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オルティア・レコード  作者: 南 泉
一章 〜始まりは少女(シーア)から〜 オルティア大陸編
38/75

38 銀の三日月と邪教

一方、王都”ギルトス”ここオルティア大陸・バルケモス大陸・タフタル大陸・ルベリト大岩礁帯

浮遊大陸”ベルゼ”5つの大陸群の中でも奇観の観光地として名を轟かせていた。


 他の遺構都市の例にももれずここギルトスも遺構を利用して形成されている

先ず目につくのは、地上にぽっかり空いた湖程の広さの立てあなである。


 基底部は常に霞がかかり見えない、その中央に取り残された様に円柱状に大地が残り周りの大地

と歩廊や天然の回廊や古代人の巨大な遺構が折り重なる様に中央の大地とを結び

さながら、天然の要塞の様相を呈していた。

中央大地には人類の賜物である、鍾乳石の如く尖塔群が立ち並ぶ。


更に中央に睥睨するが如く聳え建つボルグラン城に住まうは、大傑物現オルティア大陸国王

”リブス”その人であった。


「ルガラス!!  ルガラスはおるか? 」

「はッ ルガラスはここに」 と リブスの前に傅く

すいっとリブス王の前に現れたるは、髪油で整えているセンター分けの髪・ダークブラウンの瞳

体躯は肥えている人物・宰相”ルガラス”であった。


「よいよい、儂に近こう寄れ」

ルガラスはリブスの横に控える。


「早速だがアレ(ディーボ)の討伐隊の被害状況を申してみよ」

「はッ、現在50と余名で御座います」

「うーむ、彼らにも”令”を下さねばならんか」

「冒険者共に助力を請うと! 」

「そうじゃ儂の履歴は知っておろう? 」

「存じ上げております陛下...ですが今は陛下はまつりごとかなめ

ご自身のお立場を...」

「ええぃ分かっておるわ! 」

「これはご無礼を」 と身を退くしかしリブスには、剣呑な空気は無かった

「良い、あと30討伐隊を出せ これの人員の采配はルガラスお主に

任せる......しかしこれが全滅したら猶予は許さんぞ

儂も進んで討伐隊を死地に送れる程、悪鬼では無いのでな...これ以上

民草を失う訳にはいかん」

「ハッ、陛下 陛下最大の御明断に感謝致します」


「ところで、”黒き髑髏と剣”の件...進捗を申せ」 

とその時会話を割って執事らしき男性が気配も無く王に耳打ちを入れる

それに気分を害した様子も無い

一体何処に居たというのかルガラスには分からなかった。

「何!ッ アイツが謁見したいだと...後にせいと伝えよ」

「御意に」 と気配も無く下がる。


「で......どうなっておる? 」

「最近、王都周辺で”黒き髑髏と剣”の者共が騒ぎを起こしておりましてそれには

ギルド経由で処理をはかっておりますが...陣頭指揮を執っている”ニース”なる人物の

話しによればどれも末端で、拠点すらつかめませぬ」

「うーむ、こちらの采配もお主に任せよう...出来るだけ捕縛してどんな情報も

見逃さぬようにな、報告は”ルカス”に挙げよ」

「仰せのままに」


「最後に”弓張月”(銀の三日月)の件はどうか? 」

「こちらも依然闇競り(ブラック・オークション)やヒギンズ商会からの報告は

受けておりますが何しろ好事家が求める品の事、どれに関わってるか分かりませぬし

ずべての品に”荷札”を付けて追いかける訳ににもいきませぬ。

 最近だと、キリンズでどこぞの貴族の娘がオートマトを史上最高額で即決したぐらいで

この者の名も商会の信用に関わるゆえとの事、教えてもらえませぬ」


「そうだろうとも」 とリブスは首肯する。

「この件もお主に采配をませる...すべて必要人員は儂に申せ、それは手配しよう」

「ありがたきお言葉もったいのう御座います」

「下がってよいぞ...お主はお主の責務を果たせ」

「それと、お主はもっと身体を動かせ...もっと肥えるぞ...ハッハッハッハ! 」

ルガラスは狼狽しながらその場を辞した。


と入れ替わりに執務室に入って来たものがいる。

「やはり、お前か”ドリエル”」

「やあ、”リブス”久しぶりだね」

と言葉を発したのは ライトグリーンの髪・長髪中分け・詰め襟の灰色の長衣を着ているのは

エル族男性・ギルド総長”ドリエル”である。


 まるで旧知の友のように言葉を交わす

「キミがなかなか僕に依頼出さないからキミのご自慢の”討伐隊”がとっくに

討伐し終えたのだと思ってたよ」

「それを言われると返す言葉もないな...俺には俺の立場が有るそれを分かってくれ」

「随分”陛下”らしくなったじゃないか、昔のキミならすぐに敵陣にすっ飛んで行っただろうに」

「今の俺には妻も娘もいる、何より大勢の民草も俺の元におる

昔のようにいきがれないのさ」

と窓辺の城下の町並みを見つめる。


「あと何人”犠牲者”を出すつもりだい? 」

