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砕球!! G2  作者: 河越横町
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入部試験に向けて


「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 息を咳切らしながら、耀は大粒の汗を流す。一時間以上もノンストップの全速力で、延々続く山道を麓から一般寮のある頂上まで走り続けていた。

 ふと自分の上着に視線を落とすと、ぐっしょり濡れた白色の体操着の下に着ている、スポーツ用ブラジャーが透けているのが分かる。


「蓮くんの狙いはこれ……? クールぶってても所詮は男ってことね……勉強になるわ」


「――三十キロを一時間か……ギリ合格ってところだな。ほら、汗掻いたろ飲んどけよ」


 ようやく走り終えて、一般寮脇の空き地で仰向けに寝っ転がっている耀に、剛羽はスポーツドリンクをふわっと投げ渡す。

 耀は、受け取った飲みかけのボトルをまじまじと見た後、そのまま投げ返してきた。


「飲んどけって。さっきから何も飲んでないだろ? 身体に悪いぞ」


「し、試験で敵になるかもしれないあなたからは受け取れないです。な、なにか盛られてるかもしれませんし!」


 なにも盛られていないことは分かっていたが。

 耀はそれっぽい言い訳をしてみる。しかし「ん」と、目の前でボトルを呷ってみせた剛羽は、少女にもう一度ボトルを放ってきた。


「何も入ってないぞ。それとも、回し飲みとか嫌なタイプか?」


「さ、参考までに聞いておきますけど、男女で回し飲みはするのかしら?」


「普通にするだろ。何だよ、その質問」


「そ、そう……まぁあ、余裕のよっちゃんですけどね」


 耀は明後日の方を向きながらボトルを呷り、不意に唇が開け口に触れてむせ始める。

 角度的に見えないが、ランニングで上気した頬がさらに紅くなった。


「さあ、休憩は終わりだ。《心力》の練習するぞ」

 

 剛羽はむくれた耀に手を貸して起こす。


「まずは基本からだ。じゃあ《心力》を発動させてくれ。こんなふうに」


 足を開いてゆったりと構え、胸のあたりにある鎧臓がいぞう――心臓を覆うように存在し、《心力》を生成する器官――を意識すると一瞬で、剛羽の全身が満遍なく白色のオーラに包まれた。


「白いオーラ、初めて見たわ」


「俺の《心力》は異型ユニークなんだ。まあ、その話はどうでもいい。今俺がやってるのは《心素》を練り合わせて《心力》を身体の外に出すこと、それを器用に扱うこと。この二つの基礎練習だ。鎧臓から全身に力を送るようなイメージだな」


 オーラを解いた剛羽はお前もやってみろと促す。


「神動の《心力》は赤型リンターだよな? だったら《心力》十秒発動してその後三分休憩、を一セットで計五セットやるか」


「ん? ええ、じゅ、十秒発動すればいいんですね。OK、OK」


「……まさか《心力》の基本練習、知らないのか?」


「せ、せっかくの機会ですから詳しく聞きましょうか。おさらいですよ、おさらい」


 こいつ知らないなと溜息を洩らしてから、剛羽は懇切丁寧に教える。


「《心力》ってのには赤とか青とか何種類か色が、つまりタイプがあるだろ? そのタイプによって得手不得手がある。だから、基本練習からやり方がそれぞれ違うんだ。例えば神動の赤型リンターだったら、十秒出すのが限界ってくらい全力のオーラを出すのが基礎トレだな。十秒出し続けるだけでも辛い、ってくらいの力を出すんだ」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 待って待ってと両手でジェスチャーをした後、耀は自室に向けて走り出す。


「メモ帳、取ってきます!」


 それからすぐに戻って来た耀に《心力》のトレーニング方法についてさわりの部分だけレクチャーした後、さっそく実践に移る。


「じゃあ十秒発動してくれ。最初から全力だぞ」


「任せください。行くわよ」


 精神を統一して鎧臓を意識する。しかし「……あれ?」力が起きる気配を感じない。内側で塞き止められてしまっているような感覚だ。


「ちょっと、やっぱりなみたいな顔するのやめてください!」


「幼稚園児でもできるやつはできるぞ」


「ど、どういう意味ですか、それ! 見てなさい、今すぐぎゃふんと言わせてふんぬぅうううう~」


「はあ、誰が顔を紅くしろなんて言ったんだ? 赤いオーラを出せ、赤いオーラを」


 耀は云々唸ってばかりで、一向にオーラが出てこない。


「ぅ、ひっく……出ない」


「お……おい、泣くなって」


 剛羽は耀と決闘をした時に、彼女からとんでもない才能と同時に土台の不安定さを感じていたが、予想以上に基礎能力は重症らしい。

 いつ暴発・故障してもおかしくない超火力砲といったところだろうか。


「お兄ちゃん、神動先輩のこと泣かせちゃダメだよ?」


 空き地脇で花摘みをしていた美羽が、手にした花をふりふりする。

 昨日、美羽は耀を怖がっているように見えたが――一体二人の間に何があったのか――既に仲は良好だ。


「……コーチし甲斐があるな」


 一生懸命力んでいる耀を前に、剛羽は一つ溜息を付いた。


蓮美羽ましろ みう

性別:女

誕生日:3月22日

年齢:12歳(中学1年生)

身長:145cm

ポジション:?

好きなもの:兄、甘いもの全般、砕球観戦


作者コメント:最初は剛羽の妹じゃなかった妹キャラです。今後、とあるキャラをお姉ちゃんと言っているシーンがあったら――修正できてなかったら――そういうことです、許してください!最初は「風歌」という名前でしたが「剛羽」の妹ということで「美羽」に名前を変更しました汗


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