45話 ベゼリン学術院 (邪教徒編)
<<前代は魔女で今代は邪法集団...か>>
<<何だ? クロ? >>
俺は、突然の念話に思わず聞き返していた
<<昔、といっても幾星霜も前の話じゃ、今代でも”魔女”や”魔道士”がおるじゃろ>>
<<あぁ、居るな>>
俺が知る”魔女”や”魔道士”と言えば魔導の基礎や呪物や聖遺物等の
専門家であり
人外の技を自身のマギを代償に起こせる集団のイメージしかなかった
<<昔はの、”魔女”や”魔道士”が”邪法に身を染め求道のあまり人外に成り果てた者も
いたものじゃよ>>
<<クィエル教団のようにか? >>
<<そうじゃ己の邪念を実現しようとな、世に混沌と混乱を招いたのじゃよ
それの、傷跡が今も空に残っているじゃろ>>
<<何が? >>
<<あの”浮遊大陸 ベルゼ”じゃよ>>
<<え、 浮遊大陸がか? >>
<<そうじゃあれは、もともと地上にあった大陸でな”魔女”や”魔道士”集団が大陸でこぞって
邪法や魔術実験やら呪法実験を幾星霜にも渡って行った結果大陸ごと地上から
引き剥がされて空に浮かび、
浮遊した大陸から瘴気が滲み出て魔霧帯層を地上との
間に作り今代もなお空中に大陸を留まらせているのじゃよ>>
俺はこれは初めて聞いた話で浮遊大陸は巷では、
創造神の泥遊びの泥が跳ね上がっただの、神々の重ねパイ菓子の食べ残しだの
冥界の怪物が空に放り投げた泥団子なの
と色々な御伽噺があった。
<<かつての邪法の求道集団も今代では人々の役に立っておる
じゃがの、あ奴らは世に混沌と混乱しかもたらさん
お主達に謀ってくるなら遠慮はいらん滅するのじゃ
しかし先の”エモニィ”とやらの例もあるよくよく見極めるのじゃよ>>
<<あぁ、もちろんだ>>
俺達は道中罠が極端に少なく明らかにに手が加えられていることに気が付いていた
「皆さん、彼らは別に入り口があるのかも知れません注意して
進みましょう」
と一行に注意を促す
※※
その頃、王都ギルトス地下大空洞部 古代聖堂遺構内
「いやーあれは拙いですね、シュリエル君報告は聞いたでしょ
ケルベロスにヘルハウンド10頭、魔導技術の粋を集めたかのような
戦闘用オートマト、ケット族の少女もかなりの業物を巧みに
使っているとなれば、
我々もおいそれと軽い気持ちで横合いから干渉する訳には
行かなくなりました方針転換をせざるを得ませんね」
「ワタクシは、コキトスの乙女の”血”さえあればいいもの♡ 」
それには答えずカリエルは
「取り合えすあの学院地下8階層の拠点は放棄するしかありませんねあそこの
教徒10人の”損失”はちと、惜しいですが今は大事の前の小事捨て置きます。
今後は ”フレジア” とも、手を組まなくてはなりませんね
でも、あのお方はある時は殿方、ある時は淑女、又ある時は動物のお姿の上、
神出鬼没、どの様に...伝手を辿れはいいのやら......」
「あら、俺をお呼びになりまして? 儂なら先程からここにいましてよ」
といろんな声音・口調と自分称を混じえ
ロージィブラウンのストレートロングの髪も年嵩のいかない少女が
ワンピースをつまみ上げ丁寧に挨拶をする。
「今宵は取引相手が”殿方”と言うことでこの姿を取ってみましたのよ」
と少女の声音から、野太い男のそれに変えて
「どうだ、カワイイだろ♡ 」
と凄む。
「さすが ”千変の御使い” 殿、いつ見ても鮮やかなものですな」
