39 王国の勅令
「ルガラス!! ルガラスはおるか? 」
リブスの低い声が城内に響く。
「ここにッ」
太鼓腹を揺らしルガラスはリブスの許へ
「”討伐隊”送ったそうだな...して首尾はいかほどか? 」
「ハッ! 陛下あれから、一回目の出が過ぎましても誰一人戻りませぬ
大神官”ノージェ”の祈りも功を奏さずディーボにエサ......」
「これ、よさぬか」
「失礼しました」
「お主も聞いておろう”黒き髑髏と剣の者”もなりふり構わなくなってきておる」
「すぐにでも冒険者ギルドに”令”を出せ!! 」
「御意にッ!!}
ルガラスは、急ぎドリエルに緊急の文を出し早馬で半日ドリエルの許へ、
「やっと動いてくれたね...リブス後は僕の仕事だ」 とつぶやきながら
!!! ディーボ討伐急募 至急 ”実績不問” !!!
こんな一文が載った羊皮紙を手に持ち目を細める。
「あの娘は食いついてくれるかな? 」
形の良い指を組み顎をのせ、それぞれの思惑をものせて早馬馬車の車輪が廻る。
※※
あれから、俺達は四人?で簡単な打ち合わせをしていた。
「わたしが見るに”ヤンス”は脅威では無いと見ています
今まで二回しか邂逅していませんがどうも彼は情報収集を専門で行動している感じですね
しかし実力は未知数です。
本気で来られたらこちらも覚悟を決めなければ成りません」
俺は、次の台詞を言う前に一行を見渡し、居住まいを正した。
「ですが極力生命までは奪わないようにして、わたし達の恐ろしさを見せつけてやるのです
いずれあの情報収集能力をわたしは必ず手に入れたいのです
こちらに引き入れる”機”は必ず来るとも思っています。
ねぇミーお姉様、シーのワガママ聞いてくれる?♡ 」 と俺は可愛さを強調して言う
更に、「幸いわたし達は”お子様体型”らしいので”余計”な手出しもしないでしょう」 と付け加える
「クローティアはどう思いますか? 」
『全くお主のお人好しさには、呆れたわいまぁ、お主の決めたことだしの
付き合うとするかのぅ』
「ミーお姉様はどう思いますか」
「そうねぇ私はシーちゃんがいいと思うことをやってみればいいと思うわ」
「やたっ、シーはとてもうれしいです」 と両手を合わせて口元に持っていく
「ビヨンもいいですね...決して生命を奪ってはなりませんよ」
[ 肯定...対象の生命活動維持優先で戦闘 ]
「ありがとね♡ 」
と”飴”口に含ませる。
「ディーボ、これは”全力”でいきますよ」
「ビヨンわたしを抱いて武器錬成した時はどのぐらい戦えますか? 」
[ 戦闘行動・損失”無” ]
「では、ディーボは......という算段で」
俺なりの”算段”を伝える。
「では明日は、いつ貼り出されるか分かりませんし...朝一回と夕方一回確認して
それ以外は自由時間としませんか? ビヨンはミーお姉様についていてくださいね」
いつぞやのブレイル宅で約束した事を確かめ合うように視線を交わす。
この場にラクスはいない
冒険者同士の会話に無闇に聞き耳を立ててはならないのは
この世界で皆がきつく幼少の頃より厳しく言われていることであった。
木の平皿に盛られた海産物が乘った
夕食は小麦粉を練り、紐状にして茹でて香味油で味付けた物で
これは、シーアの好物の一つになった。
はれて翌朝、日が傾くまでは自由時間である
俺も折角、少女になったのだから少女らしいことをしみようかと
女子好みの雑貨店巡りをしていた。
シアズの頃とは対極的な好みの店内の品揃えも、これもまた新鮮な気分であった。
リボンだけはユラに
{きゅい、きゅい}
激しく”嫉妬”されたがネックレスを付けてみたり、服に付ける宝飾装身具を
取っ替え引っ替えしてみたりと少女らしいことをしていても当然
誰も奇異の眼で見る者などいなかった。
(当たり前と言えば当たり前か)
クローティアも珍しい事に”特等席”から離れて店内を物色している。
しばしの後、今度は服飾店に入る最初の頃、落ち着かなかったワンピースも
これはこれで良いのものだと考えを改める事となった。
何しろ、被るだけで着替えが済むうえに軽く感じられ
用も足しやすい上、足元も慣れると実に涼しいのだ
少々肌寒い所でも温かい空気がスカート部に溜まり却って暖かく感じられて
これは以外な発見だった。
もともと、凝り性が強い俺は変化が豊富なワンピースに
目を踊らされていて最初は さわさわ・ちくちく して嫌だったフリルやレースも最近は
慣れてきたのか少し控えめだと物足らなく感じるようになってきてまでいた
(ホントにどうしたんだろ 俺? )
妖精に胸の谷間に潜り込まれた経緯もあり首が窄まっていて七部丈の袖の
