21 試練
刺さっていたのは短剣を意匠としたタリスマンのようだった。
柄に蛇が絡んだ三日月をあしらっていた ミーアに冒険者時代に見たことが無いか
聞いてみたが分からないと言う。
「後で、リアにでも聞いてみますね」 と言うことでミーアが懐にしまおうとした時。
『そのブツなんじゃが儂に預からせてくれんかの』 とクローティアが言う。
「宜しいですが、クローティア様は鞄等お持ちでは無いでしょう」 ミーアが言うと
『心配せんでもよい儂に考えが在るついてまいれ』 とクロが入れられていた ”櫃” の前で
『儂を本に戻せ』
俺は 「了解した」 と言ってクローティアを本に戻した
『その櫃はなそれ自体がオーパーツでな それを取り込むとな 儂の中に巨大な空間が出来るでの
お主らのあの屋敷の敷地ぐらいは収容出来るわい しかも強力な魔力遮断付きじゃ』
『どじゃ すごいじゃろ』
「「えっえーーっ! 」」 これにはさすがに俺達二人には腰が抜けた。
「「それってズルじゃない? 」」 と指差すと
『何を 言うんじゃこれが出るのもお主が膨大なマギを持っておるからじゃぞ』
コホンと咳払いをすると
『さすがに櫃は大きいからの お主のその不思議な髪を使って取り込んむんじゃ さあやるのじゃ』
俺は、マキナ・プローブを櫃を包むように伸ばした。
すると大量の古代文字の様な文字列の塊が俺を中継してクロに流れ込むのが分かった。
それも済むと軽い疲労感に襲われる。
『やはり思ったより広いわい ここに放り込むんじゃ』 いって眷属の餌用とは別の魔法陣があったので
それにタリスマンを放り込んだ
<<<クローティア>>>
と念じクローティアにする
『この姿のときはここが魔法陣の入り口じゃ』と 可愛い女子好みの小さい鞄が肩から下がっていた。
生地はブックカバーと同じようだ。
するとミーアが
「お屋敷は、どのように収納するのですか? クローティア様」
と聞いた
(俺も、同じ事を考えていた 研究者ととしては知識欲が刺激されるな)
『屋敷等は本の形の時一番お主に関連の在るものを起点に取り込むのじゃ
しかし一度収納すると屋敷と敷地は2度と元には戻せん そして屋敷を利用するにはお主らが
中に入る必要があるのじゃがな 屋敷の小物程度はこうして取り出せるのじゃが』
と先程収納したタリスマンを取り出してみせた。
「だが、俺達が中に入るとなるとクロはどうするんだ」 と疑問をぶつけた。
『その時は、本一冊取り残されるがオートマトにでも守らせるしかなかろ』
『それと会話はクローティア体が末端となってお主らの相手をするから心配いらんて』
『儂の中ではいくら暴れても平気じゃからな』
とニヤニヤ目を細める。
『守りのオートマトが手に入るまでは余計な事はせんことだ』
と締めくくった。
二人は呆けつつも屋敷に戻って休みについた
二回目の日の出 この日も俺は修練に励んでいた
クローティアに励まされ蟲も俺の言うことを聞くようになって来ていた
「なぁ、お前は何でここまで俺に尽くしてくれくれるんだ?
単に興味本位とかではあるまい」
と聞くと
『今はの、まだ言えぬ此度の件は儂がお主が好きでやってるということにしてお
いてくれんかの』
「分かった、今はお前の厚意に甘えるとしよう」
「ついでに、俺の寿命はどれくらいだ 素体の素材は話したつもりだが実際
お前の見立てはどうだ」
『永遠では無いが、定命の者よりは遥かな時を過ごすくらいの寿命は儂が保証しよう』
「そうか」 と神妙な顔つきをすると
『お主の世話をしているあの娘のことか』
「あぁ」
『いずれは、今生の別れがお主より早く訪れるのは覚悟しておくんじゃぞ』
「あぁ」
『なんじゃい、お主から話しかけてきた事ではないか』
「そうだな」
どうにも、あとが続かなくなった俺は、終始無言で修練に励んでると
『なるようにしかならんじゃろ 今は修練に励め』
「後、お前はあのタリスマンについて仔細ありげだったな でないとあんな
裏技秘密にするだろ」
『さすが中は錬金術師じゃな 聡いヤツじゃ』
『これに付いては、あの娘と3人のとき話そうかの 嫌でも巻き込むゆえ』
「あぁ」
『お主、 わたし分かったの♡ とか言えんのか』
「まだそこまで染まっていない」
『なんじゃ、つまらないのう』
昼食時に、クローティアは食卓に広がる匂いを 旨そう に嗅ぎ回っていた。
