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薔薇の心臓 1 ―兄と妹―



 世界四大国ブリティア王国。この国は建国からゆうに五百年を超える歴史ある大国である。

 国の西側は海に面し漁業が盛んで、東側は緑豊かな大地に恵まれ小麦の栽培が盛んだ。


 そして国の西側。海側にほど近い場所にブリティアの首都リンゴーンはある。

 リンゴーンは大きな二つの河の間に存在する都市であり、海から直接航行可能な河のおかげで移動や流通の利便性が高く世界的に見ても高度に発展した都市と言える。


 そのせいかこの街は、輸出入といった貿易の窓口。人が集まりやすいため文化・芸術の中心地。行政はもちろん、金融・商業といった分野において国の重要な核となっている。


 そんなブリティアの、世界の中心地とも言えるこの街にシルヴィアは約ひと月ぶりに足を踏み入れた。


「うわー! うわあーーー! ここがブリティアの首都かー! すごーい! 栄えてるー!」


 リンゴーンに到着したと同時に長旅の疲れなど微塵もないようにヒカリは過去最高のテンションで走り回っていた。


「なんつーかよ。ヒカリちゃんがああやってバカ騒ぎするから逆に冷静になんな」

「そうだよな。なんかこっちが驚くタイミング持ってかれるんだよ」


 騒ぎまくるヒカリをも見てロキとギムレットは冷ややかな言葉を送るが、当のヒカリはそんな小言は耳にも入っていないだろう。


 そのロキたちとは違い、もともとブリティアの生まれでも初めて祖国の首都の風景を目の当たりにして驚きと感動の混じったような目で街並みを見渡していた。


「どう、ギル? ここが私たちの国の首都よ?」

「ああ。流石だ。街並みも、人もとても満ち足りた表情をしている。この国に生まれたこと。そしてこの国を護れることを誇りに思うよ」


 顔を覗き込み声を掛けたシルヴィアに対し、ギルバートは決意のこもった表情でそう言った。


「オメェ街だけ見てよくそこまで言えんな」


 とギルバートの決意を嘲笑うようにロキが白けた表情でそう言い捨てた。


「なんだと?」

「んだ? やんのかコラ」

「もう! やめなさいよ二人共! どうしてそうつっかかるのよ!」


 流れるように喧嘩に発展したギルバートとロキに対し、もはや道中何回目かわからない仲裁をシルヴィアは行う。


 ギルバートとロキは普段は気兼ねなく会話をして傍目から見ても仲が良いことはわかるが、ロキは誰にでも人を小馬鹿にしたような台詞を使うのでこういった諍いが耐えない。


 それをこうやって仲裁するのがシルヴィアの役目となっていた。

 もはやこんなことはボスの役目ですらないと思うのだが、それでも場の雰囲気を良く保つためシルヴィアの苦労は尽きなかった。


「きゃあ!」


 シルヴィアが二人の仲裁をしていると、突然後ろからエルナの短い悲鳴が聞こえた。


「何!? どうしたの?」

「シ、シルヴィアさん! あ、あれ!」


 エルナは怯えたように街の中を指差した。そこには黒塗りの馬車と思しき箱が馬も無しに自走している光景だった。


「な、なんか馬車が勝手に走ってるんです! 大丈夫なんですか……?」

「ああ、車ね。珍しいわね、こんな場所に」

「え……?」


 エルナの動揺を知りながらも、シルヴィアは淡々とエルナが聞きなれない単語を口にした。


「そういや、こんな街の端に走ってるとこ見たことねぇな。車乗ってるような奴、政治家ぐらいだしな」

「えと……、あれ?」

「あー……。流石ブリティアだな、もう自動車なんて流通してんのか」


 ギムレットとロキがそう続いて話題にしているところを見てようやくエルナは自分が世間知らずの発言をしたということを理解した。


「あー……。そっか……。皆さんご存知だったんですねー」


 誤魔化すようにそう言っては見たが、自分でもわかるほど顔が暑くなっているのがわかる。きっと顔は真っ赤になっているだろう。そう思いエルナは小さく笑いながら俯いた。


