046.模倣
オルストレリア大公領西部の都市シャツハウゼンにてフランツと対峙するソフィアとギーゼラ。
不敵な笑みを浮かべる相手を前にして、納得できないとばかりに声を張り上げてギーゼラは問い詰める。
「この衣装はザクツブルクから同じデザインで出品してるんだ。なのに今さら他の衣装を『模倣』してるなんて指摘、どう考えても言いがかりじゃないか!」
「……まずは落ち着いて聞け。そう言っているのは俺様ではない。実行委員会の連中だ……俺様はその判定結果をお前に伝えているに過ぎない」
「だから、どこが! 誰のデザインと!」
「その前に……お前のデザインは本当に『最初から同じ』なのか?」
「どういう意味だよ!? バカにしてんのか?」
皆目見当がつかずさらにヒートアップするギーゼラの横で、ソフィアはこれまでの経過を思い出しているうちにハッと気づく。
「……確かに同じではありません。例の衣装破損事件で急いで修復した際に、若干の変更がなされています」
「そ、それはまあ、破れた箇所が目立たないようにしたけど……あれはやむを得ない措置で」
「だが俺様のブランド配下のデザイナーが用意した衣装とかなり酷似している……その修復後の衣装がな」
「そ、それならそっちがあとから出したやつじゃないか! ウチが模倣できるわけないだろ!」
「それはわかっている……だが運の悪いことに、お前の衣装のルックは順番的に後だった。そして出品申請時のデザインと変わっている」
「それで疑われてるってのかよ!?」
「何度も言うが、それは俺様ではない。そしてお前がどういうつもりだったにせよ、一度『模倣』のレッテルを貼られたデザイナーはどうなるか」
「……終わりだ……そんな馬鹿な、なんでウチがこんな目に」
理不尽に衣装を破損され、今また模倣などというあってはならないレッテル。
激しく落ち込む友人を目の当たりにしてソフィアはフランツに懇願する。
「殿下。あの時は本当にやむを得なかったのです……なにとぞお力添えをお願いいたします」
「この件は俺様の方でも既に動いている……結果的にであれ、模倣したデザイナーがいるなどというのは主催者としても喜ばしいものではない。そこでソフィア、お前にも協力してもらうが」
「……何をすればよろしいのでしょうか?」
「お前にはこれからバズールに一緒に来てもらいたい」
バズール……それはソフィアたちが神学校時代に学校行事のスキー旅行で訪れた観光地。
そしてタツロウとともにフランツと初めて遭遇した場所……何が狙いなのかと戸惑う彼女に、フランツは相変わらず不敵な笑みを浮かべながら話を続ける。




