30 妖精の依頼
「早速だが
シーア君”ビヨン”をそこに」
と先程まで寝ていた寝台に再び寝かす
「ところで、シーア君ビヨンと言う名なんだがなんか思い入れが在るのかな?」
「わたし、小さい頃”異世界譚”が好きでよく読んでいてその中に時間を
計る機械と言うのがあるんです 時間を計る機械の部品の名前で
”トゥールビヨン”とうのが在るらしいんです とても重要で豪華な部品らしいんです
さっきクロ、クローティアが言ってたように私達にとって重要な役割を果たすと思うんです
それで...」
「ごめんなさい わたしばっかり」
こうして居る間にも順調に作業が進んでいる 伊達に自分を希代の云々や天才等と
言っていないことが俺にも分かった。
「いや 気にしなくていいよ ボクは通り独り身だしミーア君が居ないから言うけど
エル族の寿命は長い 研究者や、魔導技師なんて何かを求道するのは丁度良いのさ
話し相手も欲しいしね」
「あっとそうだ、君たち世界を廻るんだろう」
「ええそうしなくちゃいけない理由がわたし達には在りますから」
「なら、珍しい魔導部品や素材なんかあったら持っておいでよ 加工賃だけでなんか
作ってやれのかも知れないしね」
「ところで部品は何処で作ってるんですか 失礼ですけど ブレイルさんは 部品
までは 作られない方だとお見受けしました」
「やはり分かっちゃうか 学者の娘は学者だね」
「いえ私は単なる冒険者ですよ、しかも召喚士なりたての赤ちゃんですよ」
「そういうことにしておこうか」
「さっきの話だがね 実は ドワ族の専属職人をたくさん抱えていてね
ボクの無理難題を超えて作ってくれるのさ」
「お互いできる事が違うからねそれが普通さ」
「そこで一つお願いが在るのですけど」
とミーアのためにあるお願いをブレイル氏に俺は、提案した
「さあ シーア君皆を呼んでくれないか愛しのビヨンちゃんの調整が終わった。
演武といこうじゃないか」 よく見ると胸の魔法陣が
ぼんやり消えてくところだった やはり魔導的な何かをしたようだった
「何してたんですか? 」
(俺は魔導の専門では無い 推察はできるが早合点は禁物である まして、今は専門家が居る
疑問は聞くに限る)
「シーア君の疑問はも尤もだ オーナーは君たちだからね 製作者は製作者として見守るのが
本望だと思っている。 あれは、一時的にマスター権限の優先順位を変更するものだ
演武が終わればもとの順位に戻るさ安心したまえ
それにあの魔法陣は彼女の自律意思による開閉とマスターが命令して更に本人が了承しなけば
何人たりともこじ開けられない これは製作者として保証しよう
あの魔法陣は彼女の内部機構を直接触るために在るものだ、その時は完全に無防備になるから
それも気を付けたまえ」
「はい」 と俺はミーアとクローティアにも伝えておいた
庭には演武用の石丸太等が在る
ではビヨン皆に
「見せてやってくたまえ」
[ はい ブレイル ] と
軽く大のオトコ三人分の石をもちあげ空中に放り投げ手刀で割る
つぎは長身のブレイルが一抱えのある丸太を手で縦裂きに割く
あとミスリルやオリハルコン・アダマント製の大盾を手づかみでグニャリと曲げる
さてボクがこだわった彼女の武器はと再び
「見せてやってくれたまえ」
[ はい ブレイル ] とビヨン
とグニャリ曲げた大盾を手の平から蛛糸の様な物を、漁師の投網の様に出して包み
瞬時に材質は大盾と若干違うようだが大剣に変えさっきの丸太を切りつけた。
それが、終わると大剣が役割を終えてサラサラと風に流されるように散った
「あれはボクの考案した彼女の専用武器だ
材料さえあれば水銀の糸で包み瞬間的に材料を武器に錬成できるんだ。」
「これでも
材料以上の大きさの物は、錬成出来ない
血の代わりの水銀を触媒にして、錬成をマギで維持する以上、使用時間が限られること
錬成工程自体にも水銀を消費するから多用すると体内が水銀不足になることだ
こうなると機能停止になる、だから彼女の水銀不足にも気を付けたまえ」
「まあこれで演武は終わりだ」 と終了を宣言した
[ マスター権限 復帰・固定終了 ]
とビヨンの瞳が一瞬淡く光る、ビヨンがシーアに寄ってきて
[ シーア飴ちょうだい ]
といってきて飴をねだる
「飴? 」 と俺が首をひねっていると
「さっきもいったように武器錬成の時、自身の水銀を触媒にするのでそれを補うのがこれだ」
ブレイルが取り出したのはザラリと袋からまさに飴玉大のオーパーツの欠片だった
