妹
この話があることすっかり忘れてました汗
次話から……後半部分から新規です。前半はちょっと新しいですかね
耀たちを見送り、マオとアズキを家まで連れて行った後。
剛羽は勇美を送り届けるため、校舎に隣接する砕球部の寮まで来ていた。
勇美は大会の度にチーム九十九から助っ人を頼まれるため、特例で寮の使用を認められているらしい。
「勇美、髪伸びたな。小学生の頃は男子と混ざっても分からなかったのに」
「なんだそれは! まったく。……おかしいか?」
「いや、全然。似合ってる」
「そ、そうか。似合っているか」
勇美は俯きながら髪を弄り始める。
「それにしても、夜中の河川敷で決闘するなんてな……喧嘩番長復活か?」
「その二つ名は遠の昔に封印したのだ。念のために言っておくが、他の者のいる前でばらしてくれるなよ――って、こら、どこがおかしい!? どうしてそんなに笑っている!?」
「いや、だってさ……く、塚小の戦鬼とか言われてた勇美が今じゃ風紀科で風紀委員やってるし、しかも征維義衛隊目指してるんだろ? くく……すまん、めちゃくちゃ笑えるぜ」
「うぅ……剛羽にそこまで言われると……」
「あ……すまん、茶化し過ぎた。それで、さっきはどうしたんだ? らしくないぜ」
《闘技場》なしでの《心力》を使った決闘はとても危険だ。
確かに戦用複体に変身することで戦死するまでは安全である。が、戦死後自動的にフィールドの外に弾かれる《闘技場》がない分、勢い余って戦死した相手――生身の肉体に戻った相手に、万が一攻撃が当たりでもしたら命に関わる。
また、当事者たちは戦用複体があるため安全かもしれないが、《闘技場》を使わなければ周囲に甚大な被害がでかねない。だからこそ《IKUSA》の携帯が義務付けられ、《心力》の資格制が導入されているのである。
「その、熱くなってしまった……」
「あの子どもたちと関係あるのか?」
勇美は一瞬口ごもったが、剛羽にならと話し出した。
「マオたちとは家が近所でな。私が中学に上がったくらいからの付き合いなのだ。あの子たちはすごいのだぞ。まだ五年生だが、六年生たちと混ざっても頭二つ、三つ抜きん出ている」
双子の小学生について語る勇美の表情は、とても柔らかく艶美さも醸し出していた。そんな幼馴染の横顔に、初めて知った一面に心が温まる。
「初めて会ったときに決闘を申し込まれたのだ。それはもう有無を言わさぬ強引さだった」
「なに、ボコボコにしてやったのか?」
「あ、相手が小学生とはいえ、戦士として手を抜くわけにはいかないだろう? まあとにかく、私が勝った。そしたら「弟子にしてほしい」とせがまれてな。断っても断っても頼まれ続けたから、成り行きで師匠をすることになったのだ」
「双葉マオと双葉アズキってあの《無双姉妹》だよな? 小学生の部の全国大会で観たことあるぜ」
「マオたちはチームのエースだからな。昨年は闘王学園に負けてしまったが、毎年最高成績を更新し続けている。勇気をもらったよ」
穏やかな眼差しで語る勇美。彼女にとって、あの小学生たちは実の妹のような存在なのではないかと思った。
「……ただ、マオは口も手も出やすくてな。アズキも能天気でマオに乗っていくから、私がしっかりと見ておかねばならないのだ」
(もしかして神動と達花のやつ、高校生にもなって小学生と決闘したのか……?)
まさか、いくらなんでもそんなことはないだろうと思いたかったが、小学生と喧嘩する高校生の姿が目に浮かんできてしまった。あいつらならやりかねない、と。
「すまん、多分神動の馬鹿がやらかしたのかもしれない。あいつ、プライド高そうに見えて妙に子どもっぽいところあるから」
「こ、剛羽が女の子のことでそこまで言うのは珍しいな……もしかして、すすすすす~」
「あー、言いたいことは分かった。それは天地がひっくり返ってもない……まあ、選手としてはアレだけどな。優那先輩の方が百倍可愛い」
「……この場合、私はどう返せばいいのだろうな」
「どうした、勇美? まさか……優那先輩は可愛いくないって言いたいのか?」
「ええい、うるさい! この痴れ者がぁ!」