ワンピース3点をお気にいりの檸檬色と淡い水色
の変化違いと同色のローパンプスとで誂える
当然の様にワンピースもローパンプスもフリルやレース・リボンは
きっちりと存在を主張していて姿見であてがうと実に少女映えしていた
ついでにネグリジェも数点購入して次は戦闘時用等のブーツ類である
ショートの薄茶の編み上げブーツとロング編み上げブーツをそれぞれ一点ずつ
この前のヒュージ・ワーム戦での報酬で買い求め今度はしっかり
首から掛けた小鞄に人目のない所で収納し出店で大きな二枚貝に
牛の乳を発酵して固めた物をかけて直接炙った物でお腹を満たす
「う〜ん おいし♡ 」
と舌鼓を打つ。
「クローティアはなんか要らないのか? 」
『儂には、これが有るからのと黒真珠を指差す...っとそうじゃ...儂にもお主がつけている”リボン”とやらを
買ってくれぬか』
「はい、クローティアには人形遊び用のリボンでいい? 」
『勿論じゃとも後で儂管理の品にするでな...魔法陣に入れてくれんかのぅ』
「いいですよ、クローティア」
と人形遊び用の巾広のリボンを別の雑貨店で
黒・ピンク・オーキッド・ライトシアンの4色を選び購入し
これも人目のつかない所で本に戻して魔法陣に入れた後、クローティアにすると
早速、彼女の後頭部にオーキッド色のリボンが揺れていた。
シーアと別れてから、ミーアもビヨンと”観光気分”を堪能していた
ビヨンに”飴”をもたせやはり、女子二人は服飾店に入る
目新しい服もそこそこに、ミーアは少し上の空でシーアの提案の事を考えていた
(”ヤンス”の事は正直驚いてたわ...敵?...なのに)
接触してきておきながらシーアは”能力”を買って一行に引き入れたいと言う。
が、ミーア自身も下卑た言い方はするものの”嫌な感じ”がしなかったのも事実でもあった
ケット族の優れた”直感力”がそう判断させているかも知れない。
(シーちゃんたら、何を考えているのかしら)
おっといけない折角の”お買い物”でこんな”ヤボ”な事に考えを巡らせても
勿体無いでは無いか、と最近の彼女について思いを切り替えた
最近の彼女は、ますます少女っぷりに磨きがかかってきていて
彼女の”少女”らしさに同じ少女として少し妬けていた
でも、まだ”男の子”っぽさが時折見え隠れしていて
その”男の子”っぽさが姉心をくすぐり少しの嫉妬心を覆い隠す。
(はぁっ、ぎゅ〜としたいわ外観は同性でもシーアの中はシアズ様であるしね)
でも最近、ミーア自身の中で妹”シーア”として好きになりつつもあった。
隣に並んでいるビヨンを見れば辺りを伺うように視線を彷徨わせている
(気を使わせちゃってるわね)
とミーアはうすうすビヨンがさり気なくフォローしているのをなんとはなしに気付いていた
さてと次の店巡りである、目抜き通りにでて出店を眺める
きっとシーちゃんたら出店で食べ歩きでもしているだろうと右にに左に首を
振るも何処にも見当たらない、更に注意深く見ていると
何と驚いたことに少女趣向の強い服飾店に入っていくではないか
(えっえっ、信じらんない何しに入ったのかしら? )
もうこうなると好奇心が押さえられない尻尾がゆら〜りゆら〜り大きくゆっくり動く
辺りの目も気にせずに外から店内を覗いて更に驚いた
なんと、彼女は少女趣向の強い服を選び、多くの少女がそうする様に
自身の身体に当ててスカートをつまみ上げたりレースやフリルを
見比べて見たりしていた
しかも明らかに誰かの為ではなく自分用として購入していて
おまけに同色のローパンプスや茶や薄茶の編み上げブーツまで誂えていた。
ミーアの目かからみても服の感性は抜群で姿見から垣間見える彼女を引き立たせていた
(シーちゃんたら意外と少女趣向の強めのワンピースが好きなのね
あれほど嫌がっていたのにね)
何が彼女を変えたのだろうか
締めはネグリジェとクローティアにリボンを購入していて店から出てきそうに
なるのを見てミーア慌てて隠れていた。
すると不意に甘ったるい香水の香りが鼻腔をくすぐる
「あラン、何処かで見た顔だと思ったラん...”みーちゃん”だったのねン」 と
”女性”にしては低めの声音、どうしても隠しきれない”男性”的なシルエット、高い背
それはかって知ったる因縁の相手だった
[ ミーア、警告・感知・敵対度”微少” ]
「ええ」
「あらァ、可愛ィ...オニンギョさんだ事...アテクシもほしいワァ〜♡ 」 と大袈裟な
しなを作り女物を好んで着るこの”男性”は ミーアの因縁の相手 ”ニール” であった。
「アンタは”ニール”なんでッ!! こんな所にいいるの?