「めったに オレの名を口にするんじゃありませんことよ♡ 」
今度は声音を少年のそれに変化させて
「カリエルのオジちゃんボクにどんな御用なの? 」
とゆっくり歩く度 老若男女・動物に姿を変え
最後にまた年嵩のいかない少女の姿になりカリエルに前に立つ
「実はこういう訳でして......」 と少女に屈みか細い声で耳朶打つ。
”千変の御使い”は少女の声音に戻し
「分かりましてよ、私は戦闘能力なんてアリませんから早速私の可愛い子達に
通達しましょ♡」
とまたもや少女の声音から、野太い男のそれに変えて
「でだな...対価は何ヨ...カリエルのオ・ジ・サ・マ♡ 」
「”賢者の右手” と金とウチの教徒で手をうってくれないかね教徒は男女揃えようじゃないか
教徒は”壊さない”で”使用”したら返してくれたまえよ」
「シけてヤがるな...まぁ...いいわ♡ ...オ・ジ・サ・マ♡...それで手をうちましょ♡ 」 と
最後に猫の姿になり
{にゃぉ〜ん}
と言って暗闇に消え”フレジア”の連絡員とは”ルネスの小箱”にてとの事で
算段がつく。
※※
<<なぁ? お主よ>>
<<どうした? また浮遊大陸についての講釈か? >>
<<いや、あれが儂の知っている全てじゃ 今度はお主に接吻をくれてやろうと思ってな>>
<<何だ、”接吻”なら間に合ってるが? >>
<<違がわい!! >>
<<指輪をくれてやるというに>>
<<何の? >>
<<今後、捕らえた者を王国や衛兵に引き渡すこともあろうそのための”縛専用
の指輪じゃよ>>
<<俺には、”魚”がいるだろが。 >>
<<何を言っておる ”魚” なんて使ってみた日には、”一般人”なんかアレに”捉われた”
だけで”肉”も”魂”も残さんじゃろうて>>
<<えッあれはそんなにすごいのか? >>
<<当たり前だわい、”妖精”の秘宝とはそういうものじゃよ
よく気に留めて置くんじゃよ...シーアよ>>
<<あぁ、覚えておこう>>
俺は改めて自身の身に付いてる”能力”の大きさに恐れてショーツを僅かに湿らせて
しまった。
(そういえば、この身体になってからやたら、尿意を我慢できなく出来なくなってるな
”お漏らし”には気を付けないとな...今ならエリスしかいないな)
<<...なぁ”クローティア”になっても今はいいぞ>>
『久しぶりじゃわい、まずはお主の髪を触らせぃ』
「わッ、シーお姉様この”妖精”様どこから? 」
「エリス、この”妖精”さんはずっといたんだけど大勢の人がいたから恥ずかしかったんだって♡ 」
「ねッ、そうでしょ♡ 」
『そッそうじゃ まぁ手を出すんじゃ』
と俺は、右手中指を出すと
クローティアは唇に手を添え何事かつぶやき右手中指に”強く”接吻をする
《 我、汝に縛の仄暗き赤き蛇の肉叢を供する者なり小さき赤き蛇の指輪、
以って証しとす 》
<<ちょっと、今指”咥えて”なかったか? >>
<<さぁのぅ? >>
すると、右手中指に二匹の赤い蛇が撚れてお互いの頭と尾を咥え合っている感じで
解くと一つの大きな環になる意匠の金属しては妙にしっとりとしてひんやりした感触の
指輪が嵌った。
『お主もパスを繋ぐんじゃ』
「分かりました、クローティア」
と俺も”接吻”すると一瞬仄暗く淡く光り ぬるり と動く、まるで”生きている感触”に
若干のなんとも言えないくすぐったさをおぼえ
小さく
