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Bar Ashveil 〜脚本の魔術師が夜を紡ぐ場所〜  作者: 南郷 兼史


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65.愉悦の代償

*


 名が落ちたのち、先にあったものは失せた。

 それは眠りでも気絶でもない。()()という名で世界へ触れていた薄い膜が、外側から静かに剥がれ落ちただけのことである。痛みは残る。血もなお流れている。されど、それを我がこととして結び留めていた糸は既に断たれ、残る肉と骨と脈のみが、新たな秩序へ従って立ち上がる。


 時計台の縁を外れた身体はなお夜の底へ引かれている。風が下から吹き上がり、ローブの裾を大きくはためかせる。

 されど次の瞬間、落ちるという現象そのものが途中で意味を失った。止まったのではない。引き戻されたのでもない。ただ、落下だけが夜の中で無効にされ、妾の位置が静かに書き換えられていく。


 傾いていた身体は、誰かに持ち上げられることもなく、最初からそこに在るべきであった形へ戻される。

 足先が音もなく床へ触れる。時計台の影の内側、屋上の縁からわずかに離れた場所へそのまま置かれる。右手中指のルビーだけが血とは違う硬い赤で沈んでいた。夜景は再び正しい向きで下にある。風だけが遅れてその変化に追いついたみたいに長衣を揺らした。


 まず輪郭から変わった。

 人であった頃の曖昧さが剝がれ落ち、残された肉体だけが別の均衡に従って静かに整えられていく。立つ姿は細い。だが、弱さの細さではない。真っ直ぐ張られた弦のような、触れれば切れる緊張だけを宿した線である。


 髪は黒い。

 ただの黒ではない。夜そのものを細く裂いて束ねたような底の見えぬ黒であった。風を受けるたびその表面のどこかに深紅が滲む。染めた色ではない。血を洗い切れず残したような、あるいは最初から夜の内側へ沈んでいた赤がようやく浮き出てきたような色である。長く重く左右対称に流れ落ち、正面から見ればその整い方だけで息苦しいほどであった。


 貌は白い。

 病んだ白さではなく、熱や感情が表へ出ることを最初から許されていないような硬く整った白である。頬にも唇にも先にあったはずの生の気配は薄い。されど死人のそれとも違う。死ではなく、もっと形式ばったもの――祭壇へ供される偶像だけが持つ冷たさに近い。


 眼は赤を抱いていた。

 黒に近い深い赤で、光を受けるとその底だけがルビーのように鈍く返る。怒りや哀しみを映す目ではない。見たものをそのまま秤へ乗せるためだけの目。感情を失ったゆえの虚ろさではなく、感情より先に役割が完成してしまった者の静かすぎる目であった。


 衣は、先ほどまでのローブがそのまま本性を現したみたいに変じていた。

 深紅を裏打ちした漆黒の長衣。胸元は布だけでなく硬質な黒い意匠が幾重にも重なり、左右対称に鎖と留め具が走る。肩はわずかに張り袖は二重になって、その裂けた外側から深紅が覗く。腰には垂れ布と飾りが静かに揺れ、裾は重たく長く床を引く。装飾は多い。されど散漫ではない。全てが一つの中心へ向かうためだけに過剰なほど整列している。


 背には翼があった。

 羽毛ではない。夜を薄く削いで幾枚も重ねたみたいな黒い羽片の層である。刃のように細く、けれど広げれば確かに翼としか言えぬ形を取る。左右対称に開き、その縁だけが深紅を噛んでいる。風が吹くたび血とも宝石ともつかぬ赤が鈍く返り、街の灯りを吸ったまま少しも優しくは光らない。


 そして、右手中指のルビーだけがなお核として残っていた。

 血とは違う硬い赤。願いを量る秤の錘みたいに小さく確かに沈んでいる。その一点を中心にして、妾という形は完全に立ち上がっていた。美しいというには整いすぎ、恐ろしいというには静かすぎる。けれど、一度(ひとたび)名を知ったなら、もう別のものとは呼べぬ姿であった。



 夜気は冷たい。

 時計台の針は変わらず進み、地上では未だ人の悲鳴が風に削られながら上がってくる。灯りに満ちた銀座の夜景は、もはや慰めにも現実にもならない。ただ壊れきらず残った街の外形として、遠く下に広がるのみであった。


 視界の前には三体の魍骸が在る。

 裂けた肉、捩れた関節、寸法の狂った腕。人の形を踏み台にして立つ失敗作共。いずれも欲の残滓にすぎない。飢えと恐怖と執着のみを濃くしたような相でこちらを見ている。見ている、というより喰らうための方向だけを持っている。


