蓮剛羽(ましろ こうは)
新連載スタート!
以後よろしくお願いします!
努力は才能を上回る。
それが、蓮剛羽が十五年の人生で導き出した信条だ。
才能――自分の武器は人それぞれ。同じ武器でなければ比べようがない。故に優劣はないと、剛羽は考える。
その点努力するか否かというのは意思の介在する余地があり、差の出る世界だ。才能それ自体よりもどれだけ武器を研磨してきたかが、結果に大きく響くのである。
だから、剛羽はどこか納得いかない表情をしていた。
寮の自室で、ルームメイトである少年から借りた小説を読み終え、その感想を述べる。
「花子は素直でいいやつだな。影でしっかり頑張ってるし、文句のつけどころがない……ただ」
「ただ?」
その問い掛けに、剛羽は至極真剣な表情で答えた。
「なんで太郎はこんなに強いんだ?」
「それはまあ、この作品がそういうジャンルのやつだからだよ。定番ってやつだね」
「でも、修行してるシーンがどこにもないぞ。どうやって強くなったんだ?」
「そう、そこだよ!」
ルームメイトの少年は、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに声を弾ませる。
「修行してないけど強いところがいいんだよ! 汗一つ流さずに、強そうな相手を完膚なきまでに叩き潰す! かっこよくない?」
「怠け者の思考だな」
ぴしゃりと言い切った剛羽は、腕を組んでそっぽを向く。
「うっ……べ、別にまったく努力してないわけじゃないよ!? 物語が始まる前に頑張ってるんだよ」
「そういうのは続けるから意味があるんだぞ。つまりあれか、この作品、主人公が強いんじゃなくて相手が弱いだけだな」
「うっ……ひっく……うえええん、剛羽には分からないんだぁ! だって現実じゃ努力したって報われないじゃん! そういう読者たちの夢を叶えてくれる作品なんだよぉ! 頑張らないで成功したいし、もてはやされたいんだよぉ」
ぽこぽこと剛羽の背中を叩くルームメイトの少年。
剛羽は分かった分かったと宥めてから真面目なトーンで続ける。
「でも、俺はたくさん練習して勝つのが好きだ」
「……嘘だよ、そんなの辛いだけだよ、辛いのは嫌だよ」
いじけたルームメイトの言葉に、剛羽はやれやれと溜息を付く。こういうやり取りは慣れているのだ。
「世海、此間の試合で勝ったとき嬉しくなかったか?」
「それは、まあ……嬉しかったよ。いい試合だったし」
剛羽からの突然の質問に、世海と呼ばれた少年はこくりと頷いた。
試合後に剛羽を初めとするチームメイトたちと抱き合って喜んでいたことを思い出す。
「そういう気持ちって、勝つまでにきちんと練習してきたからこそ感じられるもんだと思うんだ。だから、練習し甲斐があるんだと思う」
運動着に着替え終えた剛羽は、これから外でも走ってくるのか、ドリンクを携帯してドアに足を向ける。
「……それに」
「それに?」
振り返った剛羽は、意地悪そうな笑みを浮かべながら言った。
「練習して練習して練習して、天才ってやつを負かしてやったら、最高に気持ちいいだろ?」
お読みくださりありがとうございました!
キャラクター紹介
蓮剛羽、主人公
性別:男
誕生日:5月30日
年齢:15歳(高校1年生)
身長:175cm
ポジション:守手ガードフィールダー
好きなもの:家族。砕球。練習。チーム。食事
作者コメント:書・き・難・い!クールキャラ――一応、剛羽もクールキャラのつもりで書いてます――って難しいんですねと日々実感する作者泣かせのキャラ。作者に盾突いてどうするつもりなの!?まあとにかく頼むよ主人公!!
~砕球ポジション解説~
①球砕手ブレイク・フィールダー
球を壊す人。試合開始と同時にできるだけ早く相手チームの球操手フラッグ・フィールダーを探して叩く。というシンプルな仕事が戦闘バ……動物諸君の間で大人気!
相手球操手を追い詰めれば追い詰めるほどサポートに来た動手(*次話のあとがきにて解説します)が湧いていろんなやつとたくさん戦えるぞ!
通称「ブレイカー」「戦闘民族」「肉食系」「犬畜生」