちのセカイだい

この世界オルティアだろ...オレ達にとってはお前さんのセカイとやらは

御伽噺なんだよぉ、なぁナリアよ」

「そうさね、アタイ達が居るのはここオルティアだからね」


「そんな事言うんだったら、彼女らの好きそうな可愛い服飾店でも巡って歩くことだな

ハハハッ! ...尤もお前さん、それ出来るか? 」

「できる訳ないだろうよぅ...アニキよぅ」

「根性なしめ」

「そういうアンタはどうなんだい ニース? 」

「ま、オレも根性なしだがな ハハハ」


「ちぇッ、簡単に言うぜまったくよ」

(あんな可愛い服屋巡りなんてゴメンだね)

とソーヤは愚痴るのだった。

「まぁ、そうくさるないずれ又機チャンスがくるさ」


その時のシーア一行パーティーとニース一行パーティーは隣の酒場だったのは

誰も知る良しもなかった。



<<ところでクロ、ミーアにもそろそろ個人の収容空間が必要なのではないの? >>

<<うむ、そうじゃなあ奴に聞いてみよう>>

「あのね、ミーお姉様? 」

「ミーお姉様もそろそろ収納用の空間が欲しくなくて? 」

「えッそれホントあると助かるわぁ クロちゃん どう? 」


<<かまわんが一つにしか術を施せんでな どうするのじゃ>>

「クロが言うには一つにしか術を施せないそうよ どうするの? 」

実際ミーアが持っているのはちょっと女子好みの革の腰小鞄ウェストポーチだった


「これね、シアズ様がくれた腰小鞄ウェストポーチだからこれいいわ」

(そういえばミーアの腰小鞄ウェストポーチは、ウチに来た頃恥ずかしいのを

我慢して購入したものだっけか)


「お姉様、それでいいの? 」

「ええ、お願い クロちゃん」

<<ならば、ギルドの密談室でやるかの ついでにエリスの”守り手”の指輪も渡したいしの>>

<<それで決まりだな もう一ついいか? >>

<<ミーアに”念話”出来る様には出来ないのか? >>

<<あ奴の、耳飾りに細工を施せば出来るんじゃが>>

<<出来るんじゃが? >>

<<マギがたらんし、あ奴はまだ定命のことわりに生きる者、それを超えればすぐにでも

施せるわい>>


<<今から、術をかけておいて”その時”がきたらすぐ発動するってのは出来るか? >>

<<潜在術としてならお主が接吻をして於けば仮のパスを繋ぐ事が出来るぞい

あとは定命のことわりが外れた瞬間に発現する様にはできるのじゃよ>>

<<それはいいな、それも含めて全ては”密談室”だな>>


「ここでは、衆目が有りますからギルドの” 密談室”にいきましょ♡ お姉様♡ 」

食事を終えてギルドの”ハボンデ”の元へ


「こんにちは、ハボンデさん」

「おぅシーアじゃったかの? 」

「ええ」

「それで、どんな用向きじゃ」

「2階の”密談室”を借りたくていま空いています? 」

「空いているぞい」

「では」 と代金を払い借り受ける

そして、


「クローティア、お願いね」 と俺が促すと

『そうじゃな、待っとれ』

とクローティアは 口に手を当て何事かつぶやいてミーアの腰小鞄ウェストポーチに触ると

一瞬淡く輝いて、やはり地下実験室の様な空間が出来る

「嬉しい、クローティア様」 とぎゅっと抱き寄せて豊満な胸に埋めて

『これ、よさんか』 とバタバタともがく


『あとこれがエリス一代限りじゃが”守り手”の指輪じゃ』

と 銀の爬虫類の目玉の様な石に、銀の蛇が巻き付いた様な意匠の指輪を渡されて

契約の文言を教わる。


『ミーアよ、これも渡さんとなお主は誰かさんと違って問題無さそうだがの

”物寄せの指輪”じゃ 』 

と左手小指に口に手を当て何事かつぶやいて接吻をするとシンプルな革の指輪が嵌った。


早速、ミーアは荷物を移していて

『衆目の前でやるでないぞ』 と説明を受けていた

「あと、ミーお姉様ちょっといいですか? 」 とミーアを椅子に座らせて

いつも身に付けているイヤーカフスに

「これは、シーアからミーお姉様へのオ・マ・ジ・ナ・イ♡ 」

とイヤーカフスに口を近づけて


「んっんぅ♡ ...ちゅっ♡ 」 

とミーアのもふもふ耳にくすぐられ甘声を漏らし

といって接吻をする。


「変化は無さそうよね ミーお姉様ぁ」

「なんのオ・マ・ジ・ナ・イ? 」

「ふふッ、ナ・イ・シ・ョ・よお姉様ぁ♡ 」

と言って密談室を後にするハボンデが何やら包を抱え

「おぅシーアか丁度ええ今、学院から預かりモノを受け取ったトコだぜ」

と包を受け取る


表書きには


シーア様・ミーア様・ビヨン様へ お仕立てし直した制服で御座います

お受け取り下さいませ


とあり


 俺は、思わず、

「やたッ、シー嬉しい♡ 」 と思わず声を上げて

ミーアに

「そんなに嬉しかったの? シーちゃん? 」

と問われ

「はいッ、楽しみにしてたの♡ 」 と取り繕う事も忘れて返事をしてしまい

「もぅ、”オンナノコ”なんだから♡ 」 とまた額を突かれてしまうも

これには反応せず

今夜の祭儀には早速着て行こうと決めていた。

 