そして昼食後は、お決まりの位置に付き俺の髪を弄っていた。
日の光りが西の地平に近づいてからも修練は順調に進んでいた。
自分の寝室で洋服入れを開けた俺は、いつの間に取り揃えたのやら色とりどりの色彩に
少し戦慄した。
三回目の日の出 この頃になると蟲の群体をもいくらか操れるようになった。
日頃部屋掃除と称して ”餌” をやり続けてきた成果でもあった
「ちょっと良いですか」 とミーアが入ってきた
「ここにシーア様の、新しいお召しものとクローティア様のお召ものをご用意
しました シーア様クローティア様を本に戻して下さませ」
いつになく、弾んだ声で言ってくる。
そして戻ってきたクロを見れば真新しいブックカバーを付けているではないか
<<<クローティア>>>
と少女体にして見たら今度は淡い水色のワンピースを付けていて 早速貴族の娘の様に挨拶をして
多少は少女体にふさわしい声音で
『いかがでしょう? シーアお姉様♡ 』
といつもの様な口調はどこへやら すっかりなりきっていた。
「くくっ」笑いをこらえていると
『どうじゃ 完璧であったろう 振る舞いはこうやるんじゃ』
と薄い胸を張り両の手を腰にあて可愛くふんぞり返っていた。
日の光りが西の地平に近づいて来たので沐浴の後普段着に着替えて、クローティアを
見たらこれまた同じ意匠で姉妹のようであった ブックカバーの件でニマニマしていた
ミーアに一本取られた形となった。
寝台には真新しい下着が有り ちゃんと着替えて下さいませ と書き置きがあった。
『全く お主らは不便じゃのう 胸に下着を付けたりもするのかいな』
「男の時はこんなものは要らなかったのにな」
『儂は、人型種はみな胸に下着を付けたりするものだと思うとたぞ』
「これをつけるのは、人型種の女だけだ」
と強く主張すると
『そうかの? 』
「そんなもんだ」
とクローティアを見ると寝台の天蓋部に座り、ストラップパンプスを履いた足をぶらぶらさせていた
四回目の日の出
・
・
・
六回目の日の出
そして
七回目の日の出
クローティアが宣言した最終修練の日
『これが出来たらひとまず良かろうて』とクローティアは
単眼巨人を造り出し
『見事、小奴を召喚術のみで倒してみせい』
『それと
一つヒントをくれてやろう ヤツの弱点は目玉だがのお前さんならどうする? 』
『では初め!! 』
俺は、蟲の群体を呼ぶ
「サモン」
クローティアの鞄の口から霧状のものが立ち上り俺の周囲で大きな顎を持つ甲虫の群体を形造る。
単眼巨人が
{ムォーーーン}と唸る
サイクロプスが俺をめがけて手を振りまわす。
群体を複数に分けヤツの手足の関節を狙い、蟲に回転を加えつつ痛疵を加える
{モゥンモゥンモゥン}
更に、動きが激しくなり掴み握ろうと手を躱す
途中髪が引っ張られそうになるも、
股の間をかいくぐりへそを狙い更に蟲を放つ、
又手足の関節を狙う。
股の間をかいくぐる。
その間俺の足がもつれそうになる。
ぎゅりぎゅりと蟲を操り関節の奥に潜るまで続ける。
(ヤツは大きいので蟲を掴みとれていない)
ぎゅりぎゅり・・・ぎゅりぎゅり・・・
こんなことを繰り返す・・・繰り返す
こちらも少女の身 スタミナが切れてくる
へそから潜り込んだ蟲が見えなくなった。
{ムァァァー}
ヤツが苦痛に耐え切れなくなって来たらしい
一際大きく腕を振りかぶる そして
目を大きく見開いた瞬間 俺が蟲を飛び込ませたのと
壁に俺が叩き伏せられるのとほぼ同時、どうやら無意識で受け身を上手く取れたらしい
「きゃう」
と俺は可愛い悲鳴を上げるも、俺は地に足がついていた。
直後、
{ォォォーーン}
とか細い断末魔を上げながらヤツは地に伏した。
『よう、やった』
クローティアの声で俺は勝利を確認した。戦意失うと蟲達はサイクロプスの傷口から霧状に
立ちのぼり
クローティアの鞄に吸い込まれていった。
そして、サイクロプスも蜃気楼の様に掻き消えた
『よう、やったな お主』 とクローティアは愛おしそうに俺を見つめ
『さっきの悲鳴可愛かったわい 儂とてあんな声は出せなんだ』
「何を! 」
というの同時にクローティアの小さい唇が優しく額に触れた
『今のはこの儂からのご褒美じゃ 奴には内緒じゃぞ』 とウィンクして見せた
俺は、緊張と疲労から静かに気を失った。