とっくに男娼にでも鞍替えしたのかと思ったわ それに”みーちゃん”なんて呼ばないで」
「アラいやだわぁ〜、アテクシと”みーちゃん”の仲じゃナイのよぅ
それにまだ、立派な冒険者ヨゥ」 と自分のギルドカードをちらつかせる。
ご丁寧に”彼”のギルドカードはどうやったのかピンクの小花を散らしていた
(おかしいわね”ギルドカード”はあんな小細工は出来ないはずなのに?
でも今はそんな事じゃ無いわ)
「イイデショ これ、アテクシ専用なのよん♡ いい”センセ”にオネガイしたのヨン♡ 」
「そんな事・ド・ウ・でもいいわ」
「やだッ、みーちゃんったらツレナイの」 と幼い少女のように
自分の右人差し指を咥えで訴えるような眼差しをする。
この仕草に苛ついたミーアは語気を強めて
「もう一回言うわね...何・で・!!...こ・ん・な・所にいるの?...ア・ン・タ」
と凄む
「お買いモノものよお〜 ほらアテクシの”アレ”ないでショ」
と腰の辺りを指差すと確かにいつも”彼”がいつも武器を佩いている場所に
”アレ”はなかった。
「アテクシの”ケイル”ちゃんは 偉い”センセ”に診てもらってるのよン」
と言ってきた
(”ケイル”ちゃん”? ...そうだったコイツは自分の得物に”名前”をつける癖があったんだっけか)
「さっきお洋服見てた可愛い”銀の娘” みーちゃんのツレでしょ
アテクシぃ、おいしく頂いたちゃおうカシラ♡ 」
と穿いてるフレアスカートの股間の辺りに手を添える。
「アンタ、言っていい事と悪い事があるわよ」 と更に凄む
「これは、どっちカシラネ」
と茶化してきた
「このッ!! 勿論、悪い方よ」
と短剣に手をかける
「おおコワッ、マタネ〜...ルヴォワー♡ 」 と語尾に呪文めいた言葉を残搔き消えた
[ ミーア、周囲50歩圏内・敵対度”無” ]
ビヨンの言葉を受け構えを解く
「ねぇこの事、シーちゃんには黙ってて、おねがい」
[ 肯定...ミーアの私事と判断・他言”禁”に設定 ]
「ありがと」
後には”彼”の甘ったるい香水の残り香がミーアに纏わりつき苛つきを
なかなか静めてくれなかった。
ひと通りの買い物を済ませ後はギルドに寄り宿で夕食という流れになった
そに道すがらシーアの下腹がまたもや しくりしくり と疼く
思わず下腹を擦り
「あッ...んゅ、...やだっ......また”アレ”?... 」 と独りごちた
が クローティアにどうやら聞こえたらしい
<<お主、”アレ”が来るのかの? >>
<<そうだ、...多分近い内に...確実に来るな>>
<<良かったではないか、お主の”アレ”は新しい”能力”が顕現する引き金じゃろ>>
<<何が、”引き金じゃろ”だ顕現する”能力”と引き換えにどんどん”少女”らしく
なっていってる様な気がするんだよ>>
<<もう既に”らしく”なっておるではないかのぅ?...シーアよ>>
<<うーむ>>
<<良きかな・良きかな...もっともっと”少女”らしゅうなってくれ儂はちーとも困らんわい>>
<<なにが”良きかな”だか全く>>
<<まぁ明日、明後日って話しじゃないから討伐は問題ない>>
<<儂はお主の新たな”能力”を早く見たいぞい>>
<<勝手に言ってろ>>
<<ふふッ>>
(念話で話しかけてくれた事には感謝しなきゃな)
そこでギルドで俺は、
!!! ディーボ討伐急募 至急 ”実績不問” !!!
