37 海上遺構都市 トリンデ(後編)
「定命の理から外れておる者が一、二、三定命の者は一か
こりゃ...たまげた蛇竜の幼体も居るのかのぅ」 とリボンに視線を移す。
「ツッ」俺は慌てて椅子から飛び退く
「慌てるな、儂もめずらしくての...ついな...」
<<クロ、コイツは大丈夫か? >>
<<儂の”直感”が大丈夫だと言うとる...コイツの話に乗るんじゃ>>
<<分かった>>
「お主らの様に強い”魔”の属性でありながら”悪しき”感じがせなんだ
こんなんは儂の長いことエル族をやっているが初めてじゃわい」
「あのわたし達の素性の事は......」
「心配するな、こんな偏屈ジジィのことなんざ誰もあいてにせんからのぅ」
と少し寂しげな眼差しを見せて
「すまんかったの」 スカルムは謝罪する
「あ、そうだこれスヴァンさんからの預かり物です」 と包を渡す。
「ホゥ、これをアイツがのぅ スヴァンのヤツめいっぱしに成りおってからに」
と包を開けると氷晶石がしゅわりと溶けて、冷温を保ったまま出てきたのは
件の海月の冷やし菓子であった。
この世界では氷晶石と冷温を保ちたい物と一緒に包み簡単な術を掛ける
次に包を開くと氷晶石と術が解け冷温を保つ事が出来た。
「お主らも儂に相伴せい」 いうので相伴に預かることにした
先の濃い茶色の液体と一緒に食べると美味であった。
「改めて、お主らは儂になんの用じゃ? 」
「わたし達、”水の妖精”に大事な用が有るんです
ギルドでスヴァンさんからスカルムさんを紹介されて...その...」
「成る程、それで儂か......」
「ご存じありませんか? 」
「ご存じも何も”水の妖精”なら彼処に屯してるぞい」
指差す方を見れば”水の庭園”の奥”悪鬼の口”がもうもうと水煙を上げている
近くに水色の小人が多数屯しているものが確認出来る。
「問題はヤツラにお主らが近づけるかじゃなシーアお主は”魔”の属性じゃ
伝手はあるのかの? 」
「ええそれならこれが」と言って
シールフ族の長”リエル”より託された”翠の珠”を見せる
「おおこれは妖精の”言文の珠”じゃまた珍しいのぅ
これを持ってれば向こうから近づいてくるわい
最初シーアを見た時もお主らが
トンでもでもないことに巻き込まれる予感がしてな息災でおるのじゃぞ」
「スカルムさんこそ息災で」
「ありがとヨ」 とスカルム
スカルム宅を辞し
”言文の珠”を手に携え”水の妖精”に近づく
水の妖精はシールフ族のように羽は無く
水を少年型や少女型にした感じで双方とも白いスカート部が無いワンピースを着ている。
やはりシールフ族と同じく俺には近づこうとしなかった。
<<クローティア>>
と少女体にする。
シールフ族の時とおなじくミーアに”言文の珠”を託して
交渉してもらう
「シーちゃんまた指輪だって」 と渡された属性偽装の指輪を左手親指に嵌める
「後、これはビヨンちゃんにって」 指輪を渡す。
「こんは、何でしょう? 」 とミーアに聞くと
「ナイショ♡ 」 だそうです、と言ってきた。
これもビヨンの左手親指に嵌める。
[ 分析不能 ]
とビヨンが答える。
それは水色の洋膠菓子様な感触をしていてひんやり冷たくぷにぷにしていた。
最南の遺跡の彫像を妖精が触ると結界の入り口が開く
中は全体に青白い燐光に満ち洋膠質のサボン玉のような
”精霊”がふわふわ浮かんでいてこれも幻想的な風景だった。
今度の”水の妖精”はシールフ族より”イタズラ”度が
ひどく全員の髪を持ち上げては、はらりはらりと落とすのは勿論、
何と、軽装のワンピースのせいか俺の胸の谷間の隙間に入り込み顔を
出して、したり顔の少年型の妖精まで現れる始末。
これにはさすがに俺も困り
「もぅ...いや〜ぁ♡...ようせいさ〜ん...そこから出ていってぇ〜」 とそっとつまみ上げる
ミーアの胸の谷間の隙間に中指程の背丈とはいえ三人も収まっていた
「妖精さん、ここから出ていきましょうねぇ」 と言っている
[ 胸部に感情”くすぐったい”が発生 ] とビヨン
とわいわい言いながら奥へ進むと
先導役の妖精がくるりと回り一行に静止の合図をする。
身体に引っ付いていた妖精達が一斉に離れここが終着点で有ることが分かった
[ 周囲100歩圏内・敵対反応”無” ]
問題はなさそうだ。
すると、辺りにいる妖精達より一回り大きい個体が目に入った
辺りの女性型の妖精をそのまま長身にしたような感じ・髪が背丈よりも長く
20歩ぐらいの直径の遺跡の台らしき所でしっとりまとまっている
