35 妖精の長と南の海
俺達は、件の妖精に接触しようとニースと待ち合わせた場所まで
きていた。
「ねぇ、ミーお姉様、わたし妖精の件の後南のトリンデに向かおうかと
思っています ミーお姉様はどうですか?」
ディーボの件をミーアに話す。
「嬉しい、ミーお姉様と呼んでくれるのねシーちゃん」
(最近、ますます本当に妹っぽくなってきてどうしよう”ミー”なんて愛称とっくに逝去した両親
以外聞くことは無かったわ
シアズ様だってこの”ミー”呼びは知らないはずなのにな
でも、最近、私に気を使いすぎる感じが気になるわ)
天然の母性からか自然と慈愛に満ちた眼差しで見つめていた。
「......というわけで、どうしてもトリンデに行かなければならないの」
と俺はミーアにトリンデに赴く理由を話す。
「構わないわシーちゃんと一緒なら私、何処へでもいつま...」最後は言葉が続かなくて
目尻が湿って来たのをミーア自身も気が付かなかった。
[ 前方に”妖精”確認 ] とビヨン
見ると、この前の妖精だろうかミーアに視線を向けてくる
「あ、お話きいてくるね」
「ええ、ミーお姉様」
とチリリと右の犬歯が疼いた (え、人外なのに歯が疼くなんて)
舌先で触っても心もち尖っているぐらいだ。
ミーアが戻り
「あのね、この先に鳥の巣に見せかけたシールフ族の集落の結界が有って
シーちゃんだけこの指輪を嵌めてねって
何でも”魔”の属性を結界内だけ”中立”にする物らしいわ
クローティア様はシーちゃんとパスで繋がっているから、指輪は要らないそうよ
ビヨンちゃんは属性は”無”だから指輪は要らないって
この指輪は結界を出ると壊れるから用事が済むまで結界から出ないようにとの事よ」
要するに、俺だけ属性の偽装処理がいるらしい と渡された指輪は
蔓の指輪でソレを左手親指に嵌めた。
妖精が、鳥の巣に触れるすると ぽっかり仄暗き妖精の杜の入り口が開く
妖精が手招きをして促す。
瞬間、俺の親指の指輪が緑色に一瞬光る。
サクリと足を踏み入れると一行が辺りを見ると妖精達は木の洞を利用しているらしく洞に小さな藁の庇がついている
辺り一面、緑の光る綿帽子のような物が群れの塊となって右に左に流れていく
時にまとまり、ときに弾けソレはここにいるクローティアを除いて
誰もが初めて見る光景だった。
「まぁ、綺麗」
「きれいです、ミーお姉様」
『 ほぅ、”精霊” まで見られるとはのぅ』
「精霊? 」 と俺
『そうじゃ、”妖精”の子供とも言われおるわい 儂は昔一度だけ見たことがあるでのぅ』
[ 緑の光る粒子を確認 ”精霊” に分類 ]
皆が理由を聞くのが憚れるくらい何か懐かしむ遠い目をしていた。
属性偽装の指輪のせいか早速妖精が、俺の髪に引っ付いてくる
クローティアがいつもそうしているように、つまんでは、はらりはらりと零す。
『こっこれ、どかんかここは儂の特等席じゃ』 と仕舞いには、喧嘩を始める始末
「ク・ロー・ティ・ア様、たまには”特等席”を譲ってやってくださいな」
と俺は、仰々しく言う
『ふん』。
肩に乗りひと房の髪をつりつりと小さな手で撫でる者もいる
「いゃん、...くすぐたぁい...やめてぇ」 と俺
隣を見ればビヨンの長い三つ編みを曲芸師よろしくロープを登るように這い上がっているのもいた
[ シーア、また新しい符号列が発生しました ]
「それは”くすぐったい”という感覚かな」
[ 新規符号列・感覚 ”くすぐったい” に分類 ]
ミーアをみれば、頭のモムモフ耳を指で弾いたり尻尾に捕まってゆらゆら揺するのもいた
耳を弾かれる度耳がせわしなく動く。
「妖精さん達、くすぐったいです」
目をうるませる。
先導役の妖精がくるりと回り一行に静止の合図をする。
身体に引っ付いていた妖精達が一斉に離れここが終着点で有ることが分かった
[ 周囲300歩圏内・敵対反応”無” ]
問題はなさそうだ。
すると、辺りにいる妖精達より一回り大きい個体が目に入った
辺りの女性型の妖精をそのまま長身にしたような感じ・髪が背丈よりも長く
立っている5歩ぐらいの直径の切り株にさらりと広がっていて
衣服は薄絹のような物を纏っている。
「わたくしはリエル、ここトリス一帯のシールフ族の長ですわ 以後お見知りおきを」
と胸に手を添え足を屈める。
「わ、わたしはシーア シーアとお呼び下さいませ」
と俺は慌ててスカートをつまみ、腰を低くする
「私は、ミーア ミーアとお呼び下さいませ」
[ 個体名 ”ビヨン” ]
とミーア、ビヨンもそれに倣う
「あら、そんな畏まらなくてもよいんですのよ、一地方の長に過ぎませんわ」