「やーん。えるえるカ~ワ~イ~イ~! そんな耳まで真っ赤にしちゃって愛い奴よのう」

「いや~……。見ないでぇ~……」


 あえて何も言わなかった面々に対し、ヒカリは惜しげもなく言葉にしながらエルナに抱きついた。

 見事に核心を突かれ、羞恥心が弾けたエルナは顔を両手で隠しその場にうずくまる。

 ヒカリはそんなエルナの頭を撫でながら慰めるように語りかけた。


「大丈夫。えるえるは可愛いだけいいよ。ギル君なんて初めて車見たときびっくりしすぎて、何だあれは! って言いながら街中で刀抜いたんだよ?」


 ヒカリの耳を疑うような言葉にそれを聞いていたシルヴィアとギムレットが思い切り吹き出した。

 そしてロキはそのことを思い出し苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。


「あ゛~……、あったなあ、んなこと」

「仕方がない。いきなりあんなものを見せられたら抜刀せざるを得ないだろう」

「せざるを得ないだろうじゃねぇよ。テメェそのせいで街中大騒ぎになったんだぞ? あん時逃げなかったらオメェどうなってったかわかんねぇんだからな」


 ロキがそう言ってもギルバートは自分は悪くはないとでも言うような顔をしていた。

 もはやギルバートのエピソードが衝撃的すぎて、エルナの驚きなど完全になかったことになっていた。


「心配ありません、エルナさん。あんなもの初見で見て、平然としていられる方がどうかしているんです」

「は、はあ……」


 ギルバートはいつものように優しく微笑みかけたが、ギルバートの奇行に戸惑うエルナは曖昧に返事をするしかなかった。


 当初ギルバートの微笑みに人並みにときめかせていたエルナだったが、ここまでの道中ギルバートの少々。いや、かなり抜けた行動にエルナ含め全員がギルバートの評価を改めざるを得なかった。


 一番酷かったのは、ギルバートが持っていたはずの宿の部屋の鍵を紛失してしまい、その部屋を借りていた男性陣から盛大に非難されたことがあった。

 その時のギルバートは第一印象からはとても想像できないほど慌てふためき、普段の薔薇のような微笑みと違い見るに耐えない引きつった笑顔を貼り付けていた。


 そのせいでギルバートの評価は、慇懃な美青年から少し抜けたイケメンを経て、顔がいいバカに成り果ててしまった。


「まあ、確かにな。今まであんな荒んだ街に居たんだ。リンゴーンの街並みはどこも珍しく見えんだろ」


 場の雰囲気を明るくさせようとギムレットはそう言ってエルナに近づいた。

 そしてエルナの肩を叩いて歯を見せて笑った。


「てことで、観光がてら少し街を見てまわろうぜ。この街に住むことにもなるんだ、見といて損はねえぞ?」

「おー! いいねー、お父さん! さっすが気が利くぅー!」


 ギムレットの提案にヒカリが元気に賛同するとエルナも同意するように返事をした。


「はい。お願いします。早く慣れるように頑張ります!」

「ギルバートとロキも行くだろ? いろいろとオススメの場所あるしよ」

「いいですね、行きましょう。是非行きましょう」

「人並み以上に食いつきやがって……。オメェ密かに期待してやがったな……」


 ギムレットの誘いの言葉に従いリンゴーンの街を進もうとしたギルバートたちだったが、突然シルヴィアがギルバートの首根っこを掴んで引き止めた。


「待って待って! ギル、貴方はダメよ」

「……! ……? ……!?」


 まさかの静止の言葉にギルバートは驚きと失意を隠せなかった。あまりの衝撃に言葉が出ず、シルヴィアを二度見し、その場であたふたしていた。


「な、なぜだ、シルヴィア? 俺が鍵の管理もできないような愚図の間抜けだからか? だ、大丈夫だ。シルヴィアやギムレットさんの言うことは聞く。迷子にもならない。だ、だから俺にも……」