「あぁん♡ 」 と甘い吐息を漏らしてしまう
<<どうじゃ、カンじたじゃろ>>
<< ”カンじたじゃろ”じゃないよぉ〜これぇ〜...生きてるのぉ? >>
<<何を”当たり前”事を言っておる儂の指輪じゃぞ”ただの”指輪じゃなかろうよ
言葉通り”生きて”おる 何、エサもいらんしお主には噛みつきもせんて...いつも身に付けておれ
まぁ例え外しても、お主の指に自分で嵌まりにいくからの>>
尚もよく見るとゆっくりとだが ぬるり・ぬるり と動ている
俺はこの感触に慣れるまでこの後、大分苦労した。
『これはじゃな
((我、汝に仄暗き赤き蛇の肉叢を以って縛を縛と成す))
を唱えると仄暗き赤き蛇が出現して相手を捕縛することが出来るのじゃよ』
と居住まいを正してミーアを見て
『あ奴で試してみぃ』
というので
「((我、汝に仄暗き赤き蛇の肉叢を以って縛を縛と成す))」 と唱える
すると一瞬指輪が解けたように見えたと思ったら分身体を作り俺の腕に絡み付き待機している
またもや若干のなんとも言えないくすぐったさをおぼえ
小さく
「あぁん♡ 」 と甘い吐息を漏らしてしまう
そして「ミーお姉様ゴメンネ♡ 」
「ヤ・サ・シ・クしてね♡ 」
と言う
そこでミーアの胴を巻くような身振り(ジェスチャー)をすると スルスル と腕を這いミーアの
胴に巻き付く
『解縛は念じるだけで良いぞい...後他人に解縛させる時は
解縛用の一回限リの有効な符丁を教えるんじゃよ、一回限リ有効だから悪用は出来んぞい
ビヨンに教えて試してみるが良かろ』 というので
”符丁”をビヨンに念話で教える
[ 肯定 ]
と言って
解縛の”符丁”をビヨンが言うと縛っていた”蛇”は霧の様に消えてミーアは開放された
『この”蛇”は縛られたヤツはマギも行使できなくなるし自死も防ぐ事が出来るからの
又強く縛った所で”絶対”に死にはせんよ、安心して”縛る”が良かろう』
ニヤリと笑みを浮かべ
『”使用目的以外”では遊ぶんではないぞ、まぁどっちみち死にはせんがな』
(緊縛嗜好のヤツに当たったら、バズレを引いたと思うか)
......
...
程なく、 ドヤドヤ と大勢の気配と知った気配が一つ
「クローティア、エリスをお願い」
これから起こるで有ろう事をエリスに見せる訳には行かなかった
『エリスよ、すまんのぅ』 と
エリスの額に手をかざし
『((汝、我の言の葉を以って瞬刻の微睡みと戯れたるや))』
と呪文を唱える 途端にゆっくりエリスが崩れ落ち床で軽い寝息を立てる
「ヘルちゃんエリスをお願い♡ 」 と一頭のヘルハウンドをエリスの守りにつかせ
「クローティア 、エリスは大丈夫か? 」
とクローティアに問いただす
『大丈夫じゃわい例え”どんな”事も起きろうと儂が解かぬ限り夢の中じゃよ』
と俺の質問を担保した。
気配と同時にビヨンも反応する
[ 人物確認・数”11” ]
[ 内、敵対人物・数”10” ]
[ 敵対度”大” ]
えんじ色のフード付きロングローブ黒の飾り紐付きの教徒が俺達の居る部屋へ
何の誰何もなく無遠慮に入り
待機していたケルベロスもむくりと身体を動かす
「銀の娘ッッ!! おとなしく”血”を寄越せ!! 」
「誰が...やるものですか」
「おとなしく縛につけぃ」
「そこの犬っころ(ケルベロス)はハッタりだぁー」
「殺ってしまえ」
「おとなしく縛につくのはあなた達よッ」
こんな問答の後、
「生意気なアマだ」
