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第十一話・美幸、李さんを励ます

久しぶりの更新です(^-^;

 放課後の学校。学校の前では、ようやく終わったテストの結果の話をしている生徒でいっぱいだ。それはあたしたちも例外ではない。

「そういえばえみかはテストどうだったの?」

 あたしは右隣りにいるえみかに聞いてみた。

「ばっちり」

 えみかは満面の笑みを浮かべながらそう言った。

「嘘だ〜」

 久美が飴を口に入れながらそう言うと、えみかは瞬時に久美の頭を殴った。久美は頭を抑える。何回見ても二人のやりとりは、漫画の様にしか見えないんだよね。

「そういうあんたはどうなのよ」

 えみかは頭を抑えた久美に聞いた。

「……良かったよ」

 久美は舌を出しておどけた表情をしながら言った。

「嘘だ〜」

 今度はあたしが言った。えみかは腕を組みながら頷いていた。すると、久美はそれを見て頬を膨らませながら鞄の中に手を突っ込んだ。

「じゃ、見てよ」

 久美は数枚のテスト用紙を鞄から出して、差し出してきた。えみかはそれを引ったくる様に受け取った。あたしは久美のテスト用紙を覗いてみた。そこには英語、七十六点。歴史、八十八点。国語、八十三点と書かれたていた。

「ね? 言ったでしょ?」

 えみかは黙って久美にテスト用紙を返した。あたしは久美の意外さに少し驚いた。あの天然ボケの久美がテストで良い点を取っているなんて。あたし今回のテスト良くなかったからなぁ〜。なんか悔しい〜。

「悪かったわね」

 えみかは悔しそうな顔をしながら謝った。それを聞いた久美はえみかの腕に抱きついた。

「えへへ。褒めて褒めて」

 えみかは乱暴に頭を撫でた。すると、久美の髪型は乱れ貞子の様になってしまった。久美は頬を膨らませながら髪を直した。

「木下ー! 待ってくれー!」

 突然、聞き慣れた声にあたしたちは振り返った。見ると自転車に乗った木下君がいて、その後ろにはテスト用紙を持った加賀君がいた。

「頼むからー!」

「知るかよ!」

 自転車に乗った木下君はスピードを上げて一気に走り去った。その後を息を切らしながら加賀君が必死に追っていく。何か前にも見た覚えがある様な。

「そういえばあいつ、数学最下位だもんな」

 えみかがぽつりと呟いた。

 そう加賀君は全部かどうか分からないけど、数学の教科で学年最下位を獲得した。つまりはえみかの彼氏、沢村君にも負けたという事になる。

「今回木下って数学のトップでしょ?」

 久美の言う通り、木下君は今回数学の教科で一番を取った。あたしは失礼だけど信じられなかった。だって、今まで一番は九条君だった。だから本当に木下君には失礼だけど何かの間違いではと思う。

「あのさ〜、美幸。ミスター畠って知ってる?」

 唐突にえみかが聞いてきた。

「ミスター畠?」

 確か売れないマジシャンだった様な。何度かテレビ見た事があるけど、どれも印象に残ってないや。

「確かマジシャンだよね?」

「そうそう」

「デートですか?」

 久美が携帯をいじりながら会話に入ってきた。

「そうなのよ。昨日いきなりたーくんからメール来てさ、『見に行かない?』って言われたんだよね」

 そういえば今週の土曜日にやるってテレビで宣伝していた様な。

「あたし正直行きたくないんだよね。だってミスター畠だよ? 何も凄くないミスター畠よ? 誰が行くってのよ」

 さすがにそれは言い過ぎだよ。それに、反対の通りを歩いている中年男の人が酷く顔を真っ青にしながらこっちを見てるし。あたしは目を合わせない様に俯きながら歩いた。

「ところでさ、来月体育祭あるよね。今年は何の競技に出る?」

 久美が棒が付いた飴を舐めながら切り出した。久美っていつも何個飴持ってきてるんだろ。

「そういえばそうね。あたしは短距離走でいいかな」

「えみか足速いもんね」

 去年の体育祭でえみかは女子の短距離走で学校の記録を塗り替えた実力者なのだ。陸上部にでも入れば良かったのにとたまに思う事がある。けどえみかって、めんどくさがりだからなぁ〜。すすめてもやらないでしょう。

「まぁね。美幸は何に出るの?」

 突然聞かれたあたしは少し考えた。だけど、どの競技も自分にはあわな過ぎる。体育はそれほど得意の分野じゃないし。去年は障害物競走をやって酷い目にあったんだよな。

「分かんないや」

 取り合えずそう言った。

「じゃあね、美幸」

「うん。また明日」

 あたしは手を振って二人と別れると、駅に向かった。いつもの様に電車に乗って、伊蒲駅で降りて歩いて帰る。玄関前まで来るとあたしの帰りをポン太が待っていた。本当にお利口さんだなぁ〜。ポン太を連れて家に入り、忠犬ならぬ忠猫のポン太にご飯をあげてから自分の部屋に行った。

 鞄をベッドの上に置き、制服を脱ぎながらパソコンを起動させた。ジャージに着替え、椅子に腰を下ろす。そういえば、パソコン使うのテスト前以来だから、久しぶりだなぁ〜。

「さてと」

 新規メール作成メニューを開き、李さんのアドレスを選択した。

 最近更新されないなぁ〜と思っていたら、どうやらスランプになっていた様だ。そこであたしは、気分転換にあたしのサイトでチャットでもやりませんかというお誘いをしてみる事にした。