 一つが先に来た。

 爪が振り下ろされるより早く、その胴は中央から断たれる。音は遅れて届き、血はさらに遅れて床へ落ちる。別の一体は口を開いたまま頭部を失い、二歩だけ進んでから崩れた。最後の巨体だけがわずかに退いたが、その退き方に意味はない。胸の中心へ白と闇が一度だけ重なり、次の瞬間には内側の構造ごとほどけた。


 静けさが戻る。

 コンクリートに血が広がり、風がその匂いを運ぶ。背に開く黒翼の端だけが、夜を切るようにわずかに鳴った。


「その三体は殺さなくてよかったのに。僕だって作るの大変なんだよ?」


 ウェイトが笑う。

 軽い声音である。惜しむふりをして、惜しんではいない。

 先ほどまで確かに裂けて朱を滲ませていたはずの脇腹は、いつの間にか綺麗に塞がっていた。裂け目だけが最初から幻であったかのように、そこには傷一つ残っていない。ただ血の痕だけが布へ沈み、返り血を帯びた頬のまま立つその姿には、もはや穏やかな男を装う必要も残っていなかった。


 妾は彼を見る。

 その目には明らかな満足があった。喜悦と呼ぶには静か過ぎ、慈愛と呼ぶには冷たすぎる、と思う間もなくそのどちらも同時に宿していることが知れた。長く待ったものがようやく正しい位置へ据えられた時の顔。壊したいほど美しいものを、ついに己の手で完成させた者の顔。彼はもう隠していない。


 その刹那、ウェイトは杖を床へ転がすように手放し、そのまま妾を抱き寄せた。

 血の匂いが近づく。裂かれたコートの冷えた布と、返り血を吸った袖と、夜気を含んだ髪とが一度に触れる。少しも躊躇がなかった。完成したものへ触れる権利を、最初から己だけが持っていたかのような手つきである。


「愛しているよBabylon(バビロン)。僕はこの時をずっと待っていたんだ」


 その言葉に甘さはあれど、救いはなかった。

 恋情というより、長く構想していた祭壇がついに立ち上がったことへの歓喜に近い。されど声の響きだけはとても優しく、知らぬ者が聞けば祝福と信じるであろう柔らかさであった。妾の肩へ回された指先が、黒翼の付け根へ触れ長衣の深紅を撫でる。その一つ一つが、確かめる所作である。夢でも幻でもなく今確かにここへ在ると、自らへ言い聞かせるような熱である。


 妾はその腕の中で、何も返さなかった。

 返すべき心は既にない。あるのは与えられた役と、役に従う構造のみである。けれどウェイトはそれで良いらしい。抱きしめたまま少し身を離し、妾の貌を覗き込む。その目の奥にはなお、隠しきれぬ嬉しさに似たものが残っていた。


「せっかく成ったんだ。君は願いの器なんだから、ここで終わりじゃない。下へ行って、色んな人の願いを叶えにいかなきゃ」


 それは命令であり確認でもあった。

 願いは叶えられる。だが、無からは与えられぬ。求めた者は、求めた瞬間に秤へ己を乗せる。最も深く抱えたもの、最も失いたくないもの、名より前に抱えていた核を奪われる。その代償においてのみ、奇跡は現実へ落ちる。


「もちろん、僕以外はタダで使わせるわけにはいかないけどね……」


 その一言で、規則は完成する。

 妾はそれを知っている。知識としてではなく、構造として知っている。願いを受け、願いを返し、願いの裏にある欠損を暴くもの。故に、問うべき言葉はひとつしかない。


 屋上の扉の向こう、下の階ではまだ人の悲鳴が続いている。

 妾は踵を返した。黒い長衣の裾が血をかすめ、鎖と留め具が静かに触れ合う。右手中指のルビーは血とは違う赤で沈んだまま、内側だけが熱を失わぬ。ウェイトは後ろからついてくる。その歩みには追う者の気配がない。既に手に入れたものの後ろを、余裕をもって眺めている者の足取りである。


*


 階段を下りる。

 和光の内部はもはや店ではない。磨かれた床には靴跡と血が混ざりショーケースの硝子は割れ、宝飾は散っても輝きを失っていない。高価であることが惨状を止めるわけではなく、むしろ無関心な光だけが死を際立たせていた。死体もある。まだ死にきれていない者もある。呻きは短く恐怖は濃い。人は極限において、しばしば己が何を欲するかだけを鮮明にする。


 通路の先で母親が赤子を抱いていた。

 壁際へ追い詰められ片腕で幼子を胸へ押し込みながら、もう一方の手で床を掻いて後退ろうとしている。その前には魍骸がいた。店員であったのか客であったのか、衣服の名残すら判然とせぬほど裂けている。肩口から垂れた肉が歩くたび揺れ、口元は胸のあたりまで割れ、濡れた息が赤子の額へ落ちそうなほど近い。


