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2本目 鏡と勇者と傘と

「ところで、全部終わったら俺は元の世界へ帰れるのか?」


と姫さんに聞いてみる。

まぁ大体帰れないってのがテンプレだけどさ。一応・・・・な?まだやり残した事あるしさ。



「はい。大丈夫ですよ」


当然の様に話す姫さん。

俺にとっては予想外のご返事。


「マジで?!ホントに帰れんの?!」


「ええ、ただ場所と年代は指定出来ませんが。」


「一番大事な所だよソレ!!変な所に飛ばされたらどうすんの!」


新手の詐欺師かテメーは!送られた時代が世紀末だったらどうする気だ。ケ〇シロウとかラ〇ウとなんてお近づきなんかなりたくねーよ!


「まぁ、本音を言えば勇者様がどうなろうと余り私達は困らないのですが」


わぁ。この女ぶっちゃけちゃったよ。


「ホントあんた良い性格してるな!!!」


本当にコイツは姫なのだろうか。


「くだらん話はそれくらいにして、そろそろ本題に入った方が良いのではないか?シャルロット。」


と俺の叫びをスルーしてシャルロットに話しかける大バカもとい魔王。


「くだらねぇとか言うなよ!つかデルフ、元はと言えばお前のせいだって分かってんのか?!」


「そうですね。それでは継承の儀を執り行いましょう。」


ああっ、姫さんにまでスルーされたっ。勇者の立ち位置ってこんな軽かったっけ?


「ついて来てください。」と俺が召喚された部屋から廊下に出るシャルロット。言われた通り着いて行く俺とデルフ。


「なぁ、継承の儀って何だ?」


「簡単に言えば、勇者様の武器を召喚するんです。」


シャルロットが歩きながら答えてくれる。


「へー。やっぱ剣とかか?」

「さぁ、人によってまちまちですから、私にはなんとも。」


曖昧な返事をするシャルロット。出来れば剣より銃がいいのだが。

使ったこと無いけどね。


「着きました。」と言われて通されたのは、俺の背丈位の姿見が置かれた薄暗い部屋だった。


「それではこの姿見に手を入れて下さい。」


「これに手を?」



「それは選定の鏡という魔具よ。その中にそなたに一番相性の良い武器がはいっておる。魔術そのものが形を持った物で有る故、外見はさほど気にする必要はない。」


と後ろから答えてくれるデルフ。なんと分かりやすい説明だろうか。不覚にも見直してしまった。馬鹿と頭の良さは比例する訳では無いらしい。


「さぁ、入れてみるが良かろう。」


デルフに促され恐る恐る鏡手を触れる。

鏡は俺に触れられた瞬間淡い青の光を発して、俺の手を受け入れる。液体のようなジェルのような何とも言い難い感触の中、ふと固いものに触れたのだった。

剣だろうか。柄のような部分を掴んで一気に引き抜く。


「そりゃっ。」


鏡から出て来たのは、槍のような物だった。黒く艶やかな柄、そこから伸びた部分は、頑丈そうな布のような物で覆われていた。それはまるで俺らの世界の傘のようで・・・・。


引き抜かれた物を見てシャルロットが目を丸くしている。隣に立っているデルフの顔は兜のせいで分からんが、多分驚いているのだろう。そしてシャルロットがポツリと


「・・・・傘・・ですね。」


「・・・・傘・・じゃの。」


「ああ、やっぱり傘なんだ?!!てかこっちにも傘あるんだ?!」


二重にびっくり。


「はい、貴族の女性しか使いませんが・・・・」


「これは何かの間違いだろ!」


「はぁ、しかし選定の鏡は一人一度しか使えません。」


気まずそうなシャルロット。


「ええぇ〜。これじゃ無理だろ。んじゃ何でも良いから普通の武器くれよ。」


「それが無理なのだ。」


気の毒そうな声で話し掛けてくるデルフ。


「なんで?」


「選定の鏡から取り出した者はその武器以外は使えないようになるのだ。」


「何だって?どういうことだ?!」


「例えば、他の武器を使った瞬間毒に侵されたり、激しい動悸とめまいがしたりとかかの」


「何だそりゃ!ただの呪われた武器じゃねねーか!!」


しかも動悸っておじいちゃんか!


「そもそも選定の鏡から出る武器は高性能な物が多くての。そんな問題は殆ど起こらなかったのじゃ」


「傘でどう戦えってんだ!」抗議を込めてシャルロットに目を向ける。


「撲殺・・・・でしょうか?」


「撲殺っ?!それって戦い方じゃねーだろ!!」


なんて事言うんだこの姫さんは!


「まあ、しょうがないですから対策は考えて起きましょう。」


と溜息を吐きながら部屋を出るシャルロット。溜息吐きたいのは俺なんだが。


「出発まで一週間あります。それまでゆっくりなさって下さい。」


シャルロットは家来を呼び俺の案内を命じた後、そう言い残して去ったのだった。

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