「送信と」

 あたしは部屋を出て、一階のリビングに向かった。リビングには睦美がソファーの上で漫画を読みながら寝転がっていた。あたしは冷蔵庫を開けた。…………ない。

「あ。ごめん、お姉ちゃん。最後の食べちゃった」

 あたしはゆっくり冷蔵庫を閉じて、振り返った。

「お、お姉ちゃん?」

 睦美は顔を引きつりながら見てきた。

「む〜つ〜み〜」

「お姉ちゃん! ごめん!」

 睦美は早口でそう言うとダッシュでリビングを出ていった。あたしもダッシュで睦美を追いかける。

「返せ〜! あたしのアイスを返せ〜!」

 睦美を追い詰めると、

「ごめんなさぁ〜い!」

 壁を背に両手を合わせて許しを請う。だけど今日のあたしは血がみたい様だ。さて、どんなお仕置きをしてあげようかしら。

「その辺にしとけよ」

 振り返ると勝お兄ちゃんがビニール袋を持って立っていた。

「はい」

 勝お兄ちゃんがあたしの大好きなバニラアイスを差し出してきた。あたしはバニラアイスに飛びついた。

「まったく。アイスでこんな騒動を起こすなよ」

 勝お兄ちゃんは溜め息をつきながら言った。あたしは早速スプーンを持ってきてアイスの蓋をゆっくり開けた。キラキラと輝く白いアイスを丁寧にすくう。そして、そのまま口の中へ。うーん。冷たくて美味しいー!

「……って話聞いてるのか?」

 勝お兄ちゃんが顔を覗き込んできた。

「え?」

「ったく」

 勝お兄ちゃんは溜め息をつき、あたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。あたしはお礼を言って、部屋に戻った。すると、新着メールのお知らせがきていた。早速見てみる。

『そうですね。たまには良いかもしれませんね。では今から滝谷先生のサイトに行かせてもらいます』

 良かった。じゃ今からあたしも……って、えーーーーー! 返信がきたの今から三十分も前じゃん!

 あたしは急いで自分のサイトにアクセスし、チャットを開いた。すると李さんの他に見覚えのある名前があった。あたしは取り合えず、お詫びのコメントをした。

『それと、こんにちはカステラ先生』

 と打った。

 このカステラ先生とは『小説家になってまえ!』の作家の一人だ。主に短編ホラー書いており、「短編の魔術師」という異名を持っている。だけど影では「誤字脱字の名手」とも呼ばれている。面白い作品を書いているのだけど、いつも誤字脱字があるという少し変わった人なのだ。ともかく、そういった事から「なってまえ四天王」の一人という凄い人なのだ。

『カステラ:待ってましたよ』

 あたしも早速打ち込む。

『滝谷:待たせてしまってすみません』

『李:いえいえ』

『カステラ:李さんから聞いたんだけど、何やら二人で小説を書いてるらしいですね』

『滝谷:そうなんですよ!』

『李:僕で止めてるのですけどね(汗)』

 やっぱり李さん気にしているのかなぁ〜。ここはやっぱり励ますべきだよね。そもそも、チャットに誘ったのも励ます為だもんね。

『滝谷:李さん。焦らずゆっくりで良いですよ(笑)』

『カステラ:スランプなのですか?』

『李:まぁそれに近いものですね(汗)』

『滝谷:それでチャットに誘ってみたのです』

『カステラ:そうだったんですか。李さん、ゆっくりに越したことはありませんよ』

 さすが、四天王の一人に言われるとなんか説得力があるなぁ〜。あたしが言いのとじゃ全然違う。

『カステラ:それと、あまり重く受け止めない事ですよ(笑)』

『李:……そうですね』

 何かふに落ちないなぁ〜。何て言えば良いのかな。元気なれ? 頑張れ? 気にしないで? う〜ん。取り合えず打ち込んでみよ。

『滝谷:李さん、リラックスです』

 もっと気の利いた事言った方が良かったかな?

『カステラ:息を吸って〜(笑)』

『李:やってみます』

 う〜ん。何か堅苦しいなぁ〜。もっと気楽に楽しくやってくれればそれで良いんだけどなぁ〜。

『李:カステラ先生も企画に参加してますが、順調ですか?』

 あ、そういえばカステラさんも企画に参加してたんだっけ。すっかり忘れてた。他に誰が参加してたっけかな。……全然覚えてないや。

『カステラ:苦戦してますね(汗)』

 やっぱりみんな苦戦してるんだなぁ〜。

『滝谷:お互い頑張りましょうね!』

『カステラ:そうですね。私もお二人の作品楽しみにしてますよ』

『李:カステラ先生のも楽しみにしてます』

 何か李さん元気になった様な気がするな。って事は一応チャットに誘って成功って事だよね。

『李:最近苦手な人とよく会うんですよ』

 へぇ〜。李さんも会うんだ。あたしも木下君とよく会うな〜。でも、出来れば九条君に会いたいな。

『滝谷:あたしもです!』

『李:奇遇ですね』

『カステラ:まぁ、人とは何処で会うか分かりませんからね(笑)』

 まったく、その通りだ。いつ何処で会うかなんて誰も分からないもんね。会いたいと思う人には会えず、どうでもいい人にはよく会ったりするし。人生、思い通りになんて行かないんだよねぇ〜。

 そういえば李さんもテストあったんだっけ。李さん、きっと良かったんだろうな。

『滝谷:李さん、テストどうでした?』

『李:結構良かったですね』

『カステラ:あら? 学生さんなんですか?』

『李:はい』

『滝谷:因みにあたしもでーす!』

『カステラ:なんと。これはおじさんが入ってはいけない所だったのか!?』

 いや、入ってもいいと思うよ。カステラさんって面白い人だなぁ〜。

 このあと、あたしたちは二時間程笑い話をして楽しんだ。李さんもこれでスランプから抜け出せれたら良いな。

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