13本目 格好良いと強いはイコールではない……多分。
「……ん、んぁ?」
ぼんやりと目を開ける。 定まらない視界に目をこする。
「起きたんですか?!」
「大丈夫?! お兄ちゃん!」
近くでする悲鳴にも似た声に意識が覚醒する。
「おお、俺生きてる」
そう言いながら身体を起こそうとすると
「ヒカル!!」
「お兄ちゃん!!」
「おぅふっ!」
てな具合にラガーマン並みのタックルをみまってくれるお二人。
「お、まぇらなぁ! 死ぬだろうが!」
「きゃっ」
「きゃあ
ぺいっ! と二人を投げ出して立ち上がる。
「何しやがる!」
半ばぶちギレ気味の俺。 いやだって、あり得ないでしょ? こいつらドラゴン相手に立ち向かおうとする奴らよ? せっかく生き返ったのにタックルで死亡とか。爆笑ってか失笑?
いや本当に痛いの。もぉね、さっきから身体の中の何かがとめどなく溢れそうなくらい。
「ごめんなさいです。でも、お兄ちゃんが死んじゃったかと思ったら……思ったら……えぐっ、ひぐっ」
途端泣き出すリザ。
「あ、いや、わ、悪かった」
いや、そんなふうに泣かれちゃったら、お兄ちゃんもおこれませんよ?
「ごめんな、ありがと」
慰めるようにリザの頭を撫でてやると、ふに、と柔らかい表情を浮かべるリザ。
かんわいいなぁと、和んでいると不意にゾクッとするような悪寒が走った。
「へぇ、リザにはそうで私は無視ですか。そうですか。こんなに、こんなに心配したのにリザには膝枕で頭なでなでで、私はスルーですか。私だって、私だって」
「あのー、シャルさん?」「どうしてくれましょう。いっそサクッと殺ってしまいましょうか。ふふふ、ふふ」
にやり、としながらぶつぶつと独り言を呟くシャル。
怖いよ! 怖いよ!
「さぁ、ヒカル。こちらへいらっしゃい?」
シャルさん! あなた性格かわってますよ?!
「ふふふ、ふふ」
ゆらり、ゆらりと近づいてくるシャル。
「いや待て! わかった! 膝枕でもなんでもしてやるから! とりあえず、あのばかでかいトカゲぶっ飛ばしてから、な? な!」「っ、本当ですね!」
何か尋常じゃない食い付きを見せてますね。
「あ、ああ」
「分かりました。では覚悟をしていてくださいね? それでどうやって倒すんですか? さっきみたいなのではまたおなじですよ?」「……変わり身早いな。ん、まぁいいや。見ててくれ」
そういって、傘をもって立ち上がる。不思議そうに小首を傾げる二人を余所に俺はタチバナの名を心で叫んだ。
瞬間、俺を光が包む。そして目が眩むような光が消え去った後の俺を見て、二人が、いや俺を含めた三人の目が丸くなる。
俺の腕には白いフリフリの着いた黒地の袖。
下半身には何重にもなったフリフリの黒地のスカート。
黒くフリフリの着いた傘を携えて。
おれは、そう、あのタチバナのような、フリフリゴスロリの今をときめくメイドちゃんになっていたのだ。