1本目 そして魔王は馬鹿だった。
「まずは魔王についてから話す必要がありますね。まあ、魔王と言っても今回の魔王は自称です。」
「自称っ?!なんだそれ?!」
「私達も良く把握してはいないのですが半年ほど前、ここから北にあるランビエ山脈で大きな爆発が起こり、それと共に突如魔王と名乗る者が現れました。」
えー・・・・。それはただの変人じゃないのか?
「それから、さっきもお話しました“魔獣増殖炉”を作ったのですが、その後直ぐにパスタリアに投降してきまして。」
「なんで?」
「それがなんでも虫系の魔物が苦手らしく、生まれてきた魔物に追いかけ回されていたら炉に近付けなくなってしまったと・・・・。」
それって・・・・、
「バカだ!バカ過ぎるっ!!だいたい虫系嫌いって何?!魔王なのに?しかも戻れないって。そりゃもうバカ通り越してアホだろ!!」
「人の事をアホだの馬鹿だの、全く最近の勇者殿は口が悪いの」
そういいながら突然出て来たのは、身の丈180はあろうかという、全身を黒い鎧でフルコーティングした巨体だった。
「ぬあぁっ!なんだお前!」
「何とは失礼な。我こそそなた達が話していた魔王であると言うのに。」
なんと御本人様が登場。よくこの話の流れで出て来られたな。やはりバカなのだろうか。
「あぁデルフ、丁度良いところに来ました。大筋は話しておきましたから、後はあなたが説明をして下さい。」
と鎧野郎に話を促す姫さん。
「うむ。我は魔王。名はデルフリンガー。少々呼びづらい故デルフと呼んで貰いたい。」
待て、落ち着け、俺。今はツッコミより情報収拾の方が大事だ。
「・・・・分かった。じゃあデルフ。一つ聞くが、何で増殖炉なんぞ造った?」
「ふむ。我の住家はランビエ山脈に有る故、周りに人などおらんでな。」
「ふむふむ。だから?」
「何か大きな出来事なぞ起こせば人も寄っ来ようと思いてな。」
・・・・・・・・静寂。
しょーもねぇぇぇ!!!!
「姫さんっ!!!増殖炉より先にコイツどうにかしろよ!!!コイツ絶対バグってるってぇぇ!」何寂しいからって気軽に世界の滅亡招いてやがる!!
「はぁ、しかしデルフは魔王と名乗るだけあって大きな力を持っています。だからパスタリア王国は、増殖炉を破壊する事と引き換えに処刑を取り消すと言う声明を出しました。」
と苦笑いの姫さん。
「そういうことよ」
分かったか。と言うようにフンッと鼻を鳴らすデルフ。確定、コイツは大バカだ。
「ならその力でさっさとぶっ壊せよ!」
「たわけっ!出来たらやっておるわ!我の力は強大ではあるが全ての制御は出来ぬのだ。」
うわ、バカに「たわけっ!」て言われちったよ。何だろ。すげえ哀しい。
はぁ〜〜〜。もう溜息しかでねーよ。これからどうなんだよ。