表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

保護者と子供たち

「せんせー。あの二人また喧嘩してるー。」

「はいはい。二人とも、その元気はスポーツで使いましょうねー。」

「「…はーい。」」


今日は運動会。

というわけで、子供たちの活躍を見に保護者達が集まっている。

前世がどうであれ、やってる種目は一般的なものだ。

練習はしているとはいえ、子供は結構好き勝手してしまうものだ。


「皆さんお疲れでしたらお茶でもどうぞ。」

「執事くん偉いね。でも出番じゃないからって保護者さんたちのところに行っちゃ駄目だよー。」


慌てて執事くんを迎えに行った。

保護者たちからは微笑ましい笑いがこぼれる。彼の保護者も恥ずかしながらも嬉しいようだった。

見事な執事っぷりから、プリンセスの保護者さんに勧誘されていた。

残念なことに「本人が成長してから決めることですから」とお断りされたようだが。


「忍者くんと勇者くん同時にゴール!頑張ったね。」

「えへへ。」


二人は嬉しそうに笑う。忍者くんは前よりかなり明るくなったようだ。

魔王と勇者。うちの子二人は他の子と比べて全体的な能力値が高い。

魔力のような力は無くとも将来、前世と同じような立場になれる素質をもっているということだと思う。

だから実は、昔から力の制御を心掛けるようにさせている。

今、どれだけ本気を出せるのかは知らないが、満足そうでよかった。


「次は魔王くんだね。」

「勇者には負けられない。先生に良いところ見せる。」

「わ!魔王くんがこんなにやる気なの初めて見る!」


子供たちが大はしゃぎし始めた。

どうやら勇者くんの活躍を見て対抗心を燃やしているらしい。

魔王くんは魔王くんで、いつもやる気がないから本当に計り知れないのだけれど。

まぁ、好き好んで人目のあるところで問題を起こす子じゃないのはよく知っている。


「がんばってー!」

「あら!魔王?いろんな子がいるとは聞いてはいましたけど、本当に大丈夫ですの?」


…保護者の方で問題起きたみたいだ。


「え、魔王なんているの?」

「心配だわ。うちの子に手を出したりしませんの?」


今度は保護者たちがざわつく。

とりあえず何事もなかったかのように種目を始めた。

あとで苦情でも来てしまうのではないかと心配しながら様子を見守っていたのだが。


「皆さん、そういうことを軽々しく口にするのはどうかと。」

「でも大事なことじゃありませんか。」

「だって魔王ですよ?物騒じゃありません?」

「それを言ったら、うちの子も前世は忍者でしたよ。」


忍者くんの保護者がそう言ったことで、その場の人たちが言葉につまった。

先ほどの活躍で、忍者くんをすごいすごいとほめていただけあって今の言葉にはまいったらしい。

というか、保護者の人が結構偉い立場でもあるからだろうけど。


「で、でも。忍者と魔王ではスケールというかレベルが違くありません?」

「うちの子の前世は天使ですけど、喧嘩っ早いところもありますよ。」

「え!?そうなんですか?」

「悪魔くんにいつも迷惑かけてばかりで、本当に恥ずかしいばかりです。」

「そんな。うちの子も悪いんですよ。喧嘩とか弱いくせに意地はるから。」

「いえいえ。口喧嘩に負けたからって実力行使に出るあの子が悪いんですよ。」


天使ちゃんは幼稚園に来た頃から悪即滅!と意気込んでいた子である。

前世が悪者と知るやいなや説教、場合によっては相手が大人でも成敗を率先して行うタイプだった。

その性格には保護者も困っていたようで、相談を受けたこともある。

幸いなのは、天使ちゃんと悪魔くんの保護者同士が仲良くなったことである。

子供たちについて知るために天国や地獄について互いに勉強会をするようになったからだそうで。

今では交流が多く、子供たちも頻繁に遊んでいるのだ。

本日も運動会が始まってすぐに喧嘩し始めたほどの喧嘩友達である。


「とにかく、そんな話はするもんじゃありませんよ。」

「あの子たちの新しい人生はまだまだこれからなんですから。暖かく見守りましょう。」


私が出る必要もなく、ちょっとした騒ぎは無事に終わったようだった。

競技も間もなく終わる、というところで執事くんが転びそうになる。


「わ!」


瞬時に反応して、彼を助けたのは魔王くんだった。


「気を付けろ。」

「あ、ありがとうございます。」


その活躍っぷりを見て保護者たちから、ほぉ、という声が聞こえた。

内心、私もすこし驚いてしまった。

魔王だからと、自分から誰かを助けたり何かしたりをするような子ではなかったのだが。

私の知らない間に、少しはいい方向に成長してくれたのだろうか。


「魔王くん、ありがとうね。」

「あとでもっと褒めて。」

「うんうん。ほめるほめる。」


我が子の活躍で、これほど嬉しいものはなかった。





「お前にしては珍しいな。さては、母さんに良いところ見せたかったんだろ。」

「さぁな?」


勇者が見たその顔は、なんとも得意げだったという。


真相は、謎のまま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