「別にそこまで言ってないでしょ……。何でそんなに卑屈なのよ」

「つか、どんだけ楽しみにしてたんだよお前……」


 ショックから立ち直りきらずに、どもりながらも食い下がろうとするギルバートを呆れた視線を送りながらシルヴィアとロキが呟いた。


「そうじゃなくて。ギルに合わせたい人がいるの。街の案内なんてこれからいくらでもできるからいいじゃない!」

「し、しかし……」


 なおも食い下がろうとするギルバートだったが、シルヴィアはギルバートの手を握り真っ直ぐ目を見て話しかけた。


「いいから。これから会うその人は、貴方にずっと会いたかったんだから。貴方はその気持ちに応えてあげて」


 その言葉の意味はギルバートには理解できなかったが、シルヴィアの真っ直ぐで真摯な眼差しと言葉には従わざるを得なかった。



       *



 ギルバートは結局ギムレットたち散策組とわかれシルヴィアと共に別行動をすることになった。

 そしてギルバートがシルヴィアによって連れてこられたのは行政区のとある建物だった。


 行政区には主に中央議会の下院議員が普段の執務をこなす事務所や裁判所、警察署などまさに国の中枢を担う機関が密集する地区である。

 一気に街並みや道を歩く人間の雰囲気が変わり、少しだけギルバートは居心地が悪くなった。しかし先導するシルヴィアの足取りは力強く、凛然とした所作で歩くその姿は頼もしかった。