「俺が一番乗りだぜぃ」
と三人の大男が飛びかかってきた
「ケールをけしかけますよ......警告はしましたよ」
「何度もうるせぃな」
「致し方ありません」
「ケール、殺ってッ!! 」
{{{ウォン}}}
と
手加減なく喰らい付く
「「「うわ!!...がはっ...冗談だろ...グバァ...」」」 と最期は三人とも声は
グヂィ、グチャ、 グチャ
とケールの噛み砕く音と咀嚼音に声が掻き消え湯気の立つ”肉塊”と化した
「...「この犬っころめ」...」
七人が術や弓で加勢するも ボソゥボソゥボソゥ と間抜け音がするのみ
その内”九頭”のヘルハウンドが激しく吠え立てる
「...「ウワーッ、まッッテくれ 俺たちゃ下っ端なんだよ」...」
「おとなしくばっ、縛に付くッ!! 待ってくれ...」
と投降の気配を見せる
「ふぅ手間の掛かる人達ね...分かりました...いいでしょう」 と最後に
{{{ウォンッ}}}
と吠え立てるとへなへなと腰を抜かし”六人”が全員派手に男女共
失禁をする。
俺は、
「((我、汝に仄暗き赤き蛇の肉叢を以って縛を縛と成す))」 と唱え
”仄暗き赤き蛇”で”六人”を捕縛する
「...「そんなものまで有るのかよ...ガボッ」...」
と自死防止のためだろう口に頭を突っ込んで舌を噛んだり
毒物飲んだり出来ないようにしていた
そして封呪のためか淡く光っていた。
クローティアがまた全員に
面倒臭いとボヤキつつも
『((汝、我の言の葉を以って瞬刻の微睡みと戯れたるや))』
と微睡みの呪文を施す。
[ 人物敵対度 判定”無” ]
とビヨンも確認する
俺は見知った気配の方に
「ヤンスッ!! ここに居るんでしょ出てきなさいよ」
と俺はある確信を持って叫ぶ
「へぃ、あっしはここに...シーア様」
やはり気配の方からヤンスが姿を見せ
「皆を眠らせた理由は分かってる? 」
と寝息を立てているエリスと教徒を見やる
「そのことですが、シーア様どうかあっしをお仲間に入れて下せいまし
これをご覧ください」
と大きな革袋を差し出し
どうやら彼は最初から戦う気など無かったらしい
「これは? 」
「これ一杯に...シーア様の”血”を持ってくるように仰せつかったのですが
あっしには今のシーア様には逆らうことは出来やせんでやす
この革袋を受け取った時から...あっしの心は決まっておりやした。
どうかこのヤンスめを......皆様のお側に置いてやって下さいまし」
とおいおい泣き出した
[ 敵対人物・数”1” ]
[ 敵対度”大” ]
ビヨンが鋭く反応する
途端に
「ヤンスめ裏切ったかぁーッ」
と 一条の光がヤンスの脳天へ...しかし、刹那
ビヨンが
[ 生命保護対象・危険度”極大” ]
[ 優先保護定常処理”実行” ]
と言うがはやいか投擲された短剣を掴み正確に飛んで来た軌道に
投げ返す
「ぐッ」 と一声ドサリと人物が落ちる音。
[ 敵対人物・数”無”...完全・沈黙 ]
と今度こそ安全を担保した
人物をみると何と短剣は”強引”に若い女の眉間を貫いていて
俺は改めて教徒達に見知った顔が無いのが不幸中の幸いだった
「ヤンス本当に私達の仲間になりたいの? 覚悟はある?」
クローティアが突然
『待つのじゃここは儂に任せぃ...してお主も定命の理を外れて居るな』
「へぇ」
『なら、永劫の誓いとしてお主の片目を儂に差し出すが良い...
