その刀、一振りで全てを断つ
一つの前の話「圧倒」の後半が若干修正されています。耀が戦死するところですね。
気になった方は是非お読みください!!
耀が戦死した頃、フィールド中央から少し離れたところにて。
剛羽は相手選手二人を瞬殺するや否や、残った拳使いのもとへ駆け出した。
相手の位置を割れている。誠人を捕らえている紫拳の手首側からすっと伸びる紫色の糸――《心力》の供給線が、拳使いの元へと導いてくれるのだ。
これは拳使いのミスではない。
物質錬成が得意な緑型以外の《心力》は、身体から離れた瞬間――身体から《心力》の供給を絶たれた瞬間から力が分散して威力が落ちてしまうので、それを防ぐためである。
彼我の距離を一瞬で消し飛ばす剛羽に対して、拳使いは誠人を束縛していた拳と剛羽相手に使っていた拳で自身を覆った。殻に籠る。正にそれだ。
剛羽は相手が殻に籠る前に小刀を掌サイズにして投げ付けたが、相手が一瞬速く殻に弾かれる。
それでも、剛羽は跳ね返された小刀を跳んでキャッチしてサイズを元に戻し、独楽のように回転した勢いを乗せ、拳の殻に向かって小刀を振り抜いた。
(ッ、硬い……!?)
一撃で刃こぼれしてしまった。先程よりも《心力》を込めて小刀を錬成し、
(削り切るッ!!)
あらゆる方向から間髪入れずに斬撃を叩き込む。
しかし、戦況は剛羽が殻を削り切るのを待ってくれない!
「ひょぇえええええ~」
突如撒き散らされた青色の弾丸から逃れるように、誠人は面白い悲鳴を上げながら倒木の陰に飛び込む。
剛羽も一旦身を隠そうとするが、対決していた拳の殻からにょきっと生え出たニードルがそれを許さない。剛羽は乱立する木を盾代わりに走って銃弾をやり過ごし、殻から突き出されるニードルに注意する。
攻撃力では銃撃よりもニードルの方が勝っているように見受けられるが、拳使いは周りが見えていないのか狙いが適当な上、ニードルの射程はせいぜい一〇メートル程度だ。
よって懸念すべきは、先程から景気よく銃弾をばら撒いている選手の方だろう。
弾の色から銃使いは青型(タイプ=グラデュアル)。長時間《心力》を出すことに長け、徐々に出力が高まっていく性質だ。そして、銃撃が木を貫通しなかったことから、相手は赤型のような瞬発力がない典型的な青型選手であると判断できる。
このような相手と戦うときのセオリーは先手必勝、短期決戦……なのだが。
相手の息も付かせぬ連射に、誠人はその場に縫い止められていた。そして、
【達花先輩、右から来てます!】
耳元の通信機で美羽の連絡を受けた誠人がぱっと目をやると、今まさに戦斧を振り下ろそうとする少年の姿を捉えた。味方の制圧射撃を活かして、迂回してきていたのだ。
間一髪で斧撃をかわした誠人は、戦斧使いに追撃されながらも剛羽と合流しようとする。が、その途中で、誠人は足元から脳天を突き抜けるような衝撃に襲われた。
それは圧倒的な《心力》に対する恐怖。
本能が叫ぶ。今すぐにここから脱出しろと!!
「蓮、デカイのが来る!!」「ッ!?」
そして剛羽が誠人の真意を確かめる間もなく、彼らのいる辺り一帯が――切断は容易ではないと見ていた大木なども全部まとめて――赤色の液体のような斬撃によって容赦なく刈り取られた。
――各チーム獲得点数、途中経過
1位チーム閑花2点(内訳:敵選手2人撃破=1点×2)
2位チーム義経1点(内訳:敵選手1人撃破=1点×1)
3位チーム砂刀・チーム山伏0点




