44話 ベゼリン学術院 (地下迷宮偏)
前話43で 追記箇所 が有ります
追記箇所
文中 ”ベゼリン学術院内 某所” より以降全てになります
翌朝、俺は夕食のデザートのプディングを檸檬色のネグリジェのまま
寝台でうつ伏せのまま両足をバタバタさせて食べていた
「ん〜っ、♡ おいし〜♡ 」
と食べるのに夢中になっていたら後ろから
「こら〜っ...シーちゃんっ! お行儀がわるいわッ」
と急にひょいと取り上げられる。
「ミーお姉様ぁ 後、ひ〜と〜く〜ちぃ♡ 」
とお願いするも
「だぁ〜メッ」 といわれ
「はぁ〜い」と
制服に着替えるそういえばいつの間に来てたんだろうか
彼女は既にビヨンと一緒に俺が寝ていた空き部屋に立っていた。
「あのぅ、お姉様コレを見てくださいな」
と俺は、ミーアに むに と赤黒い右の牙を見せる
「シーちゃん それって? 」
「2回めの”アレ”が来た時こうなったの♡ 」
「それってどうなるの? 」
「これを使うとね、 噛まれた方は定命の軛から外れ、こちら側になって
わたしの魂に従属することになるわ」
俺は、言葉を言い聞かせるように間を置き
更に続ける
「といっても自由意思はもちろんあるし吸血騒動もないわ、でも永遠にわたしの魂に付き従う
事になる上、わたしが代償として強烈な吸血衝動に襲われるようになりそう
従者は後、増やせないけどね
吸血衝動は甘い物が食べたいとかの衝動に似ていて、ちゃんと普通の食事も問題ないみたい」
「どうしてそれが分かるの、シーちゃん? 」
「だって自分の身体ですもの」
「そうだよね」
「しかも、従者に出来るのはたった一人だけなの」
「どうして私にそれを私に? 」
「これをミーお姉様にシてあげたくて♡ 」
と むに と赤黒い右の牙をまた見せる
「ゴメン、シーちゃん今は考えさせて、いきなり定命の理を外れる
なんて言われても...でもわたしに一番に言ってくれてありがとね♡ 」
今度は右頬に優しく接吻をされて少女の身である事も忘れ
身体がこわばった
.........
...
講義室にはマセリエが来ていて
一限目が始まる前だいうのに何やら慌ただしい
俺達生徒も席について昼からの地下迷宮探索実習についての
雑談で盛り上がっていた
...
「なぁ、迷宮探索実習って言っても魔物は弱っちいのだけだろ」
「まぁな、学職専門のヤツラも来るからな
いてもせいぜいゴブリンか腐肉塊だな」
「つまんねぇ〜な もっとこう 岩人形や蜘蛛人やらでねーかな」
「それによ、練習用の罠なんざ類型通りだしよ」
...
「でもよ、立ち入り禁止区劃に行けば何が有るかもよ」
とエスティ・エモニィ・ニエルス・センティ・やいつもは制止役のクラウまでもが
「...「行ってみたいですわね」...」
と賛同している。
「...「それだったら私いいトコ知ってますよ、アソコならこっそり...」...」
とエスティ・エモニィ・ニエルスの三名が何やらヒソヒソばなしを始める。
「全く、あなた達と来たら」
とさっきまでノリ気だったクラウは慌てて襟を正し
コホンと咳払いをする。
聞けばこの3人は同郷出身で冒険者を目指しているらしい
「シーアもこのハナシ乗らない? 」
とクラウと同じツインテールのエモニィが
誘ってくる。
「ちょっとエモニィったらいつも先走るんだから シーアも困るでしょ? 」
とエスティがいう
「あの、一限目が始まるよ? 」
とエリス
気がつくと3回目の通知が魔器から通告されていた
教壇ではマセリエが
「今日は午後の始業まで各自由に準備して下さいね♡
院外へは出ないようにあと、武器の携行は地下迷宮探索実習の終了までは許可します
間違いを起こさない様に! 」 と
普段の調子で指示を出す。
俺とミーアは中間報告にと初日に不審者が女生徒になり変わっているらしいと
言うことをルカスに報告する。
