11本目 本気出すか……って多分死亡フラグ
「いぃぃやっほぉぉぉ!」
今の俺、最高! ザ・ぴて……ぴ? あれ? なんだっけ?
…………。
ま、まぁ俺は最高な訳だから? 例え俺が俺を表す言葉を忘れたとしても、それはただ単にその言語が俺を表すほどの言葉をもってないだけだ! 覚える価値も無いくらいしか俺の魅力を表してないだけだ!
つまり言葉が俺に追い付いてないだけなのだ! うん、そうに違いない。
おい、そこのお前。
追い付いてないのは俺の頭だとか思ったろ?
ふっ、ふん! ま、まぁ俺は寛大だからな。気にしないさ! 気にしてないんだからな! ホントだから!
「つーわけで……死ねやこのトカゲやろぉぉぉ!」 取り敢えず俺の精神安定の糧となりやがれ。
脚に魔力を込めて跳躍。10メートルなんて高さなんのその。
「あーいきゃーんふらーい!」
ツカサの頭と同じ高さでなおかつ一メートル位離れた所に突如、黒い足場が現れる。
おそらくデルフの仕業だろう。いー仕事してますね。
そして着地。
そのまま着地の勢いを殺さないようにスイングを開始する。
「オルァァァ! 吹っ飛べやぁぁぁ!」
周りの空気を巻き込みながら傘がツカサの顔面にめり込む。
そして次の瞬間ツカサの顔が高速で視界からフェードアウトする。
やべえ、超気持ち良い……。
そう、それは俺がこっちの世界に飛ばされる一ヶ月の朝。いつものように俺を走って迎えに来たダニエルが4tトラックに撥ねられた時のような爽快感だった。
「の゛わっっ!」
ツカサの尻尾の先端が鼻先を掠める。
あっぶね! 鼻とれるとこだった。
なんてヤツだ。全く効いてないみたいっすね? なにその「うわー、寝違えたぁ。首いてぇ」みたいな顔。
いやドラゴンが寝違えるのかどうかしらんけど。
しょうがない。本気を出しますか。
身体の力をぬき、倒れるようにツカサの元へ足場から飛び降りる。
足場から足が離れる瞬間、魔力を込めた足で身体に回転を加える。
トリプルアクセルのごとく回転。まぁトリプルではないけれど。 ありえない程の遠心力に傘を持って行かれないように腕に魔力を込めてしっかりと握りしめる。
「カぁぁぁサコプタぁぁ!」
高瀬流傘術、秘奥が一 カサコプター。この技は、ありえない脚力を使って身体を回転させ、傘に付いているフリフリで相手をスライサーにかけたキャベツのように引きちぎるというキューティーかつ残酷な技なのだ!
ちなみに使った後三日間は、強すぎる遠心力がごちゃまぜにした三半器官のせいで立てなくなるのだが……。
そういう訳で突進中なのだが、何故か避けるでもなくツカサが口を開ける。
その口にはほのかな明かりが灯る。
あー。これはもしかしなくても……。
奴の口の中の光は消えるはずもなく、むしろ目に見えて大きさを増していく。
収束する光球。近づくごとに増す熱気が肌を焼く。焼き肉の気持ちが分かった気がする。
まぁ、これは死んだな。
辞世の句「カサコプター 走りだしたら 止まれない」
むしゃくしゃしてやったが今は反省している。
そして俺の意識は火球に飲み込まれた所で途切れた。