おっとお主らは口を出すでないぞ』
「えぇ、クローティアに任せます...いいよねミーお姉様♡ 」
「もッもちろん」
俺達は成り行きを見守る。
『儂の、本当の姿をみせてやるぞい』 とクローティアは唇に手を添え何事かつぶやき
ヤンスの額に手を当てた
とクローティアは本に戻り俺は、カバーを外す
『儂の、本当の姿が分かるか』
「こりゃ...えれぇモン見ちまった...”妖精”さんではないやすね」
『儂が生きた”魔導書”ことネクロンじゃ』
カバーを付けて再びクローティアに戻り
『改めて、お主の片目を”自ら”の手で抉り取り儂に寄越せ』
「へぇ、お待ちを」
と左目に手を入れ強引に抉り取る
グワァァァァー
と部屋も揺れんばかりの鋭い叫び声
俺もミーアもさすがに目をそむける
と差し出した手には濃い赤い眼球が一つ
『良きかな・良きかな儂がやっても良かったがなお主の”覚悟”が
見たかったのでな...どれ、お主も隻眼だと儂らの頼みを遂行するには
不便じゃろ...儂がちと細工してやるぞいそれを寄越せ』
ヤンスは ハァハァ と荒い息をつきながらもながらも眼球を差し出す
クローティアは
差し出された眼球に唇に手を添え何事かつぶやく
《 汝、我に遠見の眼を以って縷縷の誓いを立てる者なり 》
と眼球に接吻をしてヤンスの左のぽっかり空いた眼窩に グチュリ と戻す
すると何事も無かったように”両目”をパチクリさせて
「クローティア様、あっしに何をしたんで? 」
『まぁ、急くな もう一つお主にこれを”貸して”やるぞい』
とパチンと指を鳴らすと
”黒い金糸雀”がヤンスの肩に留まり チチチ と可愛い声で鳴く
『この”黒い金糸雀”はな、お主の目と耳じゃ頭の中に視えておるじゃろ』
「へぇ視えて居りやすし、聞こえても居りやす」
『これを自由に放ちこれが見たモノ聞いたモノを儂らの要求に応じて
報告するのじゃ...良いな』
「へぇぃー」 と平伏する
『これ、平伏なぞ我らには不要...忠義はお主の働きで返せ
ところでお主にはこれから、刺客が指し向かれるのは必須
ついでじゃこれもやろうぞ...左手を出せ...男は好かんがまぁ良い
儂の大盤振る舞いじゃ』
とまたもやクローティアは唇に手を添え何事かつぶやき
ヤンスの 左手の親指に黒い黒曜石製の変哲もない指輪が嵌まる
《 我、汝に隠匿の懐を与えんとする者なりや、以ってこの指環を証しとす 》
と接吻をする。
『これはな”異元の指輪”と言ってな お主専用の居住兼緊急避難用の
”隠者の懐”じゃ
なにか身に危険が迫ったら...指輪に接吻で”隠者の懐”に入るのじゃ
出る特は”隠者の懐”内でもう一度接吻でこちらに出てこれるでの
”黒い金糸雀”は”隠者の懐”内には入ってこれぬから”黒い金糸雀”で
こちら(外界)を伺ってから出てくるのじゃぞ』
またヤンスはおいおい泣き出した
『泣かんでもも良いわい、金子は小奴から貰うと良いぞ役人共に掴ませる金子も
必要じゃろうからな遠慮なく申せ...必要な金じゃあとは働きに応じてじゃな
当面の小遣いはこれでしのげばよかろ』
と先の空の革袋一杯の”白金の星砂”を詰めて渡す
『”足”がつかぬように上手くやりくりするんじゃぞ』
「いいヤンス 無駄遣いしちゃ駄目よ」 とミーアが手持ちから金子を渡す
『”隠者の懐”に物は身につけてから入るんじゃ儂らは入れんから
好きにすればええ』
なにかあったら儂に念話で話せシーアとビヨンも話せるでの、すぐ連絡するんじゃそ』
「後、ヤンスここで下履き以外服脱いでくれる? 」
おれはあの時、トリシで見た疵が気になっていた
「変な意味はないわトリシで見ちゃったのよ、アナタの疵見せてくれないかしら...」
するとヤンスは、
「あっしを嫌ぇにならないでくれやし」
と衣服を下履き以外脱ぎ今まで全貌が見えていなかったものが露わになる
