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オルティア・レコード  作者: 南 泉
一章 〜始まりは少女(シーア)から〜 オルティア大陸編
36/75

36 海上遺構都市 トリンデ(前編)

 翌朝、俺達は朝もや立ち込める中ユラの背に乗って”観光”も兼ねた移動を続けていた

やがて日も高くなり視界が開けてきていた と突然

{...{クェークェーケッケッケ}...}

と巨大な烏の様な空に棲まう魔物の群れの塊と近的接触ニアミスをする


「わわっと、ミーお姉様わたし初めて見ました あの魔物は? 」

「そっか、シーちゃんは冒険者じゃないから ”ヒポス” は 初めて見るよね」

「えぇ、お姉様初めてです」

「あれは、”飛行艇”の厄介者なの飛行艇の気嚢の瓦斯が好きらしくよく墜落事故

が起きるの

 

 後、空には魔霧帯が有ってこれも空の厄介者ね 下からは

見えないけど近づくと紫の靄で瘴気がすごくて突破にも一苦労よね

でも、これを突破すれば ”浮遊大陸”よ 憧れちゃうわぁ 行ってみたいなぁ

まだ”通行証”を持っていないから行けないんだよね〜 」

とボヤいていた


[ シーア、眼下を確認 これは”感動”ですか? ] とビヨンの言葉を受け

眼下に目を移す

”感動”がそこにあった 「まさに”感動”だね」

海上遺構都市 トリンデの全景が見えてきたのだ


 それは陸地から遥か沖合まで地続きになっている遺構群を、利用して成り立ってる感じである

半水没して海水が何本もの滝が空洞部に落ち込む所も有れば、

地下遺跡に海水が流れ込みところどころ大小の渦が見られるところも有る。


 東の街キリンズとはまた違った顔をみせていた

更に沖合にまで目をやれば巨大な裂けクレパスが有り海水が落ち込み

霧が立ち込めている場所も有る


「あれは”悪鬼の口”よ 誰もが知っていいるけど誰も知らない場所よ

一説には大地の中心まで通じていると言われているわ」

「ミーお姉様、わたし怖いです」 これは俺の本心だった

「そうでしょ シーちゃん ぐずっている子に ”悪鬼の口” に放り込むぞと言えば

すぐ泣き止むんだから」


 クローティアには本に戻ってもらい

腰に結わえる ブックカバーも俺のワンピースと同色だ



 人目のつかない所に着陸して人頭税を払う 今日も暑くなりそうだ

檸檬色のワンピースが潮風に軽くあおられて

「やぁん♡ 」 とちいさな悲鳴を上げ俺はスカートを右手で帽子を左手で

押さえる、ふうわりと柑橘系の香りが舞い上がり辺りに漂う


 ビヨンからは、俺のとは違い甘い果物系の香り ミーアからは香草系の香りが漂う

この頃の俺は、ミーアに”お作法”と言われて香水を持たされていた


 香水といえば錬金術の流れを汲む調香師の成果物ではあるが調香は門外漢だった。

「いぃ・シーちゃんお・洋・服・に合わせて変えなきゃダメよ」 とここに来て更に念押しである

「はいはい」と所在なげに言うと

「はい」は一度でしょと彼女の藪蛇をつついてしまった



「いらっしゃい いらっしゃい お土産にオートマトはいかがかな」

 見ると海棲生物の魚や海月、蟹の形をした可愛らしいオートマトが戯れていた


ビヨンも

[ 魔導機関・反応”多数” 敵対度”無” ] と言ってじっと見つめていた


「こっちも見ってよぉ」

 と見ると奇妙な貝殻や海岸で拾った波で形が変わった石が大小さまざまあった


「お嬢さん方 一つどうだい」

 と差し出してきたものを見ると、冷たく、透明な こりゅこりゅ した歯ざわりがした物に

蜂蜜や牛の乳を煮詰めたという、茶色く甘い練状のものをかけた冷菓子も有る

「小父さんこれは? 」

「ああこれかい...これは海月だよ...保存が効かないからトリンデしかない名物だよ」

「食べていきな」 とすすめる


「一つ...いただきます」といって口に運ぶ

「「おいしい」」

ビヨンには”飴”ね


「ピンクのじょーちゃんは要らないのかい? 」

