愛、あげます。
告白された。
された……のかな?
されたんだとは思うけど。
「……ええと」
果て困ったぞ。
なんて返せばいいのだろう?
私も……いやこれは違う。これだと肯定してしまう。
私は……なんて言う?続きが思い付かないぞ。
私を……どうしろっちゅーねん。
もうなんて返せばいいのかわからない。
いきなり裏庭に来いだなんて、おかしいとは思ったけれど、こんな用件だとは思わんかったしな……。
「ごめんね、いきなり……でも、この想いは止められなくて…」
「うぅん。いいの。けど、本当に私なの?他の人じゃ――」
「ダメ!!」
「――そっか。わかった」
「あ、いえ……ごめんなさい」
さて困った。
どう断りをすればいいのか。
私はどう見られているのか。
うーん……。
「ごめんね。本当にごめんね。こんな告白、戸惑うよね……けどね、本気なの。本気で貴女を――!」
「……そうだね。わかった。じゃあ私も本音を言おうかな」
「――……」
……息を吸い込み、吐くようにして言う。
「ごめん!私、“レズ”じゃないから!」
「――っ」
そう。私にはそっちの趣味はない。
確かに、他人の肌や髪など綺麗だったりしたら羨ましかったり触りたかったりするけど、それだけ。
何もやましいことはひとつとしてないのだ。
「だから、ごめん」
「……いえ。わかりきっていたことだから……気にしないで」
「……」
流れる沈黙。
肌を触る風は少し寒かった。
「でも、この気持ちだけは……どうしても知っていてほしかったから」
「うん。わかるよ。それだけは」
「ありがとう。これでわたしは行けますわ」
「あ、ちょっと待って」
「……――え?」
後ろを向いて歩き出そうとしていたので呼び止めて――そのシミひとつない頬にキスをした。
「……」
「……」
相手は放心したように目を開いて茫然とする。
私は少し照れくさかったけど、言葉にして伝える。
「けど、君が良ければ、奴隷としてなら……下僕としてなら、私、受け入れられるよ」
「……うん!」
こうして私は彼女と結ばれたのだった。
そう。固い固い、千切れることのない、頑丈な絆という名の鎖で――。
*The fine*
× × × × ×
「……なんだこれ」
「なんだこれって、どう見ても美しい女の子ふたりの友情じゃあないですか」
「……いや、その理屈はおかしい」
「どこがです?最後には愛で結ばれてハッピーエンド。この恋は誰にも止められません」
「……そうだな。こんな歪んだ恋は止められないな。むしろ近付きたくないな」
「……あぁ、あたしもこんな恋をしてみたいです」
「このひとつとして純情と無垢さが欠けた駄作みたいなか?……お前、俺に近付くな」
「なんてことを言うのですか!貴方にはわからないのですっ。この女の子のイけない恋の禁断な関係が……!」
「あぁ、わからない。どこでどうしたらあんな結末になるのかが。なんで友達からとかそういうプラトニックさの欠片がないんだ……てかこれ、絶対に絆じゃなく、実際に硬い鎖に繋がれていそうだよな。普通に」
「――ふふ。……興味がおありですか?」
「ねぇよ」
「そんな照れないでくださいよ。貴方なら見せてあげますよ。その女の子だけの桃色の桃源郷とやらを」
「見せんでいい見せんで。桃色というかより濃い別の何かを見そうだから」
「ほんと照れ屋さんなんですから」
「では、このシナリオは学校での劇で――」
「(チラ)」
「――は使わないで乙女の花園まで持って行きましょかねっ」
「はぁ。お前、本当にフォークが苦手なんだな」
「いえ……なんだか、無償に怖いんですよ。……その形状が」
「ほう。ま、いいや。てかその妄想ノート、早く燃やせよ。俺の手が滑らない内に」
「な、なんて冷たい一言……。ですが、それだけは――」
「(チラ)」
「――そ、そんな脅し痛くも痒くも」
「(グサ)」
「ゴトラタン!?」
「わかったな?」
「(コクコク……っ!)」
「ならよし」
「……なんて亭主関白。鶴の一声もないのですか」
「なんか色々と間違ってるぞ」
そんな、どこでもありそうな日常の1ページ。