 ギルバートはそこでようやくシルヴィアはブリティアの武力の象徴である王宮騎士団の騎士であることを思い出した。

 昔は父親であるジョージ・ヴァレンタインの足元に隠れてばかりだった少女がこんなにも逞しく成長したことに感動すら覚えた。


 そんなことを思っている間に目的のビルに到着した。

 ビルに入るとスーツを着た人間が忙しなく歩き回っていた。そんな中シルヴィアは近くの女性に声をかけ何かを話していた。


 すでに事情がわかっていたのか、話しかけられた女性はシルヴィアに頭を下げどこかに案内しようとしていた。


「ギル、こっちよ」


 毅然とした態度でそう言ってシルヴィアは先を進んでいく。その姿をまるで子犬のようにギルバートはついていった。


 そしてギルバートたちは一つの扉の前に案内された。そこは他とは違い両開きの格調高い扉だった。


「先生。シルヴィアさんがお見えになりました」

「ああ、ありがとう。入れてくれ」


 女性がノックをしながらそう言うと部屋の中から男性の声がした。女性は扉を開けると室内には入らず二人を中へ促すよう佇んだ。

 真っ先にシルヴィアが室内に入り、ギルバートは部屋に入る前に頭を下げた。


「失礼します」

「やあ、君がギルバート君だね」


 部屋の奥から優しくそう語りかけられた。どうやらギルバートのことは知っているようだった。

 ギルバートが頭を上げると、部屋の奥にある事務机から少しくたびれた表情のスーツの男性が立ち上がりギルバートに微笑んでいた。

 記憶にはないはずなのに、どこかギルバートには既視感を覚える顔立ちだった。


「昔会ったことはあるけど、もう十年以上も前だからね。君も僕のことなんて覚えていないだろう?」


 男性は頬を掻きながら困ったように笑った。

 十年以上前となると、今は無き故郷で出会った人物だろうかとギルバートは思案したがすぐには出てこなかった。


「ギル。こちらは中央議会下院議員である、ロナウド・ヴァレンタイン議員よ」

「おいおい、シルヴィ。こちらは、なんて他人行儀な言い方はよしてくれ。仲が悪いみたいじゃないか」

「もうっ! せっかく威厳を保たせようっていう妹の気持ちくらいわかってよ!」


 ロナウド、そして妹という言葉でギルバートはようやく合点がいった。


 その名はしっかりと覚えている。

 ギルバート、そしてシルヴィアの故郷ロイフォード領を治めていたジョージ・ヴァレンタイン。彼にはシルヴィアという娘の他に一回りも離れた兄がいた。


 それこそ今目の前にいるロナウド・ヴァレンタインだ。『血の宣戦』の時にはこの首都の大学に居た為難を逃れていたのだ。


「はいはい、ありがとう。出来た妹を持って僕は幸せだよ」

「何よそれ。ところでひと月ぶりに帰ってきた妹に何も無し?」

「全く……。お帰り、シルヴィ。元気そうでなによりだ」


 シルヴィアとロナウドがそんな風にどこにでもいる兄妹の会話をしていると、駆け寄るように室内に入ってきたギルバートがロナウドの前に片膝を付き頭を垂れた。


「お久しぶりです、ロナウド様。先程のご無礼、そしてこれまでご挨拶もなく申し訳ありません。ご壮健でなによりです」

「ちょっ、どうしたんだ急に!? やめてくれ! 顔を上げてくれギルバート君!」


 突然、騎士が主に対してするようにギルバートが頭を下げロナウドは慌てて顔を上げるように言うがギルバートはもちろんやめようとしない。


「あー……。ゴメン兄さん。ギルっていつもこうなの」

「シルヴィまで何言ってるんだ! 頼む、お願いだからやめてくれ。僕はもう貴族でもなんでもないんだ」

「ですが……」


 なおも食い下がろうとする融通の効かなさにロナウドは困り果て頭を掻いた。


「いいから。僕は一人の人間として、君と接したいんだ。貴族なんて時代遅れな肩書きなんていらない。そんなのただ色眼鏡で見れられるだけでいいことなんて何もない」


 ロナウドは腰を落としギルバートの顔を覗き込むように語りかけた。


「僕はね、君が生きていてくれて本当に嬉しい。同じ故郷に生まれ、同じ故郷を無くした者同士だ。だけど僕には『黒い逆十字』を滅ぼす力なんてない。だから君の力が必要なんだ。でもそれは主従関係じゃない。同じ志を持つ同志として共に歩んでいきたい」


