10本目 バカではなくて素直と言って!
「これをどうしろって?」
目の前には明らかにサイズがおかしいドラゴン様とその顔面におもっくそ爆発をプレゼントなさっている魔王様のお姿。
いや、ホントにデカいよ? 例えるならデストロ○ガン○ムとスト○イクフ○ーダム位の差だな。
なんでガン○ムかって? 俺が好きなだけです、ハイ。
そんな現実逃避をしている間にも爆発がつづいている。
わぁ、なんて素敵な光景だろうか。素敵過ぎて胃の辺りから酸っぱいものがでてくる。
はぁ……なんだかなぁ。
傘強くなったからって調子こきましたね。俺。
今は反省している。
「デルフのサポートをしてきます」
シャルが戦闘に加わろうとして、それにつられてリザも
「そうですね。助太刀するです」
肩をぐるぐる回している。準備運動だろうか。
やる気満々みたいっすね。
……OK、OK。
名残惜しいがそろそろ現実逃避からリターンしないと隣の二人が俺を置いてドラゴンさんの所に乗り込んじまいそうですね。
はぁ、とため息をついて傘を握り部分的に力を流していく。
最初は腕、胴、そして脚へ。流れ込む力が安息感を与えてくれる。
よし、悪くない。
いくらヘタレと言われようが女の子だけに闘いはさせられないよな。
「あー……二人とも。俺が先に行くから」
任せろって言えない自分が辛いね。
とりあえずできるだけ恰好をつけたセリフを言って、俺はデルフのもとへ駆け出した。
「デルフ! 大丈夫か?」
「おおっ! ヒカル、待っておったぞ。」
ドラゴンさんに魔術をぶっ放しながら答えて下さる魔王閣下。
「そいつはどーも。んで、どうするよ?」
ここは戦闘経験の豊富そうな閣下に従う方がいいよな。
「うむ、取り敢えず突っ込め?」
何故にコイツは疑問形で返してくるのだろうか。
「突っ込めってバカかテメェは!」
「大丈夫じゃ。ふぉろ〜はちゃんとする?」
「フォローすら発音できねぇ奴を信じられるか! しかもまた疑問形かよ!」
「It is pity that You are chicken(あなたがチキンで残念です)」
「だあっ! 英語でしゃべんな! 何て言ってんのかわかんねぇよ!」
「あなたは最高です。
といったのじゃ。お主が頼りなのじゃ。」
なんということだろう。 最高なんて生まれて初めて言われたよ! かーちゃん!
えと、いといずぴてぃざっ……ん? 何だっけ。
まぁいいや。たぶん『ぴてぃ』ってのが最高って意味だろう。そう俺の勘が言っている!
「ふっ、安心したまえ。この俺の『ぴてぃ』な闘いに酔いな!」
最高に『ぴてぃ』な笑顔を浮かべて、俺はドラゴンに向かって特攻を決めるべく走り出したのだった。
「はぁ、アヤツは『pity(残念な)』の意味を知っておるのかのぅ……。まあ、扱いやすいから良いのじゃが。」
一人、少し罪悪感に駆られた魔王がいたとかいないとか……。