と一行を見渡し目を細め
「ここに、貴女方のような人が訪れるのは幾星霜ぶりですかねぇ」
とつぶやく
居住まいを正し 「コホン」 と咳払いを一つ
「まずは、此度の件貴女達のご助力感謝致しますわ。
あの怪物が居座ってから、
あの森が病み初めこの杜(結界内)にまで、影響が出るようになり途方に暮れておりました
妖精のこの身、人間のギルドに介入する訳にもゆかず通りがかりの人間を
探していて丁度貴女達が彼処にと、とご相談申し上げた次第です
聞けば、怪物は無事討伐され被害も最小にすんだ様子
これも、この子たちが貴女たちにお声掛けしたお陰
この子たちにも感謝せねばなりませんね」
と辺りの妖精たちを慈しむ。
「いえリエルさん、怪物の討伐は、わたし達の力だけてはありませんでした
多くの仲間の協力なくしては成し得なかったと思います」
俺は、きっぱり言う
「ふふっ、ではその仲間を代表してわたくしからお礼をさせてくださいな」
と蔓の意匠に緑の結晶体を嵌め込んだ可愛い指輪を差し出す
「これは、どなたに......」 と差し出す。
「シーち...」 ミーアが言おうとするのを俺は、慌てて遮り
「これは、ミーお姉様が受け取って下さいね お・ね・が・い♡ 」
「ホントにいいのシーちゃん? 」
「これは、多分ミーお姉様にとって力になると 思いますよ」 と俺
「そこまで、いうなら」
とミーアが手を挙げリエルから受け取り右手小指にはめ込んだ
「これは? 」
ミーアがためすすがめつ頭上にかざす。
「これは”風陣の指輪”私達シールフ族謹製の一品ですわ
悪意を向けてきた悪しき者には風の制裁を、慈愛ある者には風の癒やしをもたらしますわ
きっとミーア、貴女にとって良き導き手になるでしょう
あと、使い手の属性は関係有りませんからご心配なきよう」
とこちらへと手招きをしてミーアを呼び、右手を取りリエルが接吻をする
「どうか、シールフの加護が貴女を導きますように」 と言うと
淡く指輪が光りパスが繋がる。
『ときに、リエルよお主に聞きたいことがあるぞい』
「何でしょう えーと...」
『クローティアじゃ』
「...クローティアさま」
「わたくしに分かることでしたら何なりと」
『”白金の星砂”なる物を知らぬか』
「あのヒト(ブレイル)に頼まれたのかしら? 」
『ブレイルのヤツの用じゃないわい ちと儂らがソレに用ががあっての』
「ソレでしたら今こちらにも在庫が有りませんの
ですがここから南西にあるトリンデの ネーデ族を尋ねてみて下さい
きっと、良い結果が期待できると思いますわ」
と何やら翠の珠を出し
「ネーデ族もわたしたち同じ妖精 水の属性の者ですわ
これに用件をしたためました、向こうの長に渡して下さいませ」
『あい、分かった』 と自分の小鞄にしまう
『ではな、儂らもこれからゆかねばならん所が有っての』
「この杜(結界)に入る時はこの子達にお申し付けくださいね いつでも歓迎しますよ
どうか、シールフの加護が貴女達を導きますように」
俺達は、その場を辞して結界を出る。
パアァーーン と乾いた音を立てて 属性偽装の指輪が弾け飛んだ。
「ユラ、出ておいで」 と俺はユラを呼び
「お願い、乗せて」 と跨り否、慣れた所作で”座り”
「あっちへお願い」 と南西を指差した。
「シーちゃん、ちょっとトルティアに寄って? お買い物があるの」
「えっ、ミーお姉様後トリンデに行くだけじゃないの? 」
「シーちゃんは、オンナの子が”初心者”だからね おねぇちゃんにま・か・せ・な・さ・い
それに海に行く時、そのワンピースはダメよ」
(まだ”お作法”とやらがあるのだろうか? やはり”オンナの子”って大変だな)
トルティアに降り立ち、例の服飾店に入る
「せっかく、海にいくんだからね普段着も替えなくちゃネ」
とあてがわれたのは淡い檸檬色の袖なし(ノースリーブ)のワンピースで
沐浴時のタオルの様に胸に引っかるタイプで肩紐で吊り下げる
ブラは同色の肩紐無しのタイプであった なんかそのままずり落ちそうで
思わず俺は手て押さていた。
「シーちゃんたら、可愛い♡ 」 とニマニマしてきて俺は、恥ずかしくて下を向いていた
今度のは頭から被り肩紐を引っ掛け、腰部の紐3箇所をきゅいと絞ると
スカートがふんわり広がる 心なしか丈も短く可愛い膝が顔を覗かせる
足には同じ檸檬色のつま先が開いたローパンプスである。
ビヨンにも同じ意匠のほんのり紫がかったピンクで揃えていた
「ビヨンちゃんと
シーちゃんはサイズが同じだから取り替えっこ出来で羨ましいわ」
ビヨンはこうしてみてもホムンクルス肌?