「すみません、この子はオートマトなので」

「へぇ...コイツは驚いた...カァちゃんに良い土産話ができたお代は要らないよ

このことは...辺りにはナイショだぜ」 とウィンクする。


「小父さん...ギルドは何処ですか? 」

 キリンズの時に言われたようにまずはギルドである


「あぁ、それなら」

とここも遺構の道も利用しているらしく、やたら坂道や階段が多い

「彼処だよ」 と看板を指す

 俺達は、ギルドに入るといかにも”海の漢”といった風体の受付がいる。

「あのぅ」 というがはやいか

「依頼かい? 」 と豪快に声を上げる


「いえギルドカードの情報更新とディーボについてお聞きしたくて」

「なんだい、 じょーちゃんは冒険者だったのかい」

「スヴァン 賭けはお前の負けだいっぱい奢れよ」

「うるせ 分かってらあ...オレも人見る目ねぇな...っと許してくれ ここはこんな場なんでな

 と辺りを見れば 漢・・・漢だらけだった日も高い内から一杯引っ掛けていて

出来上がっているのもいる


「さぁさぁ、テメェラさっさと用が無いならでって行ってくれ

日も高い内からここ(ギルド)で飲むんじゃねぇよ...官吏が来るぞ」


「わかったよ、おいスヴァンのアニキにメイワクかけんじゃねぇぞ...さっさと出るぞ」

「うぉい、ってテメェもだろが」


と言ってこの場には 俺達と受付”スヴァン”だけになった

「さぁ、人払いは出来たぜ さっきの件 話してみな」

 と耳打ちするその息はほんのり酒の匂いがした。


「まずは情報更新お願いします」

「そうだったな、んっ貸してみな」

 と俺とミーアの分を差し出す

「ふーん、ヒュージ・ワーム...レイドで討伐っと...シーアってのはどっちだい」

「はい、わたしです」

「お前さんは今のでだいぶ実績稼いだな

もう少して現金持ち歩かなくて済むようになるぜ...がんばりな」

「ミーアは、現金はこっち(ギルド)預かりでいいよな」

「手持ちは寄せますのでこの残りは 預かりで」

「お、了解さて本題といこうか? 」 とスヴァンは話を促す


「ここに来る前、海岸で”噂”を聞きました...王都の討伐隊がいるらしいのですが

ギルドでは、掲示板にすらでていないので」

「あぁ、そのことか”まだ”ギルドには要請は来てないがな王都じゃてんてこ舞いらしいぜ

何でも、王都で邪教集団の動きも活発化しとるらしいし

ディーボとの関連性も取りだたされてる。

後は王都直下の討伐隊のメンツの問題よ...これが一番でかいぜ。


 なんていったって俺達冒険者ギルドに頭ァ下げるのが嫌なのさ、ギルド総長が交渉してるがな

王都としてはもう少し犠牲者が出ないと動かんだろうよ胸糞悪い話しだがな

お前さんも王都の討伐隊のメンツ潰すようなことがあれば

いろいろ面倒だぜ もしアンタがディーボやっつけたとしても

 そんときは素直に手柄、奴らに譲ってやんな...これが掲示板に出ていない理由だ

だから先走って手ぇ付けちゃなんねぇぞ」 と強く警告してきた

「まぁ、”王都の勅令”が出るまではどのみち、おれらギルドは動けねぇ

それまで ここ(トリンデ)で観光でもしてるこった」


<<まつりごとか、お主らの世も面倒臭いのぅ>>

<<それを言われるとな>>

<<今は、先走って手をだして余計な面倒事を引っ張ることも

あるまいて、犠牲者の事は気持ちが分かるがの ”機” を待つんじゃ>>

<<悔しいが、今はそれしか無いか>>

<<ビヨン それでいいか?>>

<<[ 肯定 ]>>


「ミーお姉様、スヴァンさんの言う通りでいいすか? 」

「えぇ、シーちゃんがそう言うなら」


「ところでスヴァンさん、水の妖精って ここトリンデにいますか? 」

「ああ、いるぜ ここから更に沖合に”水の庭園”と呼ばれる場所がある

そこで見た事が有る爺さんがいる

爺さんは”水の庭園”近くに住んでいるからな...聞いてみな」

”お土産”にこれもってけと包を渡される

「これは? 」

「まぁ持ってけば分かるさ」

「宿はどうする? 」

 

