第12話 三角関係
※この小説はフィクションです。
実在の薬や人物や団体などとは関係ありません。
3人は朝食を終え、レオンは街へ出かけ、
ミオと和井先生はレオンからもらった月光草の薬作りに取りかかっていた。
「月光草というだけあって、星の薬と成分が似ているな。
これもまた、人の心の苦しみを和らげる薬になるだろう。」
和井先生は、慎重に試験管を揺らしながら、眉間に皺を寄せた。
「それって、先生の心臓を使わなくても星の薬が作れるってことですか!?」
ミオは目を輝かせ、興奮気味に尋ねた。
「まだこの段階ではそこまで到達していない……。
あと一つ、何かが欠けている気がする。」
和井先生は薬とじっと向き合い、考え込む。
ミオは少し落胆したものの、先生が命を削らずとも星の薬を作れる可能性のヒントを掴んだ気がして、胸の中に小さな喜びが広がった。
暫くして街からレオンが紙袋を手に戻ってきた。
「ミオ、ちょっといいかい?」
呼ばれて駆け寄ると、レオンはそっとミオの髪に青いガラス細工のバラの髪飾りを留めた。
「君に似合うと思ってね。花言葉は『奇跡』。
君との出会いを記念して受け取って!」
レオンは笑顔を浮かべ、頬を少し赤らめていた。
その瞬間、和井先生が扉の陰から現れ、静かに声をかけた。
「レオン、そのくらいにしてくれ。弟子に贈り物はやめてくれ。」
「そうかな? 想いを伝えるくらいは悪くないと思うけど。」
レオンは軽く笑い、和井先生を見据える。
二人の視線が交錯し、空気が張り詰める。
静かだが、確実に緊張の糸が震えた。
「えっと、レオンさん……髪飾り、ありがとうございます。」
ミオは戸惑いながらも礼を言う。
「いいんだ。気にしないで。君からはどこか不思議な縁を感じるんだ。
まるで僕と同じ、月の民の血を引いているかのようで……。」
「月の民……?」
ミオは首をかしげる。
「詳しい話はまた今度。」
レオンは微笑み、軽やかにその場を去った。
ミオは和井先生に申し訳なさそうに頭を下げる。
「先生、弟子なのに高価なものをもらって、舞い上がってしまって……。」
「違う、ミオ。」
和井先生は少し拗ねた表情を浮かべながらも真剣に言った。
「旅人が青いバラを贈るのは、求婚の意味もあるんだ。
レオンは君が知らないことを知った上で、
わざと渡したんだろう。それに……。」
「それに……?」
ミオは不思議そうに聞き返す。
「唯一の弟子の君がいなくなると困る……。」
和井先生は珍しく、言葉を選びながら小さく呟いた。
「君が初めて薬舎に来て、弟子になると決めた時から、この子を守らなきゃと思っていたんだ。」
ミオの胸はドキッと高鳴り、頬が自然に赤くなる。
それを見た和井先生は慌てて言葉を補った。
「変な意味じゃない、あくまで保護者としてな。」
「でも、もしレオンと一緒にこの地を去るなら、オレは止めはしない。」
和井先生の声は、いつもよりずっと細く、か弱く響いた。
「先生、私はどこにも行きませんよ。」
ミオは和井先生の両手を握り、真っ直ぐに笑顔を向けた。
「言いましたよね!先生の命を削らなくても星の薬を作ってみせるって!」
和井先生は静かにミオを抱きしめる。
「ありがとう、ミオ。」
ミオもその胸に顔を埋め、そっと抱き返す。
「こちらこそ、いつも守ってくれてありがとう、先生。」
夕陽が森を赤く染め、ざわめく木々が二人を包む。
まるで世界そのものが、二人の絆を祝福するかのようだった。
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