そこには
愛嬌が有る目・鼻は少し鷲鼻・口からは下から2本の牙を覗かせていて
顔はやや細面・頭髪は無く額に2本の小さいツノ・耳は縦にやや尖って後方に伸びていて
右耳に髑髏のピアスをしている小柄な体躯がそこにあり
ディム・グレイの肌にはつい最近もついたと思われる疵が蚯蚓腫れをこさえていて
旧い痕も無数に有りイジメの歴史の長さを物語っていた。
俺はさすがに哀れに思い優しく抱きしめる
「ミーお姉様お願い出来ます? 」
「えぇ、いいわ待ってね」 と風陣の指輪をかざし
「((ヒールブロウ 彼の者に女神の御手を、新しきも旧き痛みも御神に委ね給う))」
と唱えると最近の疵から旧き疵まですっかり消えてなくなり
ヤンスは床に伏せ
「うぉぉぉぉーッ...お嬢様方...このヤンス生涯この身...お嬢様方に捧げるでやんすッ」
と恥も外聞も無く男泣く
「見てくだせいまし、あっしの呪印が消えました」
と舌をだすとあのドクロに交叉した剣のタトゥーが消えていた
『ところで、ヤンスよ儂らがエモニィとやらに... と言う事を聞いたのじゃが本当かの』
「へぇ、あっしの知ってる限りそうでやんすよ あと祭主”カリエル”には
秘書”シュリエル”がついておりやす...この女は恐ろしい嗜好の持ち主でさぁ」
と自分の身体を擦る。
「後これは、噂でやんすが、よろしいので? 」
と前置きをする
『構わん、市井の噂こそ真実に一番近い事もあるでの申してみよ』
「恐れながらシーア様御一行にも刺客が指し向かれた様子
武闘集団 ”フレジア” と手を結んだとの噂が教団内で持ち切りでやした」
『何じゃその武闘集団 ”フレジア” とやらは? 』
「教団内での噂を聞くに、荒事専門の雇われ集団で異性装の名人や詐欺・暗殺の専能集団
との事シーア様御一行に悔恨はなくとも金次第で人を殺める連中でさぁ
官吏にも構成員がいるとも聞いておりやす」
『よう話してくれたわいもう一つ今の報酬じゃ
”隠者のローブ”をくれてやるわい』
「あっしは異性装の嗜好はございやせんのでご婦人の服はちょっと」
『安心せい...ちゃんと”殿方嗜好”のじゃよ』
渡されたのはオリーブドラブのフード付きローブだった
『これを聴謀活動をする時は身につけておれ、ある程度は”気配”を殺せるからの』
「最後に銀の三日月と関係があるとされる魔器屋 ”ルネスの小箱” があるでやんす
あっしの遠聞の魔器もそこから購入したんで」
『後でそれとなく探りを入れてみるかのぅ...シーアよ』
「えぇ、そうね...興味があるわ...わたし」
これは俺の本心でもあった...道具屋となれば久々に”オトコゴコロ”がくすぐられそうな予感
をしていた。
『そろそろエリスや、教徒を起こさねばならんのでな お主はちと身を隠してくれぬか』
「へぃ、あっしはこれで」
と言ってヤンスは”黒い金糸雀”を残して”隠者の懐”に消えた
『お主の目利きもたいしたもんじゃの
まさかアレほどの人材がこちらに与してくれようとは』
「少しは、見直した? クローティア? 」
『まあの』
そして俺達は皆を起こして生徒の待つ5階層へ戻る。
「お、シーアか用は済んだか? っておい何だその連中? それに”妖精”もいるじゃねぇか」
「サムエル様 ......こういう訳です」
と事情と解縛用の”符丁”話す
「てぇしたもんだなこれだけ”生け捕り”したとあっちゃ城中大騒ぎだぜ」
「後で、調査団が向かうと思いますぅ...本日はこれで”散会”です
あすは ”月蝕祭儀” ですね...ゆっくり楽しんでくださいね」
と普段通りのマセリエ、
地上に戻ったら日が沈みかけ、夜の帳が降りかけていた。
明日は数回季節が巡る内の一回の祭儀の日である
シーアの達少女一行の心は既に明日の祭儀に向いていた。
次回 46話 月蝕祭儀
お楽しみに