「これで体内の水銀不足を補ってやってくれたまえ」
袋と粒をわたす
「あとで工房に受け取りにきたまえ 端材なら捨てるくらいある好きなだけ持ってくといい」
「はい、どうぞ」
と手を持っていくが早いか
ビヨンは指ごと思ったより深く吸い付いてきた
「んっ、ちゅぽん」 と指を抜く時、可愛い音をたてた
シーアは思わず
「うひゃん」 とまた妙な悲鳴を上げた。
俺達は、ブレイル宅内て歓談していた
なんだか クローティアはやけに静かだった
<<どうしたんだ? やけに静かじゃないか らしくないな>>
<<うむ、儂も妙な感情に悩まされておる>>
<<どんな? >>
<<なんかのう、 苛々するようなちりちりする様な>>
<<特にあ奴を見ておるとのう>>
<<だれ?>>
<<ん、あ奴>> と視線の先には”ビヨン”
<<さすがの、俺でも検討がついた>>
<<俺が ビヨンにばっかりだったもんで妬いてるんでない? >>
<<何じゃと!! この儂が妬いてるじゃと>>
<<俺が、アイツ(ビヨン)に髪舐められたり 指しゃぶられたりして変な声あげているのをみて
お前も俺をあんな風に弄ってみたいんだろ どうせ>>
<<隠し事は 無しにしような クローティア>>
<<本当は、少し妬けとった>> と首の黒真珠をくりくりいじり始めた
<<当たりか>>
<<負けたわい>> 降参したかのように両手を挙げる
<<いつも特等席にいてか>> とクローティアはいつものように髪に抱きついていた
<<アイツ(ビヨン)にも お前の”その欲”も少し分けてやってくれ 俺はひとりなんだからな>>
<<わかっているわい>>
とここで会話は終わった
(本のくせにヤキモチ焼きめ)
<<ビヨン 聞こえるか>>
<<[ はいシーアの声が聞こえます ]>>
<<やはり 念話もできるか>>
<<[ 大変鮮明です ]>>
<<これは、俺がこっそりお前にお願いしたい できれば本人に気取られなようにな>>
<<[ はい可能です ]>>
<<頼みたいのはミーアのことだ この中でアイツだけ 俺達みたいな特殊な能力がない
普通だ だからお前にそれとなくアイツを守ってやって欲しい 今後どんなヤツが出てくるか分からん
出来るか>>
<<[ はい 私がミーアを支援します ]>>
<<よろしく頼む>>
「あのぅ、ブレイルさん」
「どうしたね? 」
「ドワ族いる工房を見学したいんですけど 大丈夫ですか? 」
「ああ構わないよ 工房は表へ出て裏手だ」
俺は、表へ出るクローティアはいつもの場所だ
「感じるか? 」
『当然じゃとも』 と二人共森の奥の方に、視線を同じ所に向けていた
俺のアッシュグレイの目にはなにやら黄色いもやもやが
はっきり見えた。
「かなり大規模だな アイツ(ミーア)は大丈夫そうか? 」
『儂にも予見できんことがある』
「俺は裏手に用がある どうする? 」
『当然じゃとも 儂の特等席はここじゃ』
「その気持ちを分けてやれと言っている」
「アイツ(ミーア)に人外の力をやるのは お前はできるか? 」
『出来んことでも無いだろうが あの娘の器が耐えられんだろうて
お主 なにを考えてえておる? 』
「何も」
『ふん』
裏手工房にて
すごいなこれは、治金、鍛冶、彫金、
規模は小さいが錬金設備はたまた裁縫、革細工あげくに木工まで在る
「なんじゃい娘っ子」 とぎろりとエル族とは対称的なドワ族の男性に
睨まれるが剣呑な空気は無い
「あの二振りの短剣の制作予約お願いしたいのですが
「二振りの短剣とな」 と 俺をじろじろ見る俺が使おうと思っているのだろう
「違うんです 友人に送りたくて」
「して材料は」
「最高等級のオーパーツの刃身で柄は蛇竜のウロコで」
「うーむ 加工はちぃーと厳しいが出来んことも無いここを何処だとおっもている
その予約受けたるわい」
「材料が来たら優先してこさえてやるでの」
「ありがとう御座います」
「あとオートマト用にオーパーツの端材が要らないほどあるから持って行っていいと ブレイルさんに
聞いたんですけど」
オートマト用というのは知らんがオーパーツの端材ならそこにと
ブレイルのヤツから聞いたがと ”飴”の形にも加工しておくし
(気になって訳を聞いたら 若い連中の研磨の練習になるそうだ)
大樽10樽有るからといつでも受け取りに来いと言うことで話しがまとまった。
空樽は返却すれば又、加工して入れておくそうだ。
中に入ると