「承知致しました シーア様、こちらからも探りを入れてみましょう」 と
言って何やら魔器で連絡していた
<<クロ、悪いがブレイルに中継を頼む>>
<<何じゃ? 藪から棒に? >>
<<屋敷世界管理専用のオートマトの事だが進捗を知りたくてな>>
<<そうじゃったか、...ほれ...繋いだぞい後は念話で会話出来るぞい>>
<<あのぅ、ブレイルさん聞こえますか? >>
<<おわっと、吃驚した>>
<<あぁシーア君か、とても良く聞こえるよ...なんか不思議な気分だよ、ハハ>>
<<えぇわたしもですよブレイルさん、ところでお願いしてた
屋敷世界管理専用のオートマトの件はどうなりました? >>
<<それだが、後は最終調整のみだ今回も、さいくぉぉ〜傑作が出来たよ
ビョンちゃんの製作の時のホムンクルス髪と肌の端材の残り全てと
あのオーパーツの機構部品とオーパーツ・コアの大判振る舞いさ
端材だから背は低いけど可愛い娘が出来たよ
早く見においでよ ボクのかぁわいい1号ちゃん(仮)を>>
<<ええ、こちらの暇が出来ましたらすぐ伺いますわ...ブレイル様>>
<<待ってるよ♡ >>
<<ではな、中継を切るぞい>>
<<というわけだ、クロ...浮遊大陸出立前に一度ブレイル宅に
寄るぞ、いいか? >>
<<儂は、構わんぞあ奴にも話すが良いぞ>>
<<そうしよう>>
この事をミーア・ビヨンにも話して皆の合意を取る
※※
その頃、王都ギルトス地下大空洞部 古代聖堂遺構内
「ネ〜ェ我が君主・カリエル〜 よぉ〜うやくコキトスの乙女の名がわかりましわぁ〜
ヤンスの報告によるとシーアだそうよ 美味しそうなオ・ナ・マ・エ
それに”弓張月(銀の三日月)”から頂いたコレ、コキトスの乙女の血だそうよぉ〜
何て美味しい”お味”かしらね」
「おいおい、あまり丁寧に舐めないでおくれ ”シュリエル” 君、もうすっかり綺麗
になっているじゃないかね」
とあのディーボ戦の時の冒険者の石が”丁寧”に舐め取られて”綺麗”になっていた
「冒険者はどうしたね? 」
とカリエルが言葉を挟む
「たんまりおカネを与えてうんと楽しませてから”オネンネ”してもらって
残ったおカネも”返して”もらってオ・ワ・リ
どうせなら、ぜ〜んぶ一気に使ってしまえば良かったのにねぇ」
自分の指をしゃぶりながら
「ケチンボさんなんだから」
としゃぶった指を カリエルの口へ押し付ける
「だってぇ〜コキトスの乙女の血ときたらあまり美味しくてワタクシ、
コーフンしてきちゃったワまだ来ないかしらね...コキトスのオ・ト・メ」
「やれやれ困ったものだシュリエル君の血液嗜好症もいいが
程々にしてくれ給えよ」
カリエルはダークバイオレットのロングワンレングスの髪を手て梳いてやりながら
「この前なんかあの娘らに古代文字刻み過ぎだよねアレ、加虐嗜好も満たせるとか
シュリエル君のし癖は僕は理解出来ないね」
「あれは、コーフンしてきちゃって...ついね♡ 今も思い出すとホラ」
と自分の股間に カリエルの手を持っていこうとする
「これ、よさないか信徒が見ているぞ」
「あらン、これしきで照れるほど”ネンネ”じゃなくてよ♡ ワタクシ」
「それにしてもあの折角贄を沢山用意して造ったあの仔
最近”弓張月(銀の三日月)”からの呪物や聖遺物の”質”が落ちてやせんかね
僕としてはそちらが気になるところだよあのオーパーツ・コアだって普通に手に入る
物ばかり」
「あらっ、でもそのお陰で贄を沢山用意しなくちゃいけないからワタクシのヨ・ク・ボ・ウも
満たせるからいいわん...あっそうそう」
と辺りを見渡し
「ヤンスッ!! いる? 」
「へいあっしはここに」
「いい返事、よく出来ました...はいゴホウビ」
とピシリと鞭が唸りヤンスの背に当たる
「コレは、ご勘弁をシュリエル様」
「ワタクシの名を呼んでいいと思って? 」
またピシリと鞭が唸りヤンスの股間を掠める
