045.首都ウェーインに到着
「おおっ! ここが『音楽と芸術の都』ウェーイン……街全体がなんというか……まるでテーマパークに来たみたいだぜ〜!」
オレとロベルト、アルヌルフの3人は目的地、オルストレリア大公領の首都に遂に到着した。
その異名に違わず大通りでは何かしら音楽やら芸人の掛け声、それらへの歓声で賑やかなんだよな。
至るところに妙な……もとい芸術的な銅像やら壁絵やら建築物やらで溢れてるし。
まあ、絵ではなく明らかな落書きも所々に見えるのは残念だが……大きな都市だとよくあることだ。
それはともかく、お菓子の都市ショコラリッツを出発してからの道のりは予定通り2日で……いや、今はちょうど昼メシ時だから1日半ってところかな。
「なあお前ら! とりあえず昼メシ食って腹ごしらえしようぜ」
「……いや、俺は遠慮しておく」
「お、おれも……」
「なんでだよ!? 宿場で朝メシ食ってからここまで何も食ってねーし、歩いてきたから身体のエネルギー消耗してるだろうが!」
「……その歩いてきたのが原因だ!」
「普通なら一日がかりの距離を、無理矢理半日で……朝も早く起こされて眠い……!」
「前も言ったけど、この程度で音を上げてるようじゃ鍛え方が足りねえ! こっから先で何か起きたらよぉ、お前ら対処できんのか!?」
「俺も何度も言ってる! 俺たちはあくまでも確認と報告だけだって!」
「そんなことを言ったって、向こうから火の粉が降りかかることだってあんだぞ!」
思えば神学校時代はそういうことが多かった。ソフィアとだって、出会ってしばらくはいろいろとあったのだ。
まあ、オレの前世の行いがそういうのを呼び寄せてるんだよな、今になって考えると。
だからオレと一緒に行動するコイツらにも気を引き締めてほしいだけなのだが……まあここで言い争いを続けても仕方ない。
今日はせっかくの出張先でオレなりの昼メシの流儀ってやつを披露したかったのだが……諦めて軽食を出してくれる喫茶店に入ることにした。
◇
「ふぅ〜。食った食った、満足!」
「タツロウ……一応3人分のサンドイッチの8割くらい食うなんて、本当に将来は成人病まっしぐらだぜ」
「だってお前らが食えねーっていうから」
「だとしてもなあ」
「お前らうるさい……今は寝かせろ……」
アルヌルフはろくに食わずテーブル上に伏せっている。
というわけで今日の午後の行動方針はロベルトと相談しよう。
「まず……というかとにかく商館に向かう、でいいんだよな?」
「うーん……怪しい状況なのが見えてきたからなあ。何の準備もなしに踏み込むのはちょっと怖い」
「準備ったって何が必要なんだよ? 護身用に鉄パイプでも持っていくか?」
ロベルトはオレの提案になぜかぎょっとして、それから一息ついて話を再開した。なんか変なこと言ったかな。
「そういう意味じゃなくて……商館の周辺とか取引先に状況を確認しようかと」
「いやいや、これまではここから離れた街だから聞き込みが必要だったけど……目の前にしてそんなチマチマしたやり方が必要なのか?」
「目の前だからこそ、だ。うっかり近づいて……というのは避けたい」
「でもそのために3人で来たんじゃねーのか?」
「状況からして相手も何らかの組織っぽいし……10人で囲まれたらどうするよ?」
「なんとでもなるっしょ」
「悪いけど俺もアルヌルフさんもそこまで戦闘力高くねーから! 下手すりゃ俺たちを盾にして、お前がボコボコにされるかもしれんぞ?」
「じゃあオレ一人で踏み込むわ」
「だから……とにかく頼むよ、この通り。何かあったらお前だけの問題で済まなくなる」
ロベルトに頭を下げられてしまった……しゃあない、今日は周辺の調査で我慢する。
「だけど調査してるのを相手に勘付かれる恐れもあるんじゃ」
「その時はなんとなく雰囲気でわかるし、あとはヴィルヘルムさんにお任せだよ。俺たちは状況次第で速やかにウェーインから……この領地から引き上げてしまえばいい」
オレとしてはもっと踏み込みたいけど……確かにロベルトたちを危険に晒すわけにもいかない。状況にもよるがオレが守りきれるとは限らないのだ。
◇
「そうだなあ。ここひと月ばかり、納品が遅れたり数量がいい加減だったり……前はキッチリしてたんだけど。あんたら商会の関係者?」
「ええ、『本店』の者です。現在、各地でお得意様を対象に顧客満足度を調査しておりまして」
「だったらちゃんと指導してくれよ。館長さんは気さくでキッチリしてたのに最近見かけないし、代理の店員とやらがやたら態度悪いんだけど?」
「申し訳ございません。調査が済み次第、必要な指導は致しますので」
ああ、またクレームをもらったよ。事態はもう信用問題に関わるところまできてる。
それにしてもロベルトは相変わらず対応が上手い、というかほぼ任せっきりだけど。だってオレが話そうとするとストップをかけられるのだ。
ちなみに他のクレームで最も引っかかったのは、『商館に夜な夜なガラの悪そうな男たちが集まって宴会か何か開いている。夜中まで騒がしくてかなわない』という近所の方の話だった。
まあ、ガラの良い悪いは主観も入るので置いといて。騒音で近所迷惑というのはとても看過できない。
そしてオレたちは商館のすぐ近くまで来ている。
「どうするロベルト? 商館は目と鼻の先……踏み込むなら今じゃないか?」
「……やはりやめておこう。調査結果をまとめて指示を待つのが賢明だ」
「おれもロベルトに賛成。なんか禍々しい気配感じるんだよなー」
2対1ということでやむを得ない。と思ったところに、オレたちに声を掛ける人物が。
「ねえねえ、おじちゃんたち。もしかして館長さんに用事があるの?」
誰がおじちゃんだこのクソガキ……いや、ここは我慢だ。このお子様は館長のことを知っているのかもしれない。
オレたちは顔を見合わせてお互いの考えを表情で読み取り、会話を続けることにした。
「まあ、一応そうなんだけど」
「実は……館長さん、ウチにいるんだよ。それで、訪ねてくる人がいたら連れてきてって」
「商館の中じゃねえのかよ?」
「なんかよくわかんないけど、追い出されたみたいだよ? とにかくついてきて?」
うーん。こんなの信用していいものか。
「どうするよ?」
「あらたなスリの手口かも」
「相手は子供だし、それこそどうにかなるだろ」
あーだこーだヒソヒソ言い合って、ようやくついていくことに決めたオレたちは早速導かれるままに路地裏を歩いていく。
「なあ、まだかよ」
「……もう着いたよ」
「クククッ。やっと追いついて、こんな形で出会えるとはなあ……このタコがっ!」
「お、お前は……!」
名前はなんだっけ。というか聞いた覚えがねーな。
それにしても、まさかあのボッタクリ酒場のタコ野郎に……最悪だぜ。
◇
オルストレリア大公領西部の観光都市、シャツハウゼン。近くに帝国唯一の滝があることで有名であり、季節を問わず多くの観光客が訪れる。
そして次のファッションショーが予定されている……その街中のとある建物内にて、ソフィアとギーゼラ、そしてフランツが対峙している。
「そ、そんなこと……今頃になって言い出すの、おかしいじゃないか!」
「……それで、殿下は私にどうしろとおっしゃるのですか……?」
「フフフッ……!」
いつも読んでいただいてありがとうございます
次の更新は1月25日(日)の予定です
よろしくお願いします