衣服は薄絹のような物を纏っていて手招きをしてシーアを
呼び寄せる
「あら可愛い”召喚士”さんね、遠路、はるばるご苦労様でした
わたくしは”イルナ”、ここトリンデ一帯の ネーデ族の長ですわ...以後お見知りおきを」
と胸に手を添え足を屈める。
「わ、わたしはシーア シーアとお呼び下さいませ」
と俺は慌ててスカートをつまみ、腰を低くする
「私は、ミーア ミーアとお呼び下さいませ」
[ 個体名 ”ビヨン” ]
とミーア、ビヨンもそれに倣う
「あら、そんな畏まらなくてもよいんですのよ、一地方の長に過ぎませんわ」
と一行を見渡し目を細め、ミーアの持っている”言文の珠”に
目を止める。
「それは、”言文の珠”私に言伝かしら...それをいただけるかしら? 」
「はい」とミーアが”言文の珠”を”イルナ”に差し出す。
すると地面に置き手をかざすとリエルの幻影が浮かび聞き慣れない言語で
喋っているのを何度か頷きながら聞いている
<<ほぅ、”妖精語”じゃな>>
<<”妖精語”? >>
<<そうじゃ、妖精共の共通語じゃ儂にも分からん>>
<<そうか>>
再び、イルナの視線がシーアに向けられる
「此度のあなた達の働き妖精一族の代表としてとても感謝しておりますわ
多くの同胞を危機から救っていただき有りがろうございました。
貴女の仲間(冒険者)を代表してわたくしから”貴女”にお礼をさせてくださいな」
居住まいを正し 「コホン」 と咳払いを一つ
「言文の珠によれば貴女はネーデ族謹製の”指輪”を持つにふさわしいお方であるとの事
ネーデ族秘宝”水陣の指輪”を差し上げますわ...お受け取り下さいな」
「さあ」 促され、俺はそれを受け取り右手小指に嵌める それは透明な水色の洋膠質な
感触を持つ指輪だった。
よく見ると洋膠質の中に小さな珊瑚、貝殻、等が漂っていてゆらりゆらり揺れている
やはり感触はぷにぷにしている。
「どうか、ネーデの加護が貴女を導きますように」 と言うと
淡く指輪が光りパスが繋がる。
「これの効果は2つ
発動スペル 氷の礫 ((アイス・サブルム))で 氷の礫が悪意と悪しき者を葬りますわ
そしてもう一つがネーデ族秘宝の秘宝たる所以ですわ」
「水の双魚 ((アグワ・ピスケース))で出現する魚を使い
((アグワ・ピスケース・バインド)と((アグワ・ピスケース・アタック))の2通りの
攻撃で悪意と悪しき者を葬り去る事が出来ますわ先ずは、私が見せて差し上げましょう」
と
イルナがパチンと指を弾くと10歩先に黒い人型の物体が現れた
「((アグワ・ピスケース・バインド))」とイルナが唱えると
シーアの回りに多数の垂直に浮かんだ水たまり状の魔法陣が出現する、
そこから ちゃぽんちゃぽん と2匹の淡い半透明のロイヤルブルーで
体長はシーアの半分ぐらいの
闘魚のような姿の魚(鰭が普通の魚より多く長い)が現れる。
人型の物体に纏わりつくと同時に箒星の尾のように水の”糸”を引き水の紐を造る
更に纏わりつくと完全に人型の物体は”水の紐”で動きが止まった。
そして、
「((アグワ・ピスケース・アタック))」とイルナが唱えると
こんどは先程の”魚”が消え
シーアの回りに多数の垂直に浮かんだ水たまり状の魔法陣から
無作為に”魚”が飛び出し人型の物体に体当たりをする。
そして人型の物体は形を失う。
「どうですかこれが ”水陣の指輪”の力ですわ
後、この”魚”は指輪の能力が生物の形を取ったモノですので貴女の召喚獣たちとも
一緒にに敵を葬れますわよ
修練すれば最大5匹ぐらいなら貴女になら扱えるでしょう」
俺はあまりの凄さにまた”お漏らし”をしそうになった
「ほんとに、こんなすごい物貰っていいんでしょうか? 」
「私達の同胞があにあの憎き怪物(魔物)達に失われる悔しさに比べたら
秘宝なんて瑣末な事ですわ...どんどん怪物(魔物)を葬ってやってくださいな」
とまで言ってくれる。
「はい...わたしシーアの名にかけて、イルナさんのその願いお聞き入れ致します」
「まぁ、可愛い娘」と手招きをして
「どうか、ネーデの加護が貴女を導きますように」
額に接吻をする。
「やっと我の出番ですかね」 進み出てきたのは赤い炎を纏った紳士だった
「我は火の妖精が長 ”ラゴル”でございます...以後 以後お見知りおきを」
「我らの居留地は”人”では容易に近づけぬ場所ゆえ、こうしてここに参上した次第」
「シールフの嘆願も、我も賛同しまして御座います...付きましては貴女の隣の
