41話 王都ギルトスへ
暗闇に身を委ねてどれぐらいだろうか?
意識が現界とどまっている事はなんとはなしに理解できていた。
そして、一番最初に俺の視界に飛び込んで来たのは豊かな双丘だった
「わぁ、シーちゃん目ぇ開けたぁ、おねぇちゃん心配したんだからね」
「あの、ミーお姉様ぁ苦しいぃ〜 」
「ごめんねあまり心配で夜一緒に寝たんだよ」
と言って
「もぅあまり無理しないでね」 と額に優しく接吻をされた
「これ見てシーちゃんに似合うと思って」 と自分を見れば
いつの間に着替えたのかフリルやレースたっぷりのピンクのネグリジェを着て
同色のフラやショーツに着替えさせられていた
「これは? 」 俺はこの色は持ってなかったので聞くと
「これね シーちゃんのお洋服がダメになっちゃたから ”アレ”から
取り替えたのよ これはあげるから たまにはこの色も着てね」
とフリルをつまみあげたりしている
「有りがとうミーお姉様...シーは嬉しいです」 とミーアに言う
今はアレからどれぐらいたったのか聞くと
気を失って3回目の出で今は昼らしい
<<お主、大丈夫じゃったか?...あんな大技連発しおってからに
お主だからこの程度で済んだのじゃ、お主自身の身体に感謝せい>>
<<そうだな、お前にも心配かけたなクロ済まなかったな>>
<<そうじゃとも、儂がどれほど心配したか......>>
と言葉をつまらせていた
<<クローティア>> と本からクローティアにすると
バッ と”特等席”ではなく胸に飛び込んで来て
グリグリ顔を押し付け足をばたつかせて上目遣いで涙目になりながら
じっと見つめていた
俺はニヤリと笑うと
『何じゃニヤニヤしおって』 と自分の行動に気づいたのかあわてて”特等席”に付く
『これからどうするんじゃ?』
と今後の予定を聞いてきた
「そうですねクローティア、先ずギルドで報酬と実績の更新、その後は
情報共有の為、ブレイル宅に向かおうかと」
『それが、良かろうな』 と今後の行動指針を確かめあう
(ビヨンの整備の事もあるしね)
俺はふと先の戦闘で対峙したサラの言葉使いを思い出していた
やはり少女の姿での男言葉は非常に悪目立ちしていた
異性姿好きの男とも思えなかったし俺の様に魂が男性ということでもなかった
今後、口に出す言葉使いは何としても
矯正していかなければならない切っ掛けの一つともなった。
(何かいわれたら男兄弟の中で育ったと言ってごまかせばいいし
まぁ、心の声は良いだろう 俺の”男”としての最後の砦であり唯一の
”シアズ”としての自己同一性だからな)
と今、身に着けているネグリジェを見て考えていた。
寝台の隅にたたんであった真新しい”ピンク”の袖無し(ノースリーブ)のワンピースを着て
沐浴を済ませるとカイナがいた ここは”白い貝殻亭”であった
「シーアもう”具合”はいいのかい ウチのラクスったら 「シーアをやっつけたのは誰だー」
大騒ぎだったんだから...もう無茶するんじゃないよ」
「えぇ、もう大丈夫です、カリナさん」 とペコリと頭をさげ
ギルドへ向かう
沐浴を済ませたらも気だるかったのも完全に抜けでいつもの調子に戻っていた
外にはミーアとビヨンもいる
「ビヨンは、大丈夫ですか? 」
[ 外装・損耗”無” 内部機構・損耗”極微” ]
「やはり、外観はなんとも無くても一度は整備は必要ですね ビヨン」
[ 肯定...”お父様”の整備を要求 ]
「分かりました」 と目覚めた時にクローティアと話したことをを提案する
異論はでなかった
「おう、シーアか? どうだい具合は? 」 とスヴァン
「えぇ、お陰様で」
「それは、良かった更新かい? 」
「はい、お願いします」 といつもの手順である
「コイツは、たまげた今ので報酬はギルド預かりに出来るようになったぜ
どうする? 」
俺は、ミーアがやっていたように手持ちを寄せて後はギルド預かりにする
これで、お洋服や雑貨がたくさん買える事が出来るなと真っ先に
脳裏に浮かんだのは自分で吃驚していた。
(うーむ)
「後これを”総長”から預かっているぜ...ここに来たら...シーアにってな」
と”羊皮紙”の封蝋付きの書簡を差し出しそれを受け取り小鞄にしまう
スヴァンが耳を寄せて
「お前さん”アレ(ディーボ)”討伐したんだってな世間じゃ王都騎士隊の手柄となっちゃいるがな」
「どうしてそれを? 」
「図星だな、オレも長いことコレ(ギルド受付)をやっているからな
蛇の道は蛇ってね」
......