「そういう言い方はよせ............ッ”30”だこれ以上はドリエル、お前に”令”を出す」

「キミにしては”英断”だね...その特は、ギルドが総力をあげて”討伐隊の面子”に協力しよう」

「済まない」

「いいって...キミと僕の仲だ、それに今回は面白いがいるんだ」

「お前が気にするくらいだ俺の耳にも入れろ」

と人差し指で自分の耳を指す。


「最近登録した若い娘で召喚士だ...でもあれはギルドカードの情報を見るに

あれは、召喚士は表向きって感じかな でも”弓張月”や”黒き髑髏と剣の者”では

無いね、これは僕の直感だ......ケルベロスを使役していたとか何とか...妖精族ともなんとか

ってこれ以上は僕からは言えないね...僕も又聞きした話だしね」

と一拍置く。

 

「気になるようだったら王都に来るように行動を誘導したらどうだい? 」

「職権乱用じゃないか」

「僕も”職権乱用”をして冒険者の個人情報を漏らしているしね、お互い様だろ」


「ガイガ大森林のアイツの件はどうするんだいまだ依頼来てないよ? 」

「この件は後回しだ」

「ところで、キミの娘の”エリスティーナ”の具合はどうだい? 」

「良い同じ年頃の友人でもいればいいが”ベゼリン学術院”でも友人が少ないらしい

どうにかしてやりたいが俺も”案件”をかかえてるし今は妻とルカスに任せている」


「今は”機”を待つべきだね、リブス」

「そうしよう、ドリエル」

と拳を”戦友”のように突き合わせる。

そして

「僕はこれでおいとまするよ」 執務室を持した。


「アイツめ 容姿は”昔”と変わらなかったなぁ これも定命の者の定めか」

硝子に反射した深い皺に刻まれた自分の顔を見てリブスは積み重ねてきた

皺と同じくらい深いため息をついた。



※※


俺達は”白い貝殻亭”で歓談していた。


「おねぇちゃんだけ、まだ”呪文スペル”が浮かんでこないのよぅ

シーちゃんどうしよう? 」

『 ミーアよ、安心せぃそれが普通なんじゃよ、

シーアとビヨンが特別イレギュラーなんじゃ』

「そっかぁそうなんだ私早く”呪文スペル”浮かんでこないかなぁ

一番はやく”指輪”を貰ったのにざ〜んね〜ん」


[ シーア、警告・感知・敵対度”大” ]

「あぁ、分かってる」

俺とビヨンの視線が交叉する。


 と会話が終わる間もなく聞き覚えの有る声が

飛び込んできた

「おや、何が”ざ〜んね〜ん”でやんすか...ケット族のお嬢さん? 」

「おっお前は”ヤンス”」

「アンタは”ヤンス”」

[ ......... ]


 と俺は身構える二人を見るとミーアもビヨンも既に武器は取らずに手だけ構えていた。

「あっしの名を覚えておいてで光栄でやんすねこりゃ、悪役冥利にツキマサァ」

フード付きのローブがそこに立っていた

「”銀の三日月”が何の用? 」

 と俺は強く問う

「ヘヘッ、もうその名をご存知でやんしたか、それはそこの”妖精”さんが教えてくれたんでやす? 」

”妖精”さんとヤンスが言った時クローティアが一瞬目を細めたのを俺は見逃さなかった。


「お前に教える義理はないッ」

 と俺は声を荒らげる。


「これは、手厳しいでやすね...くわばら・くわばらっと...これはこれは銀のお嬢様は一段と

艶っぽくおなりになられたようで......

おっと誤解しねぇで下せっぇまし...あっしは”お子様体型”には興味有りゃせんぜ」

とミーアをも見る

「 あっしはもっと艶っぽいお方が好みでやすから

そこのケット族のお嬢さんも守備範囲”外”でさぁ」

 といわれ

「ふんっ」 と何故か憤慨して

「ベー」 と舌を出してあしらっていた。 

(どこから、こんな”度胸”が出てくるんだ? 謎だな。

”少女”の身体になっても女心までは完全には”まだ”理解出来ないか)


「ここには、何をしに? 」 せいいっぱい語気を強めたつもりで言う

「もうすぐ”令”がギルドに出されるれるやも知れませんそんときに”トリシ大地下墳墓内”で

お嬢様方と少々”遊び”たいと思いやしてねそのご挨拶にここに来たんでやんすよ」


「何故。お前がそんな事を知っている? 」

と聞くとヤンスはトボけた雰囲気を纏い

「ヤンスの耳は驢馬の耳ぃ♪」 

と手をフードの上からあてがいふるふるやって茶化す

そして、 「”トリシ大地下墳墓内”でまた”遊び”ましょでやんすネ」 と言って

掻き消えた。


<<お主、分かっておろうな? ヤツが本気で敵意をむき出して来たその時は>>

俺はクローティアが敢えて念話で話してきた、その意味を理解していた。


<<あぁ、分かっている>>

<<それなら、いいんじゃが...お主はお人好しそうな感じゃからの>>

 そうは、言ったものの俺の中でヤンスは印象は最悪だが完全に憎めないヤツでも有る

と”直感”が囁いていた。

(出来れば”穏便”に事が済めば良いのだがなどうなることやら)