 屋台を食べ歩き等、まだまだタ・ノ・シ・ミはある

そして、調香師が製品の開発の課程で発見したと言われる

爪に色を付ける化粧品が有り


 俺は、試しに透明な光沢を出す爪化粧マニキュアを勧められ試したら

よく似合っていたので購入する

ミーアは 「もぅ、そんなものまで買うようになったのねぇ へぇやっぱり”もう””オンナノコ”なんだね」

としきりに”オンナノコ”を強調していた。


 しかも透明な、艶っぽさを際立たせる口紅まであるではないか

これも同じく”勧められて”購入して姿見を見るとまた一段と”少女”映えしたので

気を良くした俺は、これと透明な爪化粧マニキュア購入し以後口紅と爪のチェックが

毎朝の日課に加えられた


シアズだった時は、あれでも化粧っ気の無いミーアの朝の準備に辟易していたものだが

いざ”少女”になってみて”諸々”に気を使い始めるとこれでも時間が足らないくらいだった

口紅や爪化粧マニキュアを今度は

俺が、クロに勧めたら本は塗り物は好かんものといって断られる。


楽しいひとときは、あっという間にときを奪い日が傾き一番星が空に灯る。



〜:〜:〜


夕の刻


〜:〜:〜


舞台裏手 神官・女官控えの間


「いよいよね、サリあと数刻で夜よ...この時はね世の総てのマギが減少するのよ

定命のことわりたもとにあるものはこの因果からは免れないの

だから私達が少しでも女神様の寵愛を受け、マギが減少した人々に

少しでも多くのマギを分け与えるお役目もあるのよ だから一節一節に

万感の想いを込めなさい」


「えぇ、分かっていますノージェお姉様」

「この前、一つの大きな”悪しきもの”が”銀の希望”によって打ち破られと言うわ

それに連なる”悪しきもの”もばくについたけどいつだって更地に”芽”は

また、芽吹くものなのよ

それを良い”芽”にするため全力で舞いましょう」

「そうですね、私がんばります」


「今日、この時、この瞬間だけは、打ち破られた”悪しきもの”にも魂を安寧を願いましょう

彼らにだって信じる神はいるのだから」


「えぇ、お姉様」

と二人は十字聖教の所作をトリンデに向け聖句を捧げる。


...散りし、遍く幾多の御霊に 御神おみの御手を委ね安寧を願い給い寵愛の息吹を...


散っていった”討伐隊”と打ち破られた”悪しきもの”に。


〜:〜:〜


夜の刻


〜:〜:〜


 舞台には多くの神官や神官見習いそして女官達

が篝火の中、舞い装束に身を包んだノージェ・サリの二名を筆頭に

いつもより絢爛な装束に身を包んだ女官達がそれに続く


俺は、それを手に持った氷菓子が溶け落ちるのも忘れ真摯な気持ちで眺めていた。


やがて月蝕が始まり


しゃららぁぁ〜ん 


と錫杖が打ち鳴らされて言祝ぎの詞が朗々と 謳われる。

続いて男性神官が音叉で調子をとる


筆頭の一の節はニースか一行パーティー”サリ”であった。


一の節 「天上の神々に御ん奉る、地に棲むのもの、空に飛ぶもの、水に泳ぐもの」

(第一声 世に存在する総ての代表として)

しゃららぁぁ〜ん


二の節 「御霊みたま宿いし姿かたち在るもの、無きのもの森羅しんらの総てに」

(第二声 魂あるもの総てに)

しゃららぁぁ〜ん

 

三の節 「御手を差し伸べ、導き給う、悪しきを退け、しきを招く」

(第三声  悪しきを退けて良きものを招き)

しゃららぁぁ〜ん


四の節 「御神おみに、我が聖舞せいぶを以って捧げん」

(第四声  渾身の舞いを捧げましょう)

しゃららぁぁ〜ん


五の節 「赫々たる天・地の営みを願い奉り」

(第五声  天地の営みの繁栄を願い)

しゃららぁぁ〜ん


六の節 「万物のことわりにして万象のことわり、縷縷の健やかなる息吹に」

(第六声 森羅万象に健やかな息吹を)

しゃららぁぁ〜ん


七の節 「恩寵を賜りたく、御前にこうべを下げん」

(第七声 こうべを床に近づけて)

しゃららぁぁ〜ん


八の節 「艱難辛苦、悪しきを打ち破る智慧を我らに与えたもう」

(第八声 どんな困難も乗り越える智慧を我らに)

しゃららぁぁ〜ん


九の節 「一条の銀の導き、行く手を指し示し」

(第九声  ”銀の希望シーア”に希望を乗せて)

しゃららぁぁ〜ん


十の節 「...「我らの御座にこいねがわん」...」

(第十声 我らの信じる神に願う)


最後の一節はその場にいた皆が唱和していた


〜:〜:〜


終刻


〜:〜:〜


”悪しきもの”にも魂の安寧は得られただろうか?


 前回も前々回も小雨だったことに比べ雲ひとつ無い今回は、女神の

気持ちを代弁しているかのようであった。


 また、明日から、それぞれの”戦い”が始まる

触の赤い月は隻眼の髑髏のまなこの様でもあった。



次回 47話 王と合成獣 キマーラ

お楽しみに

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