「ひぇぇーッ」
と慌てて後ずさり平伏する。
「まぁいいわ今はこれくらいで...今度こそコキトスの乙女の血をたんまりとワタクシの所に
もってきなサイ...分かった? 」 と空の革袋をわたす
「へぇ...」
この革袋の大きさを見た時ヤンスは心の中である決意をするのだった。
また呪詞が繰り返えされる
「...「廻れ廻れ、天理の環・停まれ停まれ・転生の環 コキトスの乙女 冥き
深淵の袂へ来たれり...来たれり......来たれり」...」
その傍らには大賢者風の男が紫の目を細め黒い立方形のオーパーツコアを
弄りながら
「我は星に有り、星は我に有り」 と独り言をいう
もう一方の手に握られているのは
普段の威勢のいい男口調は何処へやら虚ろな目をしながらブツブツ呟く”サラ”の
姿があった。
「カリエル殿、呪物や聖遺物は我々”銀の三日月”が手配しよう
お主達は出来のいいオモチャ(ディーボ)を造ってくれればいいのだよ」
「これは ”我が君” ご配慮痛み入ります ”我が君” のお心のままに」
といって大賢者風の男と”サラ”は掻き消えた。
カリエルの額には大粒の汗があふれ床に点々とシミを作る
「あれの仕上がりはどうなった? 」
「はいカリエル卿、禁止区劃に コキトスの乙女を誘導する手筈になって御座います
そこで投入しようかと」
「あ奴の弟とやらは? 」
「既にアレの心の臓と成り果てております」
「ウム、”青い血”は? 」
「カリエル卿、...コキトスの乙女が護衛についた模様です」
「そうか我々は、もはや”青い血”など要らぬわ」
カリエルは言い放つ
「お前達も”青い血”は殺さぬようにな...今の狙いはコキトスの乙女だからね
はやく、怒りに震える姿を見たいものだ...ふふッ」
「せいぜいコキトスの乙女には踊って貰うとしよう」
「...「カリエル卿の...お心のままに...ままに」...」
※※
「そういえばさぁ今度”月蝕祭儀”あるじゃない」
「そういえばそだね」
「”ノージェ”様舞われるかしら? 」
「今回は”妹”もご一緒らしいわ」
「へぇ、どんなお召し物かしらね」
「私も一度舞台に出たいなぁ」
...
「今度の”月蝕祭儀”なぁ...誰誘うヨ...オメェ」
「まだ決めてねぇよ」
「おれは”ビヨン”ちゃん一択だぜ」
「おいおいあれは”オートマト”だぞ」
「大丈夫か? 」
「問題ない」
「何が、”問題ない”だよ? 」
「いや、なんとなく」
「”なんとなく”かよ」
「おれはシーアに声掛けてみっか」
「アイツ、なんかおっかなくね」
「どこがよ」
「あの、オッドアイで睨まれるとゾクッとすらぁな」
「お前、被虐嗜好者か?」
「ウン、少しは」
「うへぇ」
...
「ちぇっ俺は屋台で遊戯だけだぜ」
「折角月明かりも全くなくなるってぇのに」
「なに考えてんだよ」
「いやあ...さ」
「ふーん」
「おっそろそろ始まるぞ」
…
「みなさ〜ん、しゅう〜ごうで〜す」
マセリエの声が響く。
まずは中・高等部の戦闘課程が先行、学職課程がその後に続く
地下5階層までは、院が”仕込んで”いるため わーわー 言いながらも
”楽しく”探索訓練をしていた
...
マセリエの指導が皆に届く
「ほら、長持ちはいきなり開けないでこうやるの」
「面倒クセェな」
「中には長持ちに擬態しているのもいるから気を付けるのよ」
「うへっ」
「壁の罠を確認してから壁に背を着けて後ろを取られないようにね」
「斥候役は鳴子や床石に不自然な浮きや傾きが無いかも見るのよ」
「仕掛けた本人も分からなくならないように周りと違いを付けている場合が
有るからそれを見つけるの」
「大声を出さないで...声や明かりに反応するものもあるんだから」
「あとはこうやって罠を作動させる手もあるわ」
とマセリエは仕込んだ罠に小石を放る
横壁からは”矢”では無く水が飛び出す
...