魔導の姫君にも我らが秘宝”火陣の指輪”を授けたく御座います」
「ビヨン、妖精のところに行ってね」
[ シーア、同伴・依頼 ]
「いいよ」
とビヨンに付き添う。
「あのラゴルさん...ビヨンは妖精の言葉が聞こえないんですよ」
と言うと
「ご心配はご不要にて御座います、一時的に我らの言の葉が通ずるように
お仕立てして御座います」
(どうやら先程の指輪で、妖精の言葉が一時的に聞こえるようになっているらしいな)
「我らの指輪の効果はビヨン様の武器に炎を纏わせ悪意と悪しき者を灼き葬る物
で御座います まずは第一が効果」
居住まいを正し 「コホン」 と咳払いを一つ
「力有る言の葉”((フレイル))”のみですと、冥き闇を照らし皆を導きましょう」
そして
「武器を構えました後に力有る言の葉”((フレイル))”にて更に
ビヨン様の武器のお力になるので御座います...さあ、お手をここに」
と促されたので俺はビヨンの右手小指を添えて差し出す
「おお麗しき魔導の姫君、我らイフリスの導きが貴女のお心を明るく照らしますよう」
と恭しくその場に傅きビヨンの手を取り接吻をして
淡く指輪が光りパスが繋がる。
[ マギ・連結.........完了 ]
[ ”フレイル”呪文に設定・分類......完了 ]
[ ”フレイル”単体・呪文類型・明灯・分類......完了 ]
[ 武器錬成・後”フレイル”呪文類型・炎纏・分類......完了 ]
とビヨンの指には赤い硬質な硝子質の中に
橙色の炎がぽつんと一つ揺らめいている指輪が嵌っていた。
<<妖精共も粋な事をするではないか、良きかな良きかな>>
<<えらく、上機嫌じゃないか? >>
<<何を言っておる、お主は儂の自慢の娘みたいなものじゃ>>
<<なんでそこ”娘”なんだよ>>
<<どうみてもお主は”娘”じゃろ? >>
<<それそうだが うーむ>>
<<おっと、”白金の星砂”を忘れるでは無いぞ>>
<<そうだったこれも重要な用事だからな>>
「あのぅ、イルナさん”白金の星砂”はありませんか? 」
と聞くと
「あらいやですわわたくしったら、忘れるトコでしたわ これも、シールフの長の言伝でしたわね
この中(結界)にある砂が全部そうですわ」
「いくらでも有りますからお好きなだけどうぞ 自然と増えて処分に困るくらいですわ」
「知り合いの”ブレイル”さんににも分けてあげたいのでと大樽10ぐらい欲しいですけど」
恐る恐る聞いてみた。
「あら大樽10なんて言わないで大樽100ぐらい差し上げますわ」
シールフの長の元に届けさせますから安心してくださいな シーア」
「はぁ」 と溜息をつく
「全く”砂”なんて何に使うのかしらねぇ? 」
と首を傾げている。
ちなみにこの”砂”水の妖精の結界内か海の魔物の中に素材として少々しか、存在しないもので
かなり”貴重品”だったりする、このことはシーアは知る良しも無かった。
「それで、お願いします」
『それではな儂の”娘”が世話になった』
「えーと...」
『クローティアじゃ』
「クローティアさま」
「麗しき小さな淑女我も、これにてまた再びお目に掛かることが有りますよう」
とラゴル
「結界に入る時はこの子達にお申し付けくださいね...いつでも歓迎しますよ」
とイルナ
俺達は、その場を辞して結界を出る。
バシャリ と濡れた音を立てて 俺とビヨンの指輪が砕ける。
※※
王都 ギルトス 秘密結社 銀の三日月 某邸内
「「ネェねえ お父様サマァ 早くあの仔を......早くゥハヤク」」
「フォッフォッフォッ、そう急くものではないよサラにソラ...}
一見大賢者風の男は黒い立方形のオーパーツコアをこねくりまわす。
「だって...待てネェンダョ...オレはよォ早くオレのブツでよ銀の娘とやらをよぉキザミてぇんだよ」
と大鎌をペロリと舐る
「また、サラお姉様ったら」
「全くよぉって...あらごめんなさいつい私ったら...あの教団の玩具が
使えるかどうかわかりゃしねぇ...天然モノのディーボじゃねーしっよ...あらやだまたつい...てへ」
「サラよいい娘だからもう少し我慢しなければね...事を起こすににも...その言葉も」
地面までつくほどの長いヒゲをしごくいて濃い紫の瞳が細くなる
「ちぃ分かってラァ...っね、お父様サマァ♡...」
※※
俺達は”白い貝殻亭”で歓談していた。
そして事態は王都を動かし黒き髑髏と剣は王都を駆け巡る。
次回 38話 銀の三日月 と 邪教
お楽しみに