の公告を目にする事となった
「シーちゃんこれ? 」
とミーアと丁度鉢合わせる
「えぇ、ミーお姉様いよいよですね」
「おおシーアか、丁度良かったな 今貼り出されたばかりだぜ」 とスヴァンも顔を出す。
「早速、申し込み(エントリー)していいですか? 」
俺は申し込み(エントリー)する旨をスヴァンに伝えた
「無論だ、今回”実績不問”の条件付きだシーアのでも問題ないぜ」
(なぜこれだけの討伐で ”実績不問” なんだ? まぁ、俺にはどうでもいいか)
※※
王の私室にノックも無しに入ってきたドリエルは
「リブス、聞いてくれよあの娘が食いついてきたよ...実力を早くみたいよ......僕は
キミの”討伐隊”も同行するだろ」
と興奮を隠しきれないでいた
リブス は驚く様子も無く
「ああ ’立会人” として ”生え抜き” を選抜してある...その召喚士の娘の事を
報告するようにも伝えてある」
「ご立派じゃないか、キミにしては」
「嫌味はよせ...俺じゃなかったら首が失くなってた場面だぞ」
「いや、僕の言葉はいつだって褒め言葉さ」
「どうだか」
「それじゃ僕は、情報を一番に聞く”仕事”があるからね」
と挨拶も無しにふらりとでていいた。
「まったく、自由に動けるアイツが羨ましいぞ全く、...俺は王のとしての職務を
果たさねばな...」 と 別室で休んでいるであろう妻と娘に向けてつぶやいた。
※※
「出立は...朝、一番鶏が鳴いたらだ それまでここ(ギルド)に集合だ」
「はい、分かりました...スヴァンさん」
「がッはッはッ...今夜は早く休めよ」
とバシンと漢同士がそうする様に背中を叩く
「ケホッケホッ」 と俺がむせると
「すまん、すまん、ついな...許せよ」 とスヴァン
「それでは」 と俺達は”白い貝殻亭”に向かう
カイナさんにお願いして朝一番鶏が鳴く前に声をかけてもらうように頼み
早めの夕食と沐浴を済ませて
寝台で今朝、購入したばかりで俺拘りの、たっぷりのフリルとレースが盛られた
黒のネグリジェに身を包み、ワンピースと靴から沐浴で火照った身体を開放して寝台に就く
そんな光景をミーアは にまにま とドアの隙間から覗いていたのは俺が知る良しもなかった。
※ そして、世界もまたそんなシーア達の表舞台への登場を待ち焦がれていた ※
まだ、夜も明けきらないうち宿を出てギルドへ向かうと
既に面子は揃っているようだ
俺達の他には冒険者3人と立会人と覚しき”討伐隊”だと思われる
王都の紋章入りの装備をした人物3人が待機していた
「おはようございます 皆様、遅れました」 と恐る恐る挨拶をすると
「俺が、今回の”討伐隊”の立会人だ
王都では騎士隊の 総指揮を努めている
”リグナス”だ、
あと同じく王都騎士隊の治癒師隊総指揮
”スティシア”と
騎士隊の盾役隊総指揮
”ガリーニ”だ
今回はこの3人で立会も兼任する」
「「「よろしく」」 よろしくね」
それそれヒム族・ケット族・ウル族の男性2人女性1人であった
面立ちは全面覆いの兜と女性は仮面を装備していて分からなかった。
「顔を隠す無礼を許してくれ、今回は極秘扱いでな」
と顔を隠す理由を述べた
「いえ、皆様のご尊顔を伏せていらっしゃるのはご立場を思えば
無理もない事だと推察いたします...問題ありませんよ...わたしは......っと名はシーアです
シーアとお呼び下さいませ」
と簡略式の挨拶をする
後の冒険者は
「「「......ッチ小娘かよ...俺達もバカにされたもんだ」」」 と
この一言で終始無言であった。
頃合いを見計らったかの様に朝の一番鶏の鳴き声が、
夜明けの静寂を突き破る様に鳴く
俺達はユラで、他は早馬馬車で西へ”トリシ大地下墳墓”へ向かうその様子は
さながら、敵の心の臓へ向かう矢のようでもあった。