今日はいつに無く変わった顔がギルドに異彩を放っていた
いつもむくつけき”漢”しかないギルドに一見大賢者風の背の高い濃い紫の瞳の男がいる
「いよいよ...”銀の娘”が動くか...フフ...しかも...あ奴まで...
その上、”人”の姿にまでなっておるわ...”シーア”よもっと美しゅうなって...早う余の袂へまいれ」
老若男女どれともつかない声音で独りごちる。
男の足元に不用意に近づいたノラネコが”瘴気”に当てられたかのようにビクリと跳ね
ふらふらと路地裏へ行き激しく吐血して哀れな骸を晒した
『ん、今の気配は? 』
<<どうした クローティア? >>
<<いやなに...覚えのある”気配”がの...彼処にな>>
と視線を向けた先には誰もそして気配すら無かった
<<いや、気のせいじゃ>>
<<そうか...ならいいが>>
後は、いつものむくつけき”漢”達のみ
※※
「たった今、ギルカードが更新されたよ...ここ数日更新が無くて心配してたけどね
それに例の”書簡”も彼女に渡ったよ
刻限は定めちゃいないがキミの”特別報酬”目当てにここ(ボルグラン城)に
来ざるを得ないだろうね彼女は」
「ドリエル、あいかわらす聡いヤツめ」
「それは、褒め言葉ととっておこう...リブス」
※※
俺達はギルドを出て”白い貝殻亭”に戻りカイナに別れを告げる
「カイナさん、お世話になりました ここトリンデに来た時は又、
お願いしていいですか? 」
「ああ、いつでもく来ておくれ、ラクスも喜んでいたしね...とうとう
あの人ったらあんた達がいる間、一度の顔見せ無かったね全く...」
「シーア、もう行くの? 」
といきなりラクスが俺に抱きついていた。
懐かしい”子供”の幼い匂いがする
「そうよラクス、お姉ちゃん達はね悪者をやっつけに行くの...ラクスはいい子でいてね」
と軽く屈んで抱きしめ返し、すこし塩っぱい目尻に優しく接吻をする
宿の代金を支払い郊外で、ユラに乗りトリシ大地下墳墓の上空を遠回りの航路で
飛ぶとディーボも居なくなり、多くの参拝客の賑わいを眼下に見つつ
海岸付近で宿を取り一拍して夜明けと共にトリスのブレイル宅に向かう。
今回の昼食はユラに乗ったまま済ませ進路は北東方向へひたすら飛行を続ける
ブレイル宅では師変わらずブレイルがビヨンに親バカっぷりを披露していた
[ お父様の接触”過多” ]
とまで言われる始末。
『ブレイルよ、息災であったか? 』 クローティアが聞くと
「クローティア君、ボクはいつだってゲンキさ」
と健在ぶりを見せる
『それは何よりじゃ では情報共有といこうかの』 と”ヤンス”ことは意図的に伏せて
パスを通して共有する。
「ビヨンが戦闘中に言っていた錬成度って何ですか」
開口一番聞いてみた
「シーア君、それはね無機物でも彼女が解析出来ない物があるとすべて
錬成出来ないんだ...多分解析出来ない物が含まれていたと思うよ」
「なるほど...その解析出来ない物というのが多分コレだと想います」
と”爬虫類の目玉のような石”を渡す
「うーん」 と試す眇めつ渋い表情だ
「これはボクでも解析できないな ”魔女” でも無いと解析できないね
コレは魔術的な呪物だね...残念ながらボクの専門外だね済まないね」
「いえ、その ”魔女” は何処に居らしゃるんでしょうか? 」
「”魔女” の重鎮なら ”浮遊大陸ベルゼ” かな...噂は知り合いから聞いたことが
あるよ...誰よりも魔術的な呪物や由来に詳しい人物がいるって話さ
王国の宮廷魔術師ですら”お伺い”を立てる人物だ間違い無く解析出来ると
思うよ」
「そう...ですか...これの件は今は”保留ですね」
(浮遊大陸かぁミーアが言うには相当な実績を積まないと”通行証”が発行されないらしいしな
今は”保留”だな)
「次にコレなんですが」
鋭いヒビの入った”透明”な硝子の立方体を見せる
「これがディーボを倒した時に遺したモノです」
「これはオーパーツ・コアじゃないかそれをディーボを討伐した時に遺したんだね」
「壊れた時、黒い霧が抜けていったように見えたんです」
「これは、ボクの魔導技術的にいえば何者かが”悪しき心”を入れたんだろうね
オーパーツ・コアはボク預かりにしてもらえないかな出処を当たってみるよ」
「お願いします」 ブレイルに渡す
すると何やら部品が詰まった箱を持って来て
「シーア君、 シーア君が裏の工房で頼んだ”ブツ”の端材と大量の”白金の星砂”のお陰で
最高等級のオーパーツで愛しのビヨンちゃん♡ の機構部品も作れたんだ
内部機構をこれで置き換えさせてもらえないか...魔導機関も含めてね。
魔術耐性や物理耐久性や新たな能力も期待出来るかもしれない
外観は変わらないから安心したまえ」
「それはすごいです...ビヨンもいいよね? 」
[ 肯定 ] と即答だった。
「あの前から気になっていたんですけど この娘の肌って
ホムンクルス肌ですか? 」
「当然じゃないかボクのビヨンちゃんだよ 髪と一緒でシアズ製の最高級品だよ
髪もそうだが後は、絶対入手出来ないだろうね」 と”娘”自慢をする
(聞くだけ無駄だったな)
「だた調整や内部機構置き換えには丸一日時間をくれないかな?
