4本目 魔物の命、Priceless
「まずは資金を作りましょう。ヒカル。」
とやたら庶民臭い事を言うシャルロットもといシャル。何で呼び方が変わってるのかって?
シャル言わく「私が姫ってばれると面倒臭い事になりますから呼び方を変えましょう。勇者様ってばれるても面倒臭い事になりますのでこの際に。」だそうだ。という訳で名前と愛称で呼び合ってる訳だ。
ちなみにデルフは相変わらずデルフのままだったが。
「王国が出してくれるんじゃないの?」
「王国も魔物討伐の費用で手一杯なのです。」
「ふーん。んでどうすんの?」
「まずアラクネの森でポムポム狩りをしましょう。」
「ポムポム?」
「ポムポムとは俗に言うスライムみたいなものじゃ。かなり弱い故、倒すことは容易ではあるが、何分数が多くての。今や野放し状態になっておる。食用として需要がある故、ある程度稼ぐ事は出来よう。」
と解説をしてくれるデルフ。最初はバカだったのに最近解説役で知名度を上げているな。・・・・うーむ。気をつけ無いと次のバカは俺かもしれん。
「さぁ、ポムポム狩りへレッツゴー!」
ピョンと跳びはねるシャル。ノリノリだな。不覚にも可愛いと思ったのは内緒だ。
この時の俺はまだあんな惨劇が起こるなんて知るよしもなかった。
所変わって森。森と言うだけあって見た目ヤバ気な植物がわんさか生えている。
今俺達がそれぞれ持っているのは、50センチ位の瓶とすり鉢の棒みたいな物。なんでもシャル言わく重要アイテムなんだそうだ。
森の中を歩いていると、
ぐにっ
あれっ?なんか踏んだような・・・・。
足元を見てみるとピンク色の物体。およそ20センチ位だろうか。そのピンク玉は昔ア〇フルのCMに出ていたチワワのようなつぶらな瞳をしていた。
「おおっ!可愛いなコイツ。」
思わず手に取る。感触は・・・・そうだな。さしずめ水饅頭と言ったところだろうか。
ぷぎゅ、ぷぎゅとちょっぴりブサイクな泣き声をあげている。ああ、癒されるなぁ。これが今流行りのブサ可愛いだろうか。
「なぁ、何かコイツ可愛いぞ。」そう二人に話し掛ける。
「おお、それがポムポムじゃ。」
と教えてくれるデルフ。
「ええっ?コイツがポムポムなのか?」
こんな可愛いのが?確かにスライムとは聞いていたが。正直、俺には狩れそうもないのだが。
「それではやり方をお見せしますから、良く覚えてくださいね。」
そう言って俺からポムポムを奪って持って来た瓶に入れるシャル。
「っておい!何する気だ!」
とてつもなく嫌な予感がする。
「何ってこうするんですよ。」
そう言ってシャルが瓶に棒を突っ込もうとする。
「やめろぉぉぉ!!!」
ぷぎゅっ!
ぷぎゅぷぎゅっ!
ぷぎゅぅぅぅ〜〜!!!
突っ込まれる回数に応じて断末魔をあげるピンク玉。
「ポムポム〜〜〜!!!」
俺の叫びも虚しく、あの愛らしいピンク玉はただの液体へと成れ果てていた。
絶望にうちひしがれている俺を見て、
「仮にも勇者様なんですからしっかりしてください!」
情けない無いなぁ、もうっ!みたいに腰に手を当てて窘めるシャル。
「こんな事出来るか!!お前らどんだけワイルドなんだよ!!!」
「こんな事って、子供でも出来ますよ。」
「そんな子供見たくないわ!!!」
「はぁ、これだからゆとり教育は。」
シャルが溜息をつく。
「なんでそんな言葉知ってんだよ!」
「急に頭に浮かんで来ました。」
「宇宙人かテメーは!!!」
「まあまあ、ヒカルはまだ慣れていないのであろう。今日のところは我々で殺る事にした方が良かろう。」
そう言って助け船を出してくれるデルフ。
おお、なんて良い奴なのだろうか。本当の魔王はコイツじゃなくてシャルなんじゃないかって思っちゃったのは内緒だ。
きっと殺られるから。
聞いたところによると、この世界では一枚あたり、鉄貨 100円、銅貨 1000円、銀貨 10万円、金貨 100万位になるらしい。
ちなみに今日の収穫報告。
デルフの超人的な技で集めたポムポムエキス、10樽。
それによって得た、銀貨 5枚、銅貨 一袋。
失われたポムポムの魂
プライスレス。