僕と彼女4
「おはようございます」
僕の声に彼女は目を丸くした。
さすがに顔は覚えてもらえたようだ。ぺこりと頭を下げれば、彼女もまた「おはよう」とあいさつをしてくれる。そんなところも素敵だと思いつつ、僕は目的の言葉を告げる。
「お付き合いできるチャンスが欲しいので、電話番号を知りたいです」
「友人じゃないからダメだ」
そうですか、とその日僕は退いた。
そして翌日。
「メルアドは駄目ですか」
「友人限定だ」
さらに翌日。
「友人になるために話しかけてもいいですか」
「すでに話しかけてきているじゃないか」
「朝の時間、お邪魔にならない程度にお話しするお時間が欲しいです」
「毎日か」
「できれば」
ふむ、と考え込んだ僕と彼女の周囲には野次馬がいっぱいだった。
この短いやり取りをするだけですでに四日経過している。毎朝のように近隣の女子に突撃しては振られている男子で僕は名を売ってしまった。
周囲の視線にさらされながら僕は彼女の答えを待った。
「構わない。君が乗車してきた駅から、私が下車するまでの間だけ、と約束するか」
「はい」
そして僕は彼女と電車に揺られる間だけ、話をする仲になったのである。