 母親は妾を見た。

 正しくは、救いの形に見えるものへ縋った。その目には理屈がない。ただ目の前のものを消してほしいという、世界で一番単純で切実な願いだけがある。


「お願い……これを、殺して」


 願いは口を出た。

 それだけで秤は傾く。妾は問う。低くも高くもない、硬い響きで。


「――お前の願いは?」


 母親は息を乱しながら、なお同じことを願う。

 これを殺して。助けて。この子だけは。言葉はばらけ、意味だけが一つへ寄る。彼女にとって最も大切なものが何であるかは、もはや願いの方が先に告げていた。


 妾は右手を上げる。

 魍骸の首が落ちる。正確には、首であった箇所の繋がりが消える。巨い裂け目が一瞬だけ黒く沈み、頭部は床へ転がった。身体は二歩ほど進んでから崩れ、血が磨かれた床へ扇状に広がる。


 母親の顔に安堵が走る。

 ……ほんの一瞬だけであった。

 すぐにその表情は、理解できぬものを見る顔へ変わる。腕の中で、赤子が静かに爆ぜたからである。


 大きな音はしなかった。

 柔らかいものが内側から破れ、温かい血と肉の細片が母親の胸元と頬へ散る。抱いていた重みだけが一瞬遅れて失われ、彼女の腕は何も抱かぬ形のまま宙へ残った。目が見開く。声はすぐには出ない。何が奪われたのかを身体の方が先に理解したからである。


 妾はなお見下ろしている。

 願いは叶えられた。魍骸は死んだ。代償もまた正しく支払われた。それ以上でも以下でもない。


 それでも母親は、ようやく喉の奥から壊れた声を出した。

 名にも言葉にもならぬ裂けた音である。胸へ何もない腕を押しつけ崩れ、血と肉の散った床へ額を打ちつける。奪われたものの大きさを、ようやく現実として理解した者の泣き方であった。


 ウェイトが後ろで、ただ静かに笑っていた。

 愉しんでいるのか、満たされているのか、その境目は曖昧である。確かなのは、この構図を愛しているということだった。願いと代償。救済と剥奪。縋りつく者と、願いを叶える妾。その全てが、彼にとってはようやく完成した景色なのであろう。


 床へ落ちた血と、母親の腕の中から失われたものの名残と、右手中指のルビーの赤だけが、同じ夜の中で別々の硬さを持って沈んでいた。


*


 和光を出た先の銀座は、まだ美しかった。

 硝子は光を返し、街灯は規則正しく路面を照らし、ショーウィンドウの中では高価なものだけが何も知らぬ顔で並んでいる。

 けれど、その下を流れる現実だけがもう別のものになっていた。血は排水の溝へ細く集まり、逃げた靴の跡と混ざり倒れた者の呻きは広い通りのせいで薄く拡散して、かえって夢の中みたいに遠かった。


 路肩で女が一人、男を抱いていた。

 若い。年齢など、もはやどうでもよいほど怯え切った顔をしている。男はまだ生きていた。生きてはいるが、もう半分ほど人ではない。右の頬から首筋へかけて皮膚が裂け、その裂け目の内側で黒いものが脈を打っている。指の関節は不自然に長くなり、爪は爪であることをやめて薄い骨片みたいに伸びていた。それでも男は、女の肩へ額を押しつけるみたいにしながら、かすれた声で何かを言おうとしている。


「大丈夫、大丈夫だから」


 女はそう繰り返していた。

 大丈夫であるはずがなかった。男の口元は既に裂け始めており、呼吸をするたび喉の奥から濡れた音が鳴る。片脚も膝から下の向きを失い、脚がありえぬ角度で路面へ擦れていた。けれど女はまだ、抱きしめる強さだけで人間を繋ぎとめられると信じているらしかった。


 妾が足を止めると、女がこちらを見た。

 縋る目であった。理屈も計算もない。目の前の壊れかけたものを、どうにか元へ戻してほしいという、それだけの熱で濁った目である。願いはまだ口に出ていない。されど、もう形を持っている。


 少し後ろで、ウェイトが歩みを止める。

 妾の肩越しにその光景を眺める目は、女でも男でもなく、そこに生まれつつある願いの構造そのものへ向いていた。血の乾きかけた頬に、ほのかな笑みだけが残っている。憐れみも慰めもない。ただ、何かが正しく始まる時だけに現れる静かな期待がある。


「いいね」


 ウェイトが満足そうに言った。

 女には聞こえておらぬか、聞こえていても意味を取る余裕がないのか、とにかくその目は妾から離れない。


「こういうのが一番綺麗だよ。欲しいものがちゃんと一つに絞られて、代わりに失うものももう決まっている」


 その声音には興奮があった。

 けれどそれは残酷な光景そのものに酔う熱ではない。秤が揺れ釣り合いが定まり、機構が狂いなく現実へ噛み合っていくことに対する愉悦だった。


「お願い……」


 女は男の顔を抱え裂けた頬に触れ、黒く脈を打つ傷へ震える指を押し当てた。触れたところで戻るはずもないのに、触れずにはいられぬらしい。


「この人を、元に戻して」


 願いは落ちた。

 それだけで秤は傾く。妾は女を見る。その背後、ショーウィンドウの割れた硝子に妾と女と半分壊れた男の影が三つ、歪んで映っていた。女の影だけが、男へ食い入るみたいに寄りすぎている。