「マギの罠もあるかもだからね やたら術を打っちゃ駄目よ
斥候役は、こと迷宮探査に置いては盾役より重要よ」
「こらこら支援役(治癒師や神官)を先行させちゃ駄目でしょ」
「まったくもう」
この一連の指導は”冒険者”としては初心者な俺でも役に立っていた
<<お主は、いつも力まかせだからな良い機会じゃな>>
<<だれのせいで、”力まかせ”だまったく
こうなってくると罠・文字解読や解呪の力が欲しくなってくるな>>
<<儂にはなんかそういうヤツが近い内にお主の前に現れるような
気がするわい>>
<<予感ってやつか? >>
<<儂の”予感”はよ〜く当たるぞい>>
<<良くない”予感”もな>>
<<煩いわい>>
「あれここ、禁止区劃だろなんで開放してんだ? 」
男子生徒がささやく
エスティ・エモニィ・ニエルス・センティが
「...「ねぇ行ってみない」...」
と
クラウが居ないことをいいことに
先走って奥に行ってしまった
俺は近くにいたミーアにマセリエに報告に行かせる
「お姉様お願い」
「任せて シーちゃん」
「シーちゃんは どうするの? 」
「わたしは 後を追います...エリスは連れていきますよ...一人にはして置けませんから」
遅れてやってきたクラウには
「クラウには私達の後ろで先生との連絡役をしてもらいます
先生方にはその場で留まってもらってバラバラにならないようにも伝えて」
「えっえぇ、分かったわシーアはどうするの? 」
「こうするの」
と指先を噛み”蝶”出現させ 奥へ放つ
「あんなの 見たことないわ」
「今は、そのことは後で」
奥では事情を知っているマセリエとサムエルが
「てめぇらは ここで固まってな 俺とマセリエでこの場は守ってやる」
後は、シーア達に任せるんだ...いいな!! 」
「万が一の時はは、俺が出る...マセリエせんせ...そん特は頼んだぜ」
「ええ、盾役は支援役(治癒師や神官)と学職課程の子を中心に円陣を組んで! 」
和やかな実習は一気に緊張の空気に包まれる。
蝶が戻って俺の身体に吸収されると
はやり簡単な看取リと魔力痕跡が脳裏に浮かぶ、案の定禁止区劃の
扉は今まで感じたことのないマギだった。
(これは、拙いな)
地下6階層構造は最奥までは見えなかったがトリシ地下墳墓のような構造だった
「ビヨンお願い」
[ 呪文・フレイル ] と唱える
右手に握り拳大の明るい火の珠が灯り明るくなる
「ビヨン、マギの消費は? 」
[ マギ消費”極微” ]
「サモンッ」
「ケール!」
{{{ワオン・ワオン・ワオン}}}
「甘えるのは後よ」
{{{ワオンッ}}}
とケルベロスにすわり
「わぁ、おっきなワンちゃん♪」 とエリスも平気なようだ
ビヨン・ミーアとエリスを乗せて”力まかせ”に駆けて行く罠矢がケルベロスを貫通するが
ボスッ・ボスッ と音がするだけで平気なようだ
<<クロ、ケルベロスは大丈夫なのか? >>
<<あ奴は、今は仮初の器を得て居るだけじゃ
あんな矢如きでどうにかなっていたら儂の眷属なぞ務まらんわい
本体は冥界にいて昼寝でもしているじゃろ>>
<<そっそうか...ならいいが>>
<<お主こそ気を付けいほれ矢が飛んで来るぞ>>
すかさずビヨンが左手で払い除けミーアも巧みに払っている
そんなエリスは呆けて俺達を見て震えていた。
道中も時折”蝶”で構造を把握し彼らの痕跡を辿る
最奥と思われる大部屋の構造が見て取れその手前の小部屋らしき所に彼らの
マギの痕跡があった。
やや遅れてやってくる”連絡役”のクラウもケルベロスにぎょっとするも
気丈な顔を向ける。
「アナタ達、何者ですの? ただの、”聴講生”じゃないわね」
「いえ、クラウ...わたし達はただの”聴講生”よ」
「まぁ、いいわ それでどうすればいいんですの? 」
「盾役はいないよね? ここには」
「誰もいませんわ...サムエル講師呼んで来ましょうか?
彼は、優秀な盾役でもありましてよ? 」
俺は、黙考する
「マセリエ講師の実力はどう? 」
「彼女は優秀な妖術使いよ」 とクラウは”即答”する
それなら多少此処で討ち漏らしてもあの場はしのげるか?