泊まるんだったら空き部屋を使っていいよ
ボクのことは心配しなくていいこの後、施術室に篭もるからね
食事はドワ族に頼むと良いよ...さぁ行こうかボクのビヨンちゃん♡ 」 と二人が奥に消える
「ミーお姉様」 俺はある贈り物をすべくミーアに声を掛ける
今のブレイルの言葉からするに”贈り物”は完成しているようだ
渡すなら今、この時を置いて他には無かった
と
思っていた。
そうあの出来事がミーアの身に降り掛かるまでは、この時の俺はちょっと
慢心していたのかも知れない。
「なぁに、シーちゃん? 」
「ミーお姉様に”贈り物”をしたいので裏手の工房まで来てくれますか?
「えぇ、いいわよ なんか楽しみ♡ 」
と裏手の工房へ
「あのぅ例の物仕上がってますか? 」
「オゥ娘っ子、仕上がっておるわい持ってけ」
と差し出したのは
赤黒い柄が蛇竜”ユラ”の老成した”古い”ウロコ製で刀身部が最高等級のオーパーツの
”白金の星砂”をふんだんに使ってこさえた渾身の業物の二振りの短剣だった
「これをミーお姉様に使ってもらいたくて......どうですか? 」
「えっホントにいいの? 」
「ええ お姉様、シーからの想い受け取ってくれますか? 」
「もちろんよ...シーちゃ...お姉ちゃん...うれし〜...大事にするね」
と豊満な胸に顔を埋められた
「加工代金はおいくらですか? 」
「代金だぁ!...そんなのいらんわい ”白金の星砂” 大樽100樽分が代金代わりだわい」
「感謝します」
「感謝するのは儂らの方じゃありがとヨ あとは端材でオートマトの機構部品もこさえておいたぞい」
「それは、ブレイルさんが早速持って行きましたよ」
「ブレイルめ贅沢なヤツじゃ、オートマトの機構部品に使うんだからな」
「まだ少し端材があるがどうする」
「後は、皆さんで自由に使って下さい」
「これで儂らの道具でもこさえようかのう」
「是非そうしてください」
と頭を下げその場を辞した。
後は、例の”書簡”であるが一応俺宛にではあるがブレイルも含め
全員揃った所で”開封”することする。
ミーアは今夜は新しい”武器”をなじませる為に屋敷世界で特訓するそうだ
空き部屋には俺とクローティアのみ 一息つこうかとため息を付いた瞬間
下腹の辺りが例の感覚に襲われ”アレ”が来た
「やだっ......”アレ”...きちゃた」
俺は、ミーアからいろいろアレについて助言を受けていたので
今度はちゃんと”対処”出来た。
でも、どうにも抗えない睡魔が襲ってくる。
「ねぇ...クローティア...ミーお姉様が還って来たら説明して...とても眠いの」
『了解じゃとも、儂にまかせゆっくりせい』
「お願い♡ 」
手早くネグリジェを被り寝台に横になると俺の意識はすぐ遠のく
右の”牙”がやけに熱を帯びていたのを意識が遠のく直前に感じて
いた。
また夢を見る
......ねぇ.........っここに...シて...オネがいょぅ...んゅんゅ・ンッンッ...
ここはどこ...まって......