「お前の願いは」


 問うても、答えは変わらぬ。

 元に戻して。助けて。この人を。この人だけは。言葉は細く途切れ、泣き声に混じり、それでも願いとしては充分であった。女にとって最も大切なものが男なのか、それとも男と共にある未来なのか、あるいは男に愛される自分なのか、秤は既に量り終えている。


「そう、それでいい」


 ウェイトが笑う。

 優しい声だった。だが、その優しさは女へ向けたものではない。構造が完成する直前、最後の歯車が正しい溝へ落ちるのを見届ける者の声だった。


 妾は右手を上げる。

 男の身体へ白と闇が細く重なる。光ではない。影でもない。境目をなかったことにするためだけの何かが、裂けた頬から喉、肩、指先へ静かに走る。


 男の身体が止まる。

 黒く脈打っていた傷が閉じていく。多すぎた歯は一つずつ減り、裂けた口は元の輪郭へ戻る。長くなりすぎた指も、膝から外れかけた脚も、まるで最初から壊れていなかったみたいに、人の寸法と人の関節を取り戻していく。女の顔に、信じられぬものを見た者の光が差す。息を呑み、泣きながら笑いかけ、男の名を呼ぶ。


「ほらね」


 ウェイトが低く言う。

 その目は男が助かったことより、願いが寸分違わず出力されたことを喜んでいた。


「綺麗に戻る」


 男は目を開けた。

 瞳の濁りが消え、呼吸も人のものへ戻っている。自分がどこまで壊れていたのかを理解していない顔で、ただ目の前の女を見る。助かったのだと、この時だけは誰もが思う。




 その時、女の腹がひくりと動いた。


 最初は痙攣に見える。

 だが、その刹那、内側から何かが強く押し広げた。肉が破れる音は小さい。衣服の裂ける音の方がむしろ大きい。女は目を見開く。痛みの意味が分からぬ顔のまま、両手が反射で腹へ落ちる。けれど間に合わぬ。腹部の中央が、内側から静かに割れた。


 血が噴く。

 温かいものが路面へ落ち、ショーウィンドウの割れた硝子へ飛び、男の頬にまで細い線を描く。裂けた腹の内側から赤黒いものが滑り出る。それは臓腑というには小さく、肉塊というには形を持ちすぎていた。未だ名を与えられていない未来の輪郭。小さな手のかたちだけを持った、柔らかすぎるもの。


 女はそれを見た。

 見てしまった。自分の内側から零れ落ちたものを。守られるはずだったものが、願いの代価として路面へ落ちたことを。声はすぐには出なかった。理解の方が悲鳴より先に喉を塞いだからである。膝が折れる。腹を押さえた手の隙間から血が溢れ、その赤の中で小さな肉片だけが異様に白く見えた。


「そう、そこだ」


 ウェイトが、ほとんど恍惚とした静けさで言う。

 今度は隠しもしない。女の破滅を喜ぶというより、願いと代償が寸分違わず噛み合った一点に深く酔っている声だった。


「元に戻ることと失うことが、ちゃんと釣り合ってる」


 男は何が起きたか分からぬまま、その場へ座り込む。

 元に戻ったばかりの指で女を支えようとして、支える場所を見失う。助かったはずの身体が最初に受け取った現実がこれであることに、顔だけが遅れて歪む。女はようやく声を出す。泣き声にも名にもならぬ、喉の奥を剝がすみたいな音だった。


「――素晴らしい」


 ウェイトは路面へ広がる血と、その中央に落ちた小さな肉のかたちを見ながら、感嘆に近い息を漏らした。


「素晴らしいよ。Babylon(バビロン)


 そう言って、彼は妾の傍へ歩み寄る。

 血の匂いと煙の熱をまとったまま、何のためらいもなく指先を持ち上げ、妾の黒髪へ触れた。夜そのものを裂いて束ねたみたいな長い髪を、確かめるように、味わうように、ゆっくりと撫でる。撫でられているのは髪だけのはずなのに、その手つきには、今目の前で正しく作動した構造の全てへ触れているみたいな熱があった。


 ウェイトは微かに目を細める。

 長く思い描いていた機構がようやく過不足なく現実へ噛み合ったことへの恍惚である。壊れた女も、血だまりも、抱かれるはずだった未来の肉片も、その完成を証明する部品にすぎぬと言わんばかりに彼の視線は甘く冷たかった。

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