戦闘課程の生徒もいるし この場はどうしてもやはり盾役が必要だった
「では、クラウサムエル講師呼んで貰える? 盾役が必要なの」
「任せて」 と今来た道を戻る
罠はケルベロスが強引に潰して来ているので大丈夫だろう
俺はこの前のディーボ戦のゆににケルベロスを後ろに潜ませ
小部屋に向かう
...
「どうして先走るのよ」
「だって」
「罠が作動したらどうするつもり」
「”たまたま”作動しなかったからいいじゃない」
...
...
(”たまたま作動しなかった”っておかしいな...散々ケルベロスが矢に貫かれたり、
落とし穴を避けたりしてたのにか)
さっきの講義でマセリエが
「いいですか皆さん迷宮では、一箇所仕掛けを触るとその階層の罠を無効化したり
仕掛けを一時的に無効にできるものあるんですよ
罠を仕掛けた本人が罠に掛からないようにするためですね...覚えて置きましょうね」
と言っていた。
(三人の中に間者が居る? あるいは3人全部か?
いずれも 放っては置けないな)
......
「だって”人”の気配がしたんだもん」
「ばっかじゃない」
「バカエモニィ」
「アイツがいるなんてよどうすんだよ」
「盾役もいないのに」
「”シーア”が来てくれるんじゃない? 」
「ただの”聴講生”が来るわけ無いじゃない」
「どこまでバカなんだか」
(誰も追いかけて来ない...来ないじゃない、どうしようマキ様とマニー様に
”お叱り”を受けるわ)
...
「お待たせしましたわ、シーアサムエル講師連れてきましたわ」
クラウの隣には生徒から借受けたらしい彼にしては小振りな盾と”大剣”を佩いていた
サムエルが来ていた
「クラウ、エリスをお願い」
「ええ、さぁエリスこちらへ」
とクラウはエリスをかばう
「うっう シーお姉様ぁ〜」
と半べそをかいている。
クラウがきゅっと抱きしめていくらか落ち着いてきた所でここで待機していてもらう
下手に皆の所へ戻すと標的が皆にいくかも知れないという判断だった。
「あッ、サムエル様」
「おゥ、シーアかそれにミーアもビヨンもいるな」
「マセリエ様は? 」
「アイツの妖術士としての実力は確かだ、これからしゃべることは他言無用だぜ」
と居住まいを正し
「なんせ俺とアイツ(マセリエ)はなここだけの話し ”王国騎士団特務隊”・”竜の爪”メンバーだ」
俺は吃驚していた まさかここにも”身分”を偽っているものがいたなんて
「ミーアよ、俺はただ軽いだけのオトコじゃないんだぜ」 とまた”牙”を見せる
「どうだかネ」
「シーアの実力は知っていたつもりだったがこれ程とはな」 とケルベロスを見る
ケルベロスは
{{{ハッハッハッ}}}
と口を開けて待機している
「ウチのシーちゃんはまだすごいんですから」
「へいへい」 と軽口を叩く
「で、ミーアよお前の得物はよ...見せてみろ」
「これよ、」」
と制服のスカートをチラリとめくり二振りの短剣を見せる
「うひょー、色っぺーなってそこじゃねえ 何だそのすげぇ業物はよぅ」
「シーちゃんからの贈り物よ いいでしょ? 」
「どっからそんなん手に入れたんだかね
こんな石塊(いhしくれ)だらけの迷宮とくれば”岩人形”と相場が決まっているんだがな
はてさて、”鬼”がでるか”蛇(サーペント”)が出るか
ちょと待ってな あのガキ共に説教してくらぁ」
サムエルが小部屋に行き
「コラァ、ガキども、ナニ遊んでんだ勝手に入りやがってよ」
「「「サムエル先生っ」」」
「こんなとこで居ねぇでさっさと皆のトコへ戻るぞ」
と怒鳴る。
すると突然、一人の女生徒が立ち上がり
「あははは......もうチャバンもお終いよぉ...アハッ...シーアも来ないし奥のアイツのトコに
誘導するつもりだったけど...モウイイワ皆まとめて死んでしまえ
クィエル教・祭主カリエル卿に栄光あれ!! 」 と乾いた哄笑を撒き散らしながら
奥に消え
((御霊無き者に我が”エモニィ”の名に於いて今、仮初の御霊を
