第14話 出発の朝
※この小説はフィクションです。
実在の薬や人物や団体などとは関係ありません。
まだ日が昇ったばかりの早朝、
レオンは馬車に荷物を積み、旅立つ準備をしていた。
「レオンさーん!」
ミオは薬舎を飛び出し、急ぎ足でレオンに駆け寄る。
「ミオ、どうしたんだい?」
レオンは優しい笑顔で迎えた。
「最後に、お別れの挨拶がしたくて……。」
ミオの表情は少し悲しげに揺れる。
「貴重な月のカケラをありがとうございました。」
ミオが精一杯頭を下げると、レオンは優しく頭をぽんと撫でた。
「君の人生に祝福がありますように。それじゃ、また。」
「はい!たまには遊びに来てくださいね!」
ミオは笑顔で手を振る。
背後から和井先生が、薬の入ったカバンを抱えて歩いてきた。
「レオン、これも持っていけ!」
「和井先生、いいんですか?」
「貴重な薬草をもらったお礼だ。旅では薬が必要だろ?」
和井先生は少しイタズラっぽく笑う。
「ありがとう。」
レオンは礼を言い、馬車に乗り込んだ。
和井先生とミオは手を振り、馬車がゆっくりと街道へと進むのを見送った。
「一瞬、ミオが駆け寄ったとき、一緒に付いていくんじゃないかと焦った。」
和井先生は頬をかき、照れくさそうに言った。
「先生、こないだも言いましたけど、ずっと一緒ですから!」
ミオは思わず本音を口にしてしまい、しまった!と思って顔を赤くする。
和井先生は一瞬だけ悲しげな表情を見せたが、すぐに笑顔でミオを抱き上げた。
「あぁ、ずっと一緒だ!」
ミオも笑顔で力いっぱい返す。
「はい!」
2人は天星薬舎に戻り、仲良く朝ごはんの支度を始めた。
土鍋でほかほかのご飯を炊き、ほのかに白米の甘い香りが漂う。
ミオは料理中、髪の毛が入らないようにと、レオンからもらった青いバラの髪飾りで髪を留めた。
それを見た和井先生は、少し苦い顔をした。
「その髪飾り、そんなに気に入ってるのか?」
ミオは不思議そうに首をかしげる。
「…はい?一応、いただき物ですから。」
和井先生はしゃけを焼きながら、ふと気づいたように顔を上げる。
「もしかして、街の人から赤いバラとかアクセサリーとか、もらってないよな?」
ミオは首をかしげ、さらに不思議そうに答えた。
「うーん、赤いバラはありますけど、アクセサリーはないです……。どうしてですか?」
和井先生は、ミオが告白や求婚の意味を知らないことに焦りを覚えた。
「赤いバラも告白の意味があるから、気をつけろ。善意でもアクセサリーや指輪は受け取るな。」
ミオは笑いながら土鍋の火を消す。
「今更なんですか?私は先生が好きなので、誰からも求婚は受けませんよ。」
その言葉に、ミオの体は思わず硬直した。
「先生、今の取り消して!」
「無理だよ。」
和井先生は笑いながら、ミオの代わりに土鍋の蓋を開け、艶々のご飯をしゃもじでかき混ぜる。
「オレも、ミオのことを特別な人だと思ってる。」
「えっ……先生、今なんて?」
ミオの目は大きく見開かれた。
「2度は言わない!」
和井先生は顔を赤くしながら、茶碗にご飯をよそい、皿に焼き鮭を盛り付ける。
「いただきます!」
こうして、2人の日常は、静かに、そして温かく戻ってきた。
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