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星灯の先生~先生の命を救うために薬師になります~  作者: 星海マイ


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第2話 星とカモミールの朝

※この小説はフィクションです。

実在の薬や人物や団体などとは関係ありません。

鳥の声が、窓の外から小さく聞こえていた。

夜の冷たい気配がゆっくりと退き、

朝の光が〈天星薬舎〉の窓ガラスをやわらかく照らす。


ミオは、目を覚ました。


昨夜、薬舎のソファで眠ってしまったことを思い出す。

胸の奥には、不思議な安らぎが残っていた。

まだ夢の中の竜のぬくもりが、微かに体の奥に息づいているようだった。


「……おはよう。よく眠れたみたいだね。」


静かな声に振り向くと、

和井先生が木のカウンターの向こうで湯を沸かしていた。

湯気の向こう、淡い朝日が差し込み、

ガラス瓶の中の星屑が金色に瞬いている。


「お、おはようございます。昨日は……その、すみません。勝手に寝てしまって。」


「謝らなくていい。薬がちゃんと効いた証拠だよ。

 星の薬は、心の苦しみをゆっくり溶かす薬だからね。」


先生は微笑みながら、

カモミールの花をすり鉢でゆっくりと砕き、

湯の中へと落とした。


ふわりと、やわらかな香りが広がる。

海の風に少し似ていて、けれどもっと優しい香り。


「カモミールティー。よかったらどうぞ。」


あたたかくて、やさしい味だった。

ミオの心の奥まで、じんわりと温まっていく。


「……和井先生、星の薬って、どうやって作るんですか?」


問いかけると、先生は少し目を細めた。

その瞳の奥に、一瞬だけ翳りが走る。


「簡単じゃないんだ。

 星の薬は、空から落ちた星のカケラに“癒しの願い”を込め、

 竜の心臓の結晶の粉と混ぜて作る。」


「じゃあ、昨日の薬に……竜の心臓の一部が入ってたんですか?」


ミオは息を呑む。

先生はカップを差し出しながら、穏やかに頷いた。


「誰かの苦しみが少しでも軽くなるように、願いながら作った。」


カップを受け取る手が、かすかに震えた。

胸の奥があたたかくなって、涙がこぼれそうになる。


「……和井先生って、優しい人ですね。」


「あはは。そう言われると、少し照れるな。」


先生の笑みは朝の光のようで、

ミオの胸の中にふわっと風が広がった。


――そのときだった。


和井先生が立ち上がり、外の光に目を細めた。

朝の空に、かすかな光の尾がすうっと流れていく。


「……また、星が落ちてきたようだ。」


そしてふいに、穏やかな声で尋ねる。


「そういえば、君の名前をまだ聞いてなかったね。」


「あっ、ミオです!」


先生は軽く頷き、続けた。


「ミオさんは、ご家族は? 一晩いなかったら、心配しているんじゃないか?」


ミオは少し俯き、小さく首を振った。


「……家族はいないです。生まれたときに孤児院に引き取られて。

 でも、あそこは……あまり居心地のいい場所じゃなくて。

 私がいなくなっても、誰も気づかないと思います。」


「そうか。」


先生は短く頷いたあと、柔らかく言った。


「ミオさん。今日は、星のカケラを拾いに行かないか?」


「えっ……星のカケラを?」


「そう。昨日、君が見た夢――あの黒い竜。

 あれは、星を運ぶときのオレの姿だ。」


「えっ……どうして夢のことを知ってるんですか?」


先生は白衣の裾をひらりと翻し、

窓辺の瓶にそっと指を伸ばした。


「なんでだろうね。」


その瞬間、部屋の光がふっと揺らぐ。

先生の背に、黒い鱗が浮かび上がった。


まるで夜そのものが形を変えるように――

漆黒の翼がゆっくりと広がっていく。


「あ……! 夢に出てきた黒い竜って、和井先生だったの!?」


「ふふ。そうだよ。」


「星のカケラを取りに行くには、少し高いところまで行かないといけない。

 だから――掴まってて、ミオさん。」


朝の空はまだ淡く、

遠くの雲が金色に滲んでいた。


ミオは胸を高鳴らせながら、差し出された手を取った。


そして、黒竜の背に乗った瞬間――

風が弾け、光が舞い上がる。


「和井先生……すごい……!」


「しっかり掴まってて。星はね、朝にも降るんだ。」


こうして、ミオと和井先生の

“星のカケラを拾う旅”がはじまった――。

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