与えん、この石塊に降臨せよ”岩人形ッ”))
と呪詞が聞こえるや奥の部屋から ガシッ・ガシッ と岩がぶつかる音がする
「お前らはここに居ろッ」
「「「はいっ」」」
俺とミーア・ビヨン・サムエルは奥の部屋へ入る
すると部屋の中央にごつごつした岩を人型に集めた形をしたダークシアンの
目はクリムゾン・背はシーアの3人分ぐらいの怪物”暴君岩人形”
がいて
その傍らにはクラウと同じツインテールが揺れていた
すぐビヨンが反応する
[ 敵対物確認 敵対度”極大” ]
[ 敵対物・組成”ケイ素・9割”・不明有機体”1割” ]
[ 擬似生体反応確認......場所敵対物”胸部”...位置不動 ]
(えっ有機体って”エモニィ”の他に何かいるのか? )
{ウゴァー...(オネエ)......(チャン)...}
いつの間にやら他の面子も入り口に固唾を飲んで見守っている
「エモニィ何故こんなことをッ! 」 とニエルスが叫ぶ
「あははッ だってぇしょうが無いじゃぁナイ シーアをここに連れて来なきゃ
あの子開放してもらえなもの」
「あの子って アンタの弟? 」
とエスティが問う
エモニィが カッと目を見開いて
「そうよッ!!! 」
「でも家に居るって」
「あれは、ウソよ ウチにある ”賢者の右手” を寄越さねば”弟”を返さない
なんて言うから無理やりクィエル教に入信させられた上こんな物まで見てよ これッ」
とツインテールのウィッグを引き剥がすと
頭頂部から薬品で侵されたようにやけどの痕を作り疎らに生えたレモンシフォンの頭髪の間から
ドクロに交叉した剣の焼き印が頭頂部にみてとれた。
「シーアを連れてくればこの髪も弟も元どうり ”賢者の右手” は見逃して
上げるって”銀の三日月”も言ってたしもっともその時はシーアの件はオマケみたいっだけどね
もうどーでもいいわ...弟にも合わせて貰えないし」
と合っていない視線で尚も叫ぶ。
「それとイイコト教えて差し上げましょうか
アハッ”クィエル教”はね”銀の三日月”に世界中から呪物や聖遺物をかき集めさせて
人造ディーボ造って何かするみたいアハははは......ぐッ」
鋭い一条の銀線がエモニィの鳩尾を横切り崩れ落ちる
傍らには短剣を意匠としたタリスマンがあった。
「エモニィー! 」
とニエルスが叫び駆けより魔法医術士の鞄を取り出し応急処置をする
エリスの錫杖で必死に疵を癒やす。
「ちッ余計なことを タイラント・ゴーレムッ!! エモニィもろとも皆を滅せよ」
とえんじ色のフード付きロングローブ黒の飾り紐付きに人影が言葉を紡ぐ
タイラント・ゴーレムは大ぶりな拳を振り回す
動きは鈍重だが威力が大きく
壁に拳が当たる度に部屋全体が大きく揺れる
「サムエル様、アイツの攻撃受け止めて下さいませ わたしに策が有ります
「応ッ!! シーア、盾役は任せときな」
「ヘルちゃん達、お願い♡ 」
{...{ウオオン}...}
ヘルハウンド10頭を召喚しサムエルに加勢させ注意を引き付けさせる
「ミーお姉様!!」
「ええ」
ミーアがタイラント・ゴーレムを短剣で斬りつける
さすが業物である軽く当てただけで スパリ と切れ目が入り切れ落ちる
「やたッ」
と俺はほくそ笑んだが すぐに再生して切り口がひっつき再生する。
刻む・再生を繰り返す
[ 擬似生体反応活性”極大” ]
やはり心の臓を何とかせねば勝機がないか
そこで俺は一計を案じ
「ミーお姉様少し大きめにヤツを切り落として貰えますか? 」
「えぇ? 」
と頃合いの大きさで塊が落ちる
「ビヨンッ!! 引っ付く前に”槌”の形に武器錬成!! 」
[ 肯定...武器錬成・形状”槌”...錬成度10割... ]
銀糸が伸び武器錬成してタイラント・ゴーレムの頭の三倍ぐらいの”槌”ができる
「サムエル様!! 耐えて下さいませッ! 」
「応ッ」
「ケール今よッ!! わたしとビヨンを乗せて飛んでッ!! 」
{{{オン}}}
と一声、俺とビヨンを乗せ