[ シーア、周囲50歩圏内・敵対度”無” ]


どうやら”気配”は無くなったらしい周囲にも単なる小競り合いに感じたようだ

一瞬停まった喧騒が再び動き出す。


ギルドへ向かい、スヴァンさんに報告を兼ねて掲示板の張り出しをチェックする


「お、シーアじゃないか、爺さんには会えたのか? 」

「はい、お陰様で......」

「その様子だとスカルム爺さんには会えたようだな

「ええ 面白い方でしたよ」

「そうだろうとも...あの爺さんはエル族でその上、爺さんだぜ神代から

生きてるんじゃないか...あれ」

「俺も駆け出しの頃、せめて装備は立派なのと思って揃えて

”修行”させて下さいって言ったらよ、「オメェは上っ面だけだな」と一発で看破した挙句

蹴飛ばされたわ」


 とグビリと酒を煽る。

(いいのか? まだ日は高いんだが?な)


「どうやら”妖精”の件も上手く言った見てぇだな でも、この妖精”何で紫がかったピンク色

してんだ”水の妖精”のヤツラは皆、水色してると思ったんだがな」

クローティアを見る。


『”水の妖精”もお洒落する時が有るわい』 とスカートをつまむ

「そんなもんかね」

『そんなもんじゃ』 

と言うもスヴァンは納得していないようだった。


掲示板の張りだしまだ変化ないようだ

......

「ねぇねぇ聞いた? 」

「なになに? 」

「王都ギルトス周辺で”黒き髑髏と剣の者”と冒険者と派手にやりあったらしいわよ」

「それでそれで」

「んとね、冒険者達の指揮執ってる”ニース”って人カッコよくて私ホレちゃいそう」

「赤い髪でウル族のおっきい人でしょ盾役タンクの」

(どうやら、あのニースさんらしい、そういえば仕事クエスト有るって言ってたっけ

ヒュージ・ワームの時も陣頭指揮リーダーの采配うまかったなぁ)

......

「そうそう」

「でも、その人なら売約済みよ」

「えッ奥さんいるの」

「そう 残念」

「でもでも、養子になってお義父さんを奪ちゃうのもアリね」

「おーこわ」

......

いつの世も女性のよもやま話は賑やかである。


それを遠見の術でサラとソラが見ていたのはシーア達の知るところではなかった


「「ねぇあのなのナノ...あの銀のね・ネ」」

「チクショウ、オレよりカワイイ顔しやがって...早くキザミてェョ......オホン...刻みたいワァ」

「サラ姉様、イキマショウ...もうすぐ最後の...”おやつ”が来る頃よ」


「「ソウシマしましょう、イキマショウましょう」」 と”トリシ大地下墳墓内”方面にふわりと

移動してすいっと掻き消える。


あとには貝殻や珊瑚の残骸の山が残されていた。



※※


王都ギルトス。ボルグラン城内 医術院某一室


簡易寝台には”黒き髑髏と剣の者”の哀れな犠牲者が3体横たわっていた。


 何かの儀式の犠牲者らしく3人とも意識がある内に古代文字を身体中に刻まれらしい

凄まじい形相がそこにあった、臓腑も激しく蹂躙されている。

何が彼らをここまで駆り立てるのか、分からないとでもいうように首を横に振り

遺体を検めていた担当官は聖句をつぶやき、哀れな犠牲者の瞼を手て撫でるように閉じる


...無事この者達の御魂が信じる神の御許おんもとにたどり着き転生の環に入れますよう...


 十字聖教の作法の所作をする

うち二人はベゼリン学術院の女生徒であった。


「いよいよベゼリン学術院に”黒き髑髏と剣の者”の調査の為の侵入調査をしなければな」

「誰か適任はおるか? 」

「候補はいるが”彼女”が王都に赴くか分からいね」

「うーん困ったなぁ」


誰とはなしに会話が交わされる。



ルガラスは30の”討伐隊”をトリンデ真西トリシ大地下墳墓に送り込む

「ディーボ討伐は諸君の双肩にかかっている。無事に帰って来てくれ!! 」


...皆が悪しき者の囁きから逃れ死の淵から舞い戻れますよう...


 王都ギルトス 十字聖教位階二位 女性大神官 "ノージェ” の祈りも信じる神に届かず

哀れな30の”討伐隊”はディーボの”おやつ”と成り果てた。



                                                          

次回  39話 王国の勅令

次々回 40話 ???

は前後編扱いですので2話同時に掲載します

お楽しみに 

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