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砕球!! G2  作者: 河越横町
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エース対決、決着


 フィールド中央、斬り倒された大木で組まれた檻の中。

 まず動いたのは、剛羽だ。


(四倍減速(クレスト=スクエア)

 

 ただ逃げ回っていたのではない。ずっと観察し続けた。砂刀たちの一挙手一投足を予測できるまで。

 相手の《心核》に撃ち込む分難易度が跳ね上がる、しかし逆転には不可欠のカードをここで切る!

 そして虚空に出現する円形紋章。駿牙を狙って撃った個心技は、空振りに終わった……!?


 駿牙が回避できたのは、砂刀からの突然の通信のおかげ。砂刀の第六感のおかげだ――蓮剛羽という選手を《IKUSA》で研究し培われた、知識に裏打ちされた危機察知能力が働いたのである。

 それでも、円形紋章がコックピットの目の前に出現したことから、間一髪の回避だと分かる。

 目下展開中の高速戦闘における減速。それは死に直結する。

 

 砂刀は、刹那の中で自身の《心核》が激しく疼いたのを感じた。自分たちの動きの癖は、《心核》に一ミリの狂いもなく円形紋章を撃ち込まれるほどに、剛羽に掴まれているのではないかと。

 

 それ故に一瞬、ほんの一瞬だけ、砂刀と駿牙の開戦当初から剛羽に対して続けてきたハイプレスが緩む。迷い、あるいは動揺か。この場で一番してはならない減速をする!

 

 それが剛羽の狙い。勿論、《速度合成》で大幅に減速させられることに越したことはない。が、減速を使ったことで相手への牽制になり、結果、本命の加速で仕留めることができる!


(三倍加速(クレスト=トリプル)ッ!!)


 無駄のない、精練された加速。

 剛羽は硬直した二人を刈り取るべく、フルスロットルで突進し――直後、地面に叩き付けられた……!? 

 

 まったくの予想外。それもそうだ。今、剛羽の意識は完全に攻撃に傾いていたのだから。

 そして、剛羽の殺気にその気配を忍ばせた選手は、


「防御がお留守だぜッ、蓮剛羽ぁッ!!」


 チーム義経、高等部三年の木礎だ。見れば、その顔を血のように赤く染め上げ、鼻は異常なくらい高くなっており、背中からは黒い大きな翼が生えている。


(天狗ッ!? 転身トランス系か!!)


「逃げなかったんですかって顔してんな? 逃げるわけねえだろボケがッ、手前を倒せば合格間違いなしなんだから――ちッ!?」


 胸部に突き立てられた錫杖に顔をしかませていた剛羽は、圧し掛かっていた木礎を蹴り飛ばして身体を起こす。


 第三勢力の割り込み。これは正直痛い。砂刀と駿牙を仕留め損なったのだから。そして木礎の急襲で生まれた間が、砂刀たちに冷静さを取り戻させたことが一番痛い。


 減速を撃ち込める範囲は、自身を中心に半径一〇メートルほど。

 砂刀は居合斬りで、駿牙は右腕をガトリングガンに変形させて、減速の射程範囲外から勝負を着けにくる!


 コロン、コロン、コロン。


「「「「ッ!?」」」」


 次の一撃で決まる。そんな極限状態の檻の中に、逸早く響いたのは可愛らしい音。そしてその音の原因が何かを確かめる間もなく、檻の中が真っ白な光に包まれる。


 閃光玉を投げ込んだのは、


「――行け、蓮!」


 山伏たちから逃げて、ここまでやってきた玲だ。その隣には、亀球を従わせている閑花の姿もある。


(ここしかない――十倍加速(クレスト=デナリス)ッ!!)


 玲からの通信のおかげで目を守れていた剛羽は、トップギアで加速する。十倍加速。耀を仕留めた伝家の宝刀。

 しかしその反動は大きく、使用後しばらくの間《速度合成》を――延いては《心力》を発動できない。

 九十九義経や山伏弁慶という強者たちが控えているこの状況での使用は、正直控えたかった。が、ここを切り抜けられなければ次のステージには進めない。

 砂刀や駿牙が継戦度外視のハイプレスを仕掛けてきたように、こちらも全力の全開で応える。


「どこだ!?」


 対して、すぐさま立ち直った砂刀は、視界から消失した剛羽を捕捉しようとする。が、トップギアの剛羽には、視線すら追い付かない。

 そして次の瞬間、人型ロボットのコックピットが爆発。

 

 ――チーム閑花、1点追加(内訳:相手選手1人撃破=1点×1)、トータル5点


「そこか!」


 爆発と同時に、砂刀は人型ロボットに向けて最速の居合斬りを放つ。が、剛羽はもうそこにはいない!

 そして、勢いよく砂刀の真上から回転落下してきた剛羽が義足剣を振り下ろし、


「無念」


 小規模な爆発とともにまた一人、戦士が退場した。


 ――チーム閑花、1点追加(内訳:相手選手1人撃破=1点×1)、トータル6点


『すごいぞ、蓮選手! 駿牙選手に続き、砂刀選手も撃破だ! もう誰にも止められなぁい!』


 激しい戦闘に耐えられず、遂に崩れ落ちる大木の檻。

 加速中の剛羽は易々と脱出し、斬り倒された大木でできた山の頂きにいた。木礎は脱出できずにこの大質量の大木の下敷きだ。

 激しい戦闘を終えてドサッと座り込みたいところだが、試合はまだ続いている。

 そして、十倍加速が解けた剛羽が誠人の援護に向かおうとした刹那、足首を、掴まれた……!?


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