壁を蹴りタイラント・ゴーレムの頭上へ
「いっけぇー」
の掛け声と共にも脳天からビヨンが槌を振り下ろす。
ビシビシィィィィィィ と今度は”細かく”砕け散る
(やはり同じ物質でもこの”槌”、ビヨンの”水銀”の分だけ僅かに強度が勝ったな)
俺はウィップを構えその瞬間を待つ
タイラント・ゴーレムは”細かく”砕け落ち脈打つ人の胎児のような姿をした
心の臓が露わになりウィップが刺し貫くスピードがタイラント・ゴーレムの再生のスピードに勝った
{ゴギャァァァァ......(オネエ)......(チャン)...(コレデ)...(ヤット)}
ディーボの時のように断末魔に拳を振り上げたが
「シーア、俺に任せろ!! 」
サムエルが
盾で拳を振り止めてそのまま砂塵と化し心の臓を残し消滅した。
刺し貫らぬかれた心の臓に追い縋る人影があり
それは息も絶えそうなエモニィで、
先程の狂気はとうに消え失せ
「アトレスーーッ!!! 」 と泣き縋る
心の臓と成り果てた”アトレス”がくぐもった声で
「オネエチャン...ゴメンネ...ボク...こんな姿にナッチャッタ...シーアさん...アリガトウ...
ボクを開放...してくれて...最後に...お願い...ワルイ...ヤツ...やっつけて...おね...」
と最期まで言葉が続かなかった。
そして崩れる様に溶け落ち後には可愛い十字のネックレスが残された
「あはは、私バカみたい最初からアトレスの傍にいたんだね...結局、アイツラに踊らされたのは
私の方だったな...ゴフッ..」
「しゃべちゃだめ!!...ミーお姉様!! 」 とミーアの方も見るも
首をゆっくり横に振る
「いいのこれは、女神様のお怒りがきたのよ...ゴフェ...シーア達を誘導した私への
だたら...もうゆるして...最期にマキとマニーには気を付けてね...もう暗くなって寒く...なって
...きちゃった弟を開放...してくれて...あり...」
と最期まで言葉が続かなかった最期の謝罪は誰に対するものなのか誰にも
推し量ることは出来なかった。
俺はウィッグを元通りにして永遠に意識を手放してしまった少女の目を閉じ
額にやさしく接吻をする。
一同胸に手をそえエモニィとアトレスの御魂の安寧と安らぎを願う
..無事この者の御魂が信じる神の御許にたどり着き転生の環に入れますよう
魂に安寧あれ...
彼女は信じる神の許へ逝けただろうか
「絶対許さないんだからー!! クィエル教ォー・銀の三日月ィーッ!!」
俺はありったけの声で叫ぶ
「シーちゃん その目!! 」
「えっ」 サムエルの盾に映ったアッシュ・グレイの瞳がドラゴンの縦長のそれに変じていて
ほどなく普通の瞳に戻るも怒りはなかなか収まらなかった。
「これから、シーアはどうする? 」
サムエルが俺に聞いてきた
「わたしは、もうすこし潜ってみます...わたし自身まだ調査もありますし怒りも
おさまりませんし、あとエリスは連れていきます
(なり変わっているらしい女生徒は二人だそうだからな...安心は出来ないな)
「なのでエリス、ごめんねわたしに付き合わせちゃって」
「いえ、シーお姉様もいるし”おっきなワンちゃんやビヨンちゃんもいるしミーアさんだっているし」
「そうか、気をつけな 俺はコイツを連れて帰り遺体を検めなきゃなんねえ...これは
”仕事”だからな勘弁してくれや」
「あのぅサムエル様、エモニィのことは手厚く弔ってやって下さいませ」
「あぁ、アレだけの情報だ何かしら温情はあるだろうよ
もちろんこれはシーア達の手柄として報告するぜ」 とウィンクする
「あとこれを」
とネックレスをエモニィの首に掛ける。
「これからは、ずっと一緒だね」
と今生の別れを告げてこの部屋を辞した。
俺達はエモニィを彼らに託しクィエル教団と相見えるべく
懐に飛び込む。
次回 45話 ベゼリン学術院(邪教徒編)
お楽しみに
活動報告も更新しております
よろしければご覧ください