「君たち、これからどうするんだい? 」 ブレイルが話しの切っ掛けを作ってくれた。
彼には彼の、俺達には俺達のやるべき事がある。
「えぇ、これからは自宅に戻り これに屋敷を収納しなければいけないので
一旦屋敷に帰ります」
「そうか、寂しくなるね なんか自分の娘を繰り出す気分だよビヨンをよろしく頼むよ
ビヨン お前も この人たちをしっかり支援してやってくれ」
[ はい、私のお父様 ] とペコリと頭を下げる。
『この、娘の面倒しかと頼み置くぞ』 とクローティア
『お主も、息災でな っとこれは儂からの結婚指輪じゃ』
なに事かつぶやきフレイルの左手中指に触れると黒い茨の指輪が納まった。
『これはじゃな』 とパチンと指を鳴らす するとブレイルより背が高い黒騎士が現れ恭しく、
ブレイルに傅く。
『お主の身に危険が迫ったら出てきて助けよるからの 大事に身に付けておれ
簡単にお主に逝かれても困るでな 後なこれがでてきた事は、儂らにも伝わることじゃし安心して
魔導研究に励め』
と再びパチンと指を鳴らすと蜃気楼の様にかき消えた
「いいのかい」
『お主に”お漏らし”さてしもうた、せめても儂からの詫びじゃ』
『あとはミーアよ お主じゃな』
なに事かつぶやきミーアの左手人差し指に触れるとこんどは赤黒い茨の指輪が嵌った
「クローティア様 これは?」
『シーアを支えてやっているお主への礼じゃよ
そしてなこれはな、お主専用の召喚獣じゃ お主の言うことをよく聞くいいヤツじ』
とパチンと指を鳴らす するとミーアより背が高い鋭い嘴と爪を備えた猛禽類が現れ、ミーアに甘える。
{クゥー} とぶるりと震える
「餌は何ですか? 」
『餌は”肉”を食わせい』
「また”お肉”ですか」
『これも、身に付けていないと喚びだせん いつも身に付けておれ
それと人前では喚ぶでは無いぞ』
とミーアは勢いで クローティアのおでこに接吻をした
『これ、よさんか』 とまんざらでもないようだった。
<<お前、 なかなか粋なことをするな>>
<<どうじゃ、粋じゃろ これもお主の”アレ”のおかげでマギの質が上がったからじゃぞ>>
と言われ俺は、あの時の事を思いだし顔を手で顔を覆い
「ひゃぁ」 と思わずその場にしゃがみこんでしまった。
シーアが急に顔を真っ赤にしたと思ったら変な声をあげてしゃがみこんだので
「急にどうたの シーア? 」
「いっ いえ何でもありません ミーアお姉様」
「変なの」 とミーア
クローティアが指輪に召喚獣を戻し
『それではな』 と俺達はブレイル宅を後にした
「なぁ、ビヨン」 と俺は会話をビヨンに向けた
[ シーア 何でしょう? ]
「最初に、言っておくがお前は確かに魔導人形だが、俺達はけっしてお前
を”モノ”扱いはしない
俺もクローティアも人外だしミーアは人だ そしてお前は魔導人形だ
お前も俺達の大切な仲間だ”モノ”ではない。
だから何も無い時はお前の自由だ
お前の好きにしていい
欲しい物が有ったら出来るだけ叶えてやる
言いたいことが有ればはっきり言っていい
世は広い いろんな事を体験し感じて欲しい」
[ はい そのように思考制御します ]
「それで、いい」
[ シーアの口調が殿方の様に変化しました ]
「これには、いろいろ有ってだな 気にしないでくれ」
[ 気になります ]
と俺は返事の代わりに ”飴” を彼女の口に入れる
[ むぐぐ ]
...と
かさりかさりと葉が擦れるのとは別の音が聞こえ俺達は構えを取る
すると、中指位の背で小さな少女型・少年型で少女型は蝶の羽そのまま・
少年型は蝶の羽だが鋭角な輪郭な小人が数体浮いていていた
『おおぅ、これは珍しいわいこれぞ本物の”妖精”じゃ』
「「妖精」」
『そうじゃとも、儂も小奴らを見るのは幾年振りかのぅ』
俺はどうしても触ってみたくなって手を伸ばすと避けるように逃げる
『儂とお主は妖精には”毒”じゃの』
妖精も一定の距離を保っていて近づいて来ない
かといって嫌っている感じもない触ろうとして腕を引っ込めるのだ
「クロ、どうして? 」
『それはじゃな、小奴らの属性が”聖”属性に属し対し儂とお主は”魔”に属する者じゃ
後の種族は属性は”中立”じゃ ちなみにヴァン族やドラコ族も属性は”魔”じゃ
属性が”魔”じゃからと言ってすべてが邪悪な存在ではないぞ現に儂やお主ようにな』
どうも、それが数体集まって相談しているようだが相談?がまとまらないらしい
きゃいきゃい言っている
...
