3本目 ブロークンハート〜壊された心で〜
一週間後、出発の日。
俺は城門の前でデルフと姫さんを待っていた。
ちなみにシャルロットが言っていた対策とは彼女自身がパーティーに加わるという事だった。何でもシャルロットは上位の治癒魔法が使えるらしく、3秒以内なら死者さえ蘇生出来るらしい。
「どれだけ苦痛を味わっても死なないですから安心して下さいね。」
って言ってたっけ。彼女と俺の目的が違うように思えるのは俺だけだろうか。
そして、今の時刻はおそらく昼に差し掛かった位。集合は朝だったはずなのだが。
「遅い。何してんだアイツら。」
思わず呟く。だが奴ら来ない。
それから30分くらい経っただろうか、漸く城から二人が出て来た。
「おはようございます。」
「待たせたかの?」
何事も無かったかのように話し掛けてくるデルフとシャルロット。
「待たなかったとでも?」
満面の笑みで答える俺。
笑顔に隠れた怒りを察知したのか、少し慌てた感じでデルフが言った。
「待て、こっこれには深い訳があって・・・・」
「ほう、聞かせてみな」
「う、うむ。実は、ソナタの持っていた鞄の中にあった“まんが”と言うものを見つけて読んでいたら遅くなってしまったのだ。」
・・・・ん?漫画?そんなものあったか?自分の記憶を引っ張り出す。そして青ざめる。
・・・・まさか。
多分奴らが言っているのは友達から借りたエ〇マンガの事だろう。すっかり忘れていた。
「申しわけありませんでした。勇者様。あんなのを読んだのは初めてで。」
ニコニコ笑いながら謝ってくるシャルロット。
「いやっ。もういいからっ!怒ってないから。」
必死に怒ってないよアピールをする俺。
「それにしても勇者様って“ロリコン”だったんですねぇ。」
ブッ!!
堪らず噴き出す。ダニエルめ。ロリータものなんて貸しやがったのか。
「んなわけねーだろ!!」
慌てて弁明する俺。
「ええっ、じゃあ熟女萌えですか?」
驚いた顔のシャルロット。
「違うわっ!何でそうなる!」
「まさか、それ以上・・・・。これは呼び方を変える必要がありますね。アウトローと名乗っては?」
「ちげーよ!!なんだアウトローって!!!」
どんだけ愉快な性癖してんだよ俺は!!!
「それでは一体・・・・」
仕方ない。これ以上不名誉な名前を付けられても嫌だ。
「俺はもっと普通の同い年位の子が良いんだよ!そう、お前みたいな!」
そう言ってシャルロットを指差す。
驚いた顔のシャルロット。しかし直ぐに優しく笑って
「ごめんなさい。私、ヘタレは対象外なんです。」
・・・・・・・・フラれた。
何でフラれたのだろうか。告っても無いのに。
あっ、目から汗が。
「泣かないで下さい。勇者様は良い人だと思いますよ?」
グサッ
シャルロットが優しく宥めてくれる。けれども俺の汗は止まらない。
「勇者様は良い人ですから。」
グサッ
「きっと良い人来ますよ。」
グサッ。パリーンッ。
「うわぁぁぁぁ!!!」
壊されたマイハート。
さよなら。俺のプライド。
さよなら。俺の威厳。
ある晴れた日のこと。
ある少年は優しい言葉は人の心を壊すということを知ったのだった。