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砕球!! G2  作者: 河越横町
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漆治大亜駆(つつじ だーく)


 代表決定戦についての会談が執り行われる土曜日、九十九学園第一闘技場にて。

 チーム九十九の砂刀鋭利さとう えいり駿牙轟するが ごうはチームの誰よりも早く練習場に姿を現し、ストレッチなどのウォームアップを始めていた。一年前に九十九学園を去った者たちが今の彼らを見たら、間違いなくその目を疑うだろう。


「砂刀手前、俺の真似してんじゃねえよ!」


「貴様こそ、俺の前をうろちょろするでない」


 朝から物凄い剣幕でいがみ合う二人。九十九学園では馴染み深い光景だ。

 

 砂刀と駿牙は同じ学年、同じ闘王学園出身ということで、闘王学園で知り合って以来ずっと意識し合ってきた間柄だ。

 対称的な性格が災いし、公式戦でもどちらがたくさん点を取れるか競い合う始末だったが、周りからは理性と感性を補い合ういいコンビだと言われ続けてきた。

 それを本人たちは今になっても認めようとしないが「泥臭い練習はしない、自分には自分のやり方があるから」という思考を共有し貫いてきたあたり、あながち間違った評価ではない。

 

 そして、そんな二人に転機が訪れる。それは、砂刀たちが高等部二年に進級してから初めて行われた入部試験。試験官を務めた砂刀たちは注目のルーキー、蓮剛羽に敗れた。二対一という数的有利な状況で仕留め切れず、最後の場面では手も足も出なかったのだ。

 

 悔しい。戦死後、二人は久しぶりにそんな感覚を覚えた。

 今までは自分の戦いができればそれで満足だったが、一つ年下の選手に負かされたことが自己陶酔による満足感を上塗りするほどの屈辱を砂刀たちに与えたのだ。

 

 しかし、後輩に負けたことだけが、砂刀たちに火を付けたのではない。大嫌いな基礎・反復練習をやり始めたのは、自分たちのポジションが脅かされるかもしれないという、危機感によるものだ。

 剛羽が自分たちのチームに移籍したら最後、確約されていたポジションを奪われるかもしれないという恐怖。それを拒絶するように、奇遇にも二人ともチーム練習に積極的に参加するようになった。

 自分たちのやり方を完全に捨てたわけではない。これは新しい可能性を探るための一歩だ。


「ったくよぉ、一番乗りが同時乗りになっちまったじゃねえか! つーかその武士みたいなかっこやめろよ、ユニフォーム着ろ、ユニフォーム」


「これは着流しと言うのだ、戯け。それに貴様こそ常に兜を被っているではないか、声がくぐもってよく聞こえん、今すぐ脱げ」


「これは超前衛的なファッションだっての。時代が俺に追い付いてきてないだけだぜ」


「笑止。対面会話ができないだけであろう」


「なっ!?」本心を言い当てられた駿牙は、自室以外では常に装着しているフルフェイスヘルメットの下で、顔を赤らめる。「さ、砂刀こそ、変なしゃべり方してんじゃねえか!」


「変、だと!? 貴様、もう一度言ってみよ!!」


「――朝から盛り上がってるねえ、鋭利、轟」


 とそこで、闘技場内に続く選手入場口から、チームのキャプテンにして闘王学園時代からの付き合いである、九十九が姿を現した。そのにこにこ顔は、普段以上に薄気味悪い。


「よお、義経!」駿牙は手をぶんぶん振って馬鹿でかい声で呼び掛ける。「おめえも練習しに来たのか?」


「ボクが? 練習? 冗談はよしてくれよ、轟。そんなことするわけないだろ?」


「そうかあ? ウンコみてえな練習でも、やってみっと意外と効果あるもんだぜ」


「相変わらず品のないことを言う……が、その趣意には同意だ」


 真似すんなよ、してない、と轟と砂刀はまたも口論を始める。


「そうかい……」そんな二人を余所に、九十九は心底残念がるように首を横に振った。「閑花さんから聞いていたけど、鋭利も轟も変わってしまったね」


 出来の悪い弟子に対して諦めが付いたような、どこか冷めた言い方。

 いつもと様子が違う九十九を前に、砂刀たちは首を傾げる。


「でも大丈夫、ボクは落ち込んでなんかないよ」


 一体誰と話しているのか、それはまるで独白のようだ。

 さっぱりした笑みを浮かべた九十九は、自分の背後にすっと手を伸ばした。すると選手入場口から、一人の少年が足裏を擦りながらとろとろ歩いてくる。


「紹介するよ、漆治大亜駆つつじ だーく。ボクの新しい友達だ」


「誰だそいつ?」「知らぬ顔だな」


 フードを目深に被った体格のいい少年を前に、砂刀たちは首を傾げるばかりだ。

 対して九十九は、買い与えられた玩具を見せびらかすように、無邪気な笑顔でこう告げる。


「編入生だよ。キミたちに代わってチーム九十九の新しいレギュラーになる、ね」


「俺たちの代わり?」


「そやつが俺より強いと?」


「あ、そういうことか……って、なんだそりゃ――」


「――ごちゃごちゃ、うっせえーぞ。女か、てめーら」


 と、フードの少年は気だるげに言った。攻撃的な口調だが、口元には笑みが貼り付けられている。


「文句あんなら、試してみっか? どっちがつえーかよ」


「お、いいね~、漆治くん! じゃあ、早速《闘技場》を――」


「――要らねーよんなもん。てめーはすっこんでろ」


「漆治くん、君ねえ……」


「おいおい、流石に《闘技場》なしってのはよお……なあ?」


「ルールも知らない馬鹿に係うほど暇じゃない。俺は練習に戻るぞ」


「……は、とんだ腰抜けどもだ。こりゃー、勝負するまでもねーな」


「はあ?」「何だと?」


「《闘技場》なしじゃ戦えねーなんて言ってるザコに負けるわけねーって言ったんだよ。てめーらそれでも闘王出身か?」


 砂刀たちの纏う空気を感じ取った少年は、フードから覗く口元を喜悦で歪める。右の拳を、左の掌にばちんとぶつける。


「やろーぜ、本物の戦いってやつをよ」


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