やがて相談?がまとまったのかその中から一体が進みでてきて何事かまくし立てる
しかし相手が遠巻きにしているせいか、小さすぎるのかこっちもよく聞き取れない。
「ビヨン、聞き取れますか? 」 とビヨンを見ると
[ シーア、姿・認識可 ]
[ 音声情報・認識不可 ]
「姿は見えていても声が全く聞き取れない? 」
[ 肯定です ]
どうやら、ビヨンには妖精の声は全く聞こえないらしい
後の候補は属性が”中立”で妖精の声が分かるミーアしかいない
<<クロ、あの指輪は大丈夫か? >>
<<あれぐらいの”魔”の属性ならムズムズする程度じゃ安心せい>>
<<分かった>>
「ミーアお姉様。彼らからお話を聞いてきていただけますか」 とビヨンのことを話した。
「なら、お姉ちゃんにまかせなさい」 と彼らの輪の中に入る
ビヨンはさり気なく彼女に付き従う
ミーアは時々、目を見開いたり、驚きの声をあげている。
嫌な予感がする。
...
やがてこちらに戻って、かいつまんで説明したところによると
俺達がキリンズに入った頃らしい 徐々に地面が盛り上がり始め”怪物”が出現しそこに居座ったらしい
そうこうしている内に瘴気が出始めだんだん周囲から枯れ始めたという。
このままでは、森が死に、気に入っているこの場所から出ていく事を余儀なくされる
なのでどうにかして欲しいとの事、居座っている場所は はからずもブレイル宅滞在中に
森奥くに視線を向けた場所と同じだった。
まずは、様子だけもというので彼らに先導をミーア経由で頼む。
サクリサクリ 枯れた木の葉が砕ける音、湿った土の匂い
...
静謐だが俺達を射すくめるような緊張が全員をつつむ
やがてミーアでも気配が感じ取れてきたらしい
耳がせわしなく動く。
・・・
俺はは冒険者が居ない事を確認して牙で手首を穿ちウィップを構える
ビヨンを見れば右手に水銀の粒だろう、キラキラ光る小さな粒子が漂い始めた
目が淡く光るすぐれた魔導技術のせいか駆動音すら聞こえない、
微かに液体の流れるような音が聞き取れるのみ。
(この小さな粒子が糸状になり素材を包み取るらしい)
ミーアを見れば得意の短剣を構える
一歩、一歩また一歩
...
サクリサクリ
...
そして、俺達は危うく、攻撃を仕掛けそうになった それだけの存在がそこにいた
巨大な肉の腸詰めのような体躯、イボ胡瓜のような皮膚に多数の板状のオーパーツを纏い
隙間から垣間見える薄い皮膚の下で蠢く内蔵らしきものが、皮膚を時折破り黄色い瘴気を放つ
口吻と思わしき所は円周上に牙がおろし金の様に並ぶそれは
魔獣 ”巨大長蟲” であった。
ビヨンの水銀の粒はゆっくりと糸状に近くの巨石めがけて伸び初め
錬成工程に入る直前だった。
その様子を見た俺は手で警戒を緩める様に皆を制する。
(ここで仕掛けてはいけない 俺の直感がはらいていた)
小声で 「いつでも、仕掛けられるようにはしといて」 と言う
<<ビヨン、アイツを調べられるか>>
<<[ 分析可能 ]>>
<<皆に報告して>>
<<[ 肯定 ]>>
彼女は小声で、目を細め
[ 巨大敵対生物走査開始 ]
[ 内部魔力集中点・10箇所確認・現在不活性 ]
[ 統率部 箇所不明・巨大敵対生物 現在微活性 ]
[ シーア、以上分析報告終了 ]
「よし、分かった みな警戒しつつ 今は退きますよ」
構えは解かないで元の妖精と出会ったところまで来て
「シーア理由を教えてちょうだい」
[ シーア、説明を求めます ]
『お主、ちゃんと説明せい』
「分かった、理由はトルティアの密談室でだ」
どうしてそこで? と理由を急かす。
それも含めてだと言って皆を見渡した。
次回 31話 地を駆る者たち お楽しみに