 実力はともかくさっきの調子だと少女の3人連れだ、なんか心細い

「近場を探します」 とさり気なく辞退する。

「それがいいだろな...またなんか有ったらいつでも声掛けてくれな」


「よろしくお願います」 とペコリと頭を下げその場を出た


改めて目貫通りらしき所を散策する...多くの露天商・屋台・客引き

が賑わいと喧騒を生んでいた 


 俺は、 屋台で買い求めた

大きな巻き貝の串焼きを...もちゅもちゅ...とやりながらしばしの観光気分を味わうのに夢中で

その時は、まだ気づかなかった


 小鞄ポシェットの扱い方に慣れていない俺は、つい肩にだけに紐を掛けて

首を通すのを忘れていた。


[ 感知・敵対度”ごく微少” ]

 とビヨンの警告より早く一迅の赤い風が駆け抜けて

「ひゃぅ」 と息をのむような声を上げるも、小鞄ポシェットの感触が無い

(やられた”スリ”か)


 が、どうも違うようだ一迅の赤い風が数歩先で立ち止まり

「やーい、銀のネーチャンのお宝捕獲ゲットぅ...俺の大海賊ケモールの夢にまた一歩近づいたー」

と 俺の小鞄ポシェットをブンブン振りわましている人物を見ると

小柄な赤髪の少年が、こちらをみて煽るようにジャンプしている。


「やだー、返してぇ」 となんとも締まらない声を上げ

 その声を聞いてビヨンが手刀の構えを取るも手で制す。


「こら、人様の物を何てことすんだい この馬鹿ラクスッ!! 」

と同じく赤髪で、おそらく母親だろう、に強烈なゲンコツを食らっていた。

「ってぇよ...母ちゃん! 父ちゃんがいつも海から帰ってくると大海賊”ケモール”の様になりてぇと

いっつも言ってんじゃん」

「お前までマネしなくてもいいんだよ...全くこの子ときたら

...あらごめんなさいね、あたしはこのバカ息子”ラクス”の母親の”カイナ”

ここはあたしに免じて許してやってくれないかい...ほら、アンタも頭下げなッ」

と少年”ニクス”の後頭部をグイグイ押す。


「イテぇよ...母ちゃん」

「何いってんだい...早く返してきな」

「ちぇっ分かったよ」

「ゴメンな ネーチャン えーと......」

「わたしはシーア、シーアでいいよラクス そしてこちらがミーアにビヨン」


「よろしくね ラクス」 と握手を求める彼女のイヤーカフスがチリリと鳴る

[ 敵対度”微少から無”に移行 ]