なのか人肌と区別がつかなかったし関節部も人と区別がつかなかった
とミーアを見れば 俺やビヨンと意匠が同じの明るいダークレッドで
少し大人の雰囲気を醸している。
後は ”びきに” である
やや厚手の布でできたそれは水色の肩紐無しのタイプであった
フリルやレースは勿論、装備済みである。
下はショーツと同型で違いが俺には分からなった
ビヨンは明るいピンクでこれもビヨンによく似合っていた。
「おねぇちゃんはこ・れ」
と淡い珊瑚色の布が少なめブラとショーツタイプだった
支払いを済ませ店を出る 同店で購入したつばの広い麦わら帽子をのせる
と、
「よぉ、シーアじゃねぇか」 と声を掛けてきたのはニース一行である。
「こんちは ニースさん」
「おぅ、あの時はあんがとよ レイドのお陰で、ギルドの実績が積めたぜ大きなケガ人
も出なかったしな」
「シーア達は、何処へ行くんだい? 」 と言ってナリアさんに脇腹をどつかれていた
「って、ナニするんだテメェは」
「ごめんネまたウチのバカ亭主がデリカシーなくて 休暇ってトコだろ...その格好は」
「はい、そんなトコです」 と俺.
「羨ましいぜ、俺らはこれから仕事っだてのによ」
「はいはい、ボヤかないボヤかない」 とナリア
「ジャマしたな」
「それじゃ、土産頼まあ! 」 とまた脇腹をどつかれていた
ソーヤはシーアを凝視して顔を真っ赤にしていた。
わかりやすい反応で可哀想なのでからかうのはナシだね♡ 。
大召喚士のお祖父様の設定のお陰かユラがいても大丈夫だった。
「改めて、お願いユラ! 」
{きゅい♪}
ユラに”座り”帽子を手で押さえ 南西へ
段々と潮のが強くなり気温が徐々に上がってくるのが分かる
やはり、前のワンピースじゃ暑かったかな
人目のつかない所に着陸し、
「ユラ、お疲れ様」
ユラの頬に手を添え労を労う
{きゅい♪}
とリボンに戻る。
海岸を見ると大勢の人達が海岸で遊戯に興じていた
俺達は、草むらで着替えて早速海岸に飛び出した
[ シーア、大量の海水の貯水池・確認 ]
「ビヨンこれが、”海”よ すごいでしょ」 と俺
[ 大量の海水の貯水池の名称を ”海” に設定 ]
[ シーア、規模が大きい符号列がまた発生しました ]
「それは、 ”感動” かな}
[ この符号列を ”感動” に分類]
海岸は、色とりどりの海水着であふれていた紐のようなショーツやほとんど全裸に近い男女
「シーちゃんは見ちゃダメです」 とまるで幼子のように扱ってくる
(中の人はいい大人なのにな)
ミーアも楽しそうにしているそんなこんなで俺達は暫く
しばし童心に帰り遊戯を楽しんでいた
丁度、日の光りも天辺に来ているここで昼食を海水着のまま摂る。
※※
トリンデ近郊 トリシ大地下墳墓内
「「いよいよネ いよいよ いよいよカシラかしら あの娘がくるノネのね」」
「「あの仔はどう?ドウ? 」」
「「やっとオネンネからカラ、覚めようよソウヨ」」
よく見ると黒い人型の霧状の塊がなにか モシャリモシャリ と食っている もッもッもッ と
嚥下する。
もの足らななそうに自分の指らしきものを咥える。
「「あの仔ったら卑しん坊サンねさんね そうね、”おやつ”が足らないのかしら」」
「「”おやつ”が足らないのョ もっとよ モットよ 」」
「あぁ、 ”餌” クワセテェナァ 早く来ねぇかなぁ」
と ドスのきいた声音で 大鎌を構え直し刃に舌を這わせて
「早くコイツもぶん回してぇぜ」
と双子の一人が呻く。
「あら、サラ姉様ダメヨ そんな言葉使い」