強烈な淫夢のような感覚が繰り返される...何度目かの感覚の後、
覚醒すると満月でまだ夜明けまでは先の様だ
『お主大丈夫か? 今回はまたえらく艶っぽくうなされとったぞ』
「ミーお姉様は? 」
『とっくに還って来て休んどるわい』
「ねぇ...クローティアわたし屋敷世界に行って沐浴したいの
ビヨンがいないけど大丈夫かしら? 」
『何か、あったら念話で話すからよいじゃろ...それに儂を寝台に隠せばよかろ』
「そうだね...お願い」
俺は屋敷世界に入ると早速沐浴場行きシャワー桶をセットし湯を
浴びる。
「ふう〜気持ちいいな〜♡ 」
独りなのに男調子の言葉すら出てこない
確実にアレの度に嗜好や関心事などが錬金術師としての知識とは別に
”少女”化しているようだった。
湯に浸かり身体をほぐす
「んー」
汗も綺麗に洗い流しで姿見の前で全裸を晒すもやはり
身体の外観上の変化は無かった
下着を身に着けネグリジェをきて右の牙が疼いた感覚を確かめようと
むに と口角を手で押し上げるとそこには外観は変わらない
ものの色が赤黒くなっていて託宣の様にその効果を聞いた時、激しい懊悩が渦巻いた
これはクローティアに相談する案件だった。
後一つ目覚めたらしい能力はクローティアに実践してみせるしかないな。
転移陣で外へ出る・ビヨンはまだ施術中のようだ
邪魔しないようにそっと空き部屋に戻るとそこに”クローティア”がいる
確か”本”だったはずだ
「えっ クローティアどうして? 」
『儂の軛の一つが外れたようじゃ儂の意思で
この姿を取れるようになったわい』
「クローティアそれはいいですが、時と場合を考えて下さいね」
『分かっとるわい それでお主の方はどうじゃ? 』
「実はこれのことでクローティアに相談したいことがあるのです」
と
念話に切り替える
<<......という訳で悩んでいる>>
<<何と、それを使えるのはたった一度だけじゃと>>
<<彼女を”こちら側”にしてもいいのが悪いのか今の俺には
判断できない、彼女を”こちら側”にすることの
意味は分かっているつもりだがな>>
<<儂だったらこのことを話してあ奴がどうしてもと嘆願した時
”こちら側”にするじゃろな...あ奴に判断させるがよかろうと思うじゃがのぅ>>
<<さすが年の功だな...ミーアに話すだけ話してみるか>>
<<儂もそれが懸命じゃと思うぞい>>
<<そうするか>>
「後、一つはこれです」
俺は、右手人差し指を左の牙で”ブラッディ・パーピリオ”とつぶやき噛むと
血の珠が俺の掌くらいの赤黒いアゲハ蝶に変化して留まる。
やはり輪郭が血の短剣同様、ゆらゆら蠢いていて
俺が念ずると意思に従ってゆらゆらと翔び、
制御を誤り壁にぶつけると極軽い衝撃がはしる。
そして、再び人差し指に留まると吸い込まれるように指先から
体内に戻ると俺の脳裏にこの部屋の見取りが浮かび
同時に自分やクローティアやブレイルと思われる、マギの痕跡と残滓も分かるようになった
聴謀活動用に使えそうだが自分の体内に吸収され無いとダメらしい。
もし戻ってくる途中で破壊されると情報は分からず仕舞いになる事も
本能の様なもので分かった
<<ほう、して聴謀範囲はどれぐらいじゃ>>
<<あまり広くはないですが屋敷世界の屋敷ぐらいかな>>
感覚的に所感を述べた。
<<使えそうじゃな>>
<<俺としても使えると思っている後は、実践あるのみだな
何より手札が増えたのは良かったと思っている>>
<<じゃな>>
翌朝、俺・ミーア・ビヨン・クローティア・ブレイルが揃った所で書簡を開く
これにはこう記されてあった
「此度の貴殿らの働き真に重畳である。
我がオルティア大陸国王”リブス”の名において浮遊大陸”ベルゼ”の
”通行証”を授与するもの也
刻限に定めなし 暇に我が王城”ボルグラン城”に参られよ
〜 オルティア大陸国王 リブス 〜
自身のマギを以って著名するもの也」 と ”代筆”では無い文言が並んでいた
俺は、何者かの掌の上で上手く踊らされているような居心地の
悪さを感じたが、今は敢えてその掌の上で上手く踊ってやろうと
策をめぐらせていた。
「次の、目的地が決まりましたね、皆様」
「そうね、シーちゃん」
『じゃな』
[ 目的・ボルグラン城・来訪 ]
「ボクのビヨンちゃんが宮廷初舞台かい”お父様”としても
誉高いよ...粗相の無いようにね」
[ お父様、宮廷用行動様式・要求 ]
「おっと そうだったね」と 何かビヨンに”飴”を含ませる
「これで 簡略式の宮廷作法はビヨンは習得しているはずだ」
※ 欲望・陰謀・思惑・渦巻く彼の地へ一行は飛び込む ※
次回 42話 ベゼリン学術院(聴講生偏)
お楽しみに