「今度から、あんなことしないでね♡ 」 と俺は優しく論する

「うん、ごめんなシーア」 といって差し出された小鞄ポシェットを受け取る。


※※※


この赤髪の少年が”赤髪のラクス”として英雄譚に名を連ねるのはまた、別の物語である


※※※


「ところで、アンタらは観光かい、宿はどうするんだい? 」

「はい実は......} とギルドでの宿の事を話す

「はは、そらそうさねあんな漢共の中にアンタらみたいの放り込んだら...ね

ウチに泊まっていきな、ウチは丁度宿屋をやっていてね”白い貝殻亭”なんて

名前だから漢共なんか寄りつきゃしないさね...安心しな

この名前はねぇあたしが若い頃ねぇ海岸であの人に......ってなんて事を言わせるんだい」

とラクスの背を叩く


「ウチの 母ちゃんは、すぐそうやって人に自慢するんだ」

「まったく、ませた子だよ」 とニヤニヤしていた。


「宿代はお詫びに安くしとくよ ゆっくりしていきな」

「はい、お言葉に甘えます」 三人一同、女将さんの提案を受ける。


 夕刻、俺達がテーブルで夕食が終わり甘味などを楽しんでいた

ラクスが興味深そうにこっちを見ている

俺は昔、”男の子”だった事も有り何故そうしているのかが痛いほど伝わってきていた。


「ねぇ、ラクスお話聞きたいの? 」 と質問をぶつけると見事に食いついてきた

「うん、シーア達って冒険者だろ...面白い話し聞かせてくれよ」 とねだる。

「わたしは、なりたてだけど」 と先のレイド戦の ヒュージ・ワーム や サキュホーン の

の討伐を、少し大袈裟に”脚色”して語る


 ミーアも同様に自身の冒険譚をラクスに聞かせ

段々、目が輝いてくるのが分かる。

この感覚は子供の頃、実感したことは有っても他人の反応を見たのは新鮮で

思わず母親の様な気分で頭をわしわし撫でていて、

どうしてこんな所作が自然に出たのか自分でも分からなかった。


「ねぇ、今度はラクスがシーア達にきかせる番よ」 と慣れない一人称を駆使して

ラクスの話しを待つ。


 他愛もない近所の探険や秘密基地、スヴァンからの受け売りと思われる

話しもあった。

「ところで...ラクス...ケモールって? 」

「あぁ、シーアは冒険者なりたてだっけ ケモールってね大海賊なんだ...ここトリンデの”海の漢”の

憧れの的さ、大烏賊クラーケンや大海竜や大海蛇シーサーペントを一人でやっつけちゃう

くらいだからな...オレも大きくなったっら大冒険者になりたいんだ...シーアはどう思う? 」


「お父さん、お母さんの言うとを良く聞いて困っている人を助けると

大冒険者にだってなれると思うよ」 と言ったら、膝に寄り掛かるようにして

軽い寝息を立てていてカイナさんに目配せをして運んででもらう

「この子ったら」 と見る目は俺にはマネ出来なかった。


静かに遠くに波の音を聞きながら夜が更けていく。


 翌朝、

「あのぅ、...カイナさん”水の庭園”って何処なんっですか? 」

「ああ彼処かい ”悪鬼の口” 方面に向かうと遺跡がまばらに海中から

覗いてる一帯があるさね アタシらはそこら一帯をそう呼んでるよ」


出された朝食を包んでもらい、昼食と合わせ手持ちバスケットに詰めて

人目につかない所でユラに座る

「ユラ、今日もお願い」

{きゅーい♪}

一路 ”悪鬼の口” 方面へ


 それを陰からこっそり見ていたラクスは (スゲー、オレもあんなのに 乗りてぇナー)

「母ちゃん、 母ちゃんシーアってスゲぇんだぜ...でっかい蛇竜に乗って空飛んでったぜ」

「また、この子は人様の事をこっそり覗いて、しょうがない子だね」 朝一番のゲンコツを

貰っていた。


※※※


”赤髪のラクス”が海竜の幼体で海を駆け回るのはこれもまた、後の物語である


※※※


 上空で摂る朝食はこれも初めてで大変美味しかった

今日は、ビヨンと”服の取り替えっこ”をしていてほんのり紫がかったピンクの

スカートがパタパタはためく、ショールは最近は専らユラに乗る時のスカート

押さえ専用になっていた。


 この所作も慣れてきて自然に出来るようになってきているし

髪は最近は”染め粉”でということにしてあるので被るのは帽子類だけになった。


眼下に目をこらせば成る程遺跡群が海中から頭を覗かせている一帯が見える


 俺達は、その一角に有る一軒家の近くにユラを着陸させて

辺りを伺う


「誰じゃ? 」 とエル族の老人が顔を出す

「わたしは、シーア こちらがミーアとビヨン」 とスカートをつまみ挨拶をする。

「儂ゃ、”スカルム”じゃ」 とジロジロ頭からつま先まで観察するように目を細める

「まぁ、中に入れ」 と 顎をしゃくる

「そこに」と 今度は椅子を見て顎をしゃくる。

「はい」

「ちょっと待っとれ」 奥に引っ込み

「これでも飲め」 と濃い茶色の液体をすすめる。

「何、毒は入っとらんまずは飲め」 と言う

一口をつけると強烈な苦味が広がる

「「にがーい」」 と感想を漏らすと

「ハハッ、朝はこれに限るわい」 と初めて笑う


「で、ホムンクルスが儂になんの用じゃ? 」 

と唐突な言葉に、俺は全身に緊張が走る。



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