 ロナウドは優しく笑いギルバートに手を差し伸べた。


「どうだろう? 僕に力を貸してくれないかな?」

「……もちろんです、ロナウド様」


 ギルバートは力強く頷きロナウドの手を取った。

 その掴んだ手を引っ張り上げるようにロナウドは立ち上がった。


「ははは……。様付けもいらないよ」


 相変わらずの態度にロナウドは呆れたように笑った。

 しかしお互いの手は固く結んだままだった。


「わかりました。よろしくお願いします、ロナウドさん」

「うん、こちらこそ」


 お互いが笑い合いようやく繋がれた手が離れた。


「シルヴィア。さっき言っていた合わせたい人というのはロナウドさんのことだったんだな」

「え? あー……。まあ、もちろんそうなんだけど。本命は別というか……」


 ギルバートの感慨のこもった言葉に何故かシルヴィアは煮え切らないような素振りを取った。

 そしてなにか探すように辺りを見回した。


「ねぇ、兄さん。あの子まだ来てないの?」

「ああ。なんだか今日は午前中にどうしても外せない用があるって言って大学の方に行っていたよ」

「もう! ようやく会えるってのに……!」

「そう言うなよ。あの子も努力して今の立場にいるんだ。姉ならわかってやりなさい」


 シルヴィアとロナウドはそう何かひそひそと話していた。

 しかしロナウドの姉という言葉にギルバートは疑問を覚えた。

 シルヴィアはロナウドという兄はいても、弟や妹と呼ばれる存在はいなかったはずだ。

 それはギルバート自身よくわかっている。

 どういうことかわからず頭を傾げていたが、それに気がついたシルヴィアとロナウドが誤魔化すように笑った。


「ま、まあ、ね! せっかく会えたんだから兄さんと何か話しててよ、ギル!」

「そ、そうだね! いやあ久しぶりだ! まさかこんなに逞しく成長してるなんてね! これならシルヴィも安心して任せられる!」


 慌てて話すロナウドの言葉にシルヴィアは顔を真っ赤にしてロナウドの背中に張り手をうち、ロナウドは痛みに悶えた。


 突然の状況の変化についていけず疑問符を浮かべるばかりだったが、不意にギルバートの背後の扉が激しく開け放たれた。


「失礼しますっ! ごめんなさい、ロナウドさん! 論文の提出に時間がかかっちゃって!」


 ノックもなく扉を開けてそう捲したてたのは、肩にかからない程度の鮮やかな金髪を揺らし息を切らす少女だった。


「お姉ちゃんまだきて……。ってお客様!? も、申し訳ありません! ご無礼を……!」


 落ち着き無く喋り、思い切り頭を下げた少女に向かい、シルヴィアが呆れて声を掛けた。


「もう! 落ち着いてよく見なさい!」

「あれ……? お姉ちゃん?」


 聞き慣れた声が耳に入り少女はゆっくりと頭を上げた。


 少女はまるで人形職人が世界中の人間に愛されるようにと願い作られたかのように繊細で可憐な顔立ちをしていた。そして金糸の睫毛から選び抜かれた紅玉ルビーのような鮮やかな紅い瞳が覗いていた。


 ギルバート、そして紅い目の少女はお互いの顔を見合わせ硬直した。


「やあ、シャーロットちゃん。タイミングバッチリだね」


 シャーロット。ロナウドはそう少女を呼んだ。


 その名を聞いたギルバートは頭が真っ白になった。

 忘れるわけがない。一度何が何でも守ると決めた存在。自分の力不足のせいで結局失ってしまった、失ったと思っていた存在。


 最愛の妹。シャーロット・デイウォーカー。


 十年の時を経て、あどけない子供の姿からは想像もできないほど美しく成長していた。

 しかし見間違うわけもなかった。

 その少女は、泣きなくなるほど母親にそっくりに成長していたのだから。


「……シャル、か?」

「……兄、様?」


 二人はうわごとのようにそう言った。

 それは十年前、お互いを呼んでいた呼び方だ。


 シャーロットは言って直ぐに口元を押さえた。

 目をぎゅっと塞ぎ俯いた。


 泣いてはいけない。もっと先に言うべきことがある。


 電話で聞いていた。最愛の兄があの災禍から生き延びていたことを。

 ずっと待っていた。こうして会える時を。


 おかえり。会いたかった。無事でよかった。

 たくさんの言葉を用意してきた。十年ぶりにあったらそう言って迎えるのだとシャーロットは心に決めていた。


 しかし、いざこうして面と向かうと何も言えなくなる。涙が流れないように。嗚咽がもれないように我慢することで精一杯だった。


 必死に涙を押し込めようと唇を噛んで俯いていると、シャーロットを優しく包むようにギルバートが抱きしめた。


「シャル……! 生きててくれてよかった……! 今まで、すまなかった」


 限界だった。

 兄の声、ぬくもり全てがシャーロットの感情の堰を取り払っていく。


「う、うわあああああああああん! 兄様! 兄様あああああ!」


 再会の言葉も、生きていたことの感謝の言葉も出なかった。

 ただ、幼い頃のように兄の体にもたれかかり泣きじゃくるしかできなかった。


「兄様あああ! 会いたかった! 寂しかった! わあああああ!」


「すまない、すまない。もう、どこにもいかない。ずっとお前のことを護るから……」


 シャーロットが泣き続ける中、ギルバートはずっと謝り続けていた。

 懺悔のようなギルバートの言葉は、シャーロットの鳴き声で塗りつぶされた。



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