アンコール
「はぁ、はぁ、はぁ……」
早朝、剛羽は一般寮へと続く山道を駆け上っていた。
耀が逝ってから今日で三日が過ぎた。世界は今日も普通に回っている。
代表決定戦を勝ち抜いたチーム上妃は、九十九学園の代表として次なるステージ――全国大会彩玉県予選への出場が決まった。
あと一週間もすれば予選が始まる。しっかりと準備をしなくては。
と、自分を鼓舞してはいるものの、剛羽は代表としての喜び以上にそれを塗りつぶしてしまいそうなほどの空虚さを抱えながら練習をしていた。
そして寮まで戻ってきた剛羽はその重厚なドアをぐっと押し開ける。
気のせいか、いつもよりずっと重い。
そして自分は調子が悪いのではないかと思うと――その原因は何だと問い掛けると、あの少女のことを思い出してしまう。
絹糸のようにサラサラな金茶髪で、宝石のような紫眼で、偉そうで、自信満々で、いきなり決闘をしようなどとぬかす――
「――え?」
ドアを開けたところで、剛羽はその目を疑った。
正面階段の踊り場にいる少女を――金茶髪紫眼の偉そうな少女を、まじまじと見詰める。
「ふふ、今の顔、一生忘れないと思うわ――さあ」
楽しそうに、本当に嬉しそうに笑った少女は髪先を手でなびかせ、自信満々に張った胸の前で腕を組む。そして、
「早速ですが、蓮剛羽くん、あなたに決闘を申し込みます!!」
やはり偉そうに、しかし笑顔で、少女はそう宣言した。
第一部・完
第一部これにて完結です祝
ご覧戴き、ありがとうございました!!