「ウルセェ ソラ オレはこっち(男言葉)が ”素” なんだよ 男みてぇな言葉は
全部アイツラのせいだ なおしてぇがな」
「サラ姉様それ(男言葉)をガマンすればするほど方が強いでしょ」
「そうだ......そうですわ、 ソラ モット多く ”おやつ” を王国が送り込んでくれないかしら♡ 」
「「そうねソウネ、 もっと送り込んでくれないかしら♡ カシラ 」」
トンガリ帽子に魔女っ子スタイル
シャンパンピンクのパッツンセミロングの姉”サラ”、
シャンパンピンクのパッツンボブカットの妹”ソラ”
の両名が互いに向き合い スカートをつまみ上げ礼をしあって
にまー と薄気味悪く笑い蜃気楼のように掻き消えた。
後には ディーボが食い散らかした ”おやつ” の残骸が湯気を立てていた。
※※
クローティアはシーアとお揃いのワンピースで砂浜に魔法を放ち大穴を開けて
喜んでいた。
「クローティア様、それはおやめくださいませ」 とミーアに窘められるも
『いいんじゃ・いいんじゃ』 と言ってやめようよはしなかった。
「クローティア様 これどう思います? 」 とミーアが右手小指を立てる
『ん、妖精共から貰った物じゃな 儂も前に説明したことがあったじゃろ
”妖精共はなお主らが使っている魔器とやらより不思議な力を持っている”
とな 後、リエルが言っとたろう ”良き導き手になるでしょう” とな
不思議な力を持っている物はじゃなお主らがこさえる魔器とは違ごうての
パスを繋げた者に使い方や効果を教え導くモノじゃて
なあに、心配はいらんその時が来るまで待つんじゃ』
「衆目で使って良いのでしょうか」 とミーアはどうやら悪目立ちを恐れているらしい
『それは、儂の指輪では無いからの衆目で使おうが儂ゃ知らん 好きにせい』 と言う
「はい、分かりました クローティア様」
『うむ』
『ところでシーアよこれからどうするんじゃ』
日が落ちてきていた
俺達は着替えながら、
「先ず、近場の宿を取ってから更に北西に見えるトリンデに向かおうかと
それに
夜の飛行は空の魔物の活動も盛ん、と聞きますので避けたほうがいいかと」
と北西を指すると遺構群を利用したと思われる街明かりが点になって見える
どうやら海岸とトリンデはだいぶまだ離れていたらしい
『そうじゃな』
「それがいいわ シーちゃん」
[ 肯定 ]
と近場の宿に入る
テーブルで食事をしていると早速、
...
......
「なぁ聞いたか」
「なに何」
「トリシに行った奴らよぉ 誰も戻って来ねぇんだと」
「トリシって 何」
「オメェ知らねえのかよ トリシ大地下墳墓よ」
「ああ ガイコツ共がわんさかいるトコかい」
「そうそこだよ」
「うへぇ」
「おっかねぇ」
「でよ」
「まだなんか あんのか」
「なんでもよ でっかい大鎌背負った女と、これまたでかいメイス持った女を
見たヤツがいるんだと」
「なんだそりゃ」
「しかも、魔女っ子スタイルだったてのもオマケであるぜ」
「なんの冗談だそれ」
「チゲぇねえ」
......
…
そんな会話が聞こえてくる
どうやら ”当たり” らしい
「にしても ギルドで募集がかかっていないのはどういう訳だ? 」
このことを小声で話すと
『儂は、疲れた』
「わたしも疲れちゃた シーちゃん」
[ 擬似睡眠まで残り時間”2割” ]
皆、遊び疲れていた
「そうですね、今日は沐浴して休みましょう」 俺も遊び疲れていた。
あすは、 ”海上遺構都市 トリンデ” である
静かに夜は更ける。
次回 36 37話 海上遺構都市 トリンデ(前・後編)一度に